断罪希望の令息は何故か断罪から遠ざかる

kozzy

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165 断罪と不屈の精神

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「シャノン様何を?」
「…ごみを燃やそうと思って」
「では私が」
「いいから」
「火傷しては危ないですから」
「いやいいから」

激しい攻防のすえ近くにあった燭台の炎で言われたようにメモ書きを燃やす。すかさず周囲を確認するが人の姿は無い。だけどとりあえず廊下はダメだ。廊下はきっと安全じゃない。
ロイドの腕を掴んで馬車へと急ぐ。一刻も早くパーソナルスペースを確保しなくては。


「どうかしましたか兄さん」

どことなく様子のおかしい僕に胡乱気な二人。
言うか言うまいか…
僕は二時間サスペンスを観るたび思い続けていた。何故みんな誰にも言わず一人で対処しようとするんだろう?言えばいいのに…って。でも言うわけないよ。だって彼らの安全には代えられない…

貰い事故にあってしまった誠実な友人たちを助けなければならない…
ようやく絆を紡ぎ直した義弟と幼馴染を悪の監視網から外さなければならない…

「別になんでもない」
「何でもないって…顔色が悪いですよ?」
「うん。だから早く帰ろう」

「急ぎますが…」

どこで見ていたかわからないが、そいつは僕が一人になるのを根気よくずっと待ってたんだ。ロイドもブラッドも離れフリーになる瞬間を。
ならどこからか監視を続けていたはずだし、きっと今もどこかで見てる。僕がロイドやブラッドに何か話しはしないかと…

でもなんでまた休日の学院内で?
決まってる。馬車移動のドアトゥドアが当たり前の僕が一人っきりになることは滅多にない。高位貴族の僕は外出時だって基本カイルも護衛もいるし。完全フリーなんて屋敷か学内くらい。

つまりこれは全て王城で僕がこれから休日の学院に向かうと知ってからの行動ってことだ。素早いな…そうとも、悪人は機を逃さない。だけどそれは一つの事実を物語っている。

コンラッドの周囲にフレッチャーの息のかかった者がいるということだ!

「つかぬことを聞くけど…二人はコンラッドとどこで何してたの?」

「コンラッドが騎士宿舎で旅に同行する予定の従者たちと打ち合わせをしておりましたので同席を…」
「他に人は?」
「城内と言っても騎士宿舎ですしね、人の出入りは多かったかと」

「フレッチャーはコンラッドの後援をまだ降りて無いの?」
「ええ。まさかコンラッドの側から「不要だ」とは言えませんからね。ですがコンラッドが王族離脱を決めたことで関りはかなり薄れています」

「つまりまだ多少の関わりが無くはないってことね」

「フレッチャーの動きが気になりますか?実は…」

ブラッド曰く、フレッチャーは慌ててトレヴァー君に取り入ろうとしているけど上手くいってないみたいだ。何故ならトレヴァー君は大公様のお気に入りだからだ。…大叔父バカってやつね。あの子ジジ転がし上手いから…

それはさておき、フレッチャーの目や耳は僕がロアンの屋敷に出向いたことを主人に報告したんだろう。
そして王妃様を訪ねたことで何かに気付いたんだろうか。気付かないまでも先手を打とうと思ったのかもしれない。危機管理って大切だから…

確認のため立ち寄ったクーパー邸、ハワード邸では「シャノン様からお呼びがかかった」と言って二人は出掛けたという。ならミーガン嬢もきっと同じだろう。
人の名前を騙るとは…言語道断!

「お約束だったのですか?行き違いになってしまいましたね」

「そうみたい。あの…僕はこのままモリセット邸、アシュリーのところへ行きます」

「モリセット邸ですか?」

「そこで集まる約束してて。時間がかかるから二人は帰っててください。僕は後でアシュリーに送ってもらいますから」

「ですが…」
「カイルもいるから大丈夫です」
「シャノン様、私も」
「大丈夫です」
「いえ私は」
「大丈夫です」

訝しむロイド。少し強引だったかな…でも仕方ない。敵はどこで何を見てるかわからないんだから…

彼らの安全を考え僕は一人で行く。
死ぬのなんか怖くない。どうせ一回死んでるんだから。
ボーナスステージみたいな追加の人生。我が人生に一片の悔いなし!







とでも言うと思ったかっ!!!
そんな訳はない。せっかく手に入れた二度目の人生をこんな簡単に諦めたりしない。え、え、エッチなことだってまだしてないのに…冗談じゃない!

アシュリーはバーナード伯の部下だ。だからモリセット邸の使用人がバーナード邸にお使いしても何らおかしくはない。
バーナード邸には彼が居る。言わずと知れたヘクター、アレイスターの側近だ。

「これはシャノン様!いきなりどうなさいました?」

「アシュリー!何も言わずに今すぐ平民服を用意して!急いで!」

モリセット邸で降ろしてもらった僕は挨拶よりも早くそう叫んだ。文面には急げと書かれていた。状況はわからないけどあまり時間がないのかもしれない。

「シャノン様これは一体…?」
「カイル!カイルを信じてお願いがある。今すぐ平民の下働きに化けて!」
「え?下働k、うえっぷ!」

暖炉の炭を思いっきり顔に撫でつけられてびっくりするカイル。けどこんなコギレイな下働きは居ないんだからしょうがない。

「カイル、バーナード伯の屋敷に行ってヘクター様に伝言をお願い」
「ヘクター様に?なのに何故下働きの格好を…」
「カイルが僕の従者だってバレたらヤバイ」
「そうなのですね。畏まりました。でもそれって…」
「しっ!何も聞かないで!」
「あ、は、はい!」
「頼んだよカイル。カイルだけが頼りだから」

「…シャノン様」
「ん?」
「お頼りくださりありがとうございます」

「約束だもんねカイル」

これで良し。

その誰かはきっと僕、そしてロイドとブラッドの動きに監視をつけてるはず。けどカイルまでは見張ってないだろう。あの二人さえおかしな動きをしなければ敵の監視網からは外れるはずだ。

何故ロイドとブラッドには言わなかったか…それはこれがノベルゲーにはなかったイベントだからだ。ゲームの強制力はシナリオを大きく外れない。この二年、あの二人はたとえどれほどガバガバでも大体イベントの理という枠組みの中に居た。シャノンいつメンに参加したはずのあの二人が、最近コンラッドとやたら行動を共にしているのもその一つだ。
ならこんなよりにもよってこんなシナリオの終盤で、ノベルゲー主要キャラであるあの二人を関わらせちゃいけないって、僕の第六感がそう叫んでいる。

カイルはノベルゲーに出てこないモブだ。
そしてカイルが訪ねるその先も…





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