38 / 310
23 断罪からの呼び出し
アーロンからはその後これといって大きな接触は無い。
当然だろう。コンラッドをはさんだ僕とアーロンの微妙な立ち位置、それを知ってる者なら僕にアーロンを近づけないだろうし、アーロンの信奉者も僕とアーロンがかち合うのを極力回避するはずだ。
静けさが却って不安だ…。けど気にしていたら日々は過ごせない。
前世で限られた人生を送った僕は時間が有限だとよく知っている。そんなことに気をとられて一分一秒を無駄にする気はない。僕は僕の毎日を充実させなくては!
と、思った矢先…その日帰宅した僕を待っていたのは王城からの手紙…
「シャノン様、王妃殿下よりお手紙が届いております。週末のみで良いからそろそろ出仕せよと」
げっ!その中身とは言わずと知れた徴兵宣告。…引き延ばしもここが限界か。
断罪までは婚約を維持したいと考える以上これもやむなし。けどシャノンノートのおかげで準備は万端。大丈夫。僕は僕とシャノンの努力を信じる。
あの後どれほど探しても王城内の見取り図は見つからなかった。考えてみれば当然である。王城内部の詳細なんて、まかり間違って漏洩したら大変なことだ。
だからと言って毎回毎回迷宮にはまり込むわけにはいかないだろう。
そこで僕は、父親、そしてシャノンと王城に出向いていたカイル、それからニコールさんとの会話を上手く誘導しては、あの手この手で出来る限りの脳内マップをすでに完成させていた。少なくともこれでトイレを探して彷徨うことは無い。個人レッスンを受ける部屋と王妃様の部屋も位置関係は完璧だ。
コンラッドの部屋?さぁ?行く予定が無いから知らないなぁ…。
「もー!せっかく週末は出かけるつもりだったのに…」
「どちらに行く予定だったのですか?」
「リアム様のお家ハワード伯爵家に。文化祭の準備一緒にしようと思ったのに」
「それは残念でございましたね」
僕のシャノン転生における唯一のお楽しみは、失われた高校生活を取り戻すことである。
何しろ高校デビュー!と意気込んだのもつかの間、よりにもよって中学の卒業式前に倒れてしまったのだから。おかげで僕は卒業式すら出席していない。
シャノンになって最も嬉しかったのは高校デビューが出来たことだ。
なのにシャノン生来の振舞いと、僕本来の性質(オタ)が足を引っ張って、大して友達は増えていない。けど取り巻きの三人とは日々着々と仲を深めている。その三人と参加する学校行事が僕はとても楽しみだったのに…
例えば今回楽しみにしている秋の文化祭。この日学院は一般開放となる。と言っても観覧は貴族位に限られるが、その貴族家からの寄付でたくさんの出店が出て賑わう中、学生たちはこの日のために取り組んだ課題を、講義室に展示したり、壇上で発表したりと(あ、これアーロンの衣装を汚すやつね)とにかくこれは一年で一番大きなイベントなのだ。
「出仕は週末だけで良いとの事ですから大丈夫でございますよ。良かったですね」
「うん…」
よく考えると、コンラッドのやらかしによる、王家側の罪悪感を利用した断固出仕拒否!が無ければシャノンはそれらのイベントにも参加できなかったんだな…。イベントは準備から参加してこそ楽しいのに、可哀想…。
シャノンが文化祭に参加したかったかどうかはさておき、彼が子供の頃からあらゆる楽しみを我慢してきたのは間違いない。
積み上げられたノートの山は、シャノンの積み上げた努力の山だ。
僕は断罪されここを出るその寸前まで、シャノンの名誉と尊厳を決して手放しはしない。
そしてやって来たのはロイヤルお茶会以来の王城…の正面玄関。
「やあシャノン。待っていたよ」
「…………コンラッド……様」
驚きの余り敬称を忘れるところだった。危ない危ない。
それにしても出迎え…だと?何を今更…、あっ!背後に王妃様が…。それは逃げられないわー。ご愁傷様。
「ようやくお出ましねシャノン。学院でも元気に励んでいるようだけど…加減はいかがかしら」
「学友の皆さまが心配りをしてくださるおかげでかなり良くなりました」
「そう良かった。今日はダンスのご教授にブロア前伯爵夫人にいらしていただいたの。相手はコンラッドにつとめさせるわ。じっくり友好を深めて頂戴」
「……お気遣いいただきどうも…」
「行こう、シャノン」
王妃様には小さな親切大きなお世話という格言を教えてやりたい。
…それもよりによってダンスか…。せっかく完徹して『ルテティア王国史、王家の紋章』を読み返してきたのに。
ちぇ、せめてアレイスターがいれば…
「探してもアレイスターは居ない。彼は呼ばれない限り第三側妃の後宮から出てこない。先日の茶会は特別だ。知っているだろうシャノン」
あー…、だからノベルの王城シーンでさえ出てこなかったのか…。
シャノンノート、王城の仕組み・規則の章で読んだ記述では、後宮とは王様の奥さんたちが住む…本館と通路でつながる別館のことである。
これは妃一人につき一棟ずつ与えられ(敷地内同居…的な?)一番手前の一番デカいのが王妃の宮で、ここは王の公私を担う本宮殿と繋がっている。
そこから第一妃、第二妃、第三妃、と奥まっていくのだが、ひとつの宮がそれなりの広さを持つ豪華庭付き宮殿。一番奥に居るアレイスターと第三妃が視界に入ることはほとんど無い。
後宮には女性と未成年王子が住むと書いてあったが、ここで言う未成年王子とは幼児を指し、本来なら7歳ぐらいから王子は本宮殿に入るのが普通らしい。7歳のトレヴァー君だってここ住まいだ。
なのに未だ第三妃の後宮にいる事自体が、アレイスターの立場を物語っている。
あ、蛇足だけど、ルテティア王は女性しか娶らないのかって?いーや、そうじゃない。あの王様は地方に2人ほど愛人(♂)を囲っているらしい…。男の愛人は隠し子の心配がないし気楽なんだろう。
合計6人…肉食系だな…。
当然だろう。コンラッドをはさんだ僕とアーロンの微妙な立ち位置、それを知ってる者なら僕にアーロンを近づけないだろうし、アーロンの信奉者も僕とアーロンがかち合うのを極力回避するはずだ。
静けさが却って不安だ…。けど気にしていたら日々は過ごせない。
前世で限られた人生を送った僕は時間が有限だとよく知っている。そんなことに気をとられて一分一秒を無駄にする気はない。僕は僕の毎日を充実させなくては!
と、思った矢先…その日帰宅した僕を待っていたのは王城からの手紙…
「シャノン様、王妃殿下よりお手紙が届いております。週末のみで良いからそろそろ出仕せよと」
げっ!その中身とは言わずと知れた徴兵宣告。…引き延ばしもここが限界か。
断罪までは婚約を維持したいと考える以上これもやむなし。けどシャノンノートのおかげで準備は万端。大丈夫。僕は僕とシャノンの努力を信じる。
あの後どれほど探しても王城内の見取り図は見つからなかった。考えてみれば当然である。王城内部の詳細なんて、まかり間違って漏洩したら大変なことだ。
だからと言って毎回毎回迷宮にはまり込むわけにはいかないだろう。
そこで僕は、父親、そしてシャノンと王城に出向いていたカイル、それからニコールさんとの会話を上手く誘導しては、あの手この手で出来る限りの脳内マップをすでに完成させていた。少なくともこれでトイレを探して彷徨うことは無い。個人レッスンを受ける部屋と王妃様の部屋も位置関係は完璧だ。
コンラッドの部屋?さぁ?行く予定が無いから知らないなぁ…。
「もー!せっかく週末は出かけるつもりだったのに…」
「どちらに行く予定だったのですか?」
「リアム様のお家ハワード伯爵家に。文化祭の準備一緒にしようと思ったのに」
「それは残念でございましたね」
僕のシャノン転生における唯一のお楽しみは、失われた高校生活を取り戻すことである。
何しろ高校デビュー!と意気込んだのもつかの間、よりにもよって中学の卒業式前に倒れてしまったのだから。おかげで僕は卒業式すら出席していない。
シャノンになって最も嬉しかったのは高校デビューが出来たことだ。
なのにシャノン生来の振舞いと、僕本来の性質(オタ)が足を引っ張って、大して友達は増えていない。けど取り巻きの三人とは日々着々と仲を深めている。その三人と参加する学校行事が僕はとても楽しみだったのに…
例えば今回楽しみにしている秋の文化祭。この日学院は一般開放となる。と言っても観覧は貴族位に限られるが、その貴族家からの寄付でたくさんの出店が出て賑わう中、学生たちはこの日のために取り組んだ課題を、講義室に展示したり、壇上で発表したりと(あ、これアーロンの衣装を汚すやつね)とにかくこれは一年で一番大きなイベントなのだ。
「出仕は週末だけで良いとの事ですから大丈夫でございますよ。良かったですね」
「うん…」
よく考えると、コンラッドのやらかしによる、王家側の罪悪感を利用した断固出仕拒否!が無ければシャノンはそれらのイベントにも参加できなかったんだな…。イベントは準備から参加してこそ楽しいのに、可哀想…。
シャノンが文化祭に参加したかったかどうかはさておき、彼が子供の頃からあらゆる楽しみを我慢してきたのは間違いない。
積み上げられたノートの山は、シャノンの積み上げた努力の山だ。
僕は断罪されここを出るその寸前まで、シャノンの名誉と尊厳を決して手放しはしない。
そしてやって来たのはロイヤルお茶会以来の王城…の正面玄関。
「やあシャノン。待っていたよ」
「…………コンラッド……様」
驚きの余り敬称を忘れるところだった。危ない危ない。
それにしても出迎え…だと?何を今更…、あっ!背後に王妃様が…。それは逃げられないわー。ご愁傷様。
「ようやくお出ましねシャノン。学院でも元気に励んでいるようだけど…加減はいかがかしら」
「学友の皆さまが心配りをしてくださるおかげでかなり良くなりました」
「そう良かった。今日はダンスのご教授にブロア前伯爵夫人にいらしていただいたの。相手はコンラッドにつとめさせるわ。じっくり友好を深めて頂戴」
「……お気遣いいただきどうも…」
「行こう、シャノン」
王妃様には小さな親切大きなお世話という格言を教えてやりたい。
…それもよりによってダンスか…。せっかく完徹して『ルテティア王国史、王家の紋章』を読み返してきたのに。
ちぇ、せめてアレイスターがいれば…
「探してもアレイスターは居ない。彼は呼ばれない限り第三側妃の後宮から出てこない。先日の茶会は特別だ。知っているだろうシャノン」
あー…、だからノベルの王城シーンでさえ出てこなかったのか…。
シャノンノート、王城の仕組み・規則の章で読んだ記述では、後宮とは王様の奥さんたちが住む…本館と通路でつながる別館のことである。
これは妃一人につき一棟ずつ与えられ(敷地内同居…的な?)一番手前の一番デカいのが王妃の宮で、ここは王の公私を担う本宮殿と繋がっている。
そこから第一妃、第二妃、第三妃、と奥まっていくのだが、ひとつの宮がそれなりの広さを持つ豪華庭付き宮殿。一番奥に居るアレイスターと第三妃が視界に入ることはほとんど無い。
後宮には女性と未成年王子が住むと書いてあったが、ここで言う未成年王子とは幼児を指し、本来なら7歳ぐらいから王子は本宮殿に入るのが普通らしい。7歳のトレヴァー君だってここ住まいだ。
なのに未だ第三妃の後宮にいる事自体が、アレイスターの立場を物語っている。
あ、蛇足だけど、ルテティア王は女性しか娶らないのかって?いーや、そうじゃない。あの王様は地方に2人ほど愛人(♂)を囲っているらしい…。男の愛人は隠し子の心配がないし気楽なんだろう。
合計6人…肉食系だな…。
あなたにおすすめの小説
初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】
星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。
だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。
しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。
王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。
そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。
地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。
⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。
運命の番は僕に振り向かない
ゆうに
BL
大好きだったアルファの恋人が旅先で運命の番と出会ってしまい、泣く泣く別れた経験があるオメガの千遥。
それ以来、ずっと自分の前にも運命の番があらわれることを切に願っていた。
オメガひとりの生活は苦しく、千遥は仕方なく身体を売って稼ぐことを決心する。
ネットで知り合った相手と待ち合わせ、雑踏の中を歩いている時、千遥は自分の運命の番を見つけた。
ところが視線が確かに合ったのに運命の番は千遥を避けるように去っていく。彼の隣には美しいオメガがいた。
ベータのような平凡な見た目のオメガが主人公です。
ふんわり現代、ふんわりオメガバース、設定がふんわりしてます。
完結しました!ありがとうございました。
あなたと過ごせた日々は幸せでした
蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。
愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない
了承
BL
卒業パーティー。
皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。
青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。
皇子が目を向けた、その瞬間——。
「この瞬間だと思った。」
すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。
IFストーリーあり
誤字あれば報告お願いします!
声を失った悪役令息は北の砦で覚醒する〜無詠唱結界で最強と呼ばれ、冷酷侯爵に囲われました〜
天気
BL
完結に向けて頑張ります
5月中旬頃完結予定です
その後は、サイドストーリーをちょこちょこ投稿していこうと思ってます
もう一度君に会えたなら、愛してると言わせてくれるだろうか
まんまる
BL
王太子であるテオバルトは、婚約者の公爵家三男のリアンを蔑ろにして、男爵令嬢のミランジュと常に行動を共にしている。
そんな時、ミランジュがリアンの差し金で酷い目にあったと泣きついて来た。
テオバルトはリアンの弁解も聞かず、一方的に責めてしまう。
そしてその日の夜、テオバルトの元に訃報が届く。
大人になりきれない王太子テオバルト×無口で一途な公爵家三男リアン
ハッピーエンドかどうかは読んでからのお楽しみという事で。
テオバルドとリアンの息子の第一王子のお話を《もう一度君に会えたなら~2》として上げました。
※画像は男の子メーカーpicrewさんよりお借りしました。
公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜
上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。
体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。
両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。
せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない?
しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……?
どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに?
偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも?
……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない??
―――
病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。
※別名義で連載していた作品になります。
(名義を統合しこちらに移動することになりました)
公爵家の五男坊はあきらめない
三矢由巳
BL
ローテンエルデ王国のレームブルック公爵の妾腹の五男グスタフは公爵領で領民と交流し、気ままに日々を過ごしていた。
生母と生き別れ、父に放任されて育った彼は誰にも期待なんかしない、将来のことはあきらめていると乳兄弟のエルンストに語っていた。
冬至の祭の夜に暴漢に襲われ二人の運命は急変する。
負傷し意識のないエルンストの枕元でグスタフは叫ぶ。
「俺はおまえなしでは生きていけないんだ」
都では次の王位をめぐる政争が繰り広げられていた。
知らぬ間に巻き込まれていたことを知るグスタフ。
生き延びるため、グスタフはエルンストとともに都へ向かう。
あきらめたら待つのは死のみ。