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39 断罪と誕生日 ②
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見苦しい口げんかを止めたのは聞き覚えのある変声期ボイス。
「コンラッド兄さん、シャノンは黒髪が好きなのですよ」
「アレイスター様!」
「アレイスター…」
声の主はこの国の第二王子。その後ろには、今日は目の死んでないトレヴァー君がご一緒している。
と言うかアレイスター、何故僕が黒髪フェチだと知っている。
僕は黒髪が好きだ。腐男子時代からその傾向はあったが、ここまでひどくなったのはシャノンに転生してからだ。これはきっと、前世への郷愁がそうさせているのだろうと、自分なりに分析している。
「アレイスター様気付いてたんですか?」
「君の護衛は長身の黒髪ばかりじゃないか」
ば、ばれてる…。いや、制服フェチはまだバレてない。
「16歳おめでとうシャノン。ところで何を揉めていたんだい?」
「酔っ払いをちょっと叱ってました」
「私は酔ってない!」
「酔っ払いは皆そう言うんですよ」
「だがここまでだシャノン、注目の的だよ」
げっ!
「み、みなさーん。これは痴話げんかですぅ~。ご心配なく~。ほらコンラッド!」ゲシッ!
「痛っ!あ、ああ。何も問題はない。皆歓談を続けてくれたまえ」
第一王子を足蹴にした僕にカイルとブラッドがフリーズしていた。つい勢いでやってしまったが何も問題などない。というか、どーも最近コンラッドに関して、上手くシャノンが機能しない…。理由は分っている。これはあれだ。シャンゴでバトって以来、もう今さら…と猫がこぞって家出をしたからだ。
さて、トレヴァーくんとアレイスターから誕プレをいただくと、僕はゲストをコンラッドとブラッドに少し任せて、招待の主旨通り、まずは二人を双子のところまで案内することにした。
こうみえて前世で年の離れた弟と妹のいた僕は、正真正銘のお兄ちゃんだ。
といっても、僕の病気で大変だった両親は、二人をしょっちゅうおばあちゃんちに預けていた。二人には申し訳なかったと今でも思っている。
だから僕はその分まで、この屋敷にいる間は新しい弟妹を溺愛しようと決めている。
その決意がわかるのだろうか、首のすわりつつある双子は僕を見るととても喜ぶ。
動物と赤ちゃんは、本能で甘やかしてくれる人をかぎ分けるに違いない。
「ほーらアノン様、シャノンお兄様ですよ」
「おっきしてたのアノン~。カワイイねぇ」
因みに家人はみな弟をアノンと呼ぶ。ファーストネームのダニエルで呼ぶのは外の人だけ。これは今後、親しさの指針になるだろう。
「アー、ンー」
「あら。シェイナ様はシャノン様の抱っこが良いようですわ」
「おふたりともシャノン様が大好きですわね」
シェイナは僕を見るとすぐに手を伸ばして抱っこをせがむ。僕じゃないと泣き止まない時まであるくらいだ。
そうなるとますます可愛いと思えてくるのが人情ってもので、僕はシェイナを、まさに目に入れても痛くないと、
ブス!「△$×¥&%#!!!」
…訂正。目つぶしはやっぱ痛い。
「彼がプリチャードの後継者かい」
「アレイスター兄さま。こっちにお姫さまがいます」
おっ?トレヴァー君、お目が高い。
「可愛いでしょ?シェイナだよ」
「シェイナ…」
「なに?アレイスター」
「いいや、なんでもない」
含みを感じさせるアレイスター。何だろう?はっきり言えばいいのに。
そこへやって来たのはニコールさんと、彼女に寄り添う父。アレイスターの言葉は有耶無耶になってしまった。
父はアレイスターをみて一瞬眉を動かしたが、そもそも無断で招待はしていない。ホントに来たからと言って驚かないでもらいたい。
「侯爵、シェイナ嬢はとても美しいです。大きくなったらぜひ私の花嫁にお願いします」
「これはこれはトレヴァー殿下、ハハハ」スン「あげませんぞ」
トレヴァーくんの、大人顔負けの社交辞令にグズり出したのはお父様でなくシェイナ。タイミングのいい…
「ヤメテくださいトレヴァー様。シェイナが僕と引き離されるって、泣いちゃいました」
「そんなあ…」
「はっはっは」
和やかに過ごす時間。ナニーは双子の様子を見て、少しならホールへ連れ出してもいいと許可をくれた。
来賓の皆様にもお披露目をする時間である。なにしろアノンは侯爵家の跡取り、みんな興味深々なのだから。
そして両親、第二第三王子とともにホールへと戻った僕は、シェイナを抱いたまま、アノンを抱っこしたナニーと共にゲストたちの間を練り歩いた。
高貴な自分の立場が分かるのか、ゲストたちに笑顔を振りまくキレイな双子。
方やイケオジなパパ似で、そして方や…
「シェイナ様は奥方のニコール様と言うより…兄のシャノン様によく似ておいでですね」
「ほら、このスッと通った鼻筋」
口々に交わされるゲストたちの感想。
実はニコールさんとカサンドラ様の肖像画は、よく見比べると目元が少ーし似ている。もしかしてお父様がニコールさんを見初めた理由の一つは、それがあるんじゃないだろうか。
うーん、たしかにプラチナヘアーのシェイナはニコールさんよりも僕に似ている。けど…、女の子で僕似って、それもうほとんどカサンドラ様じゃん。
お父様はその事実に気付いていないのか、そう言われてご満悦だし。ニコールさんまで「ええ本当に」などと微笑ましそうにしているし。まぁ…夫婦が良いならそれでいいけど。
「シャノン、私にも見せてくれないか」
「コンラッド様。良いですよ。あ、減るといけないんで少しだけですからね」
「全く君は…」
さすがのコンラッドも双子の赤ちゃんは気になるみたいだ。興味深そうに顔を覗き込もうとしている。だが残念でした。二卵性なのでそれほど似ていない。
「アー!!!」
ぎょぎょ!
よく見えるようにとコンラッドに顔を向けた途端、シェイナは火が付いたように泣き出し、さすがにコンラッドも困惑している。
「参ったな。まだ触れてもいないのだが、嫌われてしまったかな…」
「何を仰いますか殿下、おそらく乳が欲しいのでございましょう」
「赤子とは泣くことでしかものが言えませんのでね。ままあることでございます」
取りなす両親。けどシェイナはさっき満腹になるまでお乳をもらっていたじゃないか!
って、ああっ!
連動して泣き出すアノン!修羅場…これが噂の…
双子の共鳴!って、言ってる場合か!
「コンラッド兄さん、シャノンは黒髪が好きなのですよ」
「アレイスター様!」
「アレイスター…」
声の主はこの国の第二王子。その後ろには、今日は目の死んでないトレヴァー君がご一緒している。
と言うかアレイスター、何故僕が黒髪フェチだと知っている。
僕は黒髪が好きだ。腐男子時代からその傾向はあったが、ここまでひどくなったのはシャノンに転生してからだ。これはきっと、前世への郷愁がそうさせているのだろうと、自分なりに分析している。
「アレイスター様気付いてたんですか?」
「君の護衛は長身の黒髪ばかりじゃないか」
ば、ばれてる…。いや、制服フェチはまだバレてない。
「16歳おめでとうシャノン。ところで何を揉めていたんだい?」
「酔っ払いをちょっと叱ってました」
「私は酔ってない!」
「酔っ払いは皆そう言うんですよ」
「だがここまでだシャノン、注目の的だよ」
げっ!
「み、みなさーん。これは痴話げんかですぅ~。ご心配なく~。ほらコンラッド!」ゲシッ!
「痛っ!あ、ああ。何も問題はない。皆歓談を続けてくれたまえ」
第一王子を足蹴にした僕にカイルとブラッドがフリーズしていた。つい勢いでやってしまったが何も問題などない。というか、どーも最近コンラッドに関して、上手くシャノンが機能しない…。理由は分っている。これはあれだ。シャンゴでバトって以来、もう今さら…と猫がこぞって家出をしたからだ。
さて、トレヴァーくんとアレイスターから誕プレをいただくと、僕はゲストをコンラッドとブラッドに少し任せて、招待の主旨通り、まずは二人を双子のところまで案内することにした。
こうみえて前世で年の離れた弟と妹のいた僕は、正真正銘のお兄ちゃんだ。
といっても、僕の病気で大変だった両親は、二人をしょっちゅうおばあちゃんちに預けていた。二人には申し訳なかったと今でも思っている。
だから僕はその分まで、この屋敷にいる間は新しい弟妹を溺愛しようと決めている。
その決意がわかるのだろうか、首のすわりつつある双子は僕を見るととても喜ぶ。
動物と赤ちゃんは、本能で甘やかしてくれる人をかぎ分けるに違いない。
「ほーらアノン様、シャノンお兄様ですよ」
「おっきしてたのアノン~。カワイイねぇ」
因みに家人はみな弟をアノンと呼ぶ。ファーストネームのダニエルで呼ぶのは外の人だけ。これは今後、親しさの指針になるだろう。
「アー、ンー」
「あら。シェイナ様はシャノン様の抱っこが良いようですわ」
「おふたりともシャノン様が大好きですわね」
シェイナは僕を見るとすぐに手を伸ばして抱っこをせがむ。僕じゃないと泣き止まない時まであるくらいだ。
そうなるとますます可愛いと思えてくるのが人情ってもので、僕はシェイナを、まさに目に入れても痛くないと、
ブス!「△$×¥&%#!!!」
…訂正。目つぶしはやっぱ痛い。
「彼がプリチャードの後継者かい」
「アレイスター兄さま。こっちにお姫さまがいます」
おっ?トレヴァー君、お目が高い。
「可愛いでしょ?シェイナだよ」
「シェイナ…」
「なに?アレイスター」
「いいや、なんでもない」
含みを感じさせるアレイスター。何だろう?はっきり言えばいいのに。
そこへやって来たのはニコールさんと、彼女に寄り添う父。アレイスターの言葉は有耶無耶になってしまった。
父はアレイスターをみて一瞬眉を動かしたが、そもそも無断で招待はしていない。ホントに来たからと言って驚かないでもらいたい。
「侯爵、シェイナ嬢はとても美しいです。大きくなったらぜひ私の花嫁にお願いします」
「これはこれはトレヴァー殿下、ハハハ」スン「あげませんぞ」
トレヴァーくんの、大人顔負けの社交辞令にグズり出したのはお父様でなくシェイナ。タイミングのいい…
「ヤメテくださいトレヴァー様。シェイナが僕と引き離されるって、泣いちゃいました」
「そんなあ…」
「はっはっは」
和やかに過ごす時間。ナニーは双子の様子を見て、少しならホールへ連れ出してもいいと許可をくれた。
来賓の皆様にもお披露目をする時間である。なにしろアノンは侯爵家の跡取り、みんな興味深々なのだから。
そして両親、第二第三王子とともにホールへと戻った僕は、シェイナを抱いたまま、アノンを抱っこしたナニーと共にゲストたちの間を練り歩いた。
高貴な自分の立場が分かるのか、ゲストたちに笑顔を振りまくキレイな双子。
方やイケオジなパパ似で、そして方や…
「シェイナ様は奥方のニコール様と言うより…兄のシャノン様によく似ておいでですね」
「ほら、このスッと通った鼻筋」
口々に交わされるゲストたちの感想。
実はニコールさんとカサンドラ様の肖像画は、よく見比べると目元が少ーし似ている。もしかしてお父様がニコールさんを見初めた理由の一つは、それがあるんじゃないだろうか。
うーん、たしかにプラチナヘアーのシェイナはニコールさんよりも僕に似ている。けど…、女の子で僕似って、それもうほとんどカサンドラ様じゃん。
お父様はその事実に気付いていないのか、そう言われてご満悦だし。ニコールさんまで「ええ本当に」などと微笑ましそうにしているし。まぁ…夫婦が良いならそれでいいけど。
「シャノン、私にも見せてくれないか」
「コンラッド様。良いですよ。あ、減るといけないんで少しだけですからね」
「全く君は…」
さすがのコンラッドも双子の赤ちゃんは気になるみたいだ。興味深そうに顔を覗き込もうとしている。だが残念でした。二卵性なのでそれほど似ていない。
「アー!!!」
ぎょぎょ!
よく見えるようにとコンラッドに顔を向けた途端、シェイナは火が付いたように泣き出し、さすがにコンラッドも困惑している。
「参ったな。まだ触れてもいないのだが、嫌われてしまったかな…」
「何を仰いますか殿下、おそらく乳が欲しいのでございましょう」
「赤子とは泣くことでしかものが言えませんのでね。ままあることでございます」
取りなす両親。けどシェイナはさっき満腹になるまでお乳をもらっていたじゃないか!
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