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剣試合
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大劇場観覧席の中腹には一際装飾の施された、ちょっとだけ他とは区別された見晴らしの良い一角がある。
これは何もオスビーのために設えたのではなくもともとあったものだ。
つまり古の君主が作らせたものだろう。
近衛に囲まれたオスビーと辺境伯が着席する。
その隣に僕がいて、同じ一角内に従者であるエドとウル様もいる。
僕とウル様だけなら一般席でも気にしないんどけどね。今日は公式行事だから。特別ね。
「始まりましたよ神子様」
「オスヴァルトは勝者に褒美を出すんですって。僕も一番見ごたえのある試合を見せてくれた剣士にこれを差し上げますね」
「おお!これはこれは…、彼らも喜ぶに違いない」
オスビーが褒美に出したのは合理的に報奨金。
そして僕が出したのは〝癒しの石”だ。
これは…別にどうという事もない、僕が聖神殿で癒しを込めたアメシストの欠片。
継続して作り続けられる予防薬、その原料であるアメシストとは、ウル様の〝癒し”による再生の力、その漏れ出たもの密かに吸収していた特別なアメシストである。
いずれ無くなる王城神殿から持ち出したアメシスト。枯渇に備え、僕は新たに集めたアメシストに毎朝〝癒しの祈り”を捧げている。神子たる僕の今一番大きな仕事といっても過言ではない。
オスビーはいつかそれが万能薬になればいいと考えているようだが、なんでも再生の力に頼りすぎると医学は発展しない。
僕は断固反対である。それを意見すると彼は「そうすれば君を独り占めできると思ったまでだ」と青臭い若造のようなことを言ったが(テレテレ)よく考えたら若造だった。
さて、それはさておきウル様は怖がりながらも初めて観る剣士の手合わせに観いっている。
「楽しんでおられますか神子様」
「ええとっても。そうだ!辺境伯様、僕の世話係から質問しても?」
「なんなりと」
前世軸のウル様は癒しに訪れた裕福な田舎領主たちから見知らぬ遠い土地の話などをよくねだっていた。
あの海の漢、フランケン男爵なんかもその一人ね。
ウル様は外の世界を知りたかったのだろうが、そのウル様ならいろいろ聞きたがるような気がしたのだ。
「あの…北の辺境は皇国からこの国を護っているんですよね…?」
「ああその通りだ」
「皇国の人ってどんな人ですか?僕たちと変わりませんか?」
「変わらぬ。と言いたいところだが少々違って見えるな」
返ってきたのは予想外の答え。
なんでも彼らはこの国の人よりも色素が濃く、肌は茶褐色で髪も赤茶けているらしい。
何より全員体格がひとまわり大きく、その巨体はひどく威圧感を感じるという。
「そうなんですね…」ゴク…
「南の争いとは一線を画す。皇国の彼らとは文化、思想、全てが違う。異なる神を崇めるとは往々にしてこのような争いが起こるものだ」
南の争い…、とはフォルスト侯が護っていた南国境向こうの小さな国とのことだ。
あの国はバルデルス神と近しい神を崇めている。
なんでもバルデルス神の兄妹神とかいう話で、だから多少の違いあれど、わりと似た文化の国だと聞いている。
けれど皇国はバルデルスのバにもかすらないらしい。
「そんな人たちと戦っているんですね…怖くないですか?」
「そのために日々腕を磨いているのだよ。なあに、我らには数の利がある」
辺境伯曰く、皇国軍は兵数がそれほど多くはないらしい。
だからこそ不利を悟ると一旦退き、年月を置いて隊を整え再度攻めて来るのだとか。
「民の数が少ないんですか?」
「いいえウルリッヒ様、そうでなく…なんでも老年を迎えず亡くなる者が多いと聞いております。だからこそ彼ら皇国の民は多く子を持とうとするのだとか」
僕は長い動物愛護の中で気付いていたが、生き物とはその種族ごとによる寿命の長短はあれど、同一種族間であれば、基本的に大きな身体を持つ方が寿命が短い。
難しいことはわからないが、大きな身体とはそれだけ維持が大変なんじゃないかな?と勝手に考えている。
「そういえばフォルスト侯も大柄でしたよね?あれくらいですか?」
「いえもっと…そういえばフォルスト侯爵も赤茶けた髪をしている。まさにあのような体貌ですよ」
「へー、そうなんだ…」
フォルスト候…、軍事施設とも言えるあの牢獄塔で元気にやってるだろうか…バルデルス聖典でも差し入れてやろうか。発狂するだろうけど。
ワクワク「辺境伯様はお聞きになりましたか?ウルリッヒ様がフォルスト侯をやりこめたお話!勇敢ですよね!」
おおーっと!ここでウル様が僕の武勇伝をまるで自分のことのように語り始めた!ウル様!あの劇はかなり脚色されてるから!
「ははは、従者殿にとっては自慢の主なのだな。可愛いことだ」
いやもうお恥ずかしい…
けどこれは僕を自慢に…というよりは、まるで自分の武勇伝のように感じているのだろう。
事実この身体はもともとウル様のもので、ウル様は前世軸でエミル、つまり僕のことを「自分に出来ないことをしてくれる分身」とよく言っていた。だから僕がすることはいつだってウル様の手柄なのだ。
「おしゃべりは中止だ。ウーリ観るがいい。褒美は彼で決まりだな」
カキィーン…
天高く舞い上がる一本の剣。その前でこちらに向かって礼をとる彼こそが…この試合の勝者、騎士クリストフ。西に駐在予定の精鋭その人である。
ようこそ西辺境へ!
これは何もオスビーのために設えたのではなくもともとあったものだ。
つまり古の君主が作らせたものだろう。
近衛に囲まれたオスビーと辺境伯が着席する。
その隣に僕がいて、同じ一角内に従者であるエドとウル様もいる。
僕とウル様だけなら一般席でも気にしないんどけどね。今日は公式行事だから。特別ね。
「始まりましたよ神子様」
「オスヴァルトは勝者に褒美を出すんですって。僕も一番見ごたえのある試合を見せてくれた剣士にこれを差し上げますね」
「おお!これはこれは…、彼らも喜ぶに違いない」
オスビーが褒美に出したのは合理的に報奨金。
そして僕が出したのは〝癒しの石”だ。
これは…別にどうという事もない、僕が聖神殿で癒しを込めたアメシストの欠片。
継続して作り続けられる予防薬、その原料であるアメシストとは、ウル様の〝癒し”による再生の力、その漏れ出たもの密かに吸収していた特別なアメシストである。
いずれ無くなる王城神殿から持ち出したアメシスト。枯渇に備え、僕は新たに集めたアメシストに毎朝〝癒しの祈り”を捧げている。神子たる僕の今一番大きな仕事といっても過言ではない。
オスビーはいつかそれが万能薬になればいいと考えているようだが、なんでも再生の力に頼りすぎると医学は発展しない。
僕は断固反対である。それを意見すると彼は「そうすれば君を独り占めできると思ったまでだ」と青臭い若造のようなことを言ったが(テレテレ)よく考えたら若造だった。
さて、それはさておきウル様は怖がりながらも初めて観る剣士の手合わせに観いっている。
「楽しんでおられますか神子様」
「ええとっても。そうだ!辺境伯様、僕の世話係から質問しても?」
「なんなりと」
前世軸のウル様は癒しに訪れた裕福な田舎領主たちから見知らぬ遠い土地の話などをよくねだっていた。
あの海の漢、フランケン男爵なんかもその一人ね。
ウル様は外の世界を知りたかったのだろうが、そのウル様ならいろいろ聞きたがるような気がしたのだ。
「あの…北の辺境は皇国からこの国を護っているんですよね…?」
「ああその通りだ」
「皇国の人ってどんな人ですか?僕たちと変わりませんか?」
「変わらぬ。と言いたいところだが少々違って見えるな」
返ってきたのは予想外の答え。
なんでも彼らはこの国の人よりも色素が濃く、肌は茶褐色で髪も赤茶けているらしい。
何より全員体格がひとまわり大きく、その巨体はひどく威圧感を感じるという。
「そうなんですね…」ゴク…
「南の争いとは一線を画す。皇国の彼らとは文化、思想、全てが違う。異なる神を崇めるとは往々にしてこのような争いが起こるものだ」
南の争い…、とはフォルスト侯が護っていた南国境向こうの小さな国とのことだ。
あの国はバルデルス神と近しい神を崇めている。
なんでもバルデルス神の兄妹神とかいう話で、だから多少の違いあれど、わりと似た文化の国だと聞いている。
けれど皇国はバルデルスのバにもかすらないらしい。
「そんな人たちと戦っているんですね…怖くないですか?」
「そのために日々腕を磨いているのだよ。なあに、我らには数の利がある」
辺境伯曰く、皇国軍は兵数がそれほど多くはないらしい。
だからこそ不利を悟ると一旦退き、年月を置いて隊を整え再度攻めて来るのだとか。
「民の数が少ないんですか?」
「いいえウルリッヒ様、そうでなく…なんでも老年を迎えず亡くなる者が多いと聞いております。だからこそ彼ら皇国の民は多く子を持とうとするのだとか」
僕は長い動物愛護の中で気付いていたが、生き物とはその種族ごとによる寿命の長短はあれど、同一種族間であれば、基本的に大きな身体を持つ方が寿命が短い。
難しいことはわからないが、大きな身体とはそれだけ維持が大変なんじゃないかな?と勝手に考えている。
「そういえばフォルスト侯も大柄でしたよね?あれくらいですか?」
「いえもっと…そういえばフォルスト侯爵も赤茶けた髪をしている。まさにあのような体貌ですよ」
「へー、そうなんだ…」
フォルスト候…、軍事施設とも言えるあの牢獄塔で元気にやってるだろうか…バルデルス聖典でも差し入れてやろうか。発狂するだろうけど。
ワクワク「辺境伯様はお聞きになりましたか?ウルリッヒ様がフォルスト侯をやりこめたお話!勇敢ですよね!」
おおーっと!ここでウル様が僕の武勇伝をまるで自分のことのように語り始めた!ウル様!あの劇はかなり脚色されてるから!
「ははは、従者殿にとっては自慢の主なのだな。可愛いことだ」
いやもうお恥ずかしい…
けどこれは僕を自慢に…というよりは、まるで自分の武勇伝のように感じているのだろう。
事実この身体はもともとウル様のもので、ウル様は前世軸でエミル、つまり僕のことを「自分に出来ないことをしてくれる分身」とよく言っていた。だから僕がすることはいつだってウル様の手柄なのだ。
「おしゃべりは中止だ。ウーリ観るがいい。褒美は彼で決まりだな」
カキィーン…
天高く舞い上がる一本の剣。その前でこちらに向かって礼をとる彼こそが…この試合の勝者、騎士クリストフ。西に駐在予定の精鋭その人である。
ようこそ西辺境へ!
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