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8羽 ハシバミの画家、男を見せる
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ある鳩月(6月)初旬の晩。
ユデイは酒屋の息子ムランに”今夜のおかず”を提供するのと引き換えに手に入れた上等なワインを手土産に、ハント家へと訪れていた。
目的は前々からハイドに頼んでいた恋愛相談だ。
ハイドの部屋にてライキも加わった3人でローテーブルを囲って話をしていた。
「なるほど・・・。
ルウナと仲良くなりたくて話しかけても、会話が長続きしないし途中から避けられてる気がすると・・・。」
「そうなんすよ・・・。
もうずっとこんなんで、告白しても玉砕するの目に見えてるっていうか・・・。」
しゅん・・・と肩を落とすユデイ。
「・・・お前、もしかしてルウナと話してる時、胸ばかり見てねーか?」
ぎくっとするユデイ。
「図星かよ。」
「いや、だって話してると目の前に好きな子のおっぱいがあるんすよ?
つい、目がそっちにいってしまうっていうか・・・。」
とユデイ。
「ははっ、まぁわかるけどな?
でも避けられてると感じるのはルウナが巨乳であることで嫌な思いをしてきたからだと思うぜ?
ヒルデも乳がでけーから、客からいやらしい目で見られたり色々あるみてーだし。
ま、あいつは15になってすぐにつがいの指輪をしてたし、それ以前も俺が青鹿亭に頻繁に通って虫除けをしてたから、手を出してくる奴は居なかったけどな。
ルウナも自分の胸ばかり見てくる野郎を警戒して距離を取ってるんだろ。」
「じゃあ俺、もうルウナに嫌われてんのかな・・・。」
更に肩を落とすユデイ。
「うーん、そいつはどうかな?
リーネのつがい相手のライキの親友っつーことで、お前の良いところもある程度知ってるだろうし、ただの胸目当てのスケベ野郎よかは断然マシじゃね?
後はここから先のお前次第ってとこだろ。」
「・・・俺次第か・・・。
どうすればいいですかね?」
真剣な表情でハイドに尋ねるユデイ。
「まずアプローチをするときに胸を見るな。
胸以外のルウナの好きな所があるだろ?
それをどんどん伝えていけよ。
後は何か共通の話題を見つけて会話を広げていく。
お前の特技を活用するのもいいと思うぜ?」
「ふむふむ・・・。」
頷きながらメモをとるユデイ。
「あとは、ある程度仲良くなった所で男を見せる!」
とハイド。
「男を見せる?って、どんなんっすか?」
「そーだなー・・・。
王道だがルウナがピンチの時にお前が身体を張って助ける、とか?」
「いや~・・・。
そんなピンチ、この平和な村にいたら滅多にないっすよ~・・・。」
掌を上に向けて首を左右に振るユデイ。
「いや、そうでもないぜ?
初夏になるとフォレストサイドの観光エリアに避暑にくるお偉いさんの坊ちゃんたちがいるだろ?
昨年そいつらにナンパされてるルウナを見たぜ?
あんときは俺が偶然通りかかって助けられたけど・・・。
つがいじゃないフリーの女の子ってのは結構危ないんだぜ?
年齢的に色気も増してくる頃だし、特にルウナは可愛いし、胸もでけーから目を引くしな。」
ハイドの言葉にユデイは眉間に皺を寄せて俯いた。
「・・・チクショー・・・。
やだな・・・。
そんな奴らに絶対ルウナを渡したくない・・・!
でも俺、ひょろいし身体張れる程強くない・・・。
ハイドにーさんや、ライキみたいに強くなるにはどうすればいいですか?」
と二人に尋ねた。
「あー、俺らはガキの頃からずっと親父に仕込まれてきたからなぁ・・・。
いきなり強くなる方法なんてのはないな。」
ライキも同意して頷く。
「でも走り込みとか筋トレをするのはいいことだと思うぜ?
体力がついて、身体も逞しくなるし、自分に自信も持てるようになる。」
「そっか・・・!
俺、やってみます!
走り込みと筋トレ!」
ユデイは拳に力を込めて答えたが、すぐに不安な表情に戻るとまた俯いた。
「・・・でもまた初夏が来て、あいつらにルウナがナンパされても、こんな短期間鍛えたところで助けられる気がしないっすよ・・・。」
「ふーむ・・・。
なら、足りないところは頭使って補うしかねーんじゃね?」
頭を指差してハイドが答えた。
「そんな・・・俺頭もよくないっすよ?」
「スクールの成績じゃねーんだよなぁ・・・。」
ポリポリと頭を掻き腕を組みどうしたもんかと考えを巡らすハイド。
「身近に武器になるものって意外にあるぞ?
そういうのを使うのはどうだ?」
ずっと黙って聞いていたライキが口を挟んだ。
「お!ライキはそういうの得意だからな。
教えてやれ。」
「ライキ先生、俺にできそうなのなんかある?」
「そうだな・・・。
お偉いさん相手だと、後で高額な賠償を要求されたり、権力を使われて商売が出来なくされたりすると厄介だから、証拠が残らないやり方を選ぶ必要がある。
流血とか骨折なんかは勿論のこと、外傷が無くとも激しい痛みを与えすぎると相手がキレるから、刺激し過ぎず、尚且つ効果がある方法がいいな。
ルウナを助ける目的だけなら目つぶしが有効的かも。
慣れないやつが指で狙うのは難しいから、砂を目にかけてやるんだ。
その隙にルウナの手を引いて逃げる。
あとは臭いのとか酸っぱいのを無防備な顔に向かって投げつけるのも効果的だな。
そういう使えそうなものがどこにあるか普段から情報を仕入れておくんだよ。
あと今の季節で使えるものだと・・・・・・」
ライキの30分に及ぶ”身近な武器講義”が終わると、ユデイが「ありがとなー!!」と手を振って帰って行った。
それを兄弟で見送った後、ライキがハイドに問いかけた。
「兄貴、”男を見せろ”って前に俺にも言ってたけど、俺の時は"壁ドンでキス仕掛けろ"とか"会いたかったって言ってギューって強く抱きしめろ"だったのに、ユデイには全然違うことを言ってたよな?
何でなんだ?」
「あー、お前の場合はリーネがピンチなら普通に助けられるし、わざわざ俺から言うこともないだろ?
お前に足りなかったのは、"リーネに欲情しているオトコ"なんだと、相手に強く意識させることだと思ったからああ言った。
ユデイの場合はそれは逆効果だしな・・・。
もっと"男の頼りになるところ"を見せつけるようなアプローチが必要なんだよ。」
「なるほど・・・。」
「ユデイ、うまくいくといいな?」
「うん。」
─その後ユデイは毎朝本屋の開店準備前に走り込みと筋トレを行い、ルウナに話しかける際には胸に目をやらないよう気を配っていたようだった。
そのうちルウナと話せる時間が長くなってきて、自分の特技を生かしてルウナの好きな小鳥や草花の絵を描いてあげたりもしたみたいだ。
それがルウナにはとても効果的だったようで、それから沢山笑顔を見せてくれるようになったって嬉しそうにユデイが報告してきた。
そんな燕月(7月)初旬のある朝─。
仕立ての良い服を着た15歳くらいの少年二人がフォレストサイドに馬車で到着していた。
一人は金髪碧眼で目元の冷たいキザ男、もう一人は赤みがかった茶髪くせっ毛の優男だった。
「いやー、俺もこんなくそ田舎に来るの退屈なんだけどさぁ。
親父が行けって言うから仕方ねーよなぁ。」
金髪が愚痴りながら馬車を降りた。
「まぁまぁ。
この村には可愛い子が二人いただろ?
誘って一緒に遊んだりしよーよ。
そしたら暇じゃないって!」
茶髪が彼に続いた。
「あぁ、俺はあの巨乳のほうを狙ってるんだ。
去年は通りすがりのおっかないイケメン蛮族に邪魔されたけど、今年こそはものにして見せるぜ・・・。」
「僕は淡い金髪のほうね。
小柄で華奢で色白でさ~。
何より顔がすげータイプなんだよな~。
おっぱいは小さいけどね(笑)」
「あー・・・あれは大人しそうに見えて気が強くて面倒なタイプと見たぜ?
巨乳のほうが権力をかさに着せりゃ逆らえないタイプだからいろいろやりやすいぜ?」
「お前はあの巨乳の子誘ってつがいにするの?」
「まさか。
こんな田舎の村娘なんかつがいにして俺に何のメリットがある?
ただの遊び相手だよ。
この村にいる間だけのな。」
「お前ほんとゲスいな!」
「お前こそ、おこぼれにあずかりたくて毎回ついてくる腰巾着の癖に。」
ウシシ・・・と笑う二人。
「お!うわさをすれば・・・」
リーネはライキと一緒に朝の教会でつがいの決まり事である報告のお祈りを済ませた後、一旦彼とは別行動をして、ルウナとセンター通りの広場でお喋りを楽しんていた。
(一方ライキはその隣の通りにあるユデイの本屋で彼と雑談をしていた。)
遠くからルウナの姿を確認した金髪は、その近くまで歩いて行くと、腰に手を当て髪をキザったらしくはね上げてから、
「よう、俺のこと覚えてるよな?
この美貌と気品溢れる姿・・・。
忘れたとは言わせないぜ?」
と話しかけた。
金髪に気がついたルウナの顔がみるみると青ざめていく。
「今年も折角こんなド田舎まで会いにきてやったんだ。
一緒に遊ぼうぜ?」
ルウナが怯えて後ろに下がったので、リーネが庇うように前へ出る。
「やめてください。
怖がっているでしょう?」
金髪を睨みつけながら言った。
するとリーネ目当ての茶髪が目を輝かせて前に出てきた。
「やぁ、僕のこと覚えてる?
相変わらず可愛いね!
今年こそ一緒に湖に出かけようよ!
可愛い水着買ってあげるからさぁ。」
とリーネの手を取ったとき、つがいの指輪を見た彼ははっとした。
「えっ、そんな・・・君、もう誰かとつがいに・・・くそっ・・・!」
茶髪が悔しそうに顔をゆがめると金髪のほうがこそっと耳打ちした。
『・・・おい、加護持ちはやめておこうぜ。
教会に目をつけられれば厄介だ。
巨乳のほうはフリーみたいだし、お前にも後で貸してやるからさ・・・協力しろよ。』
『・・・・・・そういうことなら。』
でへへっと鼻の下を伸ばしてルウナを見る茶髪。
「それじゃ、淡い金髪のお前はもう行っていいから。」
とリーネにあっち行けと手を振る金髪キザ男。
「茶髪のお前は・・・一緒に来るよな?」
と言ってルウナの肩を抱いた。
「い、行きません・・・!
私、友達と一緒に行きますから、離して・・・!」
精一杯抵抗を示すルウナだった。
すると金髪はずいっとルウナに顔を近づけると、低い声で言った。
「お前、裏通り角の服屋の娘だよな?
お前の所に生地を卸しているの、俺の叔父なんだよね~(嘘)。
お前の家が商売できなくなってもいいのか?」
ルウナははっと青ざめてブルブル震えだした。
「ルウナ、そんな脅し聞いちゃダメ!行こ!」
リーネがルウナの手を引こうとすると、茶髪のほうがリーネの肩をがしっと捕まえて、ルウナから遠ざける。
「心配しなくても大丈夫だよ。
君の友達は楽しく僕らと遊んだ後でちゃんと送って返すから。
ちょっとだけ貸してね?」
「!だ、駄目!
そんな・・・ルウナ・・・!!」
リーネは茶髪を振り払おうとするが、力で敵わず引きはがせない。
「はいはい抵抗しないでね~・・・!
殴ったりしたら教会にばれそうだから・・そうだ!」
茶髪はネクタイを外し、リーネの腕を街灯にくくりつけはじめる。
リーネは辺りに助けてくれそうな人がいないかを探すが、商店街の人達はこちらに気がついていても、権力を持った坊ちゃん達相手に助けられないでいるようだった。
「これでよしっと。」
ついには街灯に括りつけられてしまうリーネ。
「早く来いよ!
おこぼれやらないぞ!」
「おー、今行く!」
茶髪は金髪を追いかけて駆けて行った。
ルウナは身体を震わせたまま金髪に連れられて、その姿がリーネからどんどん離れていく。
リーネは涙ぐむと、すうっと息を吸い込んで、大声で叫んだ。
「ライキーーーーー!!!
ルウナがっ・・・むぐっ!」
途中で茶髪が走って戻り、リーネの口を手で塞いで言った。
「このっ!口も塞がないと駄目か!」
「平気だって!
助けを呼んだところで俺たち相手にどうせ誰も・・・」
と金髪が言いかけたところでライキとユデイが急いで駆けつけてきた。
状況を一目見て理解した二人は走りながら短く会話する。
「俺はリーネを助ける。
男を見せろよ!ユデイ!」
「わかった・・・!!」
茶髪がリーネを拘束して口を手で塞いでいたため頭にきたライキは、大地を蹴って一気に攻撃範囲まで距離を詰めると、その手を離させるべく手刀にて関節に一撃与えた。
ライキは当然手加減をしているのだが、茶髪は相当痛かったのか、
「グアッ!」
と苦痛に顔を歪めるともう片方の手で腕の関節を押さえて膝をついた。
ライキはすぐに腰に刺したナイフで街灯にガチガチに括られたネクタイを切ってやる。
自由になったリーネはライキの胸元に飛び込むと、
「お願い!
ルウナを助けて!!」
とライキに縋った。
ライキはリーネの背を抱くと、
「ユデイが助けるから、見守ってあげて。」
と優しく伝えた。
茶髪はそんな二人を見て青ざめ、
(つがいの相手って昨年邪魔してきたイケメン蛮族の弟かっ!
手を出さなくて良かった・・・!!)
と思うのだった。
一方、気合を振り絞ったユデイは、
「ルウナーーーーー!!!」
と大声で駆け寄ると、思い切り金髪に体当たりし、ルウナから金髪を弾き飛ばすことに成功した。
急いでルウナに駆け寄るユデイだが、すぐさま起き上がった金髪に勢い良く殴られ、地面に飛ばされてしまうのだった。
「キャーーー!!ユデイ!!」
ユデイに駆け寄るルウナ。
(ちくしょー!
ルウナを助けるにはどうすりゃいい?
下はレンガ・・・砂の目潰しも出来ない・・・!
クソっ!)
ふとそこに通称”ウンコの実”が落ちていることに気が付くユデイ。
前にライキが、
「身近に武器になるものって意外にあるぞ?」
「臭いのとか酸っぱいのを無防備な顔に向かって投げつけるのも効果的だな。」
と話していたのを思い出す。
それと同時に、まだジュニアスクールに通っていた10歳くらいの頃、下校中にウンコの実を踏んでしまってライキに死ぬほど笑われたことも。
ユデイは決意を固め、それを手で潰して相手の顔に投げつけた!
「うわっ、クサっ!クッサッ!!何だこれ!!」
金髪は堪らず鼻を腕で押さえ、顔についた実を落とそうと必死になる。
ユデイはもう一個うんこの実を潰すと、金髪に駆け寄ってきた茶髪の方にも御見舞した!
「!!うわっ!マジくっさーー!!」
その隙にユデイはルウナの手を取って、
「ルウナ!こっち!」
と言い引っ張ろうとする。
だがルウナは、
「う、うん・・・!
ちょっと待って!」
と言ってその手を離してから金髪に近寄ると、大きく右足に勢いをつけ、
「えいっ!!」
思い切り金的をかましたのだった!!
「!!!」
あまりの出来事に金的を食らった金髪だけでなく、間近で見ていた茶髪、ユデイとライキ、リーネすらも目を丸くした。
「行こ!」
ルウナは呆気に取られているユデイの手を取り、一緒に走って逃げたのだった。
水飲み場で顔を洗う坊ちゃん二人。
「あいつら許さねえ!
見つけだし後悔させてやる!
特に女の方!!思い切り蹴りやがって!!
女の家は判っているんだ!
必ず見つけ出して・・・くっそ!
臭いのとれねー!!」
ライキはその様子を見ながら不安にかられていた。
「凄く怒ってるね・・・大丈夫かな・・・。」
リーネが不安そうに呟いた。
「あぁ・・・。
ユデイのうんこの実爆弾はともかく、ルウナの金的はまずかった。
相手をかなり怒らせてしまったし、家を知られている。
このままだと・・・。」
(どうする?
こいつらをのして手を出さないように脅すか?
いや、それだと一時的にしか・・・・・)
ライキがいろいろと物騒な考えを巡らせていると、リーネがポーチから何かを取り出して言った。
「私に任せて。」
「リーネ?
・・・一体何を?」
リーネはハンドタオルを持ってそいつらのところへ近づくと、
「良かったらこれを使ってください!」
と、笑顔で手渡した。
「あ、ありがとう。」
頬を染めて受け取り顔を拭いた茶髪はすぐに意識を失い、その場に倒れ込んだ。
リーネはすかさず、
「あなたもどうぞ!」
と言いながら、黒ーい笑顔で金髪の方の顔に(強引にぐりぐりと)タオルを押し付けると、そっちも倒れたのだった。
「これで大丈夫。」
「・・・リーネ?
何をしたんだ?」
「うん。
少しだけ記憶障害をおこす薬を使わせてもらったの。
目が覚めたら倒れる前10分位の記憶を失ってると思うけど命に支障はないから。
そろそろこの人たちが出没する季節だから、
護身用に色々な薬を持ち歩いていたんだけど、役に立って良かった!」
とニッコリ笑顔で説明するリーネ。
(助かった・・・。
けど、リーネって意外とブラックなところがあるよな(汗)
今後怒らせないよう気をつけよう・・・。)
と考えるライキなのだった。
「ルウナとユデイ、これでつがいになるかな・・・?
なってほしい。
そしたらルウナ、二度とあんな目に遭わなくて済むもの。」
と言うリーネ。
「大丈夫だろ。
あいつ、かっこ良かったしな。」
「うん!ライキもね!」
と二人は手をつないで帰っていく。
「そういえば、タオル置いてきてたけど良かったのか?」
「うん。
あの人たちの顔を拭いたタオルなんてもういらない。」
「そ、そっか・・・。」
等と話しながら薬屋へと続く丘を登っていく。
村の東のほうへ逃げたユデイとルウナは景色のいい高台にいた。
「ずっとルウナが好きでした!
俺とつがいになってください!」
ユデイは頭を下げ手を差し出しながら、告白した。
ルウナは優しく微笑むと、差し出されたその手を取って、
「はい・・・。」
とはにかみながら返事をした。
ユデイが嬉しくて「うおおおー!ヤッター!!」と叫んでいると、
「手、洗いに行こう?
私もユデイと手を繋いだから臭くなっちゃった。
ふふふっ!」
とルウナが笑いながら言った。
「そいや俺ウンコの実潰したんだった!
くっせー!」
と二人で笑いあう。
「そういえばルウナさ、よくあの金髪に金的食らわしたよな?」
「あ・・・あれね、最初は怖くて動けなかったのに、ユデイが助けに来てくれたのを見たら、なんかね、出来ちゃったの。
うふふ・・・!」
(・・・うふふとか笑ってるけどあの金髪野郎相当痛そーだったぞ?
仕返しとか大丈夫か?
・・・いや、何かあったとしても俺が守らないと。
その為にもすぐ教会につがいの届け出をした方がいい。)
ユデイはそう考え、真面目な顔でルウナに向き合った。
「手を洗ったら、すぐにお互いの両親につがいの報告をして、教会に届け出にいこう。
またアイツらに狙われない為にも、早い方がいい。」
「うん・・・行こう!」
臭いけどいい雰囲気の二人は手をつないで歩いていく。
そして夕方、ライキとリーネに幸せいっぱいの笑顔でつがいの指輪を見せにくるユデイとルウナなのだった♡
─追記その1〈翌日の坊ちゃんたち〉─
翌日例のお坊ちゃん二人が薬屋に来ていた。
茶髪の方はライキにやられた肘の関節が痛むようで、どこかで痛めたみたいだから湿布を売ってほしいと言った後、
「あれ?
君は・・・薬屋さんだったんだね!
去年も会ったよね?
僕のこと覚えてる?
相変わらず可愛いね!
えっ・・・それ、つがいの指輪!?
・・・クソっ・・・誰かともうつがいに・・・ショック・・・
って、昨日もこんなこと言った気がするなぁ・・・?」
と首をかしげていたので、リーネは知らんぷりして湿布だけ渡してあげた。
金髪のほうはルウナに蹴られた股間がまだ相当痛む模様で、
「デリケートなところに塗れる痛み止めをくれ。」
とぶっきらぼうに言ってきた。
(こいつ・・・ルウナに酷いことをしようとして許せない男・・・!
・・・股間に塗ると一生機能不全になる塗り薬でも出してやろうかしら・・・。)
ブラックリーネが再降臨して物騒なことを考えるも、結局普通の薬を出してあげたのだった。
─追記その2〈通称うんこの実〉─
通称うんこの実 正式名 大杏の実・・・完熟する前に収穫し、茹でれば臭みが抜けてほくほく美味しくいただけます。
ある日の閉店後の薬屋のキッチンにて。
「はい、岩鶏肉と根菜とうんこの実の煮物、どうぞ!」
異国情緒あふれる一品をスッとライキに差し出すリーネ。
「やった!リーネの飯♪
・・・だけど、その呼び方は食欲なくなるからやめない・・・?」
と汗を垂らすライキなのだった。
ユデイは酒屋の息子ムランに”今夜のおかず”を提供するのと引き換えに手に入れた上等なワインを手土産に、ハント家へと訪れていた。
目的は前々からハイドに頼んでいた恋愛相談だ。
ハイドの部屋にてライキも加わった3人でローテーブルを囲って話をしていた。
「なるほど・・・。
ルウナと仲良くなりたくて話しかけても、会話が長続きしないし途中から避けられてる気がすると・・・。」
「そうなんすよ・・・。
もうずっとこんなんで、告白しても玉砕するの目に見えてるっていうか・・・。」
しゅん・・・と肩を落とすユデイ。
「・・・お前、もしかしてルウナと話してる時、胸ばかり見てねーか?」
ぎくっとするユデイ。
「図星かよ。」
「いや、だって話してると目の前に好きな子のおっぱいがあるんすよ?
つい、目がそっちにいってしまうっていうか・・・。」
とユデイ。
「ははっ、まぁわかるけどな?
でも避けられてると感じるのはルウナが巨乳であることで嫌な思いをしてきたからだと思うぜ?
ヒルデも乳がでけーから、客からいやらしい目で見られたり色々あるみてーだし。
ま、あいつは15になってすぐにつがいの指輪をしてたし、それ以前も俺が青鹿亭に頻繁に通って虫除けをしてたから、手を出してくる奴は居なかったけどな。
ルウナも自分の胸ばかり見てくる野郎を警戒して距離を取ってるんだろ。」
「じゃあ俺、もうルウナに嫌われてんのかな・・・。」
更に肩を落とすユデイ。
「うーん、そいつはどうかな?
リーネのつがい相手のライキの親友っつーことで、お前の良いところもある程度知ってるだろうし、ただの胸目当てのスケベ野郎よかは断然マシじゃね?
後はここから先のお前次第ってとこだろ。」
「・・・俺次第か・・・。
どうすればいいですかね?」
真剣な表情でハイドに尋ねるユデイ。
「まずアプローチをするときに胸を見るな。
胸以外のルウナの好きな所があるだろ?
それをどんどん伝えていけよ。
後は何か共通の話題を見つけて会話を広げていく。
お前の特技を活用するのもいいと思うぜ?」
「ふむふむ・・・。」
頷きながらメモをとるユデイ。
「あとは、ある程度仲良くなった所で男を見せる!」
とハイド。
「男を見せる?って、どんなんっすか?」
「そーだなー・・・。
王道だがルウナがピンチの時にお前が身体を張って助ける、とか?」
「いや~・・・。
そんなピンチ、この平和な村にいたら滅多にないっすよ~・・・。」
掌を上に向けて首を左右に振るユデイ。
「いや、そうでもないぜ?
初夏になるとフォレストサイドの観光エリアに避暑にくるお偉いさんの坊ちゃんたちがいるだろ?
昨年そいつらにナンパされてるルウナを見たぜ?
あんときは俺が偶然通りかかって助けられたけど・・・。
つがいじゃないフリーの女の子ってのは結構危ないんだぜ?
年齢的に色気も増してくる頃だし、特にルウナは可愛いし、胸もでけーから目を引くしな。」
ハイドの言葉にユデイは眉間に皺を寄せて俯いた。
「・・・チクショー・・・。
やだな・・・。
そんな奴らに絶対ルウナを渡したくない・・・!
でも俺、ひょろいし身体張れる程強くない・・・。
ハイドにーさんや、ライキみたいに強くなるにはどうすればいいですか?」
と二人に尋ねた。
「あー、俺らはガキの頃からずっと親父に仕込まれてきたからなぁ・・・。
いきなり強くなる方法なんてのはないな。」
ライキも同意して頷く。
「でも走り込みとか筋トレをするのはいいことだと思うぜ?
体力がついて、身体も逞しくなるし、自分に自信も持てるようになる。」
「そっか・・・!
俺、やってみます!
走り込みと筋トレ!」
ユデイは拳に力を込めて答えたが、すぐに不安な表情に戻るとまた俯いた。
「・・・でもまた初夏が来て、あいつらにルウナがナンパされても、こんな短期間鍛えたところで助けられる気がしないっすよ・・・。」
「ふーむ・・・。
なら、足りないところは頭使って補うしかねーんじゃね?」
頭を指差してハイドが答えた。
「そんな・・・俺頭もよくないっすよ?」
「スクールの成績じゃねーんだよなぁ・・・。」
ポリポリと頭を掻き腕を組みどうしたもんかと考えを巡らすハイド。
「身近に武器になるものって意外にあるぞ?
そういうのを使うのはどうだ?」
ずっと黙って聞いていたライキが口を挟んだ。
「お!ライキはそういうの得意だからな。
教えてやれ。」
「ライキ先生、俺にできそうなのなんかある?」
「そうだな・・・。
お偉いさん相手だと、後で高額な賠償を要求されたり、権力を使われて商売が出来なくされたりすると厄介だから、証拠が残らないやり方を選ぶ必要がある。
流血とか骨折なんかは勿論のこと、外傷が無くとも激しい痛みを与えすぎると相手がキレるから、刺激し過ぎず、尚且つ効果がある方法がいいな。
ルウナを助ける目的だけなら目つぶしが有効的かも。
慣れないやつが指で狙うのは難しいから、砂を目にかけてやるんだ。
その隙にルウナの手を引いて逃げる。
あとは臭いのとか酸っぱいのを無防備な顔に向かって投げつけるのも効果的だな。
そういう使えそうなものがどこにあるか普段から情報を仕入れておくんだよ。
あと今の季節で使えるものだと・・・・・・」
ライキの30分に及ぶ”身近な武器講義”が終わると、ユデイが「ありがとなー!!」と手を振って帰って行った。
それを兄弟で見送った後、ライキがハイドに問いかけた。
「兄貴、”男を見せろ”って前に俺にも言ってたけど、俺の時は"壁ドンでキス仕掛けろ"とか"会いたかったって言ってギューって強く抱きしめろ"だったのに、ユデイには全然違うことを言ってたよな?
何でなんだ?」
「あー、お前の場合はリーネがピンチなら普通に助けられるし、わざわざ俺から言うこともないだろ?
お前に足りなかったのは、"リーネに欲情しているオトコ"なんだと、相手に強く意識させることだと思ったからああ言った。
ユデイの場合はそれは逆効果だしな・・・。
もっと"男の頼りになるところ"を見せつけるようなアプローチが必要なんだよ。」
「なるほど・・・。」
「ユデイ、うまくいくといいな?」
「うん。」
─その後ユデイは毎朝本屋の開店準備前に走り込みと筋トレを行い、ルウナに話しかける際には胸に目をやらないよう気を配っていたようだった。
そのうちルウナと話せる時間が長くなってきて、自分の特技を生かしてルウナの好きな小鳥や草花の絵を描いてあげたりもしたみたいだ。
それがルウナにはとても効果的だったようで、それから沢山笑顔を見せてくれるようになったって嬉しそうにユデイが報告してきた。
そんな燕月(7月)初旬のある朝─。
仕立ての良い服を着た15歳くらいの少年二人がフォレストサイドに馬車で到着していた。
一人は金髪碧眼で目元の冷たいキザ男、もう一人は赤みがかった茶髪くせっ毛の優男だった。
「いやー、俺もこんなくそ田舎に来るの退屈なんだけどさぁ。
親父が行けって言うから仕方ねーよなぁ。」
金髪が愚痴りながら馬車を降りた。
「まぁまぁ。
この村には可愛い子が二人いただろ?
誘って一緒に遊んだりしよーよ。
そしたら暇じゃないって!」
茶髪が彼に続いた。
「あぁ、俺はあの巨乳のほうを狙ってるんだ。
去年は通りすがりのおっかないイケメン蛮族に邪魔されたけど、今年こそはものにして見せるぜ・・・。」
「僕は淡い金髪のほうね。
小柄で華奢で色白でさ~。
何より顔がすげータイプなんだよな~。
おっぱいは小さいけどね(笑)」
「あー・・・あれは大人しそうに見えて気が強くて面倒なタイプと見たぜ?
巨乳のほうが権力をかさに着せりゃ逆らえないタイプだからいろいろやりやすいぜ?」
「お前はあの巨乳の子誘ってつがいにするの?」
「まさか。
こんな田舎の村娘なんかつがいにして俺に何のメリットがある?
ただの遊び相手だよ。
この村にいる間だけのな。」
「お前ほんとゲスいな!」
「お前こそ、おこぼれにあずかりたくて毎回ついてくる腰巾着の癖に。」
ウシシ・・・と笑う二人。
「お!うわさをすれば・・・」
リーネはライキと一緒に朝の教会でつがいの決まり事である報告のお祈りを済ませた後、一旦彼とは別行動をして、ルウナとセンター通りの広場でお喋りを楽しんていた。
(一方ライキはその隣の通りにあるユデイの本屋で彼と雑談をしていた。)
遠くからルウナの姿を確認した金髪は、その近くまで歩いて行くと、腰に手を当て髪をキザったらしくはね上げてから、
「よう、俺のこと覚えてるよな?
この美貌と気品溢れる姿・・・。
忘れたとは言わせないぜ?」
と話しかけた。
金髪に気がついたルウナの顔がみるみると青ざめていく。
「今年も折角こんなド田舎まで会いにきてやったんだ。
一緒に遊ぼうぜ?」
ルウナが怯えて後ろに下がったので、リーネが庇うように前へ出る。
「やめてください。
怖がっているでしょう?」
金髪を睨みつけながら言った。
するとリーネ目当ての茶髪が目を輝かせて前に出てきた。
「やぁ、僕のこと覚えてる?
相変わらず可愛いね!
今年こそ一緒に湖に出かけようよ!
可愛い水着買ってあげるからさぁ。」
とリーネの手を取ったとき、つがいの指輪を見た彼ははっとした。
「えっ、そんな・・・君、もう誰かとつがいに・・・くそっ・・・!」
茶髪が悔しそうに顔をゆがめると金髪のほうがこそっと耳打ちした。
『・・・おい、加護持ちはやめておこうぜ。
教会に目をつけられれば厄介だ。
巨乳のほうはフリーみたいだし、お前にも後で貸してやるからさ・・・協力しろよ。』
『・・・・・・そういうことなら。』
でへへっと鼻の下を伸ばしてルウナを見る茶髪。
「それじゃ、淡い金髪のお前はもう行っていいから。」
とリーネにあっち行けと手を振る金髪キザ男。
「茶髪のお前は・・・一緒に来るよな?」
と言ってルウナの肩を抱いた。
「い、行きません・・・!
私、友達と一緒に行きますから、離して・・・!」
精一杯抵抗を示すルウナだった。
すると金髪はずいっとルウナに顔を近づけると、低い声で言った。
「お前、裏通り角の服屋の娘だよな?
お前の所に生地を卸しているの、俺の叔父なんだよね~(嘘)。
お前の家が商売できなくなってもいいのか?」
ルウナははっと青ざめてブルブル震えだした。
「ルウナ、そんな脅し聞いちゃダメ!行こ!」
リーネがルウナの手を引こうとすると、茶髪のほうがリーネの肩をがしっと捕まえて、ルウナから遠ざける。
「心配しなくても大丈夫だよ。
君の友達は楽しく僕らと遊んだ後でちゃんと送って返すから。
ちょっとだけ貸してね?」
「!だ、駄目!
そんな・・・ルウナ・・・!!」
リーネは茶髪を振り払おうとするが、力で敵わず引きはがせない。
「はいはい抵抗しないでね~・・・!
殴ったりしたら教会にばれそうだから・・そうだ!」
茶髪はネクタイを外し、リーネの腕を街灯にくくりつけはじめる。
リーネは辺りに助けてくれそうな人がいないかを探すが、商店街の人達はこちらに気がついていても、権力を持った坊ちゃん達相手に助けられないでいるようだった。
「これでよしっと。」
ついには街灯に括りつけられてしまうリーネ。
「早く来いよ!
おこぼれやらないぞ!」
「おー、今行く!」
茶髪は金髪を追いかけて駆けて行った。
ルウナは身体を震わせたまま金髪に連れられて、その姿がリーネからどんどん離れていく。
リーネは涙ぐむと、すうっと息を吸い込んで、大声で叫んだ。
「ライキーーーーー!!!
ルウナがっ・・・むぐっ!」
途中で茶髪が走って戻り、リーネの口を手で塞いで言った。
「このっ!口も塞がないと駄目か!」
「平気だって!
助けを呼んだところで俺たち相手にどうせ誰も・・・」
と金髪が言いかけたところでライキとユデイが急いで駆けつけてきた。
状況を一目見て理解した二人は走りながら短く会話する。
「俺はリーネを助ける。
男を見せろよ!ユデイ!」
「わかった・・・!!」
茶髪がリーネを拘束して口を手で塞いでいたため頭にきたライキは、大地を蹴って一気に攻撃範囲まで距離を詰めると、その手を離させるべく手刀にて関節に一撃与えた。
ライキは当然手加減をしているのだが、茶髪は相当痛かったのか、
「グアッ!」
と苦痛に顔を歪めるともう片方の手で腕の関節を押さえて膝をついた。
ライキはすぐに腰に刺したナイフで街灯にガチガチに括られたネクタイを切ってやる。
自由になったリーネはライキの胸元に飛び込むと、
「お願い!
ルウナを助けて!!」
とライキに縋った。
ライキはリーネの背を抱くと、
「ユデイが助けるから、見守ってあげて。」
と優しく伝えた。
茶髪はそんな二人を見て青ざめ、
(つがいの相手って昨年邪魔してきたイケメン蛮族の弟かっ!
手を出さなくて良かった・・・!!)
と思うのだった。
一方、気合を振り絞ったユデイは、
「ルウナーーーーー!!!」
と大声で駆け寄ると、思い切り金髪に体当たりし、ルウナから金髪を弾き飛ばすことに成功した。
急いでルウナに駆け寄るユデイだが、すぐさま起き上がった金髪に勢い良く殴られ、地面に飛ばされてしまうのだった。
「キャーーー!!ユデイ!!」
ユデイに駆け寄るルウナ。
(ちくしょー!
ルウナを助けるにはどうすりゃいい?
下はレンガ・・・砂の目潰しも出来ない・・・!
クソっ!)
ふとそこに通称”ウンコの実”が落ちていることに気が付くユデイ。
前にライキが、
「身近に武器になるものって意外にあるぞ?」
「臭いのとか酸っぱいのを無防備な顔に向かって投げつけるのも効果的だな。」
と話していたのを思い出す。
それと同時に、まだジュニアスクールに通っていた10歳くらいの頃、下校中にウンコの実を踏んでしまってライキに死ぬほど笑われたことも。
ユデイは決意を固め、それを手で潰して相手の顔に投げつけた!
「うわっ、クサっ!クッサッ!!何だこれ!!」
金髪は堪らず鼻を腕で押さえ、顔についた実を落とそうと必死になる。
ユデイはもう一個うんこの実を潰すと、金髪に駆け寄ってきた茶髪の方にも御見舞した!
「!!うわっ!マジくっさーー!!」
その隙にユデイはルウナの手を取って、
「ルウナ!こっち!」
と言い引っ張ろうとする。
だがルウナは、
「う、うん・・・!
ちょっと待って!」
と言ってその手を離してから金髪に近寄ると、大きく右足に勢いをつけ、
「えいっ!!」
思い切り金的をかましたのだった!!
「!!!」
あまりの出来事に金的を食らった金髪だけでなく、間近で見ていた茶髪、ユデイとライキ、リーネすらも目を丸くした。
「行こ!」
ルウナは呆気に取られているユデイの手を取り、一緒に走って逃げたのだった。
水飲み場で顔を洗う坊ちゃん二人。
「あいつら許さねえ!
見つけだし後悔させてやる!
特に女の方!!思い切り蹴りやがって!!
女の家は判っているんだ!
必ず見つけ出して・・・くっそ!
臭いのとれねー!!」
ライキはその様子を見ながら不安にかられていた。
「凄く怒ってるね・・・大丈夫かな・・・。」
リーネが不安そうに呟いた。
「あぁ・・・。
ユデイのうんこの実爆弾はともかく、ルウナの金的はまずかった。
相手をかなり怒らせてしまったし、家を知られている。
このままだと・・・。」
(どうする?
こいつらをのして手を出さないように脅すか?
いや、それだと一時的にしか・・・・・)
ライキがいろいろと物騒な考えを巡らせていると、リーネがポーチから何かを取り出して言った。
「私に任せて。」
「リーネ?
・・・一体何を?」
リーネはハンドタオルを持ってそいつらのところへ近づくと、
「良かったらこれを使ってください!」
と、笑顔で手渡した。
「あ、ありがとう。」
頬を染めて受け取り顔を拭いた茶髪はすぐに意識を失い、その場に倒れ込んだ。
リーネはすかさず、
「あなたもどうぞ!」
と言いながら、黒ーい笑顔で金髪の方の顔に(強引にぐりぐりと)タオルを押し付けると、そっちも倒れたのだった。
「これで大丈夫。」
「・・・リーネ?
何をしたんだ?」
「うん。
少しだけ記憶障害をおこす薬を使わせてもらったの。
目が覚めたら倒れる前10分位の記憶を失ってると思うけど命に支障はないから。
そろそろこの人たちが出没する季節だから、
護身用に色々な薬を持ち歩いていたんだけど、役に立って良かった!」
とニッコリ笑顔で説明するリーネ。
(助かった・・・。
けど、リーネって意外とブラックなところがあるよな(汗)
今後怒らせないよう気をつけよう・・・。)
と考えるライキなのだった。
「ルウナとユデイ、これでつがいになるかな・・・?
なってほしい。
そしたらルウナ、二度とあんな目に遭わなくて済むもの。」
と言うリーネ。
「大丈夫だろ。
あいつ、かっこ良かったしな。」
「うん!ライキもね!」
と二人は手をつないで帰っていく。
「そういえば、タオル置いてきてたけど良かったのか?」
「うん。
あの人たちの顔を拭いたタオルなんてもういらない。」
「そ、そっか・・・。」
等と話しながら薬屋へと続く丘を登っていく。
村の東のほうへ逃げたユデイとルウナは景色のいい高台にいた。
「ずっとルウナが好きでした!
俺とつがいになってください!」
ユデイは頭を下げ手を差し出しながら、告白した。
ルウナは優しく微笑むと、差し出されたその手を取って、
「はい・・・。」
とはにかみながら返事をした。
ユデイが嬉しくて「うおおおー!ヤッター!!」と叫んでいると、
「手、洗いに行こう?
私もユデイと手を繋いだから臭くなっちゃった。
ふふふっ!」
とルウナが笑いながら言った。
「そいや俺ウンコの実潰したんだった!
くっせー!」
と二人で笑いあう。
「そういえばルウナさ、よくあの金髪に金的食らわしたよな?」
「あ・・・あれね、最初は怖くて動けなかったのに、ユデイが助けに来てくれたのを見たら、なんかね、出来ちゃったの。
うふふ・・・!」
(・・・うふふとか笑ってるけどあの金髪野郎相当痛そーだったぞ?
仕返しとか大丈夫か?
・・・いや、何かあったとしても俺が守らないと。
その為にもすぐ教会につがいの届け出をした方がいい。)
ユデイはそう考え、真面目な顔でルウナに向き合った。
「手を洗ったら、すぐにお互いの両親につがいの報告をして、教会に届け出にいこう。
またアイツらに狙われない為にも、早い方がいい。」
「うん・・・行こう!」
臭いけどいい雰囲気の二人は手をつないで歩いていく。
そして夕方、ライキとリーネに幸せいっぱいの笑顔でつがいの指輪を見せにくるユデイとルウナなのだった♡
─追記その1〈翌日の坊ちゃんたち〉─
翌日例のお坊ちゃん二人が薬屋に来ていた。
茶髪の方はライキにやられた肘の関節が痛むようで、どこかで痛めたみたいだから湿布を売ってほしいと言った後、
「あれ?
君は・・・薬屋さんだったんだね!
去年も会ったよね?
僕のこと覚えてる?
相変わらず可愛いね!
えっ・・・それ、つがいの指輪!?
・・・クソっ・・・誰かともうつがいに・・・ショック・・・
って、昨日もこんなこと言った気がするなぁ・・・?」
と首をかしげていたので、リーネは知らんぷりして湿布だけ渡してあげた。
金髪のほうはルウナに蹴られた股間がまだ相当痛む模様で、
「デリケートなところに塗れる痛み止めをくれ。」
とぶっきらぼうに言ってきた。
(こいつ・・・ルウナに酷いことをしようとして許せない男・・・!
・・・股間に塗ると一生機能不全になる塗り薬でも出してやろうかしら・・・。)
ブラックリーネが再降臨して物騒なことを考えるも、結局普通の薬を出してあげたのだった。
─追記その2〈通称うんこの実〉─
通称うんこの実 正式名 大杏の実・・・完熟する前に収穫し、茹でれば臭みが抜けてほくほく美味しくいただけます。
ある日の閉店後の薬屋のキッチンにて。
「はい、岩鶏肉と根菜とうんこの実の煮物、どうぞ!」
異国情緒あふれる一品をスッとライキに差し出すリーネ。
「やった!リーネの飯♪
・・・だけど、その呼び方は食欲なくなるからやめない・・・?」
と汗を垂らすライキなのだった。
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