断罪希望の令息は何故か断罪から遠ざかる

kozzy

文字の大きさ
81 / 310

アレイスター

「アレイスター。ロイドからの連絡だ」

アーロンがシャノンを狙ったという茶会。
遠ざけられたブラッドに代わり、ロイドは極力彼らの側に居るようにしている。そしてこうして…、図書室の本を利用し、互いに情報のやり取りをする取り決めをしたのだが、さすがは学年主席の男。情報の精査、そして観察力、洞察力、全てが申し分ない。

図書館内東側の小さな閲覧室。ここは私が人目を避け、王子としての気配を消すために使用していた小さな部屋だ。ここは暗黙の了解で私以外誰も使用しない。

彼はその室内にある書棚に一冊の本を置く。その表紙には小さくオレンジの薔薇が描かれている。
その中をめくるとこうして数枚の紙が挟まれている。書かれているのは彼が見聞きしたコンラッド、そしてアーロンの動向の詳細。そしてこちらから伝えたいことがあれば、同じように紙をはさんでおく。

大袈裟なことだが、警戒しすぎて悪いということもあるまい。私とシャノンの仲を疑われるようなことがあってはならない。そして危ない橋を渡るロイドの身に何かあってもまたいけない。

私たちは秘密裏に事を進めなければならないのだ。
ヘクターの父親であるバーナード伯は、静かに北部の貴族家へ集結を呼び掛けている。

このルテティアという国は西から南に向かうほど、大地は肥え気候に恵まれ豊かな実りを約束されている。
ゆえに力ある貴族ほど西部から南部に領地を持つのだ。当然彼らからの税収は多くこの国を大きく支えていると言ってもいい。
そのため前王の時代から、国土の拡大は西へ西へとすすめられ、政策は彼らの利になるよう取り決められる。

だからと言って、戦いのたびに臨時の税や雑兵を徴収されるのは国中どの領であっても同じこと。
なのに貧しい北部や何の旨味もない東部に、厚い福祉や地域振興の手はなかなか届かない。

北部にはそれを不満に思う下位貴族家が多く存在する。
もちろんそれを表立って言う家門は無いが、せめて王によるこれ以上の国土拡大が止めば…、それが北部貴族なら誰もが願う望みである。

「それにしてもツェリの件は本当なのか?」
「王からの使いが戻れば分かることだ」

私には確信がある。あれはシャノンの妄言などではない。恐らくあれは予言に近い。そしてもしそれが事実だとすれぱ…、私の予想が真実となる。

「ところで今後どう動くつもりだ」
「ああそれだが…」

私にその手本を示してくれたのもまたシャノンだ。

中流地区を『準貴族街』とするため切り離す。
これは何かにつけ横槍を入れるフレッチャーを平民街の管理から排除する体のいい口実だが、『準貴族街』、耳障りのいい言葉が彼にそれを気付かせない。
シャノンはモリセット子爵を隠れ蓑にし、平民街を自在にするため不干渉の取り決めまでも王妃アドリアナ様に納得させた。アドリアナ様の抱く、私への警戒心を利用して…

実に鮮やかで見事な手腕だ。

「ではシャノン様は同じように動けと…」
「王を排除し統治権を奪えというか…。だが母は王を愛しておられる。王をなんとかお諫め出来るのなら…南北を二分しかねない国難ではあるが平和的に解決したい」

だが…
あの父が他者に従うとは考えにくい。動かせるのは恐らく王妃アドリアナ様と『聖なる力』の神子。そして…

「だがまだ足りない…。…確証が足りないのだ」

この国を導くであろう『聖なる力』の神子を神子たらしめる…『神託』




感想 873

あなたにおすすめの小説

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

運命の番は僕に振り向かない

ゆうに
BL
大好きだったアルファの恋人が旅先で運命の番と出会ってしまい、泣く泣く別れた経験があるオメガの千遥。 それ以来、ずっと自分の前にも運命の番があらわれることを切に願っていた。 オメガひとりの生活は苦しく、千遥は仕方なく身体を売って稼ぐことを決心する。 ネットで知り合った相手と待ち合わせ、雑踏の中を歩いている時、千遥は自分の運命の番を見つけた。 ところが視線が確かに合ったのに運命の番は千遥を避けるように去っていく。彼の隣には美しいオメガがいた。 ベータのような平凡な見た目のオメガが主人公です。 ふんわり現代、ふんわりオメガバース、設定がふんわりしてます。 完結しました!ありがとうございました。

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

もう一度君に会えたなら、愛してると言わせてくれるだろうか

まんまる
BL
王太子であるテオバルトは、婚約者の公爵家三男のリアンを蔑ろにして、男爵令嬢のミランジュと常に行動を共にしている。 そんな時、ミランジュがリアンの差し金で酷い目にあったと泣きついて来た。 テオバルトはリアンの弁解も聞かず、一方的に責めてしまう。 そしてその日の夜、テオバルトの元に訃報が届く。 大人になりきれない王太子テオバルト×無口で一途な公爵家三男リアン ハッピーエンドかどうかは読んでからのお楽しみという事で。 テオバルドとリアンの息子の第一王子のお話を《もう一度君に会えたなら~2》として上げました。 ※画像は男の子メーカーpicrewさんよりお借りしました。

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? 表紙は自作です(笑) もっちもっちとセゥスです!(笑)

殿下に婚約終了と言われたので城を出ようとしたら、何かおかしいんですが!?

krm
BL
「俺達の婚約は今日で終わりにする」 突然の婚約終了宣言。心がぐしゃぐしゃになった僕は、荷物を抱えて城を出る決意をした。 なのに、何故か殿下が追いかけてきて――いやいやいや、どういうこと!? 全力すれ違いラブコメファンタジーBL! 支部の企画投稿用に書いたショートショートです。前後編二話完結です。

公爵家の五男坊はあきらめない

三矢由巳
BL
ローテンエルデ王国のレームブルック公爵の妾腹の五男グスタフは公爵領で領民と交流し、気ままに日々を過ごしていた。 生母と生き別れ、父に放任されて育った彼は誰にも期待なんかしない、将来のことはあきらめていると乳兄弟のエルンストに語っていた。 冬至の祭の夜に暴漢に襲われ二人の運命は急変する。 負傷し意識のないエルンストの枕元でグスタフは叫ぶ。 「俺はおまえなしでは生きていけないんだ」 都では次の王位をめぐる政争が繰り広げられていた。 知らぬ間に巻き込まれていたことを知るグスタフ。 生き延びるため、グスタフはエルンストとともに都へ向かう。 あきらめたら待つのは死のみ。