122 / 138
北国での再会
しおりを挟む
しばらくのち、皇国からは申し入れの返事がもたらされた。
この手早さを見るに、恐らくイシュトバーン侯爵と合流したか、そうでなくても何らかのやり取りがすでに可能となっているのだろう。そして聞いたに違いない。
〝癒しの神子”がもつ本物の奇跡とその力、その奇跡の根源には神バルデルスのみならず、巨神の力もわずかに含まれているという事実を。ウソだけど。
そこにはこう記されていた。
巨神像の建造とはどれくらいの規模のものをどの程度を考えているのか。子供だましのような像であれば到底受け入れられない、ということ。
重ねて交易とはどこまで開放するつもりか、交易品目に有益な鉱物が含まれないのであれば到底受け入れられない、ということ。
そして…
神子が真実巨神を起源に持つのであればそれをレスプブリカ皇帝の目の前で証明してみせよ、というもの。
うーん…この。
だけどこれは「これらに納得いけば受け入れる」とほぼ同じ意味である。
ここには北の全権を持つ辺境伯と国の全権を持つ王、オスヴァルトがいる。
そしてこの面倒な地の当主である辺境伯を支える参謀たちは皆ずば抜けて切れ者だ。
おまけに北と西の挟み撃ちによる前代未聞の侵攻とあって、北の地に関与しない東の宮廷でさえもリュティガー様の一声で援軍を寄越している。
その中にはフォルスト候に代わる新しい軍務大臣もいた。
早速彼らは話し合いを始めているがさすがに僕は門外漢だ。そこで北の地における僕のお楽しみ…
フフフフフ…
エマニエルの顔を見に行くことにした。
「ウル様一緒に行く?捕虜収容所だって」
「ううん行かない。エドと北の街を散策するって約束してるの」
「そっか。面白いものあるといいね」
「気を付けて行ってきてねウルリッヒ様」
「うん」
お分かりだろうか?
ウル様とエマニエルに面識はない。前世軸に置いて僕が徹底的に接近を避けたからだ。
ウル様はアルトゥールに自分以外の誰かが居ることはなんとなく雰囲気で察していたようだが、ウル様を操ろうと画策していたアルトゥールたちはウル様に対する外面だけは整えていた。もっともその外面の範疇に世話係の僕が居ない時点でアルトゥールのアホさ加減が知れるってもんだけど。
なので因縁を持つのは僕一人。参謀の一人をお供に北辺境の捕虜収容所へと足を運んだ。
「こ、これはウルリッヒ様!ようこそお越しくださいました!」
出迎えたのは改心し今では修道士となったエーリヒとフリッツ、元王妃の私兵二人だ。彼らにはエマニエルの監視と保護(エマニエルは妖艶だからね。一応ね)を申し付けている。
「聞いております。西に現れた皇国兵を退けたとか…」
「分かっておりましたがますます感服いたしました」
「ま、僕にかかればこんなもんかな」
「さすがウルリッヒ様」
「お見事です」
一度身も心もへし折られた(比喩でなく)彼らは、復活した今では神バルデルスというよりウルリッヒ教の信者である。ちなみにウルリッヒ教の筆頭信者が西の神官長で次点が王城神官長ね。
「エマニエルの様子は?」
「日々落ち着いて過ごしております。なかなかの模範囚なのですよ」
「最近では手慰みに編み物などを嗜んでいるようですね。寒いからとひざ掛けを自作しておりました」
「エマニエルは存外適応しておるよ。此度の戦いでも彼の策でいくつかの罠を仕掛けた。大した頭脳だな、あれは。」
「エマニエルの処世術は美貌よりもあの頭脳ですからね」
参謀の一人、北辺境東部のキルステン男爵は言う。毛糸は成果の褒美として渡したものだと。
エマニエルは媚びへつらっているように見えて実はプライドが高い。美貌で権力者にすり寄る…なんてしないんじゃないだろうか。え?アルトゥール?あれはアルトゥールが言い寄ってるから。
エマニエルはいつだって、誰かを意のままに動かし一人ほくそ笑むタイプだ。
顔が良く権力を持ち、なのに扱いやすい単純バカのアルトゥールがエマニエルには可愛くて仕方なかったのだろう。
ふっ…、それもまた愛のカタチ…か。
さて、どうでもいい戯言はここまでにして、ここ北の捕虜収容所だが、雪の多いこの北辺境では積雪に耐えうる石造りが構造の基本だ。
屋敷等々は急こう配の三角屋根が多く取り入れられている。平らに近い屋根が多い西の建物とのそこが大きな違いだ。
けれど熱効率を考えると石造りはかなり冷えるのだという。
西、特に神殿都市では真夏の熱を遮断するため石と白い漆喰で仕上げられた建物が多く残されていた。そのため修繕増築された今も同じ工法が多く採用されている。
だけどこの北では一見石造りに見えて内壁には木材が取り入れられている。
北で伐採される木材とは北の風土に合わせて進化した、とても密度の濃い硬い木材が多い。これによって冷気を遮断するのだとか。
これも西との大きな違いだが、この二重構造によってここの収容所は西や東に比べてもとても頑強な造りになっている。
エマニエルがいるのもそんな建物。独居房は木材で囲まれている。
「ほんとだ…、どこもかしこも木のぬくもり…意外…」
「代々の辺境伯閣下は皆人道的なお方々であられた。たとえ捕えた敵兵とは言え無体な真似はせぬよ。ここの冬は言葉に出来ぬ寒さだ。舐めてかかれば凍死もあり得る」
マジか…コワ…
「でも夏は逆に蒸れたりしないんですか?」
「この地に西のような夏はないのだよ。君たちの言う夏でさえも涼しい。朝晩は肌寒いくらいだ」
「へー…」
参考までに西から南西は年中温暖、北は年中寒冷、そして東から中央区域は夏はほどほどに熱く冬はほどほどに寒い、四季仕様だ。
「さあ着いた。監視兵!私だ!神子様をお連れした。ここを開けよ!」
ギィィィィ…
渡り廊下の向こう。そこには…
久々の対面となるエマニエルの姿があった。
この手早さを見るに、恐らくイシュトバーン侯爵と合流したか、そうでなくても何らかのやり取りがすでに可能となっているのだろう。そして聞いたに違いない。
〝癒しの神子”がもつ本物の奇跡とその力、その奇跡の根源には神バルデルスのみならず、巨神の力もわずかに含まれているという事実を。ウソだけど。
そこにはこう記されていた。
巨神像の建造とはどれくらいの規模のものをどの程度を考えているのか。子供だましのような像であれば到底受け入れられない、ということ。
重ねて交易とはどこまで開放するつもりか、交易品目に有益な鉱物が含まれないのであれば到底受け入れられない、ということ。
そして…
神子が真実巨神を起源に持つのであればそれをレスプブリカ皇帝の目の前で証明してみせよ、というもの。
うーん…この。
だけどこれは「これらに納得いけば受け入れる」とほぼ同じ意味である。
ここには北の全権を持つ辺境伯と国の全権を持つ王、オスヴァルトがいる。
そしてこの面倒な地の当主である辺境伯を支える参謀たちは皆ずば抜けて切れ者だ。
おまけに北と西の挟み撃ちによる前代未聞の侵攻とあって、北の地に関与しない東の宮廷でさえもリュティガー様の一声で援軍を寄越している。
その中にはフォルスト候に代わる新しい軍務大臣もいた。
早速彼らは話し合いを始めているがさすがに僕は門外漢だ。そこで北の地における僕のお楽しみ…
フフフフフ…
エマニエルの顔を見に行くことにした。
「ウル様一緒に行く?捕虜収容所だって」
「ううん行かない。エドと北の街を散策するって約束してるの」
「そっか。面白いものあるといいね」
「気を付けて行ってきてねウルリッヒ様」
「うん」
お分かりだろうか?
ウル様とエマニエルに面識はない。前世軸に置いて僕が徹底的に接近を避けたからだ。
ウル様はアルトゥールに自分以外の誰かが居ることはなんとなく雰囲気で察していたようだが、ウル様を操ろうと画策していたアルトゥールたちはウル様に対する外面だけは整えていた。もっともその外面の範疇に世話係の僕が居ない時点でアルトゥールのアホさ加減が知れるってもんだけど。
なので因縁を持つのは僕一人。参謀の一人をお供に北辺境の捕虜収容所へと足を運んだ。
「こ、これはウルリッヒ様!ようこそお越しくださいました!」
出迎えたのは改心し今では修道士となったエーリヒとフリッツ、元王妃の私兵二人だ。彼らにはエマニエルの監視と保護(エマニエルは妖艶だからね。一応ね)を申し付けている。
「聞いております。西に現れた皇国兵を退けたとか…」
「分かっておりましたがますます感服いたしました」
「ま、僕にかかればこんなもんかな」
「さすがウルリッヒ様」
「お見事です」
一度身も心もへし折られた(比喩でなく)彼らは、復活した今では神バルデルスというよりウルリッヒ教の信者である。ちなみにウルリッヒ教の筆頭信者が西の神官長で次点が王城神官長ね。
「エマニエルの様子は?」
「日々落ち着いて過ごしております。なかなかの模範囚なのですよ」
「最近では手慰みに編み物などを嗜んでいるようですね。寒いからとひざ掛けを自作しておりました」
「エマニエルは存外適応しておるよ。此度の戦いでも彼の策でいくつかの罠を仕掛けた。大した頭脳だな、あれは。」
「エマニエルの処世術は美貌よりもあの頭脳ですからね」
参謀の一人、北辺境東部のキルステン男爵は言う。毛糸は成果の褒美として渡したものだと。
エマニエルは媚びへつらっているように見えて実はプライドが高い。美貌で権力者にすり寄る…なんてしないんじゃないだろうか。え?アルトゥール?あれはアルトゥールが言い寄ってるから。
エマニエルはいつだって、誰かを意のままに動かし一人ほくそ笑むタイプだ。
顔が良く権力を持ち、なのに扱いやすい単純バカのアルトゥールがエマニエルには可愛くて仕方なかったのだろう。
ふっ…、それもまた愛のカタチ…か。
さて、どうでもいい戯言はここまでにして、ここ北の捕虜収容所だが、雪の多いこの北辺境では積雪に耐えうる石造りが構造の基本だ。
屋敷等々は急こう配の三角屋根が多く取り入れられている。平らに近い屋根が多い西の建物とのそこが大きな違いだ。
けれど熱効率を考えると石造りはかなり冷えるのだという。
西、特に神殿都市では真夏の熱を遮断するため石と白い漆喰で仕上げられた建物が多く残されていた。そのため修繕増築された今も同じ工法が多く採用されている。
だけどこの北では一見石造りに見えて内壁には木材が取り入れられている。
北で伐採される木材とは北の風土に合わせて進化した、とても密度の濃い硬い木材が多い。これによって冷気を遮断するのだとか。
これも西との大きな違いだが、この二重構造によってここの収容所は西や東に比べてもとても頑強な造りになっている。
エマニエルがいるのもそんな建物。独居房は木材で囲まれている。
「ほんとだ…、どこもかしこも木のぬくもり…意外…」
「代々の辺境伯閣下は皆人道的なお方々であられた。たとえ捕えた敵兵とは言え無体な真似はせぬよ。ここの冬は言葉に出来ぬ寒さだ。舐めてかかれば凍死もあり得る」
マジか…コワ…
「でも夏は逆に蒸れたりしないんですか?」
「この地に西のような夏はないのだよ。君たちの言う夏でさえも涼しい。朝晩は肌寒いくらいだ」
「へー…」
参考までに西から南西は年中温暖、北は年中寒冷、そして東から中央区域は夏はほどほどに熱く冬はほどほどに寒い、四季仕様だ。
「さあ着いた。監視兵!私だ!神子様をお連れした。ここを開けよ!」
ギィィィィ…
渡り廊下の向こう。そこには…
久々の対面となるエマニエルの姿があった。
396
あなたにおすすめの小説
その首輪は、弟の牙でしか外せない。
ゆずまめ鯉
BL
養子ゆえに、王位継承権を持たないオメガで長男のレイン(24)は、国家騎士団として秘密裏に働き、ただ義弟たちを守るためだけに生きてきた。
第一継承権を持つアルファで次男のリオール(19)は、そんな兄に「ごく潰し」と陰口を叩く連中を許せなかった。自分を犠牲にしてまで守る価値はないと思っていた。なにかと怪我の多い国家騎士団を辞めさせたかった。
初めて訪れた発情期のとき。約束をすっぽかされたリオールが不審に思い、兄の部屋へ行くと、国家騎士団の同僚──グウェンソード(28)に押し倒されるところを目撃して激高する。
「今すぐ部屋から出ろ!」
独占欲をあらわにしたリオールは、グウェンソードを部屋から追い出し、兄であるレインを欲望のままに抱いた。
翌朝、差し出されたのは特注の首輪──外せるのはリオールのみ。
「俺以外に触らせるな」
そう囁かれたレインは、何年も首輪と弟の執着に縛られ続けてきた。
弟には婚約者がいるのに、こんな関係を続けてもいいのか。
本当にこのままでもいいのか。
ひたすら執着して独占したがる弟と、罪悪感に苛まれる兄。
その首輪は、いつか弟の牙で血に染まるのか──。
どうにかしてレインを落としたいリオールと、弟との関係に悩むレインのオメガバースです。
リオール・グランケット(19)×レイン・グランケット(24)
※この作品は2015年頃に本文を書き、2017年頃にオメガバースに改稿、さらに2026年に手直しした作品になります。読みにくいかもしれません。ご了承ください。
三人称ですが攻めだったり受けだったり視点がよくかわります。攻め視点多めです。
魔力ゼロのポーション屋手伝い
書鈴 夏(ショベルカー)
BL
15歳で測定する魔力の量によって、人生の大部分が左右されてしまう世界。
そんな世界で、運命の日を迎えたひとりの平凡な少年──リクは、抱いた淡い期待を大きく裏切られる。魔力が前代未聞のゼロと言い渡されたのだ。
深い絶望とともに頭を抱えていたとき、森でポーション屋を営んでいるというくたびれた男が声をかける。路頭に迷っていたリクは、店で手伝いをしてはどうかという彼の誘いを受けることにする。
捨てかけた夢を拾ってもらった少年と、拾った男。ふたりが絆を深めていく、ポーション屋でのお話です。
一人称おじさんくたびれ男性×魔力ゼロ以外平凡青年のBLです。
カクヨムにも載せています。(完結済み)
カランコエの咲く所で
mahiro
BL
先生から大事な一人息子を託されたイブは、何故出来損ないの俺に大切な子供を託したのかと考える。
しかし、考えたところで答えが出るわけがなく、兎に角子供を連れて逃げることにした。
次の瞬間、背中に衝撃を受けそのまま亡くなってしまう。
それから、五年が経過しまたこの地に生まれ変わることができた。
だが、生まれ変わってすぐに森の中に捨てられてしまった。
そんなとき、たまたま通りかかった人物があの時最後まで守ることの出来なかった子供だったのだ。
私だけが愛して1度も笑ったことの無い夫が、死んだはずの息子を連れてもどってきた
まつめ
恋愛
夫はただの一度も私に笑いかけたことは無く、穏やかに夫婦の時間をもったこともない。魔法騎士団の、騎士団長を務める彼は、23年間の結婚生活のほとんどを戦地で過ごしている。22歳の息子の戦死の知らせが届く。けれど夫は元気な息子を連れて私の元に戻って来てくれた。
塩対応の同室αが実は俺の番を狙っていた
雪兎
BL
あらすじ
全寮制の名門学園に入学したΩの俺は、入寮初日から最悪の同室相手に当たった。
相手は学年でも有名な優等生α。
成績優秀、運動もできる、顔もいい。なのに——
めちゃくちゃ塩対応。
挨拶しても「……ああ」。
話しかけても「別に」。
距離も近づけないし、なぜか妙に警戒されている気がする。
(俺、そんなに嫌われてる……?)
同室なのに会話は最低限。
むしろ避けられている気さえある。
けれどある日、発情期トラブルで倒れた俺を助けてくれたのは、
その塩対応αだった。
しかも普段とは違い、必死な顔で言われる。
「……他のαに近づくな」
「お前は俺の……」
そこで言葉を飲み込む彼。
それ以来、少しずつ態度が変わり始める。
距離は相変わらず近くない。
口数も少ない。
だけど――
他のαが近づくと、さりげなく間に入る。
発情期が近いと察すると、さりげなく世話を焼く。
そして時々、独占欲を隠しきれない視線。
実は彼はずっと前から知っていた。
俺が、
自分の運命の番かもしれないΩだということを。
だからこそ距離を取っていた。
触れたら、もう止まれなくなるから。
だけど同室生活の中で、
少しずつ、確実に距離は変わっていく。
塩対応の裏に隠されていたのは――
重すぎるほどの独占欲だった。
秘匿された第十王子は悪態をつく
なこ
BL
ユーリアス帝国には十人の王子が存在する。
第一、第二、第三と王子が産まれるたびに国は湧いたが、第五、六と続くにつれ存在感は薄れ、第十までくるとその興味関心を得られることはほとんどなくなっていた。
第十王子の姿を知る者はほとんどいない。
後宮の奥深く、ひっそりと囲われていることを知る者はほんの一握り。
秘匿された第十王子のノア。黒髪、薄紫色の瞳、いわゆる綺麗可愛(きれかわ)。
ノアの護衛ユリウス。黒みかがった茶色の短髪、寡黙で堅物。塩顔。
少しずつユリウスへ想いを募らせるノアと、頑なにそれを否定するユリウス。
ノアが秘匿される理由。
十人の妃。
ユリウスを知る渡り人のマホ。
二人が想いを通じ合わせるまでの、長い話しです。
番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か
雪兎
BL
第二性が存在する世界。
Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。
しかし入学初日、彼の前に現れたのは――
幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。
成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。
だが湊だけが知っている。
彼が異常なほど執着深いことを。
「大丈夫、全部管理してあげる」
「君が困らないようにしてるだけだよ」
座席、時間割、交友関係、体調管理。
いつの間にか整えられていく環境。
逃げ場のない距離。
番を拒みたいΩと、手放す気のないα。
これは保護か、それとも束縛か。
閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。
『魔力ゼロの欠陥品』と蔑まれた伯爵令嬢、卒業パーティーで婚約破棄された瞬間に古代魔法が覚醒する ~虐げられ続けた三年間、倍返しでは足りない~
スカッと文庫
恋愛
「貴様のような無能、我が国の王妃には相応しくない。婚約を破棄し、学園から追放する!」
王立魔道学園の卒業パーティー。きらびやかなシャンデリアの下、王太子エドワードの声が冷酷に響いた。彼の隣には、愛くるしい表情で私を嵌めた男爵令嬢、ミナが勝ち誇ったように寄り添っている。
伯爵令嬢のリリアーヌは、入学以来三年間、「魔力ゼロの欠陥品」として学園中の嘲笑を浴び続けてきた。
婚約者であるエドワードからは一度も顧みられず、同級生からはゴミのように扱われ、ミナの自作自演による「いじめ」の濡れ衣まで着せられ……。
それでも、父との「力を隠せ」という約束を守るため、泥を啜るような屈辱に耐え抜いてきた。
――だが、国からも学園からも捨てられた今、もうその約束を守る必要はない。
「さようなら、皆様。……私が消えた後、この国がどうなろうと知ったことではありませんわ」
リリアーヌが身につけていた「魔力封印の首飾り」を自ら引き千切った瞬間、会場は漆黒の魔力に包まれた。
彼女は無能などではない。失われた「古代魔法」をその身に宿す、真の魔道の主だったのだ。
絶望する王太子たちを余目に、隣国の伝説の魔術師アルベルトに拾われたリリアーヌ。
彼女の、残酷で、甘美な復讐劇が今、幕を開ける――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる