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真夜中の攻防 ②
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「うわぁぁぁぁ!…あ、治った」スン
結論から言おう。剣を受けたのは僕だ。
彼らがカエルに注意を向けている間に、僕は死角になる近くの木を登って、あの瞬間、剣とオスヴァルトの間に頭上から飛びこんだのだ。
心配無用、僕には自己再生がある。受けた傷は瞬時にふさがり傷ついた事実すらないも同然。こうなるともはや不死身?
それがわかっているから出来る捨て身の技だけどね。
「癒しの神子ウルリッヒ様に剣を向けて生きて帰れると思うな!この…神に逆らう罰当たりな不心得者め!」
深夜の森に響き渡る一喝!…でも小声…
十三の子供に大の大人がひーふーみー…五人か。五人もの衛兵が硬直したように立ちすくむ。いやー、壮観!
何しろ僕は神の子奇跡の子。唯一無二の〝癒しの神子”だからね!
「ウ、ウルリッヒ様、ですがこの者は埋葬された王族の宝を掘り出さんと墓所に忍び込んだ賊」
「そうとも!何ゆえ庇われるか!」
ほほう?そういう体で派遣されたってことね。
「賊?それ本気?」
「何が仰りたい…」
「彼が誰だかわからないの?」
「我々は墓所の墓守より夜な夜な墓荒らしが出没すると聞いて参った」
「王族の埋蔵品に手を付ける不敬者など見つけ次第即刻殺せとは王妃の命。ウルリッヒ様でも止められませぬぞ!」
なるほど。墓守は王妃の手先だったと。僕とオスヴァルトの出会いにより歴史は変ったってことか…
「僕が知らないとでも思ってるの?彼は王妹を後見に持つれっきとした王の子、オスヴァルトじゃないか」
一瞬にして挙動不審になる兵たち。当然だ。彼らは僕がオスヴァルトを知っているなんて思ってなかっただろう。
だってオスヴァルトは王妹宮を出たことがない。王妹ブリッタ様と王弟リュディガー様以外は、ブリッタ様を訪ねる限られたご友人しかオスヴァルトの容姿は知らないのだ。
誰にも知られる事無く育った幻の王子…
これはあくまで墓所の宝を狙う賊と思い込んだがゆえの不幸でなければならない。だからこそ事後、王妃の無茶苦茶な言い分が通ったのだから。
けど正体を知ってて剣を向けたのがバレたら彼らは本気で死罪だ。たとえ王妃がどう庇おうとも…そもそも王妃は多分庇わない。
「ウ、ウルリッヒ様、何故彼をオズヴァルト様と思われる。その根拠はおありか!」
「根拠ならあるよ」
ザワ…
そう。
前世軸、何故精悍な若者であるオスヴァルトが多勢に無勢とはいえあっという間にやられたか…
それは彼が素手だったからだ。
ここは国中で一番安全な王城の敷地内。その上真夜中の墓所だ。現に今のオスヴァルトはシャツにトラウザーズだけという、大層楽な服装をしている。まさに庶民と見紛うような…
だから僕はトチノキの洞にそれを入れたのだ。万が一の事態に陥った時、彼が最低でも即死だけは免れるよう、身を護るための武器を。
「彼が手に持ってる短剣、これは僕が昨年王妹殿下を通してオスヴァルト様に送ったものだ。十八の成人を迎えたお祝いにって」
ウソだけど。
僕は彼の手から短剣を抜き取った。
「こ、これがあなた様の贈り物だと言われるのか…?」
「見て、この見事な金細工のスティレットを。これは神殿に保管されてた神器の一つ」
僕は続けた。神器には当然目録がある。これが神殿の保管物であることは簡単に証明できるだろう。そしてその保管庫を開けられるのは神官長だけだ!……僕は開けたけど。
「僕が贈ったもので間違いない」
狼狽える彼ら。その顔にはすでに血の気は無い。気分はすでに断頭台だろう。
「参ったな。神器を勝手にあげたのがバレたら神官長に叱られちゃう。そこで提案なんだけど…」
「な、何でしょう神子様」
「王の子を傷つけた、ましてや殺そうとした、なんて公になったらいくら王妃殿下が庇おうがあなたたち一巻の終わりだよね。そして僕はそれを大司教に証言できる」
大司教。それはこの王城内での揉め事を王に代わって裁く者。
ゴクリ
「けどあなたたちはもしかしたら職務を遂行しようとしただけの忠心あつい臣下なのかもしれない…」
「そ、そうとも」
「もしあなたたちが人の心を未だ忘れてないなら全てを無かったことにしてあげてもいい」
「と言いますと…」
身を乗り出す兵たち。すでに場の主導権は僕のものだ。
「言葉通りだよ。オスヴァルトの傷は僕が全て治して切り付けられた事実なんか無かったことにしてあげる。それからオスヴァルトも口止めしてあげる」
「か、可能でしょうか…」
僕は言った。オスヴァルトにも王族区域を無断で出たという負い目がある。僕次第で兵たちの言い分は通じるだろうし、そもそも命の恩人である僕の言うことはきくだろう、と。
「交換条件はたった一つ。今夜墓所には誰も現れなかった。そう報告すること。君たちのお美しい女主人に。どう?簡単なことでしょ?」
無言でうなずき合う私兵たち。彼らも分かっているのだ。いざとなったら王妃は自分たちに罪を擦り付け処刑場へ送り出すってことを。
「はい。じゃあ散った散った!ああ悪いけど一人、オスヴァルトを運ぶのに手を貸して」
「は、はい…」
オスヴァルトは気を失っている。これは失血のせいではない。いや、正確に言うと元々朦朧としていたが、ガツンと落ちたのは僕の奇跡を受けたからだ。神の奇跡である〝癒し”を受けし者は三十分ほど気を失う。神殿の祭壇横に、仮眠のための長椅子が置かれているのはそのためだ。
王妹宮の入り口までで王妃の私兵は戻らせる。
鳴らすドアノック。出てきた王妹宮の執事は意識の無いオスヴァルトに仰天だ!
「彼には僕の癒しを与えました。心配はいりません」
「よ、良いのですか!神官長に許可も得ず…」
「誰を救うか決めるのは僕です!」
いくら本体を再生しても血濡れの衣類までは再生できない。その切り口を見れば何があったかは一目瞭然だろう。
「もしやこれは本宮の…」
「しっ!ことを荒立てないで。いまここにブリッタ様は居ません。衛兵たちとは話をつけました。王妃に付け入るスキを与えちゃいけない、意味はわかりますね」
オスヴァルトが禁を破って墓所に居たのは事実。どんな因縁付けられたっておかしくないんだから!
「と、取り敢えず寝室に…」
「う…」
「オスヴァルト気が付いた?大丈夫⁉ 」
癒し後の失神時間が過ぎたのだろう、ベッドに横たえたところで意識を取り戻すオスヴァルト。
「ここは…」
「王妹宮だよ。安心して」
「ウルリッヒ、お前は…」
「そう。力を使ったよ。危なかったから…」
「だがもし神官長や王にそれが知られたら…」
「問題ない。兵は誰も話さない」
話したら最後、それは自分自身の死を意味するのだから。
「オスヴァルト。いい機会だから話がしたい。夜が明ける前に戻らないとならないから長居は出来ないけど…聞いてくれる?」
「いいだろう。お前は私の味方だと言ったな?ならば私もお前の味方だ」
ホッ「…」
さて、どこから話そうか…
結論から言おう。剣を受けたのは僕だ。
彼らがカエルに注意を向けている間に、僕は死角になる近くの木を登って、あの瞬間、剣とオスヴァルトの間に頭上から飛びこんだのだ。
心配無用、僕には自己再生がある。受けた傷は瞬時にふさがり傷ついた事実すらないも同然。こうなるともはや不死身?
それがわかっているから出来る捨て身の技だけどね。
「癒しの神子ウルリッヒ様に剣を向けて生きて帰れると思うな!この…神に逆らう罰当たりな不心得者め!」
深夜の森に響き渡る一喝!…でも小声…
十三の子供に大の大人がひーふーみー…五人か。五人もの衛兵が硬直したように立ちすくむ。いやー、壮観!
何しろ僕は神の子奇跡の子。唯一無二の〝癒しの神子”だからね!
「ウ、ウルリッヒ様、ですがこの者は埋葬された王族の宝を掘り出さんと墓所に忍び込んだ賊」
「そうとも!何ゆえ庇われるか!」
ほほう?そういう体で派遣されたってことね。
「賊?それ本気?」
「何が仰りたい…」
「彼が誰だかわからないの?」
「我々は墓所の墓守より夜な夜な墓荒らしが出没すると聞いて参った」
「王族の埋蔵品に手を付ける不敬者など見つけ次第即刻殺せとは王妃の命。ウルリッヒ様でも止められませぬぞ!」
なるほど。墓守は王妃の手先だったと。僕とオスヴァルトの出会いにより歴史は変ったってことか…
「僕が知らないとでも思ってるの?彼は王妹を後見に持つれっきとした王の子、オスヴァルトじゃないか」
一瞬にして挙動不審になる兵たち。当然だ。彼らは僕がオスヴァルトを知っているなんて思ってなかっただろう。
だってオスヴァルトは王妹宮を出たことがない。王妹ブリッタ様と王弟リュディガー様以外は、ブリッタ様を訪ねる限られたご友人しかオスヴァルトの容姿は知らないのだ。
誰にも知られる事無く育った幻の王子…
これはあくまで墓所の宝を狙う賊と思い込んだがゆえの不幸でなければならない。だからこそ事後、王妃の無茶苦茶な言い分が通ったのだから。
けど正体を知ってて剣を向けたのがバレたら彼らは本気で死罪だ。たとえ王妃がどう庇おうとも…そもそも王妃は多分庇わない。
「ウ、ウルリッヒ様、何故彼をオズヴァルト様と思われる。その根拠はおありか!」
「根拠ならあるよ」
ザワ…
そう。
前世軸、何故精悍な若者であるオスヴァルトが多勢に無勢とはいえあっという間にやられたか…
それは彼が素手だったからだ。
ここは国中で一番安全な王城の敷地内。その上真夜中の墓所だ。現に今のオスヴァルトはシャツにトラウザーズだけという、大層楽な服装をしている。まさに庶民と見紛うような…
だから僕はトチノキの洞にそれを入れたのだ。万が一の事態に陥った時、彼が最低でも即死だけは免れるよう、身を護るための武器を。
「彼が手に持ってる短剣、これは僕が昨年王妹殿下を通してオスヴァルト様に送ったものだ。十八の成人を迎えたお祝いにって」
ウソだけど。
僕は彼の手から短剣を抜き取った。
「こ、これがあなた様の贈り物だと言われるのか…?」
「見て、この見事な金細工のスティレットを。これは神殿に保管されてた神器の一つ」
僕は続けた。神器には当然目録がある。これが神殿の保管物であることは簡単に証明できるだろう。そしてその保管庫を開けられるのは神官長だけだ!……僕は開けたけど。
「僕が贈ったもので間違いない」
狼狽える彼ら。その顔にはすでに血の気は無い。気分はすでに断頭台だろう。
「参ったな。神器を勝手にあげたのがバレたら神官長に叱られちゃう。そこで提案なんだけど…」
「な、何でしょう神子様」
「王の子を傷つけた、ましてや殺そうとした、なんて公になったらいくら王妃殿下が庇おうがあなたたち一巻の終わりだよね。そして僕はそれを大司教に証言できる」
大司教。それはこの王城内での揉め事を王に代わって裁く者。
ゴクリ
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「そ、そうとも」
「もしあなたたちが人の心を未だ忘れてないなら全てを無かったことにしてあげてもいい」
「と言いますと…」
身を乗り出す兵たち。すでに場の主導権は僕のものだ。
「言葉通りだよ。オスヴァルトの傷は僕が全て治して切り付けられた事実なんか無かったことにしてあげる。それからオスヴァルトも口止めしてあげる」
「か、可能でしょうか…」
僕は言った。オスヴァルトにも王族区域を無断で出たという負い目がある。僕次第で兵たちの言い分は通じるだろうし、そもそも命の恩人である僕の言うことはきくだろう、と。
「交換条件はたった一つ。今夜墓所には誰も現れなかった。そう報告すること。君たちのお美しい女主人に。どう?簡単なことでしょ?」
無言でうなずき合う私兵たち。彼らも分かっているのだ。いざとなったら王妃は自分たちに罪を擦り付け処刑場へ送り出すってことを。
「はい。じゃあ散った散った!ああ悪いけど一人、オスヴァルトを運ぶのに手を貸して」
「は、はい…」
オスヴァルトは気を失っている。これは失血のせいではない。いや、正確に言うと元々朦朧としていたが、ガツンと落ちたのは僕の奇跡を受けたからだ。神の奇跡である〝癒し”を受けし者は三十分ほど気を失う。神殿の祭壇横に、仮眠のための長椅子が置かれているのはそのためだ。
王妹宮の入り口までで王妃の私兵は戻らせる。
鳴らすドアノック。出てきた王妹宮の執事は意識の無いオスヴァルトに仰天だ!
「彼には僕の癒しを与えました。心配はいりません」
「よ、良いのですか!神官長に許可も得ず…」
「誰を救うか決めるのは僕です!」
いくら本体を再生しても血濡れの衣類までは再生できない。その切り口を見れば何があったかは一目瞭然だろう。
「もしやこれは本宮の…」
「しっ!ことを荒立てないで。いまここにブリッタ様は居ません。衛兵たちとは話をつけました。王妃に付け入るスキを与えちゃいけない、意味はわかりますね」
オスヴァルトが禁を破って墓所に居たのは事実。どんな因縁付けられたっておかしくないんだから!
「と、取り敢えず寝室に…」
「う…」
「オスヴァルト気が付いた?大丈夫⁉ 」
癒し後の失神時間が過ぎたのだろう、ベッドに横たえたところで意識を取り戻すオスヴァルト。
「ここは…」
「王妹宮だよ。安心して」
「ウルリッヒ、お前は…」
「そう。力を使ったよ。危なかったから…」
「だがもし神官長や王にそれが知られたら…」
「問題ない。兵は誰も話さない」
話したら最後、それは自分自身の死を意味するのだから。
「オスヴァルト。いい機会だから話がしたい。夜が明ける前に戻らないとならないから長居は出来ないけど…聞いてくれる?」
「いいだろう。お前は私の味方だと言ったな?ならば私もお前の味方だ」
ホッ「…」
さて、どこから話そうか…
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