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ウィッチングアワー ②
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さて、疲れ果てたウル様が眠りにつき、オスヴァルトが服を着替えている間に僕の尋問は幕を開ける。
こういうとき意外にも顔色ひとつ変えないで誤魔化せるのがウル様だ。なんだかんだ言っても小さい時から神子教育の基礎は受けてるし。
だから僕は初めから的を絞っていた。
「さあ話してもらおうか。外で何があったの」
「何のことだ。ウーリ、お前はいつも考えすぎだ」
「へー?あっそう。そういうこと言うんだ。エドヴィン?」
「…何もございません」
「二人の着てた服はどこ。見せて」
「木々に引っ掛けて破いてしまったのでね。捨ててきた」
「破いた…、つまり剣で襲撃を受けた、そういうこと?」
「っ!」
「馬鹿者…」
さすがお坊ちゃん、僕のカマかけにいとも容易くのせられたエドはあっという間に口を割った。
「はぁ?オットーの仲間に襲撃を受けた?オスビー!何で隠すの!」
「何も隠していない…」
「隠してない?…あぁっ⁉ 」
そこにあったのは腕に走る何本もの剣傷!
「だから隠したの?ちょっ、早く見せて!」
「大した事はない!」
「いいからほら!ひどい傷もあるじゃない!」
「力は使うなウーリ!」
ビクッ
思わず身がすくむような声。
「こんな傷くらいで力は使わないでくれ…頼むから…」
「オスビー…」
「私かエミルが傷つけば君はそれがどんな軽傷でも躊躇わずに癒すのだろう?そんな君だから隠したのだ」
そんなの当たり前じゃないか!
…ずっと心に傷を負ってきたウル様とオスヴァルト。その二人に身体の傷まで負わせたくない。痛みに耐えるのなんてもう十分だ!苦痛ならこの二人はもう一生分味わってきたんだから!
「ウーリ、君が私を想うように私もウーリを大切に想っている。誰だって自分の大切な者が傷つくのは見たくない。ましてやそれが命にかかわるものならば尚のことだ」
僕を想う真摯な言葉がとても嬉しい。それでも嫌なものは嫌なんだから仕方がない。
「いい機会だ。少し話そうウーリ」
「力を使うなって言う話ならもう分かったってば。今はオットーの特製朝食作らなきゃ」
振り返れば空気を呼んだエドは退室していてオスビーは僕の腕をガッチリつかんで離さない。
「ねえオスビー時間が」
「聞いてくれウーリ、もし君に何かあったとしてもやり直しの三度目はないかもしれない」
「え?まあ…それは」
「あっても私たちは出会わないかもしれない。私はその世界軸を認められない。君はどうだ」
「……」
オスヴァルトの居ない三度目の世界…?
前世軸、僕の側に居たのはいつでもウル様だった。僕がそばにいたともいうが…
そしてやり直しの今、側にいたのは…
あの墓所で初めて会うもっと前から僕はオスヴァルトのことを考えていた。それこそウル様と別れたすぐその直後からずっと。
ウル様と似た境遇の人。僕の味方になり得る人。そして…誰よりも分かり合えるだろう唯一の相手…そんなことを考えていた。まだ出会っても居ないのに。
墓所で初めて見たオスヴァルトの姿は凛々しくて…気品があって…、でも空虚な瞳をしてた。
何も映さない瞳。まるで前世軸の、最期を覚悟したあのウル様みたいな…
僕はそんな目をもう見たくないって、そう思った。茶に緑に金に、角度によって色味を変えるヘーゼルの瞳。彼にはもっとたくさんの表情があるはずだって。
思った通り。王城をでてから色んな顔を見せるオスビー。
貴公子たちと語り明かしほろ酔いの顔、僕の計画に口を開けて驚いた顔、国を導くと覚悟を決めた決意の顔、「馬鹿者!」って僕を叱り飛ばした…心配そうな顔。それは全部いつだって僕のもので…
二か月の道中…毎日毎晩おしゃべりした。
新しい生活、祝福に満ちた未来、神殿都市の復興にこの国のやり直し。たった二人で語るだけの夢みたいな理想…それでも希望に胸はどんどん膨らんでいった。
そのオスヴァルトが側にいない世界軸…?
「…」フルフル
考えたくもない。
「私に広い世界をくれたのはウーリ、君だ。私を見つけ私を救い私に生きる喜びをくれた。私にとって未来とは君あってのもの。喜びも苦難も…私にとって分かち合うべき相手は君しかいない。君は違うのか!」
違わない。この二年僕の側にいて一緒に考えて一緒に励まし合って一緒に笑いあってきたのはいつだって…
「…イヤだ…僕だってオスビーが居ないのはイヤだ…」
「ならば約束してくれ。例え相手が私だろうとこの力を安易には使わないと」
「う…」
「私のために頼むウーリ。一日でも長く共にあるために」
「……」コクリ…
その時初めて僕は僕の気持ちにはっきり気付いた…
どうしよう…僕は…
僕はオスビーが…
パタン
「オスヴァルト様。大事なお話は終わりましたか?」
「エド…、まだ起きていたのか。オットーの見送りに君は付き合わなくともよい。一睡もしていないのだ。休みたまえ」
「ウルリッヒ様のことがお好きなのですねオスヴァルト様は」
「好きなどという言葉ではとても足りない。それ以上だ」
「…」
「どうした?」
「オスヴァルト様、どうか最後の局面を終えた後、私にお時間をくださいますか?」
「もちろんかまわないが…何かあるのか?」
「明確な話ではないのですが…神子の生命力を枯渇させない方法…もしかしたらあるかも知れません」
こういうとき意外にも顔色ひとつ変えないで誤魔化せるのがウル様だ。なんだかんだ言っても小さい時から神子教育の基礎は受けてるし。
だから僕は初めから的を絞っていた。
「さあ話してもらおうか。外で何があったの」
「何のことだ。ウーリ、お前はいつも考えすぎだ」
「へー?あっそう。そういうこと言うんだ。エドヴィン?」
「…何もございません」
「二人の着てた服はどこ。見せて」
「木々に引っ掛けて破いてしまったのでね。捨ててきた」
「破いた…、つまり剣で襲撃を受けた、そういうこと?」
「っ!」
「馬鹿者…」
さすがお坊ちゃん、僕のカマかけにいとも容易くのせられたエドはあっという間に口を割った。
「はぁ?オットーの仲間に襲撃を受けた?オスビー!何で隠すの!」
「何も隠していない…」
「隠してない?…あぁっ⁉ 」
そこにあったのは腕に走る何本もの剣傷!
「だから隠したの?ちょっ、早く見せて!」
「大した事はない!」
「いいからほら!ひどい傷もあるじゃない!」
「力は使うなウーリ!」
ビクッ
思わず身がすくむような声。
「こんな傷くらいで力は使わないでくれ…頼むから…」
「オスビー…」
「私かエミルが傷つけば君はそれがどんな軽傷でも躊躇わずに癒すのだろう?そんな君だから隠したのだ」
そんなの当たり前じゃないか!
…ずっと心に傷を負ってきたウル様とオスヴァルト。その二人に身体の傷まで負わせたくない。痛みに耐えるのなんてもう十分だ!苦痛ならこの二人はもう一生分味わってきたんだから!
「ウーリ、君が私を想うように私もウーリを大切に想っている。誰だって自分の大切な者が傷つくのは見たくない。ましてやそれが命にかかわるものならば尚のことだ」
僕を想う真摯な言葉がとても嬉しい。それでも嫌なものは嫌なんだから仕方がない。
「いい機会だ。少し話そうウーリ」
「力を使うなって言う話ならもう分かったってば。今はオットーの特製朝食作らなきゃ」
振り返れば空気を呼んだエドは退室していてオスビーは僕の腕をガッチリつかんで離さない。
「ねえオスビー時間が」
「聞いてくれウーリ、もし君に何かあったとしてもやり直しの三度目はないかもしれない」
「え?まあ…それは」
「あっても私たちは出会わないかもしれない。私はその世界軸を認められない。君はどうだ」
「……」
オスヴァルトの居ない三度目の世界…?
前世軸、僕の側に居たのはいつでもウル様だった。僕がそばにいたともいうが…
そしてやり直しの今、側にいたのは…
あの墓所で初めて会うもっと前から僕はオスヴァルトのことを考えていた。それこそウル様と別れたすぐその直後からずっと。
ウル様と似た境遇の人。僕の味方になり得る人。そして…誰よりも分かり合えるだろう唯一の相手…そんなことを考えていた。まだ出会っても居ないのに。
墓所で初めて見たオスヴァルトの姿は凛々しくて…気品があって…、でも空虚な瞳をしてた。
何も映さない瞳。まるで前世軸の、最期を覚悟したあのウル様みたいな…
僕はそんな目をもう見たくないって、そう思った。茶に緑に金に、角度によって色味を変えるヘーゼルの瞳。彼にはもっとたくさんの表情があるはずだって。
思った通り。王城をでてから色んな顔を見せるオスビー。
貴公子たちと語り明かしほろ酔いの顔、僕の計画に口を開けて驚いた顔、国を導くと覚悟を決めた決意の顔、「馬鹿者!」って僕を叱り飛ばした…心配そうな顔。それは全部いつだって僕のもので…
二か月の道中…毎日毎晩おしゃべりした。
新しい生活、祝福に満ちた未来、神殿都市の復興にこの国のやり直し。たった二人で語るだけの夢みたいな理想…それでも希望に胸はどんどん膨らんでいった。
そのオスヴァルトが側にいない世界軸…?
「…」フルフル
考えたくもない。
「私に広い世界をくれたのはウーリ、君だ。私を見つけ私を救い私に生きる喜びをくれた。私にとって未来とは君あってのもの。喜びも苦難も…私にとって分かち合うべき相手は君しかいない。君は違うのか!」
違わない。この二年僕の側にいて一緒に考えて一緒に励まし合って一緒に笑いあってきたのはいつだって…
「…イヤだ…僕だってオスビーが居ないのはイヤだ…」
「ならば約束してくれ。例え相手が私だろうとこの力を安易には使わないと」
「う…」
「私のために頼むウーリ。一日でも長く共にあるために」
「……」コクリ…
その時初めて僕は僕の気持ちにはっきり気付いた…
どうしよう…僕は…
僕はオスビーが…
パタン
「オスヴァルト様。大事なお話は終わりましたか?」
「エド…、まだ起きていたのか。オットーの見送りに君は付き合わなくともよい。一睡もしていないのだ。休みたまえ」
「ウルリッヒ様のことがお好きなのですねオスヴァルト様は」
「好きなどという言葉ではとても足りない。それ以上だ」
「…」
「どうした?」
「オスヴァルト様、どうか最後の局面を終えた後、私にお時間をくださいますか?」
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