コスプレ令息 王子を養う

kozzy

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二人のブランニューディ

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ふふーん、ふふーん、フフーん♪

「おや?今日は日曜ですのに早起きですな?イヴァーノ様、お加減はもうよろしいのか」
「あ、ロデじいおはよ。良く寝たからかな?絶好調!」

あの衝撃的な朗読会から一夜明け、今日は完全休養日。なのに僕はいつもより早く朝食作りを開始している。
なんでだろう?今朝は空気の色が違って見える!人生って素晴らしい!

「わぁ!イヴァーノ様!今朝は豪勢ですね!」
「エルモおはよう。美味しそうでしょ?」

うっかり目が覚めて張り切っちゃってね。ってか、夢見心地で寝たか寝てないかもよくワカラナイ…

今朝のパンはバターたっぷりのクロワッサンと残りのチョコ全部使ったチョココロネ!アマーディオに追加のチョコもらわなくっちゃ!

それからボイルしたソーセージとカリカリに焼いたベーコンに添えるのは揚げたてのハッシュドポテトだよね?あー、早くお歳暮の時期にならないかな!

あとオムレツにはハムとチーズがインしているしミネストローネとサラダも用意したし…

「はい。最後はイチゴ!お砂糖かけちゃえ」サラサラサラ…
「えー!」
「良いんですか!? 」

大丈夫大丈夫!砂糖ならいっぱいあるから!王宮に!
だってこの世界のイチゴって生食するには糖度がイマイチなんだよねー。

そこに現れたのは僕の愛する旦那様。おうっ!眩しい!いっけなーい!お父さんに感謝の手紙忘れてた!

「イヴ!昨夜倒れたばかりだというのに無理をして…、いけないよ。さあこちらにかけなさい」

優し~い!

「フ、フラヴィオ!あの、あ、あの、全然大丈夫です!それより夕べはごめんなさい。途中で帰ることになっちゃって…」

「気にする必要はない。和やかな時間に水をさす無粋な者がいたからね。度を超したイヴへの無礼、とても看過出来るものではない」
「いいんです。僕には強ーい味方がいるから…」テレテレ

何でだろう…、今までも同じようなことは言われていた気がするのに、なんかこう…違って聞こえるのは。

「イヴ…」
「フラヴィオ…」

ハッ!世界から他の人が消えるところだった…

「そ、それよりあまりニコラのこと怒らないでくださいね…」
「何故?」

何故って…、イヴァーノの罪は僕の罪。僕はこの存在を設定ごと引き受けたんだから!

もちろんニコラのこともパンキーのことも普通にムカつくけど…、それでも彼らにだって愛着はあるのだ。だってここ『ドキナイ』に必要じゃないキャラなんて一人も居ない。

「ニコラはあれはあれでいいっていうか…さすがにヒロインがあれ以上はしてこないと思うんで…実害ないうちはスルー一択で」
「全く君は…、優しいのだね。だがそう言うのであれば君の意思を尊重しよう。だが君に害あらば…容赦はしない!」
「んが!」

フラヴィオのそういうとこ…スキッ!

「そ、それよりせっかくの休みだから今日はみんなで出かけましょうよ」

これはこの間から計画していた家族サービスである。特にルイルイ。ちょいちょい庶民街へお使いに出向くリコと違ってルイルイは本気で箱入りだから…

「だがルイージは…」
「フラヴィオ!過保護もほどほどにしないといけませんよ」

ルイルイの行動範囲は極めて狭い。この屋敷と、運動不足解消のためにとフラヴィオが連れ出す、お屋敷から徒歩三十分の場所にある教会へのお散歩だけだ。あれでは往復しても6000歩程度にしかならない。ルイルイはそこで必ずキャンドルを一本買うのだとか。けどあれは買い物というよりお布施に近い、これでは僕の目的からズレれている。

「何も一人で〝初めてのお使い”しろ、ってんじゃありません。けどこのまま世間を知らずに大人になって困るのはルイージ君本人なんですからね!フラヴィオみたいに全財産ボラれるようになったらどうするんですか!」

「…そう、君の言う通りだ。私が間違っていたよ。では庶民街へ連れていくのかい?」

「良い場所聞いたんですよ。お宝探しに行きませんか?」
「ああ、それは楽しそうだ」

家族サービスも大事だよね。



---------------------



あの朗読会翌日が休日であったのは幸いだった。
王宮の奥に居た私は〝曜日”というものを意識したことは無かったのだが、どうやら庶民階級において日曜は休息日と決まっているようだ。

イヴはそこへ加えて土曜と水曜を休みにしている。
イヴいわく「手段と目的が入れ替わっちゃいけませんからね」とのことだが、なんにせよ無理をしないでくれるのならそれでいい。

寛容なるイヴはあれほど悪し様に言われながらもニコラを許すという。これだけの度量を持つイブが傲慢などと…思い返しても許せぬ悪態だが、イヴの高潔な考えに水を差してはならない。

だが私の誓いが打ち水となってイヴは朝からいつも以上に幸せそうだ。今も外出の弁当とやらをいそいそと籠に詰めている。
やはり今までの彼にはそこはかとなく私との未来に憂慮があったのだろう。それに気付かないでいた愚鈍な自分を悔やむばかりだ。



本日のイヴは全員を連れて、なんでも庶民街の広場で週末の午前に時折行われるという〝メルカート”へ出向く計画を立てていたらしい。そこで掘り出し物を探したいのだとか。

「布とか飾りとか欲しいなって思って。それにチーズやスパイス買い足さなくちゃ。フラヴィオもお小遣いで好きなモノ買ったらいいじゃないですか。他にも色々あるんだって。日用品とか古い食器とか。手作り工芸品とかも」

「いいのかい?」
「いいんじゃないですか?モノの値段少しは覚えたでしょ?あの頃のフラヴィオときたら…フランコとセルジオも最初びっくりしてましたよ?「おいおいあれはどこの王子様だ」って」

「それはもう言わないでくれないか。これでも恥じ入っているのだよ」

イヴと友人たちの会話から読み取れるのは、王族とは物事を知らぬもの、それが当たり前に周知されているという事実だ。そしてそれは決して肯定的に受け取られている訳ではないのだろう…

「こうやって少しずつ覚えてけばいいんですって。僕だって初めは何にもわからずおかしなコスしてましたよ。でも経験値は聞いてメモしてるだけじゃ上がらないから。やってみないと」

民草の声を知らずして彼らの望む国が築けるだろうか。答えは否だ。だからこそイヴは人の上に立つ高位貴族として身分を隠し労働に出ているのだろう。なんと素晴らしき成長への意欲か。

日々の中にこそ学びはある。
イヴの言うよう、いずれアスタリアを導くべきルイージを、安全な場所の中で育てるだけが私の役目ではないのかも知れない。

こうしてまた一つ、私はイヴから学びを得るのだ。



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