67 / 225
二人の打ち上げ ②
しおりを挟む
今僕は一人でお風呂場に居る。
フラヴィオはすでに入浴を済ませ先に寝室で僕を待っているところだ。
ドッドッドッドッドッ
心臓が全力疾走の後みたくなって今にも破裂しそう…
今日という日を僕は結婚初日、いや、お父さんに結婚を告げられたその夜から一応ぼんやりと覚悟はしていたつもりだ。
だってここはBLゲーの世界で…僕は悪役とはいえ受けなんだから…
だからと言ってすぐに「はい、やりましょう!」とはならなくて…僕はここでもあっちでもまだまだ十八歳のチェリーで…それどころか恋人だっていなかったんだから!
不幸中の幸いというか、僕の結婚相手はNLの国の人で、男の僕を夫夫だからっていきなり押し倒すことは無かったし、何より…
フラヴィオは生活力こそないものの人柄と顔の非常にすぐれた人格者で…なんだかんだ言いながら僕の中でフラヴィオの好感度はグングン上がっていった。
そのフラヴィオにリードされるまま、これは夫夫のコミュニケーション!と羞恥心を押しこめ自分自身を納得させながらキスだけは受け入れてきたけど…エ…ッチ…となったらそう簡単にはいかないわけで。
LIKEとLOVEの間には深くてながーい川が流れてて、それを飛び越えるのはDTの僕にとって容易じゃない。
だから〝趣味のお裁縫”を理由に、なんとなくその気っぽいフラヴィオを躱し続けてきたのだ…が!それももう終わり!
ピカチ〇ウがライチ〇ウへと進化するようにLIKEがLOVEへと大躍進を遂げた今!僕をためらわせるものはもう何も無い!
ゴシゴシゴシ…
庶民街で買ってきた石鹸よりずっと質のいい自家製の石鹸でやさしく身体を清める…そして…
フラヴィオのお馬さん、グリオールとグラビティの抜け毛から抽出した馬油。
その中に今日この日のために用意したリンデンブロッサムのアロマを一滴…その特製ボディオイルで吸いつくようなお肌をメイキング。
うーん、フローラルで甘くて、それでいてどこか爽やかな、ティーンの新妻、僕にピッタリ!
このアロマオイルはフラヴィオへのLOVEを自覚した後、こんなこともあろうかと奮発して貴族街の香油屋さんへ買いに行ったものだ。テレテレ…
ほのかに香を漂わせたら…やっぱりこの日のためにコッソリ自作したレースの部屋着を身に着け完成。
これはフラヴィオのクラヴァットに使ったシルク(イヴァーノの夏用ナイトガウン)の残り生地で作ったキャミソールとショートパンツの上下で、どちらも裾にレースをあしらってある。
貴族の寝間着といえばネグリジェタイプが基本だが、僕は普通にパジャマを使用していた。フラヴィオに着せてたのもパジャマタイプだ。(ネグリジェはちょっとね…)
僕にとって唯一の懸念事項は、いくらフラヴィオが男の僕を好きになってくれたとはいえ、彼はBLには免疫のない国で生まれ育った人だもん。いざとなったら正気に返るかも知れない…ってこと。だからって人を沼落ちさせといて今さらそれはあんまりでしょ!
だから僕は…エッチなコスプレにならないギリギリを攻めた、あくまで清純をキープしたセクシー衣装でフラヴィオをその気にさせようと決めていたのだ。
冷静に考えるとやられる気マンマンで我ながらどうかと思うが…ブルブルブル、いいの!
待っててフラヴィオ、今行くよ!
-----------------------
イヴが「今日は別々でお風呂にしましょう」そう頑なに主張するので、私は先に湯浴みを済ませ寝台の上で彼を待つことにした。
様子を伺うに怖気づいているようには見受けられない。ならばなにがしかの準備があるのだろう。
準備…それは私も同じことだ。
書斎で見つけた古い市井の春本。前男爵は女性よりも同性の受け形が好きだったと見える。描かれていたのは同性の行為だ。
流石に私も同性との行為は情報が無い。何とかなるだろうと安易に考えていたのだが…詳しく知れば知るほどあの春本を発見できたのがどれほど幸いなことだったかを思い知らされた。
然るべき準備無くしてイヴに快楽を与えることは出来ないのだ。それを怠ればそこにあるのは苦痛のみ。だが愛するイヴをその様な目に合わせてよいわけがない。私は再度、春本に記されていた手順を脳裏に思い浮かべた。
そしてヘッドボードに置かれた小さな小瓶を手に取り中身を確認する。
トロリとした濃厚な液体。
これこそが同性における愛の行為に無くてはならない必需品。そう、二人の行為に必要な潤滑油…
私はそれを、あのメルカートで密かに発見していたのだ。
店主にとってはごく普通の売り物なのだろう。どうということもない、そのような顔で、ごく普通の挨拶を交わしながらごく普通に品と金子を交換したが…酷く落ち着かない私にとってそれだけが救いであった。
余談ではあるが私がそのような買い物をしている間にルイージとリコが買い入れたのはイヴへのお白粉入れだ。
私が内心でどれほど己を恥じ入ったか、それは筆舌に尽くしがたい。
だがその甲斐ありこうして全ては整える事が出来たと思う。そう、あとはイヴを待つばかりだ。
半刻ほど待っただろうか。暖炉の熱ですでに髪も乾き始めている。
耳にかかる程度の長さで切り落とされていた髪も今では肩に付こうとしている。
イヴが好むのであれば短髪を維持するのもやぶさかでない、そう考えていたのだが…もしかすると一年後のアスタリアは何らかの変化を迎えるかもしれない。であれば万が一を考え髪は伸ばしておくがいいだろう。
そんな思考を遮り静かに扉が開けられる。
ギィィィィ…
「お待たせしました。えっと…どうかな?」
「イ…」
「フラヴィオ?」
そこには真白な薄着に身を包んだ、母国に伝わる伝説の妖精…シァナが陶然と微笑んでいた…
フラヴィオはすでに入浴を済ませ先に寝室で僕を待っているところだ。
ドッドッドッドッドッ
心臓が全力疾走の後みたくなって今にも破裂しそう…
今日という日を僕は結婚初日、いや、お父さんに結婚を告げられたその夜から一応ぼんやりと覚悟はしていたつもりだ。
だってここはBLゲーの世界で…僕は悪役とはいえ受けなんだから…
だからと言ってすぐに「はい、やりましょう!」とはならなくて…僕はここでもあっちでもまだまだ十八歳のチェリーで…それどころか恋人だっていなかったんだから!
不幸中の幸いというか、僕の結婚相手はNLの国の人で、男の僕を夫夫だからっていきなり押し倒すことは無かったし、何より…
フラヴィオは生活力こそないものの人柄と顔の非常にすぐれた人格者で…なんだかんだ言いながら僕の中でフラヴィオの好感度はグングン上がっていった。
そのフラヴィオにリードされるまま、これは夫夫のコミュニケーション!と羞恥心を押しこめ自分自身を納得させながらキスだけは受け入れてきたけど…エ…ッチ…となったらそう簡単にはいかないわけで。
LIKEとLOVEの間には深くてながーい川が流れてて、それを飛び越えるのはDTの僕にとって容易じゃない。
だから〝趣味のお裁縫”を理由に、なんとなくその気っぽいフラヴィオを躱し続けてきたのだ…が!それももう終わり!
ピカチ〇ウがライチ〇ウへと進化するようにLIKEがLOVEへと大躍進を遂げた今!僕をためらわせるものはもう何も無い!
ゴシゴシゴシ…
庶民街で買ってきた石鹸よりずっと質のいい自家製の石鹸でやさしく身体を清める…そして…
フラヴィオのお馬さん、グリオールとグラビティの抜け毛から抽出した馬油。
その中に今日この日のために用意したリンデンブロッサムのアロマを一滴…その特製ボディオイルで吸いつくようなお肌をメイキング。
うーん、フローラルで甘くて、それでいてどこか爽やかな、ティーンの新妻、僕にピッタリ!
このアロマオイルはフラヴィオへのLOVEを自覚した後、こんなこともあろうかと奮発して貴族街の香油屋さんへ買いに行ったものだ。テレテレ…
ほのかに香を漂わせたら…やっぱりこの日のためにコッソリ自作したレースの部屋着を身に着け完成。
これはフラヴィオのクラヴァットに使ったシルク(イヴァーノの夏用ナイトガウン)の残り生地で作ったキャミソールとショートパンツの上下で、どちらも裾にレースをあしらってある。
貴族の寝間着といえばネグリジェタイプが基本だが、僕は普通にパジャマを使用していた。フラヴィオに着せてたのもパジャマタイプだ。(ネグリジェはちょっとね…)
僕にとって唯一の懸念事項は、いくらフラヴィオが男の僕を好きになってくれたとはいえ、彼はBLには免疫のない国で生まれ育った人だもん。いざとなったら正気に返るかも知れない…ってこと。だからって人を沼落ちさせといて今さらそれはあんまりでしょ!
だから僕は…エッチなコスプレにならないギリギリを攻めた、あくまで清純をキープしたセクシー衣装でフラヴィオをその気にさせようと決めていたのだ。
冷静に考えるとやられる気マンマンで我ながらどうかと思うが…ブルブルブル、いいの!
待っててフラヴィオ、今行くよ!
-----------------------
イヴが「今日は別々でお風呂にしましょう」そう頑なに主張するので、私は先に湯浴みを済ませ寝台の上で彼を待つことにした。
様子を伺うに怖気づいているようには見受けられない。ならばなにがしかの準備があるのだろう。
準備…それは私も同じことだ。
書斎で見つけた古い市井の春本。前男爵は女性よりも同性の受け形が好きだったと見える。描かれていたのは同性の行為だ。
流石に私も同性との行為は情報が無い。何とかなるだろうと安易に考えていたのだが…詳しく知れば知るほどあの春本を発見できたのがどれほど幸いなことだったかを思い知らされた。
然るべき準備無くしてイヴに快楽を与えることは出来ないのだ。それを怠ればそこにあるのは苦痛のみ。だが愛するイヴをその様な目に合わせてよいわけがない。私は再度、春本に記されていた手順を脳裏に思い浮かべた。
そしてヘッドボードに置かれた小さな小瓶を手に取り中身を確認する。
トロリとした濃厚な液体。
これこそが同性における愛の行為に無くてはならない必需品。そう、二人の行為に必要な潤滑油…
私はそれを、あのメルカートで密かに発見していたのだ。
店主にとってはごく普通の売り物なのだろう。どうということもない、そのような顔で、ごく普通の挨拶を交わしながらごく普通に品と金子を交換したが…酷く落ち着かない私にとってそれだけが救いであった。
余談ではあるが私がそのような買い物をしている間にルイージとリコが買い入れたのはイヴへのお白粉入れだ。
私が内心でどれほど己を恥じ入ったか、それは筆舌に尽くしがたい。
だがその甲斐ありこうして全ては整える事が出来たと思う。そう、あとはイヴを待つばかりだ。
半刻ほど待っただろうか。暖炉の熱ですでに髪も乾き始めている。
耳にかかる程度の長さで切り落とされていた髪も今では肩に付こうとしている。
イヴが好むのであれば短髪を維持するのもやぶさかでない、そう考えていたのだが…もしかすると一年後のアスタリアは何らかの変化を迎えるかもしれない。であれば万が一を考え髪は伸ばしておくがいいだろう。
そんな思考を遮り静かに扉が開けられる。
ギィィィィ…
「お待たせしました。えっと…どうかな?」
「イ…」
「フラヴィオ?」
そこには真白な薄着に身を包んだ、母国に伝わる伝説の妖精…シァナが陶然と微笑んでいた…
1,157
あなたにおすすめの小説
【短編】花婿殿に姻族でサプライズしようと隠れていたら「愛することはない」って聞いたんだが。可愛い妹はあげません!
月野槐樹
ファンタジー
妹の結婚式前にサプライズをしようと姻族みんなで隠れていたら、
花婿殿が、「君を愛することはない!」と宣言してしまった。
姻族全員大騒ぎとなった
冷遇王妃はときめかない
あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。
だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。
『有能すぎる王太子秘書官、馬鹿がいいと言われ婚約破棄されましたが、国を賢者にして去ります』
しおしお
恋愛
王太子の秘書官として、陰で国政を支えてきたアヴェンタドール。
どれほど杜撰な政策案でも整え、形にし、成果へ導いてきたのは彼女だった。
しかし王太子エリシオンは、その功績に気づくことなく、
「女は馬鹿なくらいがいい」
という傲慢な理由で婚約破棄を言い渡す。
出しゃばりすぎる女は、妃に相応しくない――
そう断じられ、王宮から追い出された彼女を待っていたのは、
さらに危険な第二王子の婚約話と、国家を揺るがす陰謀だった。
王太子は無能さを露呈し、
第二王子は野心のために手段を選ばない。
そして隣国と帝国の影が、静かに国を包囲していく。
ならば――
関わらないために、関わるしかない。
アヴェンタドールは王国を救うため、
政治の最前線に立つことを選ぶ。
だがそれは、権力を欲したからではない。
国を“賢く”して、
自分がいなくても回るようにするため。
有能すぎたがゆえに切り捨てられた一人の女性が、
ざまぁの先で選んだのは、復讐でも栄光でもない、
静かな勝利だった。
---
四天王一の最弱ゴブリンですが、何故か勇者に求婚されています
書鈴 夏(ショベルカー)
BL
「アイツは四天王一の最弱」と呼ばれるポジションにいるゴブリンのオルディナ。
とうとう現れた勇者と対峙をしたが──なぜか求婚されていた。倒すための作戦かと思われたが、その愛おしげな瞳は嘘を言っているようには見えなくて──
「運命だ。結婚しよう」
「……敵だよ?」
「ああ。障壁は付き物だな」
勇者×ゴブリン
超短編BLです。
姉の聖女召喚に巻き込まれた無能で不要な弟ですが、ほんものの聖女はどうやら僕らしいです。気付いた時には二人の皇子に完全包囲されていました
彩矢
BL
20年ほど昔に書いたお話しです。いろいろと拙いですが、あたたかく見守っていただければ幸いです。
姉の聖女召喚に巻き込まれたサク。無実の罪を着せられ処刑される寸前第4王子、アルドリック殿下に助け出さる。臣籍降下したアルドリック殿下とともに不毛の辺境の地へと旅立つサク。奇跡をおこし、隣国の第2皇子、セドリック殿下から突然プロポーズされる。
辺境伯令息の婚約者に任命されました
風見ゆうみ
恋愛
家が貧乏だからという理由で、男爵令嬢である私、クレア・レッドバーンズは婚約者であるムートー子爵の家に、子供の頃から居候させてもらっていた。私の婚約者であるガレッド様は、ある晩、一人の女性を連れ帰り、私との婚約を破棄し、自分は彼女と結婚するなどとふざけた事を言い出した。遊び呆けている彼の仕事を全てかわりにやっていたのは私なのにだ。
婚約破棄され、家を追い出されてしまった私の前に現れたのは、ジュード辺境伯家の次男のイーサンだった。
ガレッド様が連れ帰ってきた女性は彼の元婚約者だという事がわかり、私を気の毒に思ってくれた彼は、私を彼の家に招き入れてくれることになって……。
※筆者が考えた異世界の世界観であり、設定はゆるゆるで、ご都合主義です。クズがいますので、ご注意下さい。
婚約破棄された悪役令嬢の心の声が面白かったので求婚してみた
夕景あき
恋愛
人の心の声が聞こえるカイルは、孤独の闇に閉じこもっていた。唯一の救いは、心の声まで真摯で温かい異母兄、第一王子の存在だけだった。
そんなカイルが、外交(婚約者探し)という名目で三国交流会へ向かうと、目の前で隣国の第二王子による公開婚約破棄が発生する。
婚約破棄された令嬢グレースは、表情一つ変えない高潔な令嬢。しかし、カイルがその心の声を聞き取ると、思いも寄らない内容が聞こえてきたのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる