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37 断罪と春休み
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春休みに入り、アリソン君、リアム君、そしてミーガン嬢は揃ってお祝いに駆け付けてくれた。
彼らの待つ部屋に入ると、そこにはブラッドに呼ばれたロイドまでいて、彼らは互いに顔色を伺い、場の空気はとても微妙になっていた。
「コンラッド様は一緒じゃないんですか?」
いや、別に会いたくはないけど。今までいつも三人一緒だっただけに、気になって。
「彼は地方貴族の謁見に同席しているよ。陛下が王城にとどまられる間は、なかなか自由もきかないだろう」
なるほどね。去年の一年が特別自由だったってことか。そりゃ好き勝手もするわ。
因みにここでいう謁見とは、雪解けを待って来訪している、地方の有力貴族たちによる陛下への謁見である。
プリチャードの父も王都から離れたところに侯爵領を持っているが、せいぜい一週間で行き来できる距離である。
ブラッドがもらう予定のボイル伯爵でさえ10日くらいの距離。
なのにエンブリー男爵領みたいな僻地は片道二か月…とかかかっちゃったりするのだ。
さすがに辺境伯以外の高位貴族が最僻地のわけないけど、それでも片道一か月はかかりそうな距離に領地をもつ当主もいたりする。
というわけで、この国の高位貴族が課せられる、王城での責務やそれに伴う出仕が、地方貴族は免除となっている。代りに一年に一度、こうして多くの献上品と共に参内し陛下に謁見して、報告やら陳情やらを行うのだ。
留守がちな陛下が、王都滞在中に謁見は集中するから、当分の間続くのだろう。王妃様もその奥方たちと茶会続きみたいだし…、第一王子コンラッドよ、まあがんばれ。
それにしても…
前世が日本人の僕には分かる。これはあれだ。参勤交代みたいなものだ。地方の有力貴族が余計な力を持ちすぎないために、一年に一度、大量のお金と手間を使わせる…なるほど、王家に抜かりなし…。
こういう現実を知れば知るほど、高位貴族は面倒なんだよね。そこへいくと下位貴族のエンブリーはいい。王城参りの義務すらない僻地の男爵領。山に囲まれ、隣近所の貴族さえこない。
さすが第二希望、サイコーだわー。おっと、うっかりボーっとしてた。
「シャノン様、こちら手土産ですわ。焼き菓子屋の新作ですの」
「ミーガン様…わぁ嬉しい!美味しそうな…オレンジクッキー!」
細かく刻んだオレンジピールが混ぜ込まれたそのクッキーは甘すぎず美味しい!
でも気が付いたらロイドが、今にも歯ぎしりしそうなほど悔しそうな顔でミーガン嬢を見ている。なにがそんなに気に入らな…ああ!
「えーっと…、…ロイド様も一枚召し上がります…?」
「え?あ、いえ、そ」
「はい、あーん」
「…」パクリ「…」
ほらやっぱり。一枚欲しいなら欲しいって素直に言えばいいのに。そこまで顔崩して喜ばなくても。
「…ロイド様。一枚くださいお願いします、って言えたらもう一枚あげてもいいですよ」
「一枚くださいお願いします」
そ、速攻かいっ!嫌がると思ったのに…
「…と、ところでシャノン様、今年のお誕生日の準備はもう?」
「ええもちろん。あと一か月しかありませんし」
勿体なさそうにチビチビ食べるロイドにすこしドン引きしながらアリソン君が言う。
昨年春、おそらくシャノンを激怒させたであろう誕生日の夜会。
15歳のリベンジは16歳でする。目には目を、歯には歯を。誕生日には誕生日をだ。
「今年の誕生日はさすがにコンラッド様も馬鹿な真似はされないでしょう…」
リアム君、さらりとコンラッドを馬鹿呼ばわりしたな?
「それでですね、僕は第二王子アレイスター様と第三王子トレヴァー様にも招待状を出しました」
「ええっ!」
「まさか!」
「何ですって!兄さん、さすがに…」
15の誕生日にコンラッドは嫌がらせみたいにアーロンを同伴したんだから、16の誕生日に僕が顔見知りの第二第三王子を呼んで嫌がらせして何が悪い!招待状送るだけで済ませたんだから、むしろ優しさの塊でしょうが!
「おかしいですか?今回の誕生日は我が家の弟と妹をお披露目する夜会でもあります。あのお二方も義理とは言え兄弟になるのだし…来てもらって良くないですか?」
「ですがシャノン様…」
「別にいいじゃないですか。どうせ来るか来ないかは分からないんだから…。あっ!侍女が呼びに来ましたよ。さあ弟たちに会いに行きましょう」
みんなが動揺する中、ミーガン嬢と、意外にもロイドが平然としていたのがやけに印象的だった…。
「生まれた時よりもう一回り大きくなってるの。男の子がこのプリチャードの後継者でダニー。女の子がこのプリチャードのお姫さまでシェイナね」
少し髪の生えそろって来た二人は、双子だというのに髪色が違う。
ダニーはくすみがかったオレンジ。キャメル色というか、茶に近いベージュ。そしてシェイナはお父様の因子を受け継いだプラチナカラー。
……いや待て!
今ふと思ったが、お父様のプラチナカラーは後天的。元は黒。つまりあれはプラチナと言うより天然のシルバーヘアー。ニコールさんはブラッドと同じオレンジヘアー。
……?
お父様のシルバーヘアーは妻を失ったショックで一気に進んだと聞いた。つまりニコールさんがお父様と出会った頃には既にシルバーだったはず。
それゆえにニコールさんもブラッドも気付いていない。
僕とシェイナの髪色が同じなのと、ダニーの顔がお父様にそっくり過ぎて邸内の誰も違和感を感じていないが…、黒髪のアノンになるかと期待していただけに、僕だけはそれに気づいた。気付いたが…
別にいっか。誰も困ってないし。だから何って話だし。平和だし。
双子を囲んでみんなが和やかに談笑する中、僕はそんなことを考えていた。
さて、子供部屋を出て、僕とブラッドはそれぞれの友人とそれぞれの部屋へ引き上げた。ここからは気の置けない友人とだけ過ごす時間だ。
「ミーガン様、リアム様、婚約式は…」
「儀式は身内だけですませますの。ですがささやかにティーパーティーを開きますわ。シャノン様、よければ」
「もちろんお伺いします。素敵なプレゼント探さなくっちゃ」
「それにしても…」
不思議そうな顔で言いよどむアリソン君。
「ブラッド様とロイド様は随分雰囲気が落ち着かれましたね」
「そう言えば最近はアーロンさんとご一緒のところをお見掛けしませんし…」
「その分コンラッドがベッタリだけどね」
彼らも僕がコンラッドとの割り切った関係(ウソ)に同意したと知っている。いまさらこれくらいで狼狽えない。
「殿下は目をお冷ましにならないのですわね」
いまさらそんな…必要もない。
彼らの待つ部屋に入ると、そこにはブラッドに呼ばれたロイドまでいて、彼らは互いに顔色を伺い、場の空気はとても微妙になっていた。
「コンラッド様は一緒じゃないんですか?」
いや、別に会いたくはないけど。今までいつも三人一緒だっただけに、気になって。
「彼は地方貴族の謁見に同席しているよ。陛下が王城にとどまられる間は、なかなか自由もきかないだろう」
なるほどね。去年の一年が特別自由だったってことか。そりゃ好き勝手もするわ。
因みにここでいう謁見とは、雪解けを待って来訪している、地方の有力貴族たちによる陛下への謁見である。
プリチャードの父も王都から離れたところに侯爵領を持っているが、せいぜい一週間で行き来できる距離である。
ブラッドがもらう予定のボイル伯爵でさえ10日くらいの距離。
なのにエンブリー男爵領みたいな僻地は片道二か月…とかかかっちゃったりするのだ。
さすがに辺境伯以外の高位貴族が最僻地のわけないけど、それでも片道一か月はかかりそうな距離に領地をもつ当主もいたりする。
というわけで、この国の高位貴族が課せられる、王城での責務やそれに伴う出仕が、地方貴族は免除となっている。代りに一年に一度、こうして多くの献上品と共に参内し陛下に謁見して、報告やら陳情やらを行うのだ。
留守がちな陛下が、王都滞在中に謁見は集中するから、当分の間続くのだろう。王妃様もその奥方たちと茶会続きみたいだし…、第一王子コンラッドよ、まあがんばれ。
それにしても…
前世が日本人の僕には分かる。これはあれだ。参勤交代みたいなものだ。地方の有力貴族が余計な力を持ちすぎないために、一年に一度、大量のお金と手間を使わせる…なるほど、王家に抜かりなし…。
こういう現実を知れば知るほど、高位貴族は面倒なんだよね。そこへいくと下位貴族のエンブリーはいい。王城参りの義務すらない僻地の男爵領。山に囲まれ、隣近所の貴族さえこない。
さすが第二希望、サイコーだわー。おっと、うっかりボーっとしてた。
「シャノン様、こちら手土産ですわ。焼き菓子屋の新作ですの」
「ミーガン様…わぁ嬉しい!美味しそうな…オレンジクッキー!」
細かく刻んだオレンジピールが混ぜ込まれたそのクッキーは甘すぎず美味しい!
でも気が付いたらロイドが、今にも歯ぎしりしそうなほど悔しそうな顔でミーガン嬢を見ている。なにがそんなに気に入らな…ああ!
「えーっと…、…ロイド様も一枚召し上がります…?」
「え?あ、いえ、そ」
「はい、あーん」
「…」パクリ「…」
ほらやっぱり。一枚欲しいなら欲しいって素直に言えばいいのに。そこまで顔崩して喜ばなくても。
「…ロイド様。一枚くださいお願いします、って言えたらもう一枚あげてもいいですよ」
「一枚くださいお願いします」
そ、速攻かいっ!嫌がると思ったのに…
「…と、ところでシャノン様、今年のお誕生日の準備はもう?」
「ええもちろん。あと一か月しかありませんし」
勿体なさそうにチビチビ食べるロイドにすこしドン引きしながらアリソン君が言う。
昨年春、おそらくシャノンを激怒させたであろう誕生日の夜会。
15歳のリベンジは16歳でする。目には目を、歯には歯を。誕生日には誕生日をだ。
「今年の誕生日はさすがにコンラッド様も馬鹿な真似はされないでしょう…」
リアム君、さらりとコンラッドを馬鹿呼ばわりしたな?
「それでですね、僕は第二王子アレイスター様と第三王子トレヴァー様にも招待状を出しました」
「ええっ!」
「まさか!」
「何ですって!兄さん、さすがに…」
15の誕生日にコンラッドは嫌がらせみたいにアーロンを同伴したんだから、16の誕生日に僕が顔見知りの第二第三王子を呼んで嫌がらせして何が悪い!招待状送るだけで済ませたんだから、むしろ優しさの塊でしょうが!
「おかしいですか?今回の誕生日は我が家の弟と妹をお披露目する夜会でもあります。あのお二方も義理とは言え兄弟になるのだし…来てもらって良くないですか?」
「ですがシャノン様…」
「別にいいじゃないですか。どうせ来るか来ないかは分からないんだから…。あっ!侍女が呼びに来ましたよ。さあ弟たちに会いに行きましょう」
みんなが動揺する中、ミーガン嬢と、意外にもロイドが平然としていたのがやけに印象的だった…。
「生まれた時よりもう一回り大きくなってるの。男の子がこのプリチャードの後継者でダニー。女の子がこのプリチャードのお姫さまでシェイナね」
少し髪の生えそろって来た二人は、双子だというのに髪色が違う。
ダニーはくすみがかったオレンジ。キャメル色というか、茶に近いベージュ。そしてシェイナはお父様の因子を受け継いだプラチナカラー。
……いや待て!
今ふと思ったが、お父様のプラチナカラーは後天的。元は黒。つまりあれはプラチナと言うより天然のシルバーヘアー。ニコールさんはブラッドと同じオレンジヘアー。
……?
お父様のシルバーヘアーは妻を失ったショックで一気に進んだと聞いた。つまりニコールさんがお父様と出会った頃には既にシルバーだったはず。
それゆえにニコールさんもブラッドも気付いていない。
僕とシェイナの髪色が同じなのと、ダニーの顔がお父様にそっくり過ぎて邸内の誰も違和感を感じていないが…、黒髪のアノンになるかと期待していただけに、僕だけはそれに気づいた。気付いたが…
別にいっか。誰も困ってないし。だから何って話だし。平和だし。
双子を囲んでみんなが和やかに談笑する中、僕はそんなことを考えていた。
さて、子供部屋を出て、僕とブラッドはそれぞれの友人とそれぞれの部屋へ引き上げた。ここからは気の置けない友人とだけ過ごす時間だ。
「ミーガン様、リアム様、婚約式は…」
「儀式は身内だけですませますの。ですがささやかにティーパーティーを開きますわ。シャノン様、よければ」
「もちろんお伺いします。素敵なプレゼント探さなくっちゃ」
「それにしても…」
不思議そうな顔で言いよどむアリソン君。
「ブラッド様とロイド様は随分雰囲気が落ち着かれましたね」
「そう言えば最近はアーロンさんとご一緒のところをお見掛けしませんし…」
「その分コンラッドがベッタリだけどね」
彼らも僕がコンラッドとの割り切った関係(ウソ)に同意したと知っている。いまさらこれくらいで狼狽えない。
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いまさらそんな…必要もない。
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