やり直しの神子は長生きしたい

kozzy

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事後処理の旅

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このアードラスヘルムは現在、東西で異なる統治組織をもつ国である。

豊かな資源、有力な貴族が東に集中している以上、王城を無視すれば内政が荒れる事は容易に想像がつく。
そのためリュティガー様の北入りを待って、皇国レスプブリカとアードラスヘルム国の無期不可侵条約は凍結された。

これによってアードラスヘルムには東と南、中央の三ヵ所に巨神トプラーク(へー、そんな名前だったんだぁ)の像を置くことになる。

北と西に置かないのは、実際戦火を交えた地の民は感情的に受け入れ難いだろう、という配慮だ。

皇国は初め渋っていたが「それ以上は時間をかけて追々」と言う僕の優しい説得に快く応じてくれたよ?

そしてこれを機に両国では正式に国同士の交易が始まることになる。

ここまでの摂政で互いに譲れない線は折り合いをつけているが、それ以外の細かな、…例えば品目の制限、年間の輸出量上限、税率などをつめるのはこれからとなる。

それに伴い北の辺境は軍事拠点から貿易拠点へと実務を変え、皇国の民が出入りを許されるのはここまでとなる。(今のところはね)
北の民は当面不安だろうが、北の参謀(つまり辺境伯の下にいる領地貴族たちね)は皆切れ者揃いだ。何も心配していない。

それに加えて損得の絡むことは囚われの知将、エマニエルの最も得意な分野。ここぞとばかりにその才能を役立てるんじゃないだろうか。
彼とは色々あったが…正直言うといつか自由になった彼とケンカ出来る日が楽しみだったりする。


さて、僕たちはこれから東の王城に立ち寄り、ソルトロード経由で帰還する予定だ。

「リュティガー様、あちらに着いたら前王の元側妃、第二妃と第三妃をお集めください」
「構わぬが…なにか用向きでも?」
「ええまあ」

第二妃は現在生家へと戻っている。
その反対に第三妃は今も王城にいる。

「第三側妃様は生家に戻られないんですか?王城住まいだと不自由もあるでしょうに」
「だが王族には何にも代えがたい権威があるのでね」
「ああ。女公爵位のことですね」

本来王の居住地である王城からの外出は一王族であっても何かと手続きが多い。
場合によっては却下される。
当然市井で観劇とか無理だし、王城で行われる夜会以外、出席も簡単ではない。

諸々の理由から、王城に住む限りどれほど立場が変われど王城の規則が緩むことはない。
王が亡くなられているこの場合、生家に帰るのが自由への近道といえる。

その代わり王城をでて生家に戻ると、未亡人となった元妃に贈られる特別な称号、『女公爵』は取り消されることになる。

『女公爵』
それは男性しか爵位を継承できないこのアードラスヘルムにおいて、唯一女性が持てる爵位である。

王を亡くした場合、側妃方には所持していた宝飾品などの財はそのまま与えられるが、正妃、つまり王の母たる王太后と違い、側妃の彼女らに将来的な保証はない。

そこで大昔考えられたのが一代位の『女公爵』

これは名前だけの名誉爵位だが公爵以下侯爵以上の権威を持ち、かつ『女公爵』にはけっして少なくはない恩給が支給される。
代わりに『女公爵』は王族としての品位を保つため依然王城に住み、一定の慈善活動や文化の啓もう活動などが民のための働きが義務付けられる。

以前届けられたブリッタ様からの手紙によると、もともと派手好きだった第二妃はしばらく王城に留まっていたものの、結局は王城を出て自由の身になり、日夜茶会や夜会に出向きチヤホヤされまくっているらしい。

前王の治世下ではいろんな問題が山盛りだったが、表向き彼は病に倒れ王朝を終えている。
よって元側妃という名前の力もそれなりに維持されている。さぞ面白おかしい日々だろう。
その流れでなんでもどこかの妻を亡くした侯爵と再婚…なんて話も出ているそうだ。

そしてリンデン伯爵家の現夫人にも似た、どこか事なかれ主義の第三妃。
こっちは生家の意向、加えて本人も今更社交界の荒波にもまれるのを嫌いそのまま王城に残ったそうだ。

といっても側妃宮を出て今はブリッタ様もいる王族の区域に居を変えている。

東の王城はとても広い。
王族の区画内には幾つもの屋敷がある。その一つ、前々王の『女公爵』が使っていた屋敷を与えられているのだとか。

自由をとるか名誉をとるか…実に悩ましい。
前者をとったのが第二妃で後者をとったのが第三妃ね。

「側妃方を集めてどうするのだい」
「とりあえず辺境伯を何とかしないと…滞在中もかなり圧かけられてたでしょ?」
フー…「ご令嬢の件だな?まったく。嫁にもださず待っているとまで言われてしまったよ。辺境伯も強引なことだ」
「それを何とか出来ないかと思って」

「ウーリ…」

オスビーは僕がヤキモチから行動していると思っているのだろう。その顔はまんざらでもなさそうだ。

…そんなわけないじゃんねぇ?違うってば!



その真偽はさておき、所変わってここは久しぶりの王城。僕たちはまたまた馬車で山岳の悪路、という苦難を乗り越え東の地に入っていた。

「せっかくだから北と東の間にある山岳路も整備しましょうよ。ねぇリュティガー様」

こんなお尻と腰にくる道中…戦争が終わったからって誰も来ないって!

「ふむ…、皇国との和平が叶ったのだ。今後は北との交流も増えよう…一考の余地はあるか」
「まったく北の地とは厄介な地形をしている。西に東に…手間も時間もかかるものだ」

そう。オスビーの言う通り北の辺境は西も東も険しい山岳路に阻まれた隔絶空間、陸の孤島と呼ばれる西より厄介な立地だ。だからこそ軍事拠点だったんだから。

待てよ…西…山岳路…あっ、そうだ!

「皇国の捕虜ってまだそのままですよね?」
「ああ。諸々調印が済むまではな」
「お願いしちゃったらどうですか?彼ら仕事早いですよ」
「だが引受けはしないだろう…」
「こう言ってください。働きしだいで寿命返してあげると神子が言ってたって」

ジト目のオスビー。なんか文句ある?

「…辺境伯に進言しておこう」

などという整備計画を立てている間に目的の人物は到着したようだ。

「オスヴァルト王陛下、リュティガー副王陛下、元第二側妃、第三側妃が参りました」
「うむ。通すが良い」

さて。何の事前情報もないぶっつけ本番だけど…どうなるか。




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