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神の想い
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甘い甘い新婚一日目の朝…
「おはようウーリ」
「お、おはよう」テレ
「昨日までと何が変わったというわけではないのだが…やはりいいものだな」
「何が…?」
「君が私のものであると実感が湧いたよ」
「今までなかったの?」
「君には〝ウル様”が居るからね。だがこればかりは私だけの特権だ」
「あ、あ…そう…」カァァ「と、ところで今日は?」
「一日中謁見の間だ」
「王様は大変だね」
「健やかな国のためだ。なに、私には〝癒しの神子”が居る。疲れたら癒してもらうさ」
王子でなく王様となったオスビーは今日も朝から忙しい。
何しろ貴族たちは王との謁見をのぞんでいる。
特に遠方の当主は謁見が済み次第急いで自領に戻らなければ、場所によっては雪が降りだしてしまう。
早く帰してあげるにはオスビーががんばるしかない。
コンコン
「陛下、朝食をお持ちしました」
「ありがとうベン」
朝食を運ぶベンとその後ろに居るのがエド。彼は毎朝ここで給仕をする。
僕とオスビーは基本、朝食を私室でとることにしている。
夕食は、いまでは大臣や官吏となった貴公子の誰かと同席しているが、これは有益なお話をするためだね。
「ウーリ、身体のほうはその…大丈夫だろうか」
「それがね…あの光を浴びたせいかすこぶる調子良い…」
「…実は私もだ。この二日間の疲れが全て消え失せた」
やっぱりあれは生命力吸収に関わる何かの光。多分古の神殿都市で罪人から生命力を奪ったというバルデルス神のあの力…
「考えたのだがウーリ」
「何?」
「戴冠式で私を包んだという神の光だが…、恐らく私にその奇跡を履行させるため神が力を貸し与えて下さったのだろう」
かもしれない。
エドの考えたその方法は確かに良い線いってたと思う。
けど、再生の力が神の奇跡であるのなら、崩壊、この場合でいう不要な生命(不要って言うな!)を僕に吸収させる力もまた神の奇跡であるはずだろう。
僕は再生の神子であって自力吸収なんか出来っこない。だから神様はその役目をオスビーに与えたたもうた。
「僕の夫となったオスビーに?それとも君主の血を引くサンクトリウムの王に?」
「戴冠式典で起きた現象であれば君主の血筋に…なのだろう」
そういうことか。
「あ…」
「どうしたウーリ」
「神様は最初からこの救済を用意してたのかも…って思って」
「どういうことだ?」
思ってたんだよね…。慈悲の神様にしちゃナンナーには厳しすぎるんじゃないかって。だって罰にしても千年以上ナンナーの家系は苦しんできたんだよ?
恐らく〝奇跡の神子”といいう存在が生まれた当初、中には「死にたくない」と逃げ出した人だって居たんだろう。
そうしていつしか奇跡を発現した古の神子たちは〝保護”と〝管理”の名のもとに王家と教会に囲い込まれた。
彼女たちを真っ白に育てること。その是非はともかくナンナー家にとってあれはある種の慈悲だったんだろう。それは想像つくけど…
「きっと過去の神子たちがむやみに神聖視されず、普通に生きて恋もして結婚もして夫婦の営みもしてたら…」
ううん、それだけではきっとだめで…古の君主の血を引く王家が道を踏み外さず神の使いと手を携え、その奇跡を私欲じゃなく国のため民のために使っていれば…
「…神子を利用するのでなく愛すればよかったのだな。そうすれば神子は早世せずとも済んだのだろう」
知らなかったこととはいえ…その結果がこれだ。
「アルトゥール…、馬鹿な男だ。彼は全てを正道へと導く貴重な機会を得ていたというのに…」
「手遅れだよ。あんな顔だけのバカ、ウル様には似合わない」
「前世軸のウルリッヒがアルトゥールを求めたことこそが神による最後の試験だったのかも知れないな」
「なるほどね」
ウル様の初恋さえ神の采配…そう思えば少しだけ腑に落ちた。
部屋を出る前、オスビーは最後にこうも言った。
神が今全てを正しき道へと導いたのには王家の再生以外にも理由があるのかも知れないって。
再生された王家。再生された神子。再生された神殿都市。
まるでピースがハマるようにこの結果に導かれた僕とオスビー。
もし彼が言うようそこにもし理由があると言うのなら…それはいったいどんな理由なんだろう。これから何が起きるんだろう。
それでも二人でいればきっとなんだって乗り越えられる。だから不安なんて少しも感じない。
さて、前夜祭を含め狂乱の三日間が過ぎ平常に戻ったサンクトリウム。神殿部には未だ何人もの貴人が滞在している。
この神殿部は広い。
プロピュライアを入ってすぐのところに三つの神殿がある。
一つは屋外神殿。海に面した壁のない神殿だ。これは主に開放的な会議、決起集会なんかに使用される。立食晩餐会の主たる会場はここだった。
二つ目が一番小さな神殿。ここは教会がわりみたいなもので、神殿部に住む彼らの日常的な礼拝などはここで行われる。ほら、聖神殿はデカすぎるから…
三つめがあの巨大なバルデルス神が鎮座する聖神殿ね。ここは公式行事に使用されるもので普段は聖職者と王族以外立ち入り禁止だ。
それら神殿群の両横には大小様々な建物がある。
今では帰る場所を得た貴公子たちが、このサンクトリウムでの寮にしている『貴公子の館』。これ、過去は『神子の館』だったところね。
そして調薬棟。ここは救護棟でもある。常駐するのはウル様とエド。時々僕。ここでは常に奇跡の予防薬を作り続けている。需要が途切れることはない。東はともかく、西の地において予防は常に必要なのだから。
それらの建物は傷みの少なかったものから順に修繕され、謁見を含めた政務を行うための場所は、神殿とも僕の住む館とも別で二つほどの建物が執務塔として当てられている。
オスビーはこれらを移動しながら一日過ごすので、この神殿部に居れば来賓の彼らであってもわりと遭遇率は高い。
もっとも気軽に声をかけていいわけではないけど。
多分彼らは神子ともお近づきになりたいのだろう。時折感じる期待に満ちた視線。
生存の道が確率した現在、必要に応じ癒しを与えることは全然かまわない。が、僕は神官長、大司教とも話し合い、今後の癒しについて基準を明確にするつもりだ。
神への敬虔な態度は大前提として…
ひとつ、国への貢献度。これは財力、人力、知力、どんな形でもかまわない。早い話が奇跡を望むなら役に立て、ってことだ。
ふたつめ、本人の人格。
武力に長け財があってもフォルスト侯爵みたいなのは…ねえ?
僕とオスビーの国にはいらないかな?
だから、神の救いが欲しければ人の道を外れるな、ってこと。
何も聖人君子でいろと言っているわけではない。
当たり前の倫理観と当たり前の道徳観があれば恐れるまでもないことだ。
ナンナーへの罰かどうかはさておき、人々を救うために神様があえてこの力をここまで継承させたなら、出し惜しみもまた神の意に反する気がしている。
神罰は僕にだって起こりうるんだから。
「おはようウーリ」
「お、おはよう」テレ
「昨日までと何が変わったというわけではないのだが…やはりいいものだな」
「何が…?」
「君が私のものであると実感が湧いたよ」
「今までなかったの?」
「君には〝ウル様”が居るからね。だがこればかりは私だけの特権だ」
「あ、あ…そう…」カァァ「と、ところで今日は?」
「一日中謁見の間だ」
「王様は大変だね」
「健やかな国のためだ。なに、私には〝癒しの神子”が居る。疲れたら癒してもらうさ」
王子でなく王様となったオスビーは今日も朝から忙しい。
何しろ貴族たちは王との謁見をのぞんでいる。
特に遠方の当主は謁見が済み次第急いで自領に戻らなければ、場所によっては雪が降りだしてしまう。
早く帰してあげるにはオスビーががんばるしかない。
コンコン
「陛下、朝食をお持ちしました」
「ありがとうベン」
朝食を運ぶベンとその後ろに居るのがエド。彼は毎朝ここで給仕をする。
僕とオスビーは基本、朝食を私室でとることにしている。
夕食は、いまでは大臣や官吏となった貴公子の誰かと同席しているが、これは有益なお話をするためだね。
「ウーリ、身体のほうはその…大丈夫だろうか」
「それがね…あの光を浴びたせいかすこぶる調子良い…」
「…実は私もだ。この二日間の疲れが全て消え失せた」
やっぱりあれは生命力吸収に関わる何かの光。多分古の神殿都市で罪人から生命力を奪ったというバルデルス神のあの力…
「考えたのだがウーリ」
「何?」
「戴冠式で私を包んだという神の光だが…、恐らく私にその奇跡を履行させるため神が力を貸し与えて下さったのだろう」
かもしれない。
エドの考えたその方法は確かに良い線いってたと思う。
けど、再生の力が神の奇跡であるのなら、崩壊、この場合でいう不要な生命(不要って言うな!)を僕に吸収させる力もまた神の奇跡であるはずだろう。
僕は再生の神子であって自力吸収なんか出来っこない。だから神様はその役目をオスビーに与えたたもうた。
「僕の夫となったオスビーに?それとも君主の血を引くサンクトリウムの王に?」
「戴冠式典で起きた現象であれば君主の血筋に…なのだろう」
そういうことか。
「あ…」
「どうしたウーリ」
「神様は最初からこの救済を用意してたのかも…って思って」
「どういうことだ?」
思ってたんだよね…。慈悲の神様にしちゃナンナーには厳しすぎるんじゃないかって。だって罰にしても千年以上ナンナーの家系は苦しんできたんだよ?
恐らく〝奇跡の神子”といいう存在が生まれた当初、中には「死にたくない」と逃げ出した人だって居たんだろう。
そうしていつしか奇跡を発現した古の神子たちは〝保護”と〝管理”の名のもとに王家と教会に囲い込まれた。
彼女たちを真っ白に育てること。その是非はともかくナンナー家にとってあれはある種の慈悲だったんだろう。それは想像つくけど…
「きっと過去の神子たちがむやみに神聖視されず、普通に生きて恋もして結婚もして夫婦の営みもしてたら…」
ううん、それだけではきっとだめで…古の君主の血を引く王家が道を踏み外さず神の使いと手を携え、その奇跡を私欲じゃなく国のため民のために使っていれば…
「…神子を利用するのでなく愛すればよかったのだな。そうすれば神子は早世せずとも済んだのだろう」
知らなかったこととはいえ…その結果がこれだ。
「アルトゥール…、馬鹿な男だ。彼は全てを正道へと導く貴重な機会を得ていたというのに…」
「手遅れだよ。あんな顔だけのバカ、ウル様には似合わない」
「前世軸のウルリッヒがアルトゥールを求めたことこそが神による最後の試験だったのかも知れないな」
「なるほどね」
ウル様の初恋さえ神の采配…そう思えば少しだけ腑に落ちた。
部屋を出る前、オスビーは最後にこうも言った。
神が今全てを正しき道へと導いたのには王家の再生以外にも理由があるのかも知れないって。
再生された王家。再生された神子。再生された神殿都市。
まるでピースがハマるようにこの結果に導かれた僕とオスビー。
もし彼が言うようそこにもし理由があると言うのなら…それはいったいどんな理由なんだろう。これから何が起きるんだろう。
それでも二人でいればきっとなんだって乗り越えられる。だから不安なんて少しも感じない。
さて、前夜祭を含め狂乱の三日間が過ぎ平常に戻ったサンクトリウム。神殿部には未だ何人もの貴人が滞在している。
この神殿部は広い。
プロピュライアを入ってすぐのところに三つの神殿がある。
一つは屋外神殿。海に面した壁のない神殿だ。これは主に開放的な会議、決起集会なんかに使用される。立食晩餐会の主たる会場はここだった。
二つ目が一番小さな神殿。ここは教会がわりみたいなもので、神殿部に住む彼らの日常的な礼拝などはここで行われる。ほら、聖神殿はデカすぎるから…
三つめがあの巨大なバルデルス神が鎮座する聖神殿ね。ここは公式行事に使用されるもので普段は聖職者と王族以外立ち入り禁止だ。
それら神殿群の両横には大小様々な建物がある。
今では帰る場所を得た貴公子たちが、このサンクトリウムでの寮にしている『貴公子の館』。これ、過去は『神子の館』だったところね。
そして調薬棟。ここは救護棟でもある。常駐するのはウル様とエド。時々僕。ここでは常に奇跡の予防薬を作り続けている。需要が途切れることはない。東はともかく、西の地において予防は常に必要なのだから。
それらの建物は傷みの少なかったものから順に修繕され、謁見を含めた政務を行うための場所は、神殿とも僕の住む館とも別で二つほどの建物が執務塔として当てられている。
オスビーはこれらを移動しながら一日過ごすので、この神殿部に居れば来賓の彼らであってもわりと遭遇率は高い。
もっとも気軽に声をかけていいわけではないけど。
多分彼らは神子ともお近づきになりたいのだろう。時折感じる期待に満ちた視線。
生存の道が確率した現在、必要に応じ癒しを与えることは全然かまわない。が、僕は神官長、大司教とも話し合い、今後の癒しについて基準を明確にするつもりだ。
神への敬虔な態度は大前提として…
ひとつ、国への貢献度。これは財力、人力、知力、どんな形でもかまわない。早い話が奇跡を望むなら役に立て、ってことだ。
ふたつめ、本人の人格。
武力に長け財があってもフォルスト侯爵みたいなのは…ねえ?
僕とオスビーの国にはいらないかな?
だから、神の救いが欲しければ人の道を外れるな、ってこと。
何も聖人君子でいろと言っているわけではない。
当たり前の倫理観と当たり前の道徳観があれば恐れるまでもないことだ。
ナンナーへの罰かどうかはさておき、人々を救うために神様があえてこの力をここまで継承させたなら、出し惜しみもまた神の意に反する気がしている。
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