イケメン大好きドルオタは異世界でも推し活する

kozzy

文字の大きさ
169 / 247
決断の時編

お母様は見た ②

しおりを挟む
あれから二人の様子を見ていて分かってきたことがいくつかあるわ。

トールキン…あの子は自分で気が付いているのかしら…。無意識にいつも優し気な目でローランの姿を追っていることを。
そしてその後ため息をつくのよ。必ず。どういうことかしら?
そしてローラン。トールキンの役に立とうと一生懸命なのが見て取れる。
旦那様不在の領地を守ろうと必死に激務をこなすトールキンを要所要所で手助けをし、時には先回りして仕事を減らす。

…よく気の利く子だとは思っていたけど…そう、トールキンのためだったのね。

お互い想い合っているの?あら、ならなにも問題は無いのじゃないかしら?

わたくしと旦那様は貴族間では珍しい恋愛結婚。
とはいえ、旦那様は宮廷貴族だった子爵家の3男、わたくしはこのカマーフィールドの前身となった今より小さな男爵領の一人娘。恋愛結婚を咎められるほどの立場でなかったことも幸いして旦那様はわたくしの生家、田舎の男爵家を継いで下さった。
そうして宮廷からの無理難題をこなすごとに陞爵し、ついには伯爵位を賜ったのだけれどさして領地は広がらず、旦那様には貧乏くじを引かせてしまったと申し訳なく思う事もあるのよ。

そしてそんな貧乏くじは嫡男トールキンにも及び…親としてふがいない思いをしていたけれど…

領地は少しずつ潤い、様々な難事が改善へむかっている今、問題はトールキンの縁組と後継…。

わたくしは本質的に、身分に貴賤などないと思っているわ。
貴族家として恥じぬふるまい、品格を維持することは必要ではあるけれど、貴族に生まれたことが人としての格までも決定づける訳ではない…それは此度の乱をみれば明らかなこと。

トールキンと志を同じくし、このカマーフィールドを守らんとするローランがこの家に相応しくないなどと誰が言いましょう…。

それにしても…想い合っているのなら、早く言ってこれば良いものを。何に遠慮をしているのやら…。






コンコンコン…

「あらハモン、どうかしたのですか?こんな夜更けに」
「奥様…なにやら裏庭から妙な声が聞こえまして…」
「妙な声…?使用人ではなく?領民が入り込んだとでも?」
「いえ、なにやらすすり泣くような…」「ま、まぁ…」

嫌な考えが頭をよぎってしまったけれどこのままにはしておけずトールキンの自室へ向かう。

「トールキン?…いないのかしら。こんな時間に困った子ね」

仕方なくハモンと二人で裏庭へ。

「ハモン、は、離れないで頂戴ね、いいですか、絶対ですよ!」

ーーー…っす…ぐす…ーーーずず…ぐすーーー

ひっ!ひぃぃぃ!!!

いいえ、わたくしはこのカマーフィールドの伯爵夫人!見苦しい姿など晒すわけにはいかないのです。
ハモンを先導してその声のするほうへ歩みを進める。徐々に近づく黒い影。

「あ、あなたっ!誰ですか!ここで何をしているのです!」
「お、奥様……」
「まっ!まぁ、ローラン…ローランじゃないの。あなただったの怪しい声の主は」
「怪しい声…す、すみません、皆さんにご迷惑を…あのっ、すぐに部屋へ戻りますから…」
「何を言っているの?そんな顔をして…さ、いらっしゃい、暖かいお茶でも入れましょう。ハモン支度を」




こうしてわたくしは涙で顔をぐしゃぐしゃにしたローランをダイニングへと連れ戻ったのです。



















しおりを挟む
感想 103

あなたにおすすめの小説

【完結】悪役令息の伴侶(予定)に転生しました

  *  ゆるゆ
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、反省しました。 BLゲームの世界で、推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑) 本編完結しました! おまけのお話を時々更新しています。 きーちゃんと皆の動画をつくりました! もしよかったら、お話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。 インスタ @yuruyu0 絵もあがります Youtube @BL小説動画 プロフのwebサイトから両方に飛べるので、もしよかったら! 本編以降のお話、恋愛ルートも、おまけのお話の更新も、アルファポリスさまだけですー! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!

【完結】それ以上近づかないでください。

ぽぽ
BL
「誰がお前のことなんか好きになると思うの?」 地味で冴えない小鳥遊凪は、ずっと憧れていた蓮見馨に勢いで告白してしまう。 するとまさかのOK。夢みたいな日々が始まった……はずだった。 だけど、ある出来事をきっかけに二人の関係はあっけなく終わる。 過去を忘れるために転校した凪は、もう二度と馨と会うことはないと思っていた。 ところが、ひょんなことから再会してしまう。 しかも、久しぶりに会った馨はどこか様子が違っていた。 「今度は、もう離さないから」 「お願いだから、僕にもう近づかないで…」

公爵家の五男坊はあきらめない

三矢由巳
BL
ローテンエルデ王国のレームブルック公爵の妾腹の五男グスタフは公爵領で領民と交流し、気ままに日々を過ごしていた。 生母と生き別れ、父に放任されて育った彼は誰にも期待なんかしない、将来のことはあきらめていると乳兄弟のエルンストに語っていた。 冬至の祭の夜に暴漢に襲われ二人の運命は急変する。 負傷し意識のないエルンストの枕元でグスタフは叫ぶ。 「俺はおまえなしでは生きていけないんだ」 都では次の王位をめぐる政争が繰り広げられていた。 知らぬ間に巻き込まれていたことを知るグスタフ。 生き延びるため、グスタフはエルンストとともに都へ向かう。 あきらめたら待つのは死のみ。

【本編完結】才色兼備の幼馴染♂に振り回されるくらいなら、いっそ赤い糸で縛って欲しい。

ホマレ
BL
才色兼備で『氷の王子』と呼ばれる幼なじみ、藍と俺は気づけばいつも一緒にいた。 その関係が当たり前すぎて、壊れるなんて思ってなかった——藍が「彼女作ってもいい?」なんて言い出すまでは。 胸の奥がざわつき、藍が他の誰かに取られる想像だけで苦しくなる。 それでも「友達」のままでいられるならと思っていたのに、藍の言葉に行動に振り回されていく。 運命の赤い糸が見えていれば、この関係を紐解けるのに。

【完結】薄幸文官志望は嘘をつく

七咲陸
BL
サシャ=ジルヴァールは伯爵家の長男として産まれるが、紫の瞳のせいで両親に疎まれ、弟からも蔑まれる日々を送っていた。 忌々しい紫眼と言う両親に幼い頃からサシャに魔道具の眼鏡を強要する。認識阻害がかかったメガネをかけている間は、サシャの顔や瞳、髪色までまるで別人だった。 学園に入学しても、サシャはあらぬ噂をされてどこにも居場所がない毎日。そんな中でもサシャのことを好きだと言ってくれたクラークと言う茶色の瞳を持つ騎士学生に惹かれ、お付き合いをする事に。 しかし、クラークにキスをせがまれ恥ずかしくて逃げ出したサシャは、アーヴィン=イブリックという翠眼を持つ騎士学生にぶつかってしまい、メガネが外れてしまったーーー… 認識阻害魔道具メガネのせいで2人の騎士の間で別人を演じることになった文官学生の恋の話。 全17話 2/28 番外編を更新しました

すべてを奪われた英雄は、

さいはて旅行社
BL
アスア王国の英雄ザット・ノーレンは仲間たちにすべてを奪われた。 隣国の神聖国グルシアの魔物大量発生でダンジョンに潜りラスボスの魔物も討伐できたが、そこで仲間に裏切られ黒い短剣で刺されてしまう。 それでも生き延びてダンジョンから生還したザット・ノーレンは神聖国グルシアで、王子と呼ばれる少年とその世話役のヴィンセントに出会う。 すべてを奪われた英雄が、自分や仲間だった者、これから出会う人々に向き合っていく物語。

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。

巣ごもりオメガは後宮にひそむ【続編完結】

晦リリ@9/10『死に戻りの神子~』発売
BL
後宮で幼馴染でもあるラナ姫の護衛をしているミシュアルは、つがいがいないのに、すでに契約がすんでいる体であるという判定を受けたオメガ。 発情期はあるものの、つがいが誰なのか、いつつがいの契約がなされたのかは本人もわからない。 そんななか、気になる匂いの落とし物を後宮で拾うようになる。 第9回BL小説大賞にて奨励賞受賞→書籍化しました。ありがとうございます。

処理中です...