コスプレ令息 王子を養う

kozzy

文字の大きさ
113 / 225

少年の成長

しおりを挟む
「リコー!エルモー!食べてる?」
「はいイヴ様。とても美味しいです、このチキンロール!」

「すいませんねぇ坊ちゃま。わしまでご馳走になって」
「いーえ。僕は使用人の福利厚生には手を抜かない主義だから」

彼は最近ビアジョッティ家にやってきた御者のじいさんで名をジュゼッペと言う。
最近やってきた、と言っても、彼は長年コレッティ家にいた御者助手で怪しい者ではない。

サルディーニャ社交界では御者でさえ見栄えが重視される。
そのため正式な御者は御者用のオーバーコートを着用するのが普通だ。
それ以下の御者助手だったり厩番だったりにとってオーバーコートは憧れのお仕着せなのである。

彼はコレッティ家に長年仕え、厩番から後年は御者助手に昇格し頑張っていた働き者のじいさんだが、結局最後までオーバーコートに袖を通すことは出来なかった。
助手の彼が手綱を握れるのはちょっとそこまで程度の軽いお出かけしかなかったからだ。

なので彼は車庫の続き間として用意した小屋の中に夏冬二枚のコートがあるのを発見して、それはもう子供のごとく無邪気に喜んだのだ。

あんなに喜んでもらえると製作者の僕も本望である。あのコートは作るのも楽しかったし。

というわけで、リコとエルモには同僚が一人増えたわけだが、使用人が年寄りか子供しか居ないのは何故なんだろう…

どうやらBLの神は僕とフラヴィオの間に一人だって、当主に憧れるホールボーイとか…当主夫人に恋い焦がれる薪割り人夫とか…、夫夫の刺激をセッティングする気はさらさら無いらしい…


それはさておき、ロデじいでおじいちゃん慣れしているエルモは、まるで本物の祖父と孫かのようにジュゼッペじいさんに懐いている。
今も二人で仲良く棒に刺したマシュマロを焼いているところだ。

「あ、エルモ!それトロっとしたらクッキーに挟んで食べて!」
「はーい!」

良き良き。



…さて、僕には気になっていることがある。それはリコの恋心だ。

僕の見立てに間違いがなければ、サルディーニャ生まれの彼は、BLゲーの法則によりルイージ君にほのかな想いを抱いていたはずだ。
ということは、ルイージ君とカタリーナ様の噂はけっこう精神にキテいるんではないだろうか…

「ところでリコ…、その…平気?」
「何がですか?」
「ルイージ君がカタリーナ様と恋仲になっちゃって…」

「それって…」
「…好きなんでしょ?ルイージ君の事…」

気がついたら少しづつ僕の背を抜かし続けている絶賛成長期のリコは、すっかりお仕着せ姿も板についている。

その涼やかな横顔を見る限り落ち込んでいるようには見えないが…きっと初恋だろうし、どうなんだろう?

「平気ですよ。おかしなことを言うんですねイヴ様は。俺はルイージ様のお相手が姫殿下で良かったと思ってるのに」

「そうなの?」

「高貴なルイージ様には高貴な姫殿下がお似合いですから」

「なら良かった」

強がりかな?強がりだよね?

「あの…本当に俺大丈夫ですよ?そもそも俺とルイージ様じゃ身分も立場も違いますから。そんな大それたこと…考えたことありません」
「そっか…。リコは大人だね」

「俺はただ…ルイージ様を知れば知るほど尊いお方だなって思ってて…」
「僕は?」

「イヴ様はなんか気安いっていうか…」
プク「……」

…何度も言うが、ビアジョッティファミリー発足時で一番偉かったの僕だからな?

「まあ…言わんとすることは分るけど」

こう…醸し出すノーブルなオーラがね。

リコとルイージ君は屋敷の中では歳も近いし、ルイージ君がお城に上がるまでは日中ほとんどの時間を一緒に過ごしていた。そこには僕の知らない心のふれあいもいっぱいあったんだろう。

「お傍に仕えてお守りできればそれでいいんです。だからイヴ様が剣を覚えさせてくれた時すごく嬉しかった…」
「健気じゃのう…」

「いつかルイージ様が結婚してここを出る時が来たら…イヴ様、エルモをよろしくお願いします」
「ルイージ君について行きたいの?」
「ダメですか?」

うっ!一途じゃのう…

「もちろんいいよ。それまでにエルモを一人前にしといてね」
「はい!」

青春じゃのう…





しおりを挟む
感想 609

あなたにおすすめの小説

側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、孤独な陛下を癒したら、執着されて離してくれません!

花瀬ゆらぎ
恋愛
「おまえには、国王陛下の側妃になってもらう」 婚約者と親友に裏切られ、傷心の伯爵令嬢イリア。 追い打ちをかけるように父から命じられたのは、若き国王フェイランの側妃になることだった。 しかし、王宮で待っていたのは、「世継ぎを産んだら離縁」という非情な条件。 夫となったフェイランは冷たく、侍女からは蔑まれ、王妃からは「用が済んだら去れ」と突き放される。 けれど、イリアは知ってしまう。 彼が兄の死と誤解に苦しみ、誰よりも孤独の中にいることを──。 「私は、陛下の幸せを願っております。だから……離縁してください」 フェイランを想い、身を引こうとしたイリア。 しかし、無関心だったはずの陛下が、イリアを強く抱きしめて……!? 「離縁する気か?  許さない。私の心を乱しておいて、逃げられると思うな」 凍てついた王の心を溶かしたのは、売られた側妃の純真な愛。 孤独な陛下に執着され、正妃へと昇り詰める逆転ラブロマンス! ※ 以下のタイトルにて、ベリーズカフェでも公開中。 【側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、陛下は私を離してくれません】

婚約破棄された悪役令嬢の心の声が面白かったので求婚してみた

夕景あき
恋愛
人の心の声が聞こえるカイルは、孤独の闇に閉じこもっていた。唯一の救いは、心の声まで真摯で温かい異母兄、第一王子の存在だけだった。 そんなカイルが、外交(婚約者探し)という名目で三国交流会へ向かうと、目の前で隣国の第二王子による公開婚約破棄が発生する。 婚約破棄された令嬢グレースは、表情一つ変えない高潔な令嬢。しかし、カイルがその心の声を聞き取ると、思いも寄らない内容が聞こえてきたのだった。

人質5歳の生存戦略! ―悪役王子はなんとか死ぬ気で生き延びたい!冤罪処刑はほんとムリぃ!―

ほしみ
ファンタジー
「え! ぼく、死ぬの!?」 前世、15歳で人生を終えたぼく。 目が覚めたら異世界の、5歳の王子様! けど、人質として大国に送られた危ない身分。 そして、夢で思い出してしまった最悪な事実。 「ぼく、このお話知ってる!!」 生まれ変わった先は、小説の中の悪役王子様!? このままだと、10年後に無実の罪であっさり処刑されちゃう!! 「むりむりむりむり、ぜったいにムリ!!」 生き延びるには、なんとか好感度を稼ぐしかない。 とにかく周りに気を使いまくって! 王子様たちは全力尊重! 侍女さんたちには迷惑かけない! ひたすら頑張れ、ぼく! ――猶予は後10年。 原作のお話は知ってる――でも、5歳の頭と体じゃうまくいかない! お菓子に惑わされて、勘違いで空回りして、毎回ドタバタのアタフタのアワアワ。 それでも、ぼくは諦めない。 だって、絶対の絶対に死にたくないからっ! 原作とはちょっと違う王子様たち、なんかびっくりな王様。 健気に奮闘する(ポンコツ)王子と、見守る人たち。 どうにか生き延びたい5才の、ほのぼのコミカル可愛いふわふわ物語。 (全年齢/ほのぼの/男性キャラ中心/嫌なキャラなし/1エピソード完結型/ほぼ毎日更新中)

ノリで付き合っただけなのに、別れてくれなくて詰んでる

cheeery
BL
告白23連敗中の高校二年生・浅海凪。失恋のショックと友人たちの悪ノリから、クラス一のモテ男で親友、久遠碧斗に勢いで「付き合うか」と言ってしまう。冗談で済むと思いきや、碧斗は「いいよ」とあっさり承諾し本気で付き合うことになってしまった。 「付き合おうって言ったのは凪だよね」 あの流れで本気だとは思わないだろおおお。 凪はなんとか碧斗に愛想を尽かされようと、嫌われよう大作戦を実行するが……?

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

この世界は僕に甘すぎる 〜ちんまい僕(もふもふぬいぐるみ付き)が溺愛される物語〜

COCO
BL
「ミミルがいないの……?」 涙目でそうつぶやいた僕を見て、 騎士団も、魔法団も、王宮も──全員が本気を出した。 前世は政治家の家に生まれたけど、 愛されるどころか、身体目当ての大人ばかり。 最後はストーカーの担任に殺された。 でも今世では…… 「ルカは、僕らの宝物だよ」 目を覚ました僕は、 最強の父と美しい母に全力で愛されていた。 全員190cm超えの“男しかいない世界”で、 小柄で可愛い僕(とウサギのぬいぐるみ)は、今日も溺愛されてます。 魔法全属性持ち? 知識チート? でも一番すごいのは── 「ルカ様、可愛すぎて息ができません……!!」 これは、世界一ちんまい天使が、世界一愛されるお話。

ざこてん〜初期雑魚モンスターに転生した俺は、勇者にテイムしてもらう〜

キノア9g
BL
「俺の血を啜るとは……それほど俺を愛しているのか?」 (いえ、ただの生存戦略です!!) 【元社畜の雑魚モンスター(うさぎ)】×【勘違い独占欲勇者】 生き残るために媚びを売ったら、最強の勇者に溺愛されました。 ブラック企業で過労死した俺が転生したのは、RPGの最弱モンスター『ダーク・ラビット(黒うさぎ)』だった。 のんびり草を食んでいたある日、目の前に現れたのはゲーム最強の勇者・アレクセイ。 「経験値」として狩られる!と焦った俺は、生き残るために咄嗟の機転で彼と『従魔契約』を結ぶことに成功する。 「殺さないでくれ!」という一心で、傷口を舐めて契約しただけなのに……。 「魔物の分際で、俺にこれほど情熱的な求愛をするとは」 なぜか勇者様、俺のことを「自分に惚れ込んでいる健気な相棒」だと盛大に勘違い!? 勘違いされたまま、勇者の膝の上で可愛がられる日々。 捨てられないために必死で「有能なペット」を演じていたら、勇者の魔力を受けすぎて、なんと人間の姿に進化してしまい――!? 「もう使い魔の枠には収まらない。俺のすべてはお前のものだ」 ま、待ってください勇者様、愛が重すぎます! 元社畜の生存本能が生んだ、すれ違いと溺愛の異世界BLファンタジー!

希少なΩだと隠して生きてきた薬師は、視察に来た冷徹なα騎士団長に一瞬で見抜かれ「お前は俺の番だ」と帝都に連れ去られてしまう

水凪しおん
BL
「君は、今日から俺のものだ」 辺境の村で薬師として静かに暮らす青年カイリ。彼には誰にも言えない秘密があった。それは希少なΩ(オメガ)でありながら、その性を偽りβ(ベータ)として生きていること。 ある日、村を訪れたのは『帝国の氷盾』と畏れられる冷徹な騎士団総長、リアム。彼は最上級のα(アルファ)であり、カイリが必死に隠してきたΩの資質をいとも簡単に見抜いてしまう。 「お前のその特異な力を、帝国のために使え」 強引に帝都へ連れ去られ、リアムの屋敷で“偽りの主従関係”を結ぶことになったカイリ。冷たい命令とは裏腹に、リアムが時折見せる不器用な優しさと孤独を秘めた瞳に、カイリの心は次第に揺らいでいく。 しかし、カイリの持つ特別なフェロモンは帝国の覇権を揺るがす甘美な毒。やがて二人は、宮廷を渦巻く巨大な陰謀に巻き込まれていく――。 運命の番(つがい)に抗う不遇のΩと、愛を知らない最強α騎士。 偽りの関係から始まる、甘く切ない身分差ファンタジー・ラブ!

処理中です...