コスプレ令息 王子を養う

kozzy

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二人の小さな思案事

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いやー、びっくりしたね。マッティオ氏があんなビッグビジネス持ってくるとは…驚きだよ!
けど…、これが軌道に乗れば今度こそ念願のゆとりある生活が待っている…

そうしたらフラヴィオが前から手をつけたがってたホールとサロン以外の部屋も模様替えが出来るし、夏になったらルイルイを連れて家族旅行に行く…なーんて大望も叶うかもしれない。
頑張れマッティオ氏!応援体制はすでに万全!

なにしろすでに手元にはカタリーナ様のドレスがある。
それはエッチ…を強行しようとするフラヴィオとの攻防をかいくぐってもうすぐ完成するところだ。

この国の神様が素肌を嫌うおかげで、この世界のドレスはどれも首までしっかり隠れていてちょっと野暮っt、お堅い。
鎖骨がでるデザインのものは大抵シフォンのスカーフやつけ襟的な何かでガッチリガードされている。

僕が考えるにこれは、BLゲーであるあのゲームに背景モブ以外の女性キャラが出ていなかったからだ。
そのちょろっと描かれていたモブキャラが総じて肌色率の低い地味目のドレスだったため、悪い形で反映されてしまったのだろう。

さて、十六歳のカタリーナ様に誂えられるそんなドレスはどれもかなり乙女っぽい。

僕が持ってきたドレスも例にもれず、昼用のドレスは鎖骨から上がフリルで立ち襟みたいになったワンピースドレスで、肩には大きなリボンがあしらわれ、袖はバルーンで、袖口にもまたまたレースとフリルがいっぱいあしらわれている。
夜用ドレスも同じく首から上に付け襟を装着したツーピースドレスで、袖は五分丈で三段のヒラヒラ。ボトムスも三段フリルの乙女チックなデザインになっている。

そこで僕はまず、神様対策として鎖骨から首部分に、すごく細いベージュの糸で編まれたレース生地(チュール生地みたいな)を使って、まるで素肌かのように演出をしたのだ。
これは冬場に露出の多いコスをする場合の防寒対策(コス時は肌色のパワーネット使用)なのだが、フィギュアスケートのコスにも使われる手法で、疑似素肌とでも言おうか…

特注で作ってもらったこのレース生地は正直とても高くて…ビアジョッティ家の経済をかなり圧迫したのだが、これもまた先行投資。出すべきところは出す。これが満足のいくコスをするための鉄則である。

そのうえで、まずディドレスからは大きなリボンを取っ払い、ウエストのベルトを外すと僕の趣味丸出しのフリルをあしらった甘ロリっぽいコルセットへと変更した。これはコルセットとはインナー、と言う概念を取っ払った非常に斬新かつ革新的なデザインである。

そしてナイトドレス。
首周りの付け襟を外し鎖骨下まで胸元を開けただけで大人のセクシー漂う一品に大変身!さすが腐っても王宮付きのデザイナー(失礼)。だが注目すべきはその最低な機能性部分…

この世界のドレスは中にアンダースカートとして何枚も何枚も固いペチコートを重ねあのふくらみを再現している。これでは重いし脱ぎ着も大変だし大腿筋が発達してしまう。

それにあのコルセット。コルセット自体は大好物だが、あの紐コルセットはめんどくさいうえ、あんなに締め付けては不健康だ。

そこで僕は重たいペチコートの代わりに自作のアンダースカート、ワイヤーパニエを使うことにした。

これは布に輪っか状の針金を組み合わせて作ったスカートを膨らませるハリボテで、令嬢コスとかロリータでは割と使用されるアイテムである。
これ一枚でふくらみと裾周りのフリルを作れることからかなりの軽量化が期待できる。だって夜会でダンスイコール筋トレ、とか普通に嫌じゃん?

因みにワイヤーパニエは蛇腹の様に折りたためるので座る事ももちろん可能だ。念のため。

次はコルセットの問題だが、僕はフランコのお父さんに針金の残りで作ってもらったホックによって、紐よりも着脱が簡単でシンプルなコルセットを作り上げた。

ワイヤーパニエがあれば腰から膨らむので、あれ程締め上げてウエストを作る必要はない。バストを持ち上げるだけならこれで十分だ。だって失神するほど締め上げる…とか、それもう拷問じゃん?

淑女として苦しい衣装を余儀なくされるご婦人の皆様にはきっとお喜びいただけると自負している。
カタリーナ様はこれを見て何て言うだろう…ドキドキ…

けどこれらが認められれば…僕のステータスはイッキに爆上がりだ!




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「イヴ…相談があるのだが…」
「んー、なにフラヴィオ。あっ!ドレスが出来たかどうかって言うなら…で、出来たことは出来マシタケド…」

ここのところイヴは以前と同じように針仕事をするための私室へと籠り続けていた。そのため私たちはあの日から三週間たつというのに、まだ数度しか肌を重ねられないでいる。それに不満の声を漏らしたことはないつもりなのだが…
ドレスが出来た、それはつまり今夜は共寝をしても良い、そういう意味だろう。私はそれほど顔に出していたのだろうか。フラヴィオ・ビアジョッティ…この未熟者め。

「イヴ、それは嬉しいがそうではない。私が心配しているのはルイージの事だ」
「ルイルイ…」

「殿下の勉強会に名を連ねることが決まってから私のところにも様々な誘いが舞い込み始めていてね」
「ほほう、お誘い…」
「社交クラブへの誘いやポーカーの会などだよ」
「え?もちろん行っていいですよ?僕の服を着てじゃんじゃんどうぞ。あっ!お小遣いの増額ですか?これも必要経費ですもんね。分かりました」ジャラ

満面の笑みで財布を取り出すイヴ。その仕草が何とも可愛らしい。

「イヴ、小遣いは今のままで構わないよ」
「そっか。みんな家よりお金持ち…おごり上等ですか。ラッキーですね」

ふふ、こんなイヴの逞しさも私の彼を好ましく感じる部分だ。

「それより話したろう?ルイージの教育を強化したいと」
「ああそっち…」

先日機を見てイヴと話し合ったのは、これよりルイージにはもっと踏み込んだ統治に関わる教育を受けさせたいという内容である。

「へー?大きく出ましたね…。確かにルイージ君には大物になりそうなポテンシャルを感じますけど…」

イヴは分かったのか分からないのか判断しかねる顔をしながら、それでも「必要な本があったら言ってくださいね。専用司書ヴィットーレに頼んでおきますから」そう頷いてくれたのだが…

「私の不在が多くてはそれもままならぬと懸念していてね。今が大事な時なのにどうしたものか…」
「うーん。それは由々しき問題ですね。少し考えます」

「そうしてもらえると助かるよ」

出来上がったドレスを持ってイヴは近々城に上がるという。
であれば今夜は二人の時間を堪能しよう…




そんな会話を交わした数日後、イヴは戯っぽく笑いながら私とルイージをサロンに呼び寄せる。

「えっと…ルイージ君のいい勉強場所が決まりました。その場所は…」

妙な予感がする。良いのか悪いのか判断しかねる妙な予感が…
だがもう何を聞いても私は驚かない。





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