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47 戯れ
しおりを挟む「やっと到着?」
「待ちくたびれては…」
「いないよね」
玉座のある部屋の扉がゆっくりと開く。紫の長髪を頭の上部で巻き貝の様に二つに纏めた少女はその開きつつある扉を見据えている。
「あいつ、ちゃんと案内してくれたみたいね」
クリューとアドナが入ってきた。
「あまりに遅いから、迷宮に食べられたのかと思ったよ」
「単刀直入に言う、一緒に来てもらおう紫のアリス」
「何故?」
「然る方がお待ちなのでな」
「そんな誰とも知らない人に会うためについて来いと?」
「会いたいと言うなら向こうから来るべきね」
「でも、あなた達が力を示してくれればついていかないこともないよ」
「力って何をしようっていうの」
「簡単だよ」
紫の少女は抜き身のまま玉座の左右の台に置かれた刀の柄を掴み取ると立ち上がる。
その行為にクリューとアドナも自らの武器を構える。
「ほんと簡単ね」
クリューは嘆くように呟くと剣を引き抜いて紫の少女を目掛けて刃を撓らせる。
紫の少女は胴に目掛けて迫ってくる刃を側宙で躱すと床を一蹴りして二人の方へと真っ直ぐ跳ぶ。
アドナは少女が跳んだ瞬間、矢を放つ。
それを見越してたかのように少女は体勢を少し捻り、矢を躱した。
そして、あっと言う間に二人の目の前まで辿り着くと二人の喉笛に刃を宛行う。
「力を見るまでもなかったね」
「それはまだ早いんじゃない?」
クリューがそう言うと少女は首筋にひんやりした者を感じる。
「そのようね」
少女の首筋に背後からクリューの剣の刃がするりと巻き付こうとしていた。
アドナはクリューの剣に意識が移っている間に後方へと重心を倒し、刀の持つ手を蹴り上げるとそのまま後方倒立回転をして弓矢を少女に構える。
「こんなところだね」
紫の少女の刀は束ねた糸が解れるように散けて少女の両手の平に消える。
「さぁ、行こうか」
紫の少女は両手を肩ほどの高さまであげて言う。
「にゃんだ、もう終わりにゃの?」
突然、チェシャ猫が三人の前に飛び降りてきた。
「そう、終わり」
紫の少女の手をチェシャ猫に向けて振るうとクリューの鼻先を何かが通り過ぎ、チェシャ猫は上半身を反らす。
紫の少女の手には刀が握られていた。
「いきにゃり何するにゃ」
チェシャ猫は体勢を戻して言う。
「私達は猫が嫌いなの」
紫の少女は刀の鋒をチェシャ猫に向ける。
「ここは危ないにゃ」
チェシャ猫は後退りして姿を消す。
「ってこっちが危なかったわよ」
クリューは紫の少女に剣幕で言う。
「さぁ、早く行こうか」
「ちょっと待ちなさいよ」
クリューは剣を手に振りながら地団駄を踏む。
「落ち着け、クリュー」
アドナはクリューを宥める。
「今はアリスを連れていくことが先決だ」
「わかってるよ」
クリューは膨れっ面で剣を収めると二人は紫の少女の後を追う。
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