コスプレ令息 王子を養う

kozzy

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二人の打ち上げ

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さすがの僕にもほんのちょっぴり芽生えた罪悪感…
いくらパンキーが嫌いだからって、内乱が起きてる危険な国に追いやるつもりなんて、いくら血液サラサラのためとはいえサラサラなかったのに…

だってだって!ゲーム内の記述は四方を山に囲まれた小さな国…ってなってたから、普通そんなの牧歌的な田舎かな?って思うじゃん!

対処方法を見つけて安心したパンクラツィオはニコラの手を引き、人の気も知らないでまるで何もなかったかのようにキツネ狩りへと戻ってくし…マジで?それでいいの?

それに周りの皆も通常運転で、「やれやれやっと帰ったか」「人騒がせな」なんて言ってるし…ホントに?全員納得なの?

いいならいいけど…個人的にちょっと考えるか…


ってことで、平穏を取り戻した室内。呼び寄せられたセルジオたちも混ざってお茶会は再開されたが…

用も済んだしカタリーナ様も目的は達成したし僕はそろそろ帰ってもいいのじゃなかろうか。精神的疲労度が半端ない…

「フランコ、セルジオ、カタリーナ様が馬車貸してくれるって言うから一緒に帰らない?」

「いいとも!」ガタッ!
「よしっ帰るか!」ガタッ!

この待ってました感…ホロリ…

「じゃあ先に帰りますね。フラヴィオ様はどうぞごゆっくり。えっと、カタリーナ様、アマーディオ殿下、それからオーディエンスのみなさん、今日はありがとう!とっても楽しかった!また会いましょうー!さよーならー!」

スタンディングオベーションに見送られ…狂乱の勉強会、これにて終了!




…ってここで終わっちゃ気の毒でしょ。二人が…

二着ほどのドレスと共にシェアハウスへ戻った後、今度はビアジョッティ邸に場所を移し、フラヴィオの帰宅を待って今は庭でバーベキューの真っ最中だ。

実はなあなあになっていた釜戸増設だが、屋内設置を諦め実は最近庭にバーベキュー台を作成(僕が)したところだ。いやー、動画は何でも見漁っておくものだよね。石とレンガと泥だけで実に見事なバーベキュー台が出来たわ。オフグリットキャンプ動画、万歳!

「ルイージ君寒くない?」
「かまどの火が暖かいので大丈夫です。それよりイヴ様、そのソーセージを取っていただいても?」
「ルイージ君これ?ハイハイ」ヒョイヒョイ「熱いから気をつけてね」
「わたしはオニオンとナスをいただきましょうかな」
「ロデじいは自分で、まあいいや」ヒョイ「はいどうぞ」

因みにリコとエルモの分は最初に取り置きしてあるよ。さすがに一緒の場では食べられないからね。

「それにしてもこのソースに漬け込んだ肉…美味すぎだろ」
「複雑に風味が重なり合ってるな」
「でしょ?そのつけダレ自信作。あ、二人とももっと食べて!ビールは?ビールも買ってあるよ?今日はありがとねー」

心からの声援を二人スタッフにも!パチパチパチ…




-------------------



日中の騒動が幻のように、何事もなく和気あいあいと進む屋外での会食。ガーデンパーティーなど初めてではないが、まさか傭兵の野営のように戸外で調理をするなど…
驚きはしたがなんとも愉快な試みではないか。ルイージも頬を緩めて楽しんでいる。

「それにしてもイヴァーノ、今日は本当に驚いたな…」
「来るなら来るって前もって言えよ!」

「いやー、僕も病院でいきなり院長から言われて…ごめんごめん」

「いきなり…。ではイヴ、あの話はパンクラツィオ殿の病から思い付いた急拵えだったと言うのかい?」
「あー、まあ…その…」ムニャムニャ…

言葉を濁すイヴは恐らくセルジオとフランコ、二人の前で詳細を明らかにはしたくないのだろう。確かに…何も知らぬのなら知らずにいた方が良い。事は国を動かす事態になってしまったのだから。

それでも…
皆が肉に群がり二人きりになった機をみて、やはり美味しそうに肉を頬張るイヴに小さく問いかけてみた。

「イヴ、南の小国のことはいつから知っていたのだい」
「んぁ?」モグモグ「…なんて言ったらいいか…ぶっちゃけ最初から?」
「柘榴のことは…」
ブホッ!「…お、お告げ…みたいな?」

お告げ…なんと抽象的な…

「コレッティ候から聞いたのかい?」
「はあ?まさか!なんでお父様が!」

もちろんそうだろうとも。私と候はそのように話を決めたのだから。ましてや柘榴のことなど…、ああそうか…コレッティ家には嫁がれた母の伯父上が居たではないか…

「…イヴ、コレッティ候から私のことはなんと聞いている」
「んー?遠縁のワケアリとだけ。それよりフラヴィオ、トウモロコシ焼けてますよ」

…これは…
どう見ても嘘をついているようには見えぬイヴだが…私はこの目で何度も見たではないか。誰にも気づかぜずエヴァになりきる完璧なイヴの演技を。

ああそうか…。もしやイヴは最後まで知らぬ存ぜぬを貫くつもりか。であればその意は汲まねばならぬ。

「分ったよイヴ。君は何も知らない。そして私は田舎の男爵子息だ」
「…今さら何を…、パンクラツィオに会ったせいで熱でも出ました?」ペト

ギュ!「イヴ、それよりあれらを私が見逃すと思っているのかい?」
「あれら…」モ…グ…

奇想天外な展開に押しやられていたが…私はイヴのあの振る舞いを忘れている訳では無い。

「私という夫がありながら随分鼻の下を伸ばしていたじゃないか」

カッシャ…ァァァ…ン

「イヴ皿が…」
「ご!誤解ですよ!あれはただの診察で!」
「殿下はずいぶん君にご執心なようだね」
「否定はしませんけど、ぼ、ぼぼ、僕は何とも思ってませんから!」
「だが彼らはずいぶん見目が良い」
「みんなイケメンですけど僕にはどーでもいいです!そもそも僕は同性なんて!」

「ほう?同性の私を夫に持ちながらそのような事を言うのだね?」
「そういう意味じゃなくて同性だからって誰でもいいわけじゃないってい、」
「彼らは地位も名誉も何もかも持つ貴公子たちだ」

「だーかーらー!僕はフラヴィオ以外の同性なんて好きじゃないってば!」

「…本心かい?」
「当たり前!僕は見た目で人を好きになったりしない!そんなのいくらだって変えられるのに!僕が好きなのはフラヴィオの中身!内面だから!」
「内面…では私は特別だというのだね?」

「そう!別!別格!フラヴィオだけが僕の中で大バズリだから!」
「イヴ、私が好きかい?」
「めっちゃ好k、あっ!」

その好意は漂わせてもイヴは今まで率直な想いを明確な言葉にした事はない。隠し続けたそれを何度も唇に乗せたと気付き、瞬く間に頬を朱に染めるイヴが溜まらなく愛おしい…

「私も同じ気持ちだイヴ」
「あ…、そ…」カァァァァ!
「明日は休みだね」
「…」コクコク

「せっかくのドレスだが今夜針仕事はやめなさい。意味は分かるね」
「……」コクコクコク

イヴ…今夜こそ本当の夫夫になろう。








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