コスプレ令息 王子を養う

kozzy

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救済の女神、ここに現る

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「それで連れ帰って来たの…まあイヴァーノ…なんとあなたは短絡的なのかしら」
「アレクサ様ぁ?ウソでしょ!アレクサ様がそんなこと言うなんて!」

「アレクサ…イヴァーノがこう言っているの。許してあげて」
「ペネロペ。事はそう単純でないのよ」

勢いでフェルたんを連れ帰ったその夜、公爵邸では僕とフラヴィオが揃ってアレクサ様のお叱りを受けていた。
フェルたん?エルモとロデじいにお任せだよ?

アレクサ様は摂政だが王宮に住み込む必要はない。基本通いだ。
そしてペネロペ様は…いつ侍女と共に第四宮に戻っても良いのだが、フラヴィオがいる間は公爵邸に泊まるようだ。つまり今夜までね。

「だってだって!なんでダメなんですか!」

「イヴァーノ。ミランダ妃、カッシオ王子に連なるものは平民に落とされます。子供であろうが例外なくね。逃げ道が無いからこそ王子妃はフェルナンドを置いていったのです」

「だからってこんなの!」

「平民位に落ちたカッシオの子を義弟であるフラヴィオが引きとったと知れれば市井の心象は良くないでしょう。罪人の子を身贔屓するのか、とね。ファブリチオ派だった家門も黙ってはいないでしょう」

それは僕も同じこと思ったけどさ~…、反感買わなきゃいいけど…って。

ん?待てよ…

ピーン!

閃いた!

「フラヴィオが引き取るから印象が悪いんですよね?」
「何が言いたいのかしら」
「フェルナンド君はフラヴィオじゃなくて引き取ったんです。引き取り書類にサインしたのも僕です。イヴァーノ・ビアジョッティって」
「あなた方は夫婦でしょう!」

ダメか…

「どうするのフラヴィオ…養子にでも迎えるつもり?」
「いえ母上、せめて因縁を持たぬサルディーニャの福祉施設へ移せたら、と」

「フラヴィオ、わかっていますか?」
「何をでしょう」

「イヴァーノが署名しイヴァーノが連れて帰る…、「面倒事を」とサルディーニャでそしりを受けるのはイヴァーノなのですよ!」
「 っ、それは… 」

ヘラ「あ、それ全然平気です。もともと僕の評判底辺なんで」ペシ「イテ」
「笑って言うのではありません」

だってホントなのに…おっ?

ピピーン!

扇ではたかれたらさらに閃いたよ?

「アレクサ様、あそこの他にもこの周辺に孤児院ってありますか?」
「え?え、ええ。王立でなければいくつか。残念ながらあの内乱により孤児の数は増えているの。嘆かわしい事にね…」

「じゃああの擁護院以外の孤児をほかに何人かサルディーニャへ連れていきます。後日送ってください。条件は容姿端麗。磨けば光る金の卵も可。…健康な十…いや八歳から…、フラヴィオー、ああいう施設って上は何歳?」
「十五だ」
「じゃ十五歳までのいろいろ拗らせてない…少年少女とりあえず十名づつ。選考人は眼力鋭いカタリーナ様で」

「屋敷で雇うのかい?」

あほか!あの小さな屋敷に二十人もの使用人居たら寝るとこなくなるわ!それに屋敷を買い替える予定もない!

僕はドヤった。
サルディーニャのイヴ・モードは今後も拡大を続けていく。つまりお針子の類は常時募集中だと。

「お針子として連れていくと言うの?」
「ええまあ。でも彼女らは研修を終えたらマネキンとしてサロンに出そうと思ってます。なので容姿端麗は絶対条件です」

ルッキズムに逆行する暴挙だが、これも作戦の内!許せ!

「マネキン…?」
「えーと、新作を着て店頭に立つモデル店員のことです」

この世界で服をディスプレイするのはいわゆるトルソー。人間型のマネキンもマネキン店員もまだ存在しない。
僕はそれを先どろうってワケ。

前世の歴史が物語る!絶対バズるって!だってキレイな人が着てたら「あ、あれ着たら私もあんな風になるかしら?」ってなるじゃん?これぞwinwinの一石二鳥!

「ならばイヴ、少年もそのモデルとやらに?」
「まあサロンの力仕事兼ねて。でも内三人はフラヴィオのいう通りリコの代わりです。庭師見習いに御者の助手に…お湯運び?」
「確かにエルモだけでは心もとないね」

男しか雇わないのはフラヴィオの浮気防止だ。フラヴィオは基本NLの人。BL嗜好は僕限定らしいし、つまみ食いは未然に防ぐ。これぞ危機管理のあるべき姿!

容姿端麗は…まあ僕のお戯れってことで。
……いいじゃん!これくらいの雇用主特権!セクハラしないから!

「サルディーニャのデザイナーであるイヴァーノが芸術家的な閃きで孤児たちを雇い入れた。フェルナンド君は偶然〝選ばれしラッキーボーイ”の中にいたキレイな子供。僕はフェルた…フェルナンド君を身びいきでなく顔で選んだ。そういうことです」

右から左へと耳を抜けていくアレクサ様の長いながーいため息。

「呆れたこと…それで通用するかしら」

「少なくともサルディーニャ側は呆れながらも納得します。僕が美に関して妥協しないのは今も有名ですから」

イヴァーノはゲームの中でも「おどき不細工!」とかモブによく言ってたし、二コラにも「愛想で誤魔化した不細工が!」とか言ってた(ヒドイ)からメンクイ認知はされているだろう。
それにくどいようだが、その審美眼だけはゲーム時から社交界でも周知の事実だ。

「なので僕がサロンの補充人員を顔で選ぶのはごくごく普通のことです」
「あなたね…フゥ…」
「ウフフ」

おっ、愉快そうに笑うペネロペ様。これは同意でいいんだな?

「これぞ木を隠すなら森の中に作戦です」

美幼児を隠すなら美孤児の中…僕って天才か?

「イヴァーノ…、だとしてそちらの国内から不満は出ないかしら。サルディーニャにも孤児は居るのでなくて?」
「それがですね…ほとんど居ないんですよ。居たとしてもキレイな施設で手厚く保護されてます」

これぞキラキラBLゲーワールドの最大恩恵。あの国の道端にはゴミ一つ落ちてはいない。

「まあ…!」
「アレクサ様、国が富めるとはそういうことなのですよ」

僕の言葉をフラヴィオが補完していく。

「あの国では子を捨てる親がほとんど居ないのです。親に先立たれた子も親類には引き取るだけのゆとりがある。
よしんば身寄りがなくとも国の福祉は充実しており路上に放り出される子供はほとんどいない」

「…我々も目指さねばなりませんね…」

ここで駄目押しの一手だ!

「それにアレクサ様。フェルナンド君だけじゃなく目立ってキレイながこの先どうなると思います?」

そう…、善良な夫婦に引き取られるなんてのは極々僅か。キレイな子供に目をつける多くは、口にするのもおぞましいド変態だ。

「嘆かわしいことですがそれが現実なのでしょうね…。イヴァーノ。我が国の子供たちを任せてもよろしくて?」
「任されました」

こうして思いがけず、減った家族を補充した僕たちだが、後日アレクサ様から届いた手紙にはこう記されていた。



『イヴァーノの行いはわたくしたちの心配を余所に〝賢婦人の救済”〝女神ヘラの母性”として市井からは称賛の声が上がっております。人々からのあまりにも高い支持によってファブリチオ派は物言わぬ貝となりました』





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