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取り巻きアリソンとひよっこ ②
ある日カーティスから聞かされたスタウト子爵の窮地。聞けば子爵はフレッチャー侯の部下だったために、かなりの苦境に立たされているらしい。
スタウト子爵は領地を持たない宮廷貴族だ。
バーナード伯に仕えるモリセット子爵と違い、王宮付きの宮廷貴族では割り振られる仕事は選べない。優秀なマーベリック伯は幸い宰相補佐に就いたが…スタウト子爵は外れくじを引いた、といったところだ。
そこへ飛び込んできたのがシャノン様からの招待状だ。
カードには短くこう書かれていた。
ークリスマスパーティーを開催します。論文に無理が無ければぜひ来てください。※アノンとシェイナにプレゼントを持参する事ー
使いのカイルに聞けばいつもの友人だけを招いた小さな催しなのだとか。恥じらい深いシャノン様は大勢の夜会がお好きではない。それゆえシャノン様の小さな茶会に招待を受けるのは親しい関係を意味し、それだけでプリチャード家との結びつきを示す証明となる。
私の頭をよぎった一つのひらめき。それはこの招待が良いきっかけになるのでは、ということだ。
「シャノン様の従者に確認をとってくれるかい。一人同行しても構わないかと」
「畏まりました」
「カーティス、君は真っすぐな子だ。きっとシャノン様も好感を持たれるはずだ」
こうして私の目論見通り、無事カーティスはシャノン様のお眼鏡に叶い、またカーティスとシャノン様が近づいた事でスタウト子爵の評判も徐々に回復しつつあるようだ。
わずか一、二か月の間だというのに様々な出来事が起きた学生生活最後の冬。
フレッチャー一族の裁判、そこで起きた前代未聞の事件、シェイナ嬢とエンブリー卿の奇跡…その全てを乗り越え、ついに明日は卒業の式典だ。
「う…グス…卒業おめでとうございます…」
「カーティス、何も泣く必要はない。これで会えなくなるわけではないだろう?」
「週末には屋敷へ招いてくださいますか?」
「ああもちろんだ」
だがそれもいつまでか。シャノン様とアレイスター殿下の婚約はいつ発表されるのか、そしていつ北部へと向かわれるのか…。
プリチャード侯との話し合いを経て、正式に私はシャノン様付きの側近として、北部と王都を繋ぐ手伝いをすることとなっている。拠点は北部へ移るだろう。
思案の中聞こえてきたのはすっかり耳に馴染んだ涼やかな声。
「いたいたアリソン様。探しましたよ」
「シャノン様…。私をお探しとはどうなさいましたか?」
「えと、実はカーティス君に話がありまして…」
「カーティスに?」
卒業式典を明日に控え本日学院は準備のために休校となっている。その手伝いに参加する私とカーティスを探しにいらしたようだ。
いつもに増してに嬉しそうに私とカーティスを交互に見るシャノン様。
「えと、屋形船の増便がこの春から決まりまして」
「ああ。父から聞いております。なんでもプリチャード侯から館船を増やさすよう指示があったとか」
「あー…北東部との行き来が増えると思うので…、もしかしたら一隻はプライベート屋形船になるかも…」
話ながらもやはり私とカーティスを満面の笑みでご覧になるシャノン様。
「それでですね…、クーパー伯は船便の管理もあるでしょう?そうなると部下が必要かな…って思いまして」
「父も手が回らないと言っておりましたのでそうなれば助かるでしょうが…」
目を細めていたずらっ子の様な表情になるシャノン様。どうも様子がおかしい。何を企んでいるのだろう…
「カーティス君のお父様、スタウト子爵は軍用運輸部の記録係でしたよね?」
「え、ええ」
ニッコリ「スタウト子爵にはこれからクーパー伯のもとで船便の記録係になりました。カーティス君、帰ったらそうお伝えくださいね」
「ありがとうございます!」
目と目を合わせ頷き合う二人。ああ、これを伝えにいらしたのか。
「というわけなのでアリソン様。カーティス君は囲い込んでおきま、もとい、スタウト子爵家は正式にクーパー伯の傘下に入りました」
「父のですか?」
「カーティス君ってばおとうさまのお役に立ちたいんだって」
カーティス、彼は何という孝行な息子なのだろう。本当に良い子だ…
「あの…、シャノン様」
「なんでしょう」
「北部へはいつ頃移られるのでしょうか」
「ああ、その件ですか。…うーんと、一回シェイナとエンブリーへ行ってあそb、用事をすませてから北部に向かうので…夏頃?」
「では私は先んじて北部入りをすませた方がよろしいですか?」
「ううん。夏でいい。それよりこれでカーティス君は二年後アリソン様の部下になりますので今のうちに色々教えてあげてください。手取り足取り。つきっきりで」
なるほど今のうちに集中して育成せよと、そういうことか。
「北部に行っても冬季は王都へ戻ります」
「は」
「はい!」
「北部の街道が整備されたら行き来はもう少し楽になります」
「は」
「はい!」
「あとは自力で頑張ってカーティス君。僕に出来るのはここまで」
「はい!」
私を遮り元気よく返事をするカーティスとカーティスに向き直り励ましの言葉をかけるシャノン様。
様子を見るに、どうやら彼はシャノン様と個人的にお会いする機会を得ていたらしい。だが…
いつの間にここまで親しくなっていたのだろう?
スタウト子爵は領地を持たない宮廷貴族だ。
バーナード伯に仕えるモリセット子爵と違い、王宮付きの宮廷貴族では割り振られる仕事は選べない。優秀なマーベリック伯は幸い宰相補佐に就いたが…スタウト子爵は外れくじを引いた、といったところだ。
そこへ飛び込んできたのがシャノン様からの招待状だ。
カードには短くこう書かれていた。
ークリスマスパーティーを開催します。論文に無理が無ければぜひ来てください。※アノンとシェイナにプレゼントを持参する事ー
使いのカイルに聞けばいつもの友人だけを招いた小さな催しなのだとか。恥じらい深いシャノン様は大勢の夜会がお好きではない。それゆえシャノン様の小さな茶会に招待を受けるのは親しい関係を意味し、それだけでプリチャード家との結びつきを示す証明となる。
私の頭をよぎった一つのひらめき。それはこの招待が良いきっかけになるのでは、ということだ。
「シャノン様の従者に確認をとってくれるかい。一人同行しても構わないかと」
「畏まりました」
「カーティス、君は真っすぐな子だ。きっとシャノン様も好感を持たれるはずだ」
こうして私の目論見通り、無事カーティスはシャノン様のお眼鏡に叶い、またカーティスとシャノン様が近づいた事でスタウト子爵の評判も徐々に回復しつつあるようだ。
わずか一、二か月の間だというのに様々な出来事が起きた学生生活最後の冬。
フレッチャー一族の裁判、そこで起きた前代未聞の事件、シェイナ嬢とエンブリー卿の奇跡…その全てを乗り越え、ついに明日は卒業の式典だ。
「う…グス…卒業おめでとうございます…」
「カーティス、何も泣く必要はない。これで会えなくなるわけではないだろう?」
「週末には屋敷へ招いてくださいますか?」
「ああもちろんだ」
だがそれもいつまでか。シャノン様とアレイスター殿下の婚約はいつ発表されるのか、そしていつ北部へと向かわれるのか…。
プリチャード侯との話し合いを経て、正式に私はシャノン様付きの側近として、北部と王都を繋ぐ手伝いをすることとなっている。拠点は北部へ移るだろう。
思案の中聞こえてきたのはすっかり耳に馴染んだ涼やかな声。
「いたいたアリソン様。探しましたよ」
「シャノン様…。私をお探しとはどうなさいましたか?」
「えと、実はカーティス君に話がありまして…」
「カーティスに?」
卒業式典を明日に控え本日学院は準備のために休校となっている。その手伝いに参加する私とカーティスを探しにいらしたようだ。
いつもに増してに嬉しそうに私とカーティスを交互に見るシャノン様。
「えと、屋形船の増便がこの春から決まりまして」
「ああ。父から聞いております。なんでもプリチャード侯から館船を増やさすよう指示があったとか」
「あー…北東部との行き来が増えると思うので…、もしかしたら一隻はプライベート屋形船になるかも…」
話ながらもやはり私とカーティスを満面の笑みでご覧になるシャノン様。
「それでですね…、クーパー伯は船便の管理もあるでしょう?そうなると部下が必要かな…って思いまして」
「父も手が回らないと言っておりましたのでそうなれば助かるでしょうが…」
目を細めていたずらっ子の様な表情になるシャノン様。どうも様子がおかしい。何を企んでいるのだろう…
「カーティス君のお父様、スタウト子爵は軍用運輸部の記録係でしたよね?」
「え、ええ」
ニッコリ「スタウト子爵にはこれからクーパー伯のもとで船便の記録係になりました。カーティス君、帰ったらそうお伝えくださいね」
「ありがとうございます!」
目と目を合わせ頷き合う二人。ああ、これを伝えにいらしたのか。
「というわけなのでアリソン様。カーティス君は囲い込んでおきま、もとい、スタウト子爵家は正式にクーパー伯の傘下に入りました」
「父のですか?」
「カーティス君ってばおとうさまのお役に立ちたいんだって」
カーティス、彼は何という孝行な息子なのだろう。本当に良い子だ…
「あの…、シャノン様」
「なんでしょう」
「北部へはいつ頃移られるのでしょうか」
「ああ、その件ですか。…うーんと、一回シェイナとエンブリーへ行ってあそb、用事をすませてから北部に向かうので…夏頃?」
「では私は先んじて北部入りをすませた方がよろしいですか?」
「ううん。夏でいい。それよりこれでカーティス君は二年後アリソン様の部下になりますので今のうちに色々教えてあげてください。手取り足取り。つきっきりで」
なるほど今のうちに集中して育成せよと、そういうことか。
「北部に行っても冬季は王都へ戻ります」
「は」
「はい!」
「北部の街道が整備されたら行き来はもう少し楽になります」
「は」
「はい!」
「あとは自力で頑張ってカーティス君。僕に出来るのはここまで」
「はい!」
私を遮り元気よく返事をするカーティスとカーティスに向き直り励ましの言葉をかけるシャノン様。
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いつの間にここまで親しくなっていたのだろう?
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