悪役令息設定から逃れられない僕のトゥルーエンド

kozzy

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高等部2学年

143 進水式 心酔式

こんな暑い日には港や海がよく似合う。
本日行われるのは学院の卒業式。そして式典の終わりには…お船の進水式が用意されてる!いやっふぅ!

港までは各自集合。学院の寮生は乗り合わせて行ったり朝早くから歩いて行ったり…、ちゃっかり抜け目のないジローの人力車も特別価格で客待ちをしてる。商魂たくましいな。

「お兄様…その大量のお荷物は何ですか?」
「秘密。でもとっても良いものだよ」

船の進水式とあってお兄様もジローも港に居るのだ。どきどき…僕もようやく見る完成品。どんなことになってるのかな…

期待に胸膨らませついに到着。目の前には…

おっ、おぉ~…!す、すごい…これが…僕の船。もうすぐレグルスの物になる…僕の船。

「あっ!アヌヴス様!僕の描いたアヌヴス神!」
「!」
「ねぇ見てアリエス!あれ僕が描いたの。アヌヴス様。へぇ~、どうやって転写したんだろう?ちゃんと船首にお座りしてるよ…」
「あっ、あ~…。あの…とってもお可愛らしい黒犬ですね。殿下の旅をきっと守ってくださいますよ」

「ようテオドール。すごいなお前の船は。ところでなんだ?船首に描かれた目と鼻の付いた黒い模様は。なにか意味があるのか?」
「…馬鹿っ!あれはお兄様がお描きになったアヌヴス神です。どう見たって犬にしか見えないでしょうがっ!」
「え…」


タウルスのバカっ!あんぽんたん!だからデリカシーが無いっていうんだよっ!
リヒャルト君にも言っておかなきゃ。タウルスみたいな筋肉バカは止めとけって!
涙目の僕をみんなが総出で慰めてくれる。そんな騒々しさの中、式典の始まりを告げる汽笛の音が、港一帯高らかに響き渡った。


甲板の上には卒業生。在校生は地上から見上げる形だ。
この一風変わった式典は生徒たちには大好評で、後々語り継がれることになったとかならなかったとか。


「ではこれより我が弟、テオドールを会頭とするヒュギエイヤ商会、我がレッドフォード及びブラウニング商会が力を合わせ建造した動力船『アルゴー』の進水式を執り行う。ではレグルス王太子殿下」

「うむ」

レグルスには今からテープカット?縄をたたっ切る小さな小さな斧を僕から手渡す予定だ。
この縄は船首へと続きその先にはシャンパンが括り付けてある。
テープカットの後、揺れるシャンパンは船首に叩きつけられ、割れたその瓶から噴き出したシャンパンは、アヌヴス様の頭上にシャンパンシャワーとなって降り注ぐのだ。すごいでしょ。

「テオドール、ここへ」

「んふふ」

僕の登場にレグルスが目をまぁるくしてる。レグルスはこの船を誰が何のために作ったかしらないんだよね。
スクリューうんぬんは聞いてるみたいだけど、デルフィのお父さんからも陛下に口止めしてもらったし。
レグルスは多分お兄様の新しい事業としか聞いてないはず…

では、驚いてもらおうか。じゃじゃ~ん!サプラーイズ!

「レグルス。卒業おめでとう。それから外交大臣就任おめでとう。この船はね、僕からレグルスへのお祝いの品だよ。ジローに頼んで作ってもらったの。レグルスの役に立つようにって」

「ええっ⁉」

「これがあったら海路でいろんな国へ行けるね。時間も距離も大幅に短縮できるよ。海は荒れることもあるけどそんなの陸路で戦争してる国を横切るよりはましだよね。海の魔獣も出るかもしれないけど…レグルスはすごい魔法が使えるもの、問題ないよね。ほんとにおめでとう。ねぇ、これが僕の気持ち!受け取って!」

いつでも笑顔を絶やさない、ポーカーフェイスのレグルスが唖然としてる。
あっけにとられるってこういう顔を言うんだろうな。
僕がひきだした僕だけの顔。

してやったり。計画通りだ。

「テオドール、…これは…贈り物にしては規模が…」
「貯金はたいちゃった。でも大丈夫、また貯めるから」
「テオ…君は何て…」
「…喜んでくれないの?」

「言葉にならない!テオ!」
「!」

ん、んんー!口チュー!公衆の面前で口にチュー!

べりっ!

「殿下…そこまで許した覚えはないのですが。さぁさっさと離れてテープカットを。式典が進まぬでしょう!ちっ!」
「…まったく野暮な…。まぁ仕方ない。ありがとうテオ。本当に嬉しい…。心から感動した。君の気持ちは受け取ったよ」

「そ、そりぇはどうも…」

げっ!みんな見てる…。すっごく見られてる…。えぇ…なんかヒソヒソ言われてるんだけど…


ヒソヒソ話は軽いトラウマなんだけど…





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