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二人は成果を手に入れる
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サルディーニャに来て半年余り、国を出てからおよそ八か月にもなる私とルイージ。
その勉強会では様々な国の資源量や収穫量などについて語られ、その流れで母国アスタリアの状況を僅かにだが知ることが出来た。
これこそが社交界に縁を欲した私の望み。まさかこれほど最良な形で、信頼度の高い情報を得られるとは思わなかったが…
本当に。イヴ…感謝するよ…
終わらぬ内戦。
国を二分する統治の混乱に民の暮らしは日を追うごとに圧迫され、話を聞く限り状況はますます悪化しているように思えた。
「南から戻った子飼いの商人が持ち込んだ情報だがね…あの国はもう長くは持たないだろうとさ」
「駒を失わぬよう国境は封鎖され民は逃げ出すことも出来ぬらしい。惨いことだ」
「その…」
「どうされたビアジョッティ伯」
「サルディーニャはこの機に乗じアスタリアを獲ろうとは考えぬのだろうか?」
「うむ。王たる父にその気はない。近隣国であればまた別だが…アスタリアは遠征編隊を組んで出向くほど豊かな国ではないのでね」
「では同盟などもお考えにはならぬか…」
「我が国に何の利がある。このサルディーニャは地形、天候、資源すべてにおいて富める国なのだよ」
アスタリアに益はない、それはどの国にとっても共通認識なのだろう。だからこそ我が国は他国の脅威から逃れてきたのだから。だがそれでも…
それでも生まれ育った故郷を私は簡単に諦めきれない。あの偉大なる父の子、アスタリアの第三王子として。
焦っては駄目だ。いずれにしろルイージの機は熟していない。なればなんとしてもこの勉強会を次の機会へと繋げねば…
「しかし…、伯爵は王都まで名すら届かぬ長閑な男爵領の生まれだと聞いているが…随分博識なのだね。感心したよ」
「いえ、仰る通り王都に入ったばかりの私は何も知らない田舎者でした。その私に様々なことを教えてくれたのはイヴです」
「まさか!冗談だろう?」
「いえ。本当です。庶民の暮らし、宮廷の在り方、他国との関わり方、すべてイヴが日常の中で教えてくれました」
「私の知るイヴァーノはそれほど成績は良くなかったと思ったのだが…」
「ふふ、彼の思考は他者と一線を画すところがありますので。机上の勉学などで推し量れないのでしょう」
思わず知れたイヴの学生時代に思わず笑みがこぼれる。もしや試験勉強をさぼって縫物をしていたのではなかろうか。可愛い人だ。
イヴがいつからこの勉強会を念頭に置いていたかは分らぬ。が…彼は私が会で後れを取らぬようにと、社会の動きや世論を知れる週刊冊子を毎週届けさせてくれている。そのうえ老男爵の書斎には無い近年の書物まで揃えてくれた。ありがたいことだ。
なんでも朗読会で会った学院教師ヴィットーレの協力で揃えたという話だが…うむ。卒業後も生徒を想う良い教師ではないか。
「私の知る彼からは考えられない事ばかりだよ。…イヴァーノはよほど卿に骨抜きなのだね…」
「だと良いのですが…、ですが私の方がもっと彼に夢中なのですよ」
「相思相愛とは…羨ましい限りだな」
「父が言うにはコレッティ侯はイヴァーノが卿に迷惑をかけていないか気に病んでいたらしい…取り越し苦労だと伝えておかねばならないね」
私の素性、そして公爵家を怒らせたというイヴァーノ、コレッティ侯の立場を考え手紙を交わすことさえ控えていたが…これで安心下さるだろうか。
「よし決めた!ビアジョッティ伯、君は次回からもこの勉強会へ来るがいい!」
「そ、それはこの勉強会の一員に入れて頂けるということでしょうか!」
「ああ。君は分別があり教養に長け特にその芸術的知識は目を見張るほどだ。申し分ないと考えるよ。だが分っているだろうがイヴァーノの元婚約者であるパンクラツィオ公爵子息、本日不在であるが本来彼も顔ぶれの一人だ。構わないだろうか?」
些か思う所はあるが…今の私は手段を選べる立場ではない。望んだとおりの最良の結果、何の文句があろう。
「なんと光栄なことか。是非お願いしたい」
-----------------------
…なんでこんなとこに…
今現在、僕は二度目のお城でカタリーナ様の私室に居る。
何故かって?呼び出されたからだよっ!エヴァ指名で!診て欲しいって!
クッソめんどくさい!
お城には常駐のドクター居るはずでしょうが!ゲーム内でも二コラが失神した時どこからともなく飛んで来てたじゃないか!
院長め…分ってて休日出勤言いつけたな?アマーディオの健康診断といいカタリーナ様の出張診療と言い…王族には揉み手摺り手のゴマすりめ…王立病院の院長だから仕方ないけど。
「まあ!いつまでも怒らないで頂戴!少し驚かせたかったのよ」
「驚きましたよ!そりゃもう!朝「行ってらっしゃーい」って別れたばかりなのに同じ場所にいるなんて…」
何の冗談だよ!
ここはお城の生活部分。この長い廊下に並ぶ扉のどれかにフラヴィオたちは居る。
「それで?僕を呼びつけて何の用です?」
「まずはマルティノの件ご苦労だったわね。彼はあれから見違えるように生き生きとしているわ」
へー、そうなんだ。
「そんなことより用件は?あの三人にバレる前に帰らなくちゃ」
「ばれてはいけないのかしら?」
「そーじゃないけどなんか気まずいと言うか…」
挨拶して別れた知人に五分後会っちゃったときのあの空気感がね…いたたまれないと言うか…
「あなたに約束したお礼の件よ。わたくしのドレスを手直しさせてほしいと言ったでしょう?」
「あああれ!そういうことなら喜んで!」モミモミスリスリ
「現金ね。でもまあ良いわ、わたくしでは選びきれなかったの。どれがいいか…あなたの目で選んでちょうだい」
「喜んでー!」
ここでどういうことか説明しておこう。
デザインの権利料で稼ぐからにはよりたくさんのネタが必要だ。だがメンズファッションに限界はある。コスプレまで突き抜ければ別の話だが、それはまだ時代を先取りすぎだ。
となるとどうすべきか…
答えは一つ。ファッションと言ったら女性の独壇場。メンズからレディースにフィールドを移しただけで、デザインの幅は一気に広がる!
目の前にはカタリーナ様が「もう飽きちゃったの」とため息をつく、非常にゴージャスなドレスが数着かかっている。そのどれもが新品同様だ。
「これ…何回ぐらい着たんです?」
「二、三度かしら。わたくしはお母様に代わり国の顔として他国の要人にお会いすることもあるのよ?同じドレスなんて失礼に当たるわ」
…OLのお姉ちゃんは結婚式に出席するたびお呼ばれドレスを新調していた。どれも一度しか着ていないのに。きっと女性とはそういうものなんだろう…男の僕にはよくわからないが。
「本当に好きにしていいんですか?」
「いいわ。出来が良ければお友達のお誕生日に着て行ってあげるわよ。約束ですもの」
みなまで言う必要ないよね?カタリーナ様…オナシャス!
「さっ、では本題に入ってお兄様の部屋へ行きましょうか」
「へっ?」
「イヴァーノ様のご夫君の顔を見に行くのよ。あなた役に立たないのですもの…ご夫君から直接イヴァーノ様と会えるよう取り計らって頂くわ」
「それ…僕を呼ぶ必要ありました?」
「ほんのついでよ。あなた方顔見知りなのでしょう?」
か、カタリーナ様…強すぎでしょ…
その勉強会では様々な国の資源量や収穫量などについて語られ、その流れで母国アスタリアの状況を僅かにだが知ることが出来た。
これこそが社交界に縁を欲した私の望み。まさかこれほど最良な形で、信頼度の高い情報を得られるとは思わなかったが…
本当に。イヴ…感謝するよ…
終わらぬ内戦。
国を二分する統治の混乱に民の暮らしは日を追うごとに圧迫され、話を聞く限り状況はますます悪化しているように思えた。
「南から戻った子飼いの商人が持ち込んだ情報だがね…あの国はもう長くは持たないだろうとさ」
「駒を失わぬよう国境は封鎖され民は逃げ出すことも出来ぬらしい。惨いことだ」
「その…」
「どうされたビアジョッティ伯」
「サルディーニャはこの機に乗じアスタリアを獲ろうとは考えぬのだろうか?」
「うむ。王たる父にその気はない。近隣国であればまた別だが…アスタリアは遠征編隊を組んで出向くほど豊かな国ではないのでね」
「では同盟などもお考えにはならぬか…」
「我が国に何の利がある。このサルディーニャは地形、天候、資源すべてにおいて富める国なのだよ」
アスタリアに益はない、それはどの国にとっても共通認識なのだろう。だからこそ我が国は他国の脅威から逃れてきたのだから。だがそれでも…
それでも生まれ育った故郷を私は簡単に諦めきれない。あの偉大なる父の子、アスタリアの第三王子として。
焦っては駄目だ。いずれにしろルイージの機は熟していない。なればなんとしてもこの勉強会を次の機会へと繋げねば…
「しかし…、伯爵は王都まで名すら届かぬ長閑な男爵領の生まれだと聞いているが…随分博識なのだね。感心したよ」
「いえ、仰る通り王都に入ったばかりの私は何も知らない田舎者でした。その私に様々なことを教えてくれたのはイヴです」
「まさか!冗談だろう?」
「いえ。本当です。庶民の暮らし、宮廷の在り方、他国との関わり方、すべてイヴが日常の中で教えてくれました」
「私の知るイヴァーノはそれほど成績は良くなかったと思ったのだが…」
「ふふ、彼の思考は他者と一線を画すところがありますので。机上の勉学などで推し量れないのでしょう」
思わず知れたイヴの学生時代に思わず笑みがこぼれる。もしや試験勉強をさぼって縫物をしていたのではなかろうか。可愛い人だ。
イヴがいつからこの勉強会を念頭に置いていたかは分らぬ。が…彼は私が会で後れを取らぬようにと、社会の動きや世論を知れる週刊冊子を毎週届けさせてくれている。そのうえ老男爵の書斎には無い近年の書物まで揃えてくれた。ありがたいことだ。
なんでも朗読会で会った学院教師ヴィットーレの協力で揃えたという話だが…うむ。卒業後も生徒を想う良い教師ではないか。
「私の知る彼からは考えられない事ばかりだよ。…イヴァーノはよほど卿に骨抜きなのだね…」
「だと良いのですが…、ですが私の方がもっと彼に夢中なのですよ」
「相思相愛とは…羨ましい限りだな」
「父が言うにはコレッティ侯はイヴァーノが卿に迷惑をかけていないか気に病んでいたらしい…取り越し苦労だと伝えておかねばならないね」
私の素性、そして公爵家を怒らせたというイヴァーノ、コレッティ侯の立場を考え手紙を交わすことさえ控えていたが…これで安心下さるだろうか。
「よし決めた!ビアジョッティ伯、君は次回からもこの勉強会へ来るがいい!」
「そ、それはこの勉強会の一員に入れて頂けるということでしょうか!」
「ああ。君は分別があり教養に長け特にその芸術的知識は目を見張るほどだ。申し分ないと考えるよ。だが分っているだろうがイヴァーノの元婚約者であるパンクラツィオ公爵子息、本日不在であるが本来彼も顔ぶれの一人だ。構わないだろうか?」
些か思う所はあるが…今の私は手段を選べる立場ではない。望んだとおりの最良の結果、何の文句があろう。
「なんと光栄なことか。是非お願いしたい」
-----------------------
…なんでこんなとこに…
今現在、僕は二度目のお城でカタリーナ様の私室に居る。
何故かって?呼び出されたからだよっ!エヴァ指名で!診て欲しいって!
クッソめんどくさい!
お城には常駐のドクター居るはずでしょうが!ゲーム内でも二コラが失神した時どこからともなく飛んで来てたじゃないか!
院長め…分ってて休日出勤言いつけたな?アマーディオの健康診断といいカタリーナ様の出張診療と言い…王族には揉み手摺り手のゴマすりめ…王立病院の院長だから仕方ないけど。
「まあ!いつまでも怒らないで頂戴!少し驚かせたかったのよ」
「驚きましたよ!そりゃもう!朝「行ってらっしゃーい」って別れたばかりなのに同じ場所にいるなんて…」
何の冗談だよ!
ここはお城の生活部分。この長い廊下に並ぶ扉のどれかにフラヴィオたちは居る。
「それで?僕を呼びつけて何の用です?」
「まずはマルティノの件ご苦労だったわね。彼はあれから見違えるように生き生きとしているわ」
へー、そうなんだ。
「そんなことより用件は?あの三人にバレる前に帰らなくちゃ」
「ばれてはいけないのかしら?」
「そーじゃないけどなんか気まずいと言うか…」
挨拶して別れた知人に五分後会っちゃったときのあの空気感がね…いたたまれないと言うか…
「あなたに約束したお礼の件よ。わたくしのドレスを手直しさせてほしいと言ったでしょう?」
「あああれ!そういうことなら喜んで!」モミモミスリスリ
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「喜んでー!」
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デザインの権利料で稼ぐからにはよりたくさんのネタが必要だ。だがメンズファッションに限界はある。コスプレまで突き抜ければ別の話だが、それはまだ時代を先取りすぎだ。
となるとどうすべきか…
答えは一つ。ファッションと言ったら女性の独壇場。メンズからレディースにフィールドを移しただけで、デザインの幅は一気に広がる!
目の前にはカタリーナ様が「もう飽きちゃったの」とため息をつく、非常にゴージャスなドレスが数着かかっている。そのどれもが新品同様だ。
「これ…何回ぐらい着たんです?」
「二、三度かしら。わたくしはお母様に代わり国の顔として他国の要人にお会いすることもあるのよ?同じドレスなんて失礼に当たるわ」
…OLのお姉ちゃんは結婚式に出席するたびお呼ばれドレスを新調していた。どれも一度しか着ていないのに。きっと女性とはそういうものなんだろう…男の僕にはよくわからないが。
「本当に好きにしていいんですか?」
「いいわ。出来が良ければお友達のお誕生日に着て行ってあげるわよ。約束ですもの」
みなまで言う必要ないよね?カタリーナ様…オナシャス!
「さっ、では本題に入ってお兄様の部屋へ行きましょうか」
「へっ?」
「イヴァーノ様のご夫君の顔を見に行くのよ。あなた役に立たないのですもの…ご夫君から直接イヴァーノ様と会えるよう取り計らって頂くわ」
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