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フルコンボ!
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カタリーナ様のドレス、僕のブラウス、萌えメイド服、この日のために用意した三つの攻撃はフルコンボ成功…っと。
だが僕にはもう一つだけすべきことがある。
それはマッティオ氏から頼まれた、イヴァーノ・モード、プレタポルテの告知である。
量産体制が整ったマッティオ氏は僕の夜会出席を見逃さなかった。そこで詳細の記載されたペーパー配布を頼まれたのだ。
だからと言ってこの手の貴人はここでも前世でもチラシ、ティッシュの類は受け取ってもらえないのが鉄板である。
考えた僕は家にあった端切れをキレイに染め、それで大量に巻き薔薇のヘアリボンを作り上げた。
ちょっとアンティーク感のある直径五センチほどの可愛い巻き薔薇。小物作りもレイヤーの基本作業である。これくらいはお手の物だ。
巻き薔薇は材料さえ用意してしまえばひとつ作り上げるのにかかる時間は五分ほど。合計百個ほどを僅か二日で作り上げた僕を誰か褒めて欲しい。
丸めたチラシを巻き薔薇のリボンで留め、挨拶を交わした相手にひと筒づつ手渡していく。…モードの代表自ら地道な営業である。
あらかたすべき事が済んだ頃、ようや重鎮夫人たちから解放されたカタリーナ様が婦人室から姿を現す。
そのタイミングを見計らって僕とフラヴィオは恭しく側に仕える。これは打ち合わせ済みのアクションだ。
カタリーナ様はイヴァーノ・モードがお気に入りだし、フラヴィオは兄であるアマーディオのお気に入りだ。側に侍って何もおかしいことは無い。
「イヴァーノ、お仕事は終わったかしら」
「ええまあだいたい」
「それで…なにか愉快なものを見せてくれるのではなかった?」
待っていたよこの時を…
「フラヴィオ、打ち合わせどおりにお願いします」
「ああ」
コレッティ家ではこの夜会のためにミニ楽団を呼び寄せていた。
バイオリン二名、チェロ一名、ハープ一名、そしてフルート一名、クラリネット一名、という編成のBGM隊。
その一人からバイオリンを借りて構えるフラヴィオ。
そして僕は即席で用意した疑似太鼓、左右に二つ並べた布張りボウルのまえでバチを構える。
落ち込むときには音楽が一番。カラオケが無いのは残念だけど、代わりに僕とフラヴィオはカタリーナ様を元気づけるために、二人で演奏をプレゼントしようと計画していたのだ。
実は今から奏でようとしているのは『ドキナイ』のオープニングテーマである。
実はこの曲サルディーニャの国歌だったりする。
その国歌とは世界的にも有名な、太陽を讃えるカンツォーネである。
ゲームのオープニングはアップテンポのロックアレンジなのだが、僕はある日そのカンツォーネが、限定キャラグッズを手に入れるため足を運んだゲーセンの〝〇〇の達人” のなかに入っていることを発見したのだ。
ここでお知らせしておこう。
音楽の素養など少しもない僕だが得意なものがひとつある。
それは父を師匠に幼い頃から精通した…リズムゲーだ。
僕が後年音ゲーと呼ばれる、数人のイケメンごとに四つから五つのグループに分け、イベント時はグループごとに売り上げを競わせファンの親指と財布を狙い撃つ、…という悪のソシャゲにハマったのはここに原点がある…
とにかくそんな訳で、僕はこの曲をゲーセンで見つけた時、鬼レベルで高得点をたたき出すまであきらめず挑戦し続けたのだ。曲を聞けば今でも条件反射で叩ける自信がある。
そしてフラヴィオはフラヴィオでこの国に早く馴染むようにとずいぶん早くから国歌を覚えていた。
そして屋敷に残されていた半分壊れたバイオリンを自力で修繕し、気がむくと演奏していた。
そんな二人のマリアージュ、とくとご覧あれ!
ゆるやかに始まり中盤から後半に向けて激しくなるリズム。それをフルコンボ目指して〝良” を量産していく。そんじょそこらのドラム隊にも負けないこのテクニック!二つのボウル、そしてテーブルは小気味よくドンドンカッカッとリズムを刻んでいる!
そして「チョッ早で」とお願いしたフラヴィオのバイオリンも僕の16ビートをしっかりとらえて離さない!
聴いたことないアップテンポなアレンジに会場は騒然、誰もが立ち止まり手を止め聴き入っている。あーこれこれ、この人だかり…カ・イ・カ・ン…。と、その時。
~♪
ふぁ!な、何ぞ!?
そこに重なる軽やかなフルート。だ、誰⁉
視界の端に映りこむのはオーロラに輝くブルードレス。カ、カタリーナ様ぁ!?
挑発的な視線でこちらを見る彼女は身体を左右に揺らしすっかりリズムを捉えている。くっ!センターを奪う気か!だがまだまだぁ!僕の鬼連打はここからだ!ドンダフルコンボ!!魂の虹色冠!!!
ダダダダダダダダダ…ダン!!! 終わ…った…
パチパチパチパチ!!!
大喝采。
「ふぃー、やり切りましたよ」フキフキ
「見事だったよイヴ」
「フラヴィオもなかなか…そうだ!カタリーナ様!」
そこには楽団員にフルートを返すカタリーナ様の姿が。嬉しそうな奏者。きっとあの楽団員はあのフルートを家宝にすることだろう。
「カタリーナ様」
「ふふ、イヴァーノったら。国歌をあんな風にアレンジするだなんて…大胆なのね」
大胆なイヴァーノ、の言葉にピクリと反応するフラヴィオ。いや違うから。
「驚きました、いきなりセッションしてくるから」
「あなた方があまりに生き生きと楽しそうだから…混ざりたいと思ってしまったの。いけなかったかしら」
「いいえ!大歓迎です」
「イヴァーノ、あなたはいつも自分自身の思いを言葉や行動で表わすのね」
「僕の生きざまは演歌でなくロックですから」
「イヴにはいつどんなときにも信念があるのですよ。誤解されることも多いが…」
「ええフラヴィオ。わたくしにも分かっていてよ」
僕は大いなる力には屈しない!
むしろ僕のいる場所こそが多数派になる。ソウイフモノニワタシハナリタイ。
と、そこへ賞賛を口にしながら集まってくる兄二人。
「イヴァーノあれはいつの間に身につけたのだい?」
「お前はピアノすらも初歩程度だと思っていたのだが…ティンパニが得意だったのか⁉ 」
そっか。イヴァーノは音楽も聴く専か。うんうんなるほどね。えーと、この場合適切なのは…
「…家を出されてからの行き場のない怒りを打楽器にぶつけたらこうなりました」
「なるほど…マレットは無事だったかい?」
「ははは、道理で!」
「やだなあ、納得しないでくださいよ、てへ☆」
僕と兄二人の兄弟漫才を横目にフラヴィオはカタリーナ様に問いかける。
「姫殿下、今宵は楽しめましたか?」
「フラヴィオ…ええとても。とても気が晴れたわ」
久々の満開笑顔。それならダメ押し。
「あーホラ。楽団が演奏始めましたよ。せっかくですからフラヴィオとダンスでもどうぞ」
「イヴァーノ、あなたは踊らなくて?」
「これ以上目立つのはちょっと…」
というか踊れなくてね。
残念そうなフラヴィオ。でもこればかりはしょうがない。だってイヴァーノはダンスが得意だったんだから。さすがにバレるっしょ…
「では姫殿下、お手をどうぞ」
「まあ、ありがとう」
美少女と美形の流麗なダンス。
ボヘーっと見ていたこの日のダンスが新たな噂を巻き起こすことになるとは…
この時誰に予想できただろう。
だが僕にはもう一つだけすべきことがある。
それはマッティオ氏から頼まれた、イヴァーノ・モード、プレタポルテの告知である。
量産体制が整ったマッティオ氏は僕の夜会出席を見逃さなかった。そこで詳細の記載されたペーパー配布を頼まれたのだ。
だからと言ってこの手の貴人はここでも前世でもチラシ、ティッシュの類は受け取ってもらえないのが鉄板である。
考えた僕は家にあった端切れをキレイに染め、それで大量に巻き薔薇のヘアリボンを作り上げた。
ちょっとアンティーク感のある直径五センチほどの可愛い巻き薔薇。小物作りもレイヤーの基本作業である。これくらいはお手の物だ。
巻き薔薇は材料さえ用意してしまえばひとつ作り上げるのにかかる時間は五分ほど。合計百個ほどを僅か二日で作り上げた僕を誰か褒めて欲しい。
丸めたチラシを巻き薔薇のリボンで留め、挨拶を交わした相手にひと筒づつ手渡していく。…モードの代表自ら地道な営業である。
あらかたすべき事が済んだ頃、ようや重鎮夫人たちから解放されたカタリーナ様が婦人室から姿を現す。
そのタイミングを見計らって僕とフラヴィオは恭しく側に仕える。これは打ち合わせ済みのアクションだ。
カタリーナ様はイヴァーノ・モードがお気に入りだし、フラヴィオは兄であるアマーディオのお気に入りだ。側に侍って何もおかしいことは無い。
「イヴァーノ、お仕事は終わったかしら」
「ええまあだいたい」
「それで…なにか愉快なものを見せてくれるのではなかった?」
待っていたよこの時を…
「フラヴィオ、打ち合わせどおりにお願いします」
「ああ」
コレッティ家ではこの夜会のためにミニ楽団を呼び寄せていた。
バイオリン二名、チェロ一名、ハープ一名、そしてフルート一名、クラリネット一名、という編成のBGM隊。
その一人からバイオリンを借りて構えるフラヴィオ。
そして僕は即席で用意した疑似太鼓、左右に二つ並べた布張りボウルのまえでバチを構える。
落ち込むときには音楽が一番。カラオケが無いのは残念だけど、代わりに僕とフラヴィオはカタリーナ様を元気づけるために、二人で演奏をプレゼントしようと計画していたのだ。
実は今から奏でようとしているのは『ドキナイ』のオープニングテーマである。
実はこの曲サルディーニャの国歌だったりする。
その国歌とは世界的にも有名な、太陽を讃えるカンツォーネである。
ゲームのオープニングはアップテンポのロックアレンジなのだが、僕はある日そのカンツォーネが、限定キャラグッズを手に入れるため足を運んだゲーセンの〝〇〇の達人” のなかに入っていることを発見したのだ。
ここでお知らせしておこう。
音楽の素養など少しもない僕だが得意なものがひとつある。
それは父を師匠に幼い頃から精通した…リズムゲーだ。
僕が後年音ゲーと呼ばれる、数人のイケメンごとに四つから五つのグループに分け、イベント時はグループごとに売り上げを競わせファンの親指と財布を狙い撃つ、…という悪のソシャゲにハマったのはここに原点がある…
とにかくそんな訳で、僕はこの曲をゲーセンで見つけた時、鬼レベルで高得点をたたき出すまであきらめず挑戦し続けたのだ。曲を聞けば今でも条件反射で叩ける自信がある。
そしてフラヴィオはフラヴィオでこの国に早く馴染むようにとずいぶん早くから国歌を覚えていた。
そして屋敷に残されていた半分壊れたバイオリンを自力で修繕し、気がむくと演奏していた。
そんな二人のマリアージュ、とくとご覧あれ!
ゆるやかに始まり中盤から後半に向けて激しくなるリズム。それをフルコンボ目指して〝良” を量産していく。そんじょそこらのドラム隊にも負けないこのテクニック!二つのボウル、そしてテーブルは小気味よくドンドンカッカッとリズムを刻んでいる!
そして「チョッ早で」とお願いしたフラヴィオのバイオリンも僕の16ビートをしっかりとらえて離さない!
聴いたことないアップテンポなアレンジに会場は騒然、誰もが立ち止まり手を止め聴き入っている。あーこれこれ、この人だかり…カ・イ・カ・ン…。と、その時。
~♪
ふぁ!な、何ぞ!?
そこに重なる軽やかなフルート。だ、誰⁉
視界の端に映りこむのはオーロラに輝くブルードレス。カ、カタリーナ様ぁ!?
挑発的な視線でこちらを見る彼女は身体を左右に揺らしすっかりリズムを捉えている。くっ!センターを奪う気か!だがまだまだぁ!僕の鬼連打はここからだ!ドンダフルコンボ!!魂の虹色冠!!!
ダダダダダダダダダ…ダン!!! 終わ…った…
パチパチパチパチ!!!
大喝采。
「ふぃー、やり切りましたよ」フキフキ
「見事だったよイヴ」
「フラヴィオもなかなか…そうだ!カタリーナ様!」
そこには楽団員にフルートを返すカタリーナ様の姿が。嬉しそうな奏者。きっとあの楽団員はあのフルートを家宝にすることだろう。
「カタリーナ様」
「ふふ、イヴァーノったら。国歌をあんな風にアレンジするだなんて…大胆なのね」
大胆なイヴァーノ、の言葉にピクリと反応するフラヴィオ。いや違うから。
「驚きました、いきなりセッションしてくるから」
「あなた方があまりに生き生きと楽しそうだから…混ざりたいと思ってしまったの。いけなかったかしら」
「いいえ!大歓迎です」
「イヴァーノ、あなたはいつも自分自身の思いを言葉や行動で表わすのね」
「僕の生きざまは演歌でなくロックですから」
「イヴにはいつどんなときにも信念があるのですよ。誤解されることも多いが…」
「ええフラヴィオ。わたくしにも分かっていてよ」
僕は大いなる力には屈しない!
むしろ僕のいる場所こそが多数派になる。ソウイフモノニワタシハナリタイ。
と、そこへ賞賛を口にしながら集まってくる兄二人。
「イヴァーノあれはいつの間に身につけたのだい?」
「お前はピアノすらも初歩程度だと思っていたのだが…ティンパニが得意だったのか⁉ 」
そっか。イヴァーノは音楽も聴く専か。うんうんなるほどね。えーと、この場合適切なのは…
「…家を出されてからの行き場のない怒りを打楽器にぶつけたらこうなりました」
「なるほど…マレットは無事だったかい?」
「ははは、道理で!」
「やだなあ、納得しないでくださいよ、てへ☆」
僕と兄二人の兄弟漫才を横目にフラヴィオはカタリーナ様に問いかける。
「姫殿下、今宵は楽しめましたか?」
「フラヴィオ…ええとても。とても気が晴れたわ」
久々の満開笑顔。それならダメ押し。
「あーホラ。楽団が演奏始めましたよ。せっかくですからフラヴィオとダンスでもどうぞ」
「イヴァーノ、あなたは踊らなくて?」
「これ以上目立つのはちょっと…」
というか踊れなくてね。
残念そうなフラヴィオ。でもこればかりはしょうがない。だってイヴァーノはダンスが得意だったんだから。さすがにバレるっしょ…
「では姫殿下、お手をどうぞ」
「まあ、ありがとう」
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