断罪希望の令息は何故か断罪から遠ざかる

kozzy

文字の大きさ
60 / 310

37 断罪と春休み

しおりを挟む
春休みに入り、アリソン君、リアム君、そしてミーガン嬢は揃ってお祝いに駆け付けてくれた。
彼らの待つ部屋に入ると、そこにはブラッドに呼ばれたロイドまでいて、彼らは互いに顔色を伺い、場の空気はとても微妙になっていた。

「コンラッド様は一緒じゃないんですか?」

いや、別に会いたくはないけど。今までいつも三人一緒だっただけに、気になって。

「彼は地方貴族の謁見に同席しているよ。陛下が王城にとどまられる間は、なかなか自由もきかないだろう」

なるほどね。去年の一年が特別自由だったってことか。そりゃ好き勝手もするわ。

因みにここでいう謁見とは、雪解けを待って来訪している、地方の有力貴族たちによる陛下への謁見である。

プリチャードの父も王都から離れたところに侯爵領を持っているが、せいぜい一週間で行き来できる距離である。
ブラッドがもらう予定のボイル伯爵でさえ10日くらいの距離。
なのにエンブリー男爵領みたいな僻地は片道二か月…とかかかっちゃったりするのだ。
さすがに辺境伯以外の高位貴族が最僻地のわけないけど、それでも片道一か月はかかりそうな距離に領地をもつ当主もいたりする。

というわけで、この国の高位貴族が課せられる、王城での責務やそれに伴う出仕が、地方貴族は免除となっている。代りに一年に一度、こうして多くの献上品と共に参内し陛下に謁見して、報告やら陳情やらを行うのだ。

留守がちな陛下が、王都滞在中に謁見は集中するから、当分の間続くのだろう。王妃様もその奥方たちと茶会続きみたいだし…、第一王子コンラッドよ、まあがんばれ。

それにしても…
前世が日本人の僕には分かる。これはあれだ。参勤交代みたいなものだ。地方の有力貴族が余計な力を持ちすぎないために、一年に一度、大量のお金と手間を使わせる…なるほど、王家に抜かりなし…。

こういう現実を知れば知るほど、高位貴族は面倒なんだよね。そこへいくと下位貴族のエンブリーはいい。王城参りの義務すらない僻地の男爵領。山に囲まれ、隣近所の貴族さえこない。
さすが第二希望、サイコーだわー。おっと、うっかりボーっとしてた。

「シャノン様、こちら手土産ですわ。焼き菓子屋の新作ですの」
「ミーガン様…わぁ嬉しい!美味しそうな…オレンジクッキー!」

細かく刻んだオレンジピールが混ぜ込まれたそのクッキーは甘すぎず美味しい!
でも気が付いたらロイドが、今にも歯ぎしりしそうなほど悔しそうな顔でミーガン嬢を見ている。なにがそんなに気に入らな…ああ!

「えーっと…、…ロイド様も一枚召し上がります…?」
「え?あ、いえ、そ」
「はい、あーん」

「…」パクリ「…」

ほらやっぱり。一枚欲しいなら欲しいって素直に言えばいいのに。そこまで顔崩して喜ばなくても。

「…ロイド様。一枚くださいお願いします、って言えたらもう一枚あげてもいいですよ」
「一枚くださいお願いします」

そ、速攻かいっ!嫌がると思ったのに…

「…と、ところでシャノン様、今年のお誕生日の準備はもう?」
「ええもちろん。あと一か月しかありませんし」

勿体なさそうにチビチビ食べるロイドにすこしドン引きしながらアリソン君が言う。
昨年春、おそらくシャノンを激怒させたであろう誕生日の夜会。
15歳のリベンジは16歳でする。目には目を、歯には歯を。誕生日には誕生日をだ。

「今年の誕生日はさすがにコンラッド様も馬鹿な真似はされないでしょう…」

リアム君、さらりとコンラッドを馬鹿呼ばわりしたな?

「それでですね、僕は第二王子アレイスター様と第三王子トレヴァー様にも招待状を出しました」

「ええっ!」
「まさか!」
「何ですって!兄さん、さすがに…」

15の誕生日にコンラッドは嫌がらせみたいにアーロンを同伴したんだから、16の誕生日に僕が顔見知りの第二第三王子を呼んで嫌がらせして何が悪い!招待状送るだけで済ませたんだから、むしろ優しさの塊でしょうが!

「おかしいですか?今回の誕生日は我が家の弟と妹をお披露目する夜会でもあります。あのお二方も義理とは言え兄弟になるのだし…来てもらって良くないですか?」

「ですがシャノン様…」

「別にいいじゃないですか。どうせ来るか来ないかは分からないんだから…。あっ!侍女が呼びに来ましたよ。さあ弟たちに会いに行きましょう」

みんなが動揺する中、ミーガン嬢と、意外にもロイドが平然としていたのがやけに印象的だった…。

「生まれた時よりもう一回り大きくなってるの。男の子がこのプリチャードの後継者でダニー。女の子がこのプリチャードのお姫さまでシェイナね」

少し髪の生えそろって来た二人は、双子だというのに髪色が違う。
ダニーはくすみがかったオレンジ。キャメル色というか、茶に近いベージュ。そしてシェイナはお父様の因子を受け継いだプラチナカラー。

……いや待て!
今ふと思ったが、お父様のプラチナカラーは後天的。元は黒。つまりあれはプラチナと言うより天然のシルバーヘアー。ニコールさんはブラッドと同じオレンジヘアー。

……?

お父様のシルバーヘアーは妻を失ったショックで一気に進んだと聞いた。つまりニコールさんがお父様と出会った頃には既にシルバーだったはず。
それゆえにニコールさんもブラッドも気付いていない。

僕とシェイナの髪色が同じなのと、ダニーの顔がお父様にそっくり過ぎて邸内の誰も違和感を感じていないが…、黒髪のアノンになるかと期待していただけに、僕だけはそれに気づいた。気付いたが…

別にいっか。誰も困ってないし。だから何って話だし。平和だし。
双子を囲んでみんなが和やかに談笑する中、僕はそんなことを考えていた。

さて、子供部屋を出て、僕とブラッドはそれぞれの友人とそれぞれの部屋へ引き上げた。ここからは気の置けない友人とだけ過ごす時間だ。

「ミーガン様、リアム様、婚約式は…」
「儀式は身内だけですませますの。ですがささやかにティーパーティーを開きますわ。シャノン様、よければ」
「もちろんお伺いします。素敵なプレゼント探さなくっちゃ」

「それにしても…」

不思議そうな顔で言いよどむアリソン君。

「ブラッド様とロイド様は随分雰囲気が落ち着かれましたね」
「そう言えば最近はアーロンさんとご一緒のところをお見掛けしませんし…」

「その分コンラッドがベッタリだけどね」

彼らも僕がコンラッドとの割り切った関係(ウソ)に同意したと知っている。いまさらこれくらいで狼狽えない。

「殿下は目をお冷ましにならないのですわね」

いまさらそんな…必要もない。





しおりを挟む
感想 872

あなたにおすすめの小説

もう一度君に会えたなら、愛してると言わせてくれるだろうか

まんまる
BL
王太子であるテオバルトは、婚約者の公爵家三男のリアンを蔑ろにして、男爵令嬢のミランジュと常に行動を共にしている。 そんな時、ミランジュがリアンの差し金で酷い目にあったと泣きついて来た。 テオバルトはリアンの弁解も聞かず、一方的に責めてしまう。 そしてその日の夜、テオバルトの元に訃報が届く。 大人になりきれない王太子テオバルト×無口で一途な公爵家三男リアン ハッピーエンドかどうかは読んでからのお楽しみという事で。 テオバルドとリアンの息子の第一王子のお話を《もう一度君に会えたなら~2》として上げました。

愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない

了承
BL
卒業パーティー。 皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。 青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。 皇子が目を向けた、その瞬間——。 「この瞬間だと思った。」 すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。   IFストーリーあり 誤字あれば報告お願いします!

悪役令嬢は永眠しました

詩海猫(8/29書籍発売)
ファンタジー
「お前のような女との婚約は破棄だっ、ロザリンダ・ラクシエル!だがお前のような女でも使い道はある、ジルデ公との縁談を調えてやった!感謝して公との間に沢山の子を産むがいい!」 長年の婚約者であった王太子のこの言葉に気を失った公爵令嬢・ロザリンダ。 だが、次に目覚めた時のロザリンダの魂は別人だった。 ロザリンダとして目覚めた木の葉サツキは、ロザリンダの意識がショックのあまり永遠の眠りについてしまったことを知り、「なぜロザリンダはこんなに努力してるのに周りはクズばっかりなの?まかせてロザリンダ!きっちりお返ししてあげるからね!」 *思いつきでプロットなしで書き始めましたが結末は決めています。暗い展開の話を書いているとメンタルにもろに影響して生活に支障が出ることに気付きました。定期的に強気主人公を暴れさせないと(?)書き続けるのは不可能なようなのでメンタル状態に合わせて書けるものから書いていくことにします、ご了承下さいm(_ _)m

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ユィリと皆の動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新! Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新! プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー! ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!

なぜ、私に関係あるのかしら?

シエル
ファンタジー
「初めまして、アシュフォード公爵家一女、セシリア・アシュフォードと申します」 彼女は、つい先日までこの国の王太子殿下の婚約者だった。 そして今日、このトレヴァント辺境伯家へと嫁いできた。 「…レオンハルト・トレヴァントだ」 非道にも自らの実妹を長年にわたり虐げ、婚約者以外の男との不適切な関係を理由に、王太子妃に不適格とされ、貴族学院の卒業式で婚約破棄を宣告された。 そして、新たな婚約者として、その妹が王太子本人から指名されたのだった。 「私は君と夫婦になるつもりはないし、辺境伯夫人として扱うこともない」 この判断によって、どうなるかなども考えずに… ※ 中世ヨーロッパ風の世界観です。 ※ ご都合主義ですので、ご了承下さい、 ※ 画像はAIにて作成しております

結婚初夜に相手が舌打ちして寝室出て行こうとした

BL
十数年間続いた王国と帝国の戦争の終結と和平の形として、元敵国の皇帝と結婚することになったカイル。 実家にはもう帰ってくるなと言われるし、結婚相手は心底嫌そうに舌打ちしてくるし、マジ最悪ってところから始まる話。 オメガバースでオメガの立場が低い世界 こんなあらすじとタイトルですが、主人公が可哀そうって感じは全然ないです 強くたくましくメンタルがオリハルコンな主人公です 主人公は耐える我慢する許す許容するということがあんまり出来ない人間です 倫理観もちょっと薄いです というか、他人の事を自分と同じ人間だと思ってない部分があります ※この主人公は受けです

嫌われ魔術師の俺は元夫への恋心を消去する

SKYTRICK
BL
旧題:恋愛感情抹消魔法で元夫への恋を消去する ☆11/28完結しました。 ☆第11回BL小説大賞奨励賞受賞しました。ありがとうございます! 冷酷大元帥×元娼夫の忘れられた夫 ——「また俺を好きになるって言ったのに、嘘つき」 元娼夫で現魔術師であるエディことサラは五年ぶりに祖国・ファルンに帰国した。しかし暫しの帰郷を味わう間も無く、直後、ファルン王国軍の大元帥であるロイ・オークランスの使者が元帥命令を掲げてサラの元へやってくる。 ロイ・オークランスの名を知らぬ者は世界でもそうそういない。魔族の血を引くロイは人間から畏怖を大いに集めながらも、大将として国防戦争に打ち勝ち、たった二十九歳で大元帥として全軍のトップに立っている。 その元帥命令の内容というのは、五年前に最愛の妻を亡くしたロイを、魔族への本能的な恐怖を感じないサラが慰めろというものだった。 ロイは妻であるリネ・オークランスを亡くし、悲しみに苛まれている。あまりの辛さで『奥様』に関する記憶すら忘却してしまったらしい。半ば強引にロイの元へ連れていかれるサラは、彼に己を『サラ』と名乗る。だが、 ——「失せろ。お前のような娼夫など必要としていない」 噂通り冷酷なロイの口からは罵詈雑言が放たれた。ロイは穢らわしい娼夫を睨みつけ去ってしまう。使者らは最愛の妻を亡くしたロイを憐れむばかりで、まるでサラの様子を気にしていない。 誰も、サラこそが五年前に亡くなった『奥様』であり、最愛のその人であるとは気付いていないようだった。 しかし、最大の問題は元夫に存在を忘れられていることではない。 サラが未だにロイを愛しているという事実だ。 仕方なく、『恋愛感情抹消魔法』を己にかけることにするサラだが——…… ☆お読みくださりありがとうございます。良ければ感想などいただけるとパワーになります!

記憶を無くしたら家族に愛されました

レン
BL
リオンは第三王子で横暴で傲慢で侍女や執事が少しでも気に入らなかったら物を投げたり怒鳴ったりする。家族の前でも態度はあまり変わらない… 家族からも煩わしく思われたていて嫌われていた… そんなある日階段から落ちて意識をなくした…数日後目を覚ましたらリオンの様子がいつもと違くて…

処理中です...