断罪希望の令息は何故か断罪から遠ざかる

kozzy

文字の大きさ
244 / 310

169 断罪の目覚め

デジャブのような覚醒…。視界に入る部屋にも人物にも見覚えがある。部屋は僕の私室で人物はアレイスター・ルテティア。このルテティア国の第二王子だ。ということは…

ホッ…転生していない。つまり無事生還したってことだ。頭はガンガンするし身体はだるい。なんなら転生直後より絶不調。無事かどうかは微妙なところだが…

「気が付いたかシャノン!誰か!医者を呼べ!」
「頭が割れるように痛い…」
「頭が痛いのは熱のせいだろう。君は高熱を出して何日も寝込んでいた。だがもう安全だ」

やって来たドクターは全身くまなく診察して「問題ありません。頭痛は疲労のせいでしょう」、と一言。カイルはその背後で号泣している。
…言えない。こんな雰囲気の中で、「あっ、頭痛はウォータースライダーの勢いで思いっきり床に頭をぶつけちゃったせいです」とは…。

それにしてもいつの間に助け出されていたんだろう。何日も寝込んでいたとか…はっ!

「と、隣の貯水槽は!アレイスター!あそこにみんなが!」

「アリソン達のことかい?ああ…だからか。彼らがあそこに居ると脅されていた、そういうことか…。確認したが隣の貯水槽は空だったよ」
「どうして?だってミーガン様のコートが…」

「シャノン。川沿いのブティックは既製服の店だ。一点ものじゃない」
「へ?」
「ミーガン嬢は君からの贈り物だとあれ以来毎日着用していただろう?あのコートは商家の女性に今や大人気だ」

つまり…フレッチャーも同じものを買ってあそこに挟んだってことか。チーン…地味に落ち込む…

「…よく私に助けを求めてくれたシャノン。あの手紙は実に見事だった」
「でしょ?あ、イタタ…」

自分の大声がタンコブに響く…ナデナデされる頭。でも痛いのは飛んでかない。

「起きては駄目だ。さあ身体を戻して」
「う、うん…じゃあみんなは?」

「もちろん無事だ。彼らはブラッドが発見し今はそれぞれの屋敷に居る。君を心配しながらね」

「え、待って。ブラッドが?」
「ミーガン嬢の妹、マリエッタ嬢の力を借りてね」
「マリエッタ嬢って?可憐で無邪気な?」

「そのマリエッタ嬢だ。あの日君と別れた後ブラッドは恋人に会うためチャムリー家を訪れた。最も建前だがね。ブラッドから事情を聞いたマリエッタ嬢は〝君に呼びだされて疑問もなく出向く場所”に該当する幾つかの場所に裏口から人を送りそこを見つけ出したそうだ」

そうじゃなくて!だってあの二人には何も知らせてないのに!
そもそもあのブラッドがそれほど知恵者だと思えない。ブラッドはグルグル考えた挙句動けなくなるタイプだ。
その疑問が顔に書いてあったんだろう。アレイスターは事の仔細を説明する。

「ロイドが君の手紙を…手に入れていたのだよ。…ブラッドの言う該当場所とはロイドの推測した場所だ」

ロイドか!それならまあ…。…あん時やたらしつこいと思ったけど…いつすり替えた?

「で…、何処に居たの…?」
「…驚いたことにね、…エンブリー伯爵邸だ」

エンブリー邸!
確かにエンブリー邸なら僕の指示で集合…というのも真に受ける気がしないでもない。そもそも調べない!なんつー灯台下暗し。

そうして彼らもエンブリー邸の執事も偽使者の言葉を真に受け、僕の指示だというありもしない資料を探すために、以前僕とシェイナで目を通した過去の書類を無駄に一日中調べていたのだとか。

「し、信じられない…」
「敵は日暮れまで時間が稼げればよいと考えていたのだろう。もとより危害を加えるつもりは無かったのだよ」

高位貴族の子女、それも僕の側近ばかりが三人も一度になにかあれば…国が動くレベルの大事になる。だって彼らは『神託』の側近で…王様は今王都に滞在中だ。

もしも僕があの貯水槽でグッバイ今世、になっていたら、きっと事件は殺人ではなく失踪扱いになっていただろう。行方不明のまま事件化されなかったロアン侯爵家の様に…

「だからフレッチャーはあの三人に関して事件性を持たせなかったんだよ」

僕の考えにアレイスターは大きく頷いた。
あの水責めと言い悪の手口は踏襲されている。マニュアルでもあるんだろうか?フレッチャー家に代々伝わる悪の教本…とかなんとか。

「よくバレずにあそこへこれたね」
「それなのだが…」

アレイスターは準貴族街入りをする前にコンラッドへ一つの頼みごとをした。なるべく目立つように準貴族街の教会に向かって欲しい、と。
王様からはほとぼりが冷めるまで…と距離を置かれ、次世代トレヴァー君は思うように取り込めていないフレッチャーだ。
いくらもうじき王族離脱するとはいえ今はまだ第一王子のコンラッド。久々のワガママチャンスをフレッチャーがスルーするはずがない。

「コンラッドは足止めを快く引き受けてくれた。ノコノコ姿を現したフレッチャーに食事をと提案し、アーロンの居室で十分ほど過ごすと貴族街のレストランへ移動したらしい。侯の心中は穏やかでなかったろうが…和やかに歓談していたそうだよ。厚顔無恥とはまさにこのことだ」

蛇足だがこの食事会にアーロンは同席していない。今は準貴族街の教会に戻って生活しているアーロンだけど、彼は反省(と身の安全)のために下校後の外出は一切禁止になり、居室で写経三昧の日々を送っている。
ルテティア国教で写経とはこれ如何に。
アーロンの行う写経とは…シッタカブッタとナンダカンダの伝道の書(BL小説ともいう)のことである。


「そうしておいてロイドはもう一つの手を打った」
「手?」

アレイスターの口から語られるのはロイドとスリっ子ジョンの大活躍。聞けば聞くほど僕は、ロイドとジョンが居なかったら助からなかったかもしれないと背筋が凍った。
どうりで…。途中からやけに水位の上がるのが遅いと感じたはずだ。それにウォータースライダーの直前、そういえばなんか揺れてた気もする。

「けど身体の震えがひどくて…てっきりその揺れだとばかり…」
「ああシャノン…」

「…ロイド様にもお礼を言わなくちゃ…。ところでロイド様は?」

「彼とジョン少年もまた熱を出して寝込んでいるよ。冬の川を泳いだんだ。無理もない」
「ロイド様とジョン…、……、ん?」

ここで一つの違和感に気が付く。
ジョンは僕が隊長が歓楽街で動きやすいよう補佐に付けた市井の子供で…、なのに定期報告?マーベリック邸へ?あ、あれ?どゆこと?

「ああいけない。また熱が上がってきたようだね。シャノン、あまり考えこんでは駄目だ」

「…あー…そうする。ところでアレイスター。僕はどれくらい寝込んでたの?」
「五日ほどだ」

五日…ってことは……わお。プロムまではあと十日強。

「…あの…もしかしてずっとここに居たの?」
「…そうだ。と言いたいところだがさすがに無理だ。だが君の目覚めに立ち会えて良かった」

…そこはウソでも片時も離れず側についてたよ、とか何とか言うとこでしょうが…このBL初心者め…




感想 873

あなたにおすすめの小説

愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない

了承
BL
卒業パーティー。 皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。 青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。 皇子が目を向けた、その瞬間——。 「この瞬間だと思った。」 すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。   IFストーリーあり 誤字あれば報告お願いします!

【完結】第三王子、ただいま輸送中。理由は多分、大臣です

ナポ
BL
ラクス王子、目覚めたら馬車の中。 理由は不明、手紙一通とパン一個。 どうやら「王宮の空気を乱したため、左遷」だそうです。 そんな理由でいいのか!? でもなぜか辺境での暮らしが思いのほか快適! 自由だし、食事は美味しいし、うるさい兄たちもいない! ……と思いきや、襲撃事件に巻き込まれたり、何かの教祖にされたり、ドタバタと騒がしい!!

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

運命の番は僕に振り向かない

ゆうに
BL
大好きだったアルファの恋人が旅先で運命の番と出会ってしまい、泣く泣く別れた経験があるオメガの千遥。 それ以来、ずっと自分の前にも運命の番があらわれることを切に願っていた。 オメガひとりの生活は苦しく、千遥は仕方なく身体を売って稼ぐことを決心する。 ネットで知り合った相手と待ち合わせ、雑踏の中を歩いている時、千遥は自分の運命の番を見つけた。 ところが視線が確かに合ったのに運命の番は千遥を避けるように去っていく。彼の隣には美しいオメガがいた。 ベータのような平凡な見た目のオメガが主人公です。 ふんわり現代、ふんわりオメガバース、設定がふんわりしてます。 完結しました!ありがとうございました。

もう一度君に会えたなら、愛してると言わせてくれるだろうか

まんまる
BL
王太子であるテオバルトは、婚約者の公爵家三男のリアンを蔑ろにして、男爵令嬢のミランジュと常に行動を共にしている。 そんな時、ミランジュがリアンの差し金で酷い目にあったと泣きついて来た。 テオバルトはリアンの弁解も聞かず、一方的に責めてしまう。 そしてその日の夜、テオバルトの元に訃報が届く。 大人になりきれない王太子テオバルト×無口で一途な公爵家三男リアン ハッピーエンドかどうかは読んでからのお楽しみという事で。 テオバルドとリアンの息子の第一王子のお話を《もう一度君に会えたなら~2》として上げました。 ※画像は男の子メーカーpicrewさんよりお借りしました。

殿下に婚約終了と言われたので城を出ようとしたら、何かおかしいんですが!?

krm
BL
「俺達の婚約は今日で終わりにする」 突然の婚約終了宣言。心がぐしゃぐしゃになった僕は、荷物を抱えて城を出る決意をした。 なのに、何故か殿下が追いかけてきて――いやいやいや、どういうこと!? 全力すれ違いラブコメファンタジーBL! 支部の企画投稿用に書いたショートショートです。前後編二話完結です。

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

公爵家の五男坊はあきらめない

三矢由巳
BL
ローテンエルデ王国のレームブルック公爵の妾腹の五男グスタフは公爵領で領民と交流し、気ままに日々を過ごしていた。 生母と生き別れ、父に放任されて育った彼は誰にも期待なんかしない、将来のことはあきらめていると乳兄弟のエルンストに語っていた。 冬至の祭の夜に暴漢に襲われ二人の運命は急変する。 負傷し意識のないエルンストの枕元でグスタフは叫ぶ。 「俺はおまえなしでは生きていけないんだ」 都では次の王位をめぐる政争が繰り広げられていた。 知らぬ間に巻き込まれていたことを知るグスタフ。 生き延びるため、グスタフはエルンストとともに都へ向かう。 あきらめたら待つのは死のみ。