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シオン

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51 新たなアリス

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「お楽しみのところ悪いにゃ」



銀の十字架に荊で磔にされた少女の陰からチェシャ猫が姿を現すと紫の長髪を頭の上部で巻き貝のように二つに纏めた少女は後方へと跳び下がりチェシャ猫を睨む。





「邪魔する気?」



チェシャ猫は磔にされた少女の前へと移動して漂う。



「君にアリスは渡せないにゃ」



「そう邪魔するの」



二振りの剣の一方の鋒をチェシャ猫に向ける。



「だったらそのよく喋る口のついた頭と胴を切り離してあげるから黙ってその身体を差し出しなさい」



「忘れてにゃいか?君に僕は殺せにゃい」



「それはどうかしら」



二振りの剣を地面に突き刺すと少女の左右に赤い装丁の本と緑の装丁の本が現れた。



『本当のところ、この二冊を遣ってもこの猫は死なないでしょうけど』



現れた赤い装丁の本と緑の装丁の本に手を翳す。



「にゃんで…」



「何を驚く事が?私達の終末をあなたが知らないわけがないはずだけど」



「そこで驚いたわけじゃにゃいにゃ!」



「どうして持ってるか?だったってことだよ」



「そう、それこそ聞くことじゃないわ」



紫の少女が手を翳していた左右の赤い装丁と緑の装丁の本が開く。



「そんなことよりそろそろ」



開かれた本から黒い月の満ち欠けが合わさる赤い球体と緑の球体が浮き出てきた。



「そうね…」



紫の少女がそれを掴み取ると二冊の本はそれぞれの色の炎を上げて焼失する。



「…終わりに」



紫の少女はチェシャ猫へと素早く近付き、球体を持つ両手を伸ばすとひょいっとチェシャ猫はその手を躱す。



紫の少女の手を躱したチェシャ猫の瞳には不適な笑みを浮かべる少女の表情が映っていた。



「しまったにゃ」



紫の少女の手は磔の少女に伸び、赤と緑の球体は少女の身体に触れる。



すると紫の少女はすぐに後ろへと二、三回跳び下がり、距離を取った。



磔の少女の身体に触れた赤と緑の球体は身体の中に沈み込むように消えた。



だが、何も起こらなかった。



「にゃは、にゃははは…」



チェシャ猫は笑う。思っていた反応とは違う現実に。



「足りない?」



「目覚めるだけなら十分なはずだよ」



紫の少女は一人会話をする。



背後からその疑問に答える声が聞こえた。



「当然至極」



紫の少女は振り返るとそこにはサファイアのような色をした濡れた髪にその髪とは不釣り合いなほどの深紅の瞳を持つ女性がいた。



チェシャ猫はその人物の登場にひっそりと姿を消す。



「落丁のある本では物語は進まず」



「まずいよ」



「確かにそうね」



紫の少女は身構えて、女性のことを視界に入れながら周囲を警戒する。



「それで何をしにきたのかしら?」



「神の代理者(リプレイスメント)には関係のないことだよ」



「疑問、答えること能わず」



「なら答えなくてもいいわ」



「無理だと思うけど」



「諦める前に出来ることはやるべきよ」



「良いこと言うじゃねぇか!」



その声は紫の少女の警戒の範囲外、上から聞こえた。





黄色髪のお河童の少女がサファイアのような色をした濡れた髪にその髪とは不釣り合いなほどの深紅の瞳を持つ女性、神の代理者に向かって落ちてきて、黄色い鉤爪のような手の片手を振り下ろす。



だが、鉤爪は何か見えないものに阻まれたように弾かれた。



「ちっ」



黄色の少女は舌打ちすると弾かれた勢いを利用して弾かれた方とは逆の手を振り下ろす。

「砕けやがれ!」



鉤爪が触れる何もない空間に亀裂が入る。



「うらぁぁあ!」



何かが硝子が砕けるように散り、もう片方の手を神の代理者に素早く振り下ろす。



鉤爪は神の代理者の胸を切り裂き、神の代理者は倒れた。



「代理は代理だ、神ってわけじゃねぇんだ」



黄色の少女は倒れた神の代理者を足蹴にする。



「思い出したわ」



「寄せ集めで造られたアリスのなり損ないだね」



神の代理者について考えていた紫の少女はハッとして会話する。



「で、お前ら何者だ?」



黄色の少女は紫の少女に乱暴に問う。



「私達を認識してるということは」



「間違いなくアリスだね」



「その雰囲気、お前が紫の…」



倒れた神の代理者の胸から本が静かに浮かび上がる。



その本は黒、白、赤、青、緑、黄、紫の色が継ぎ接ぎになった装丁となっている。



そして、神の代理者の手が僅かに動く。

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