不幸で運無し苦労人が異世界転生で「運レベル999」を貰い最強を目指す!

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第一章『幼少期』

第17話『今後のデュフォール家』

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 2人を祝うはずの祝賀会しゅくがかいにて父フィリップが三男であるアランに対して手をあげた事によりエルザ叔母さんが介入し、見かねたエブゾフェア大公が止める形となってしまい祝賀会は実質崩壊じっしつしてしまった。

 元凶げんきょうの父フィリップはエブゾフェア大公に止められたが、まだ納得がいかないような顔だ。

 「諸君しょくん、この盛大に祝うべきこの祝賀会でスタンベルク伯爵はくしゃく殿のこのような騒動は貴族らしからぬ行いであり目に余る行いである! よって何らかの処罰しょばつを与える! 後ほど追って通達をするから出頭しゅっとうしなさい! あと家族の問題は家族内で必ず解決するように!家族間の問題も解決出来ないような者がこのスタンベルクを任す事は出来ないからな。 それと今後アランに対して『俺の子じゃない』という発言が一度でも外に流出した時点で奪爵だっしゃくさせるからな? では私は帰らさせてもらう。」 と言うとエブゾフェア大公はその場から立ち去ってしまった。

 その光景を見た他の来賓らいひんの貴族達も同様に帰って行き、会場に残ったのは家族と使用人だけであった。

 「アランっ!祝賀会が台無しになった全ての原因はアランお前のせいだ! お前が私の言う事さえ聞いていればこんな事にはならなかったハズだ! 転生勇者てんせいゆうしゃだろうがデュフォール家の面汚つらよごしだ! お前は今後一切外に出さん! 何か行事が有っても家に居ろ!分かったな!!?」

 父フィリップはそう言いながら凄い剣幕けんまくでアランに詰め寄って来たが、それを遮るようにエルザ叔母さんがアランの前に立ちふさがった。

 「みにくいねぇ…お前は昔からそうだったが貴族になってからより一層醜くなったな…。 アランのせいじゃない事くらい脳無しのお前だって分かるだろう? これは女神ディーネ様が決めた定めなのだよ。お前のアランに対する見る目の無さがお前にとっての後悔なんだろうが、元よりアランはなんか望んじゃいないよ。それにあんたは勝手に自分が育てた長男であるジャックが一番優秀だと思い込んでただけだよ。ジャックも今回の件で悔しいだろうがアランはジャックの座をねらおうなんか思ってないんだから気にせず精進なさい。」

 「はい、エルザ叔母様…」

 ジャックは素直に返事をしたもののそれでもアランをにらんでいた。

 「五月蠅い! 祝賀会という大切な場で過去の事をみんなにバラすなんて一体どういうつもりだ!? 私の爵位に影響が出たら責任とれるんだろうなぁ!!?」

 「はあ…。 元々の原因は都合が悪い事を先延ばしにするあんたの性格のせいだろう? この際キッチリ言っておけば大公様もあんたに釘を刺すだろうし、あんたが今後変わらないとデュフォール家としても衰退しちまうから言ったのさ。今ここで解決出来ればこの先楽になるのも分からないのかい? 可哀そうだけどマリーナも見る目無かったねぇ…」

 母マリーナはエドガー兄を抱えながら泣いていた…。 ――ていうかこの状況でエドガー兄よニヤけてるなよ…。

 「五月蠅い!五月蠅い!五月蠅い!! エルザァ!!もう二度とこの屋敷をまたぐな! 今度俺の前で顔出しみろ? 貴族の権限でお前を牢獄ろうごく送りにしてやるからなぁ!!?」

 「あなた、もうやめてぇーーーー!!」

 その言葉に母マリーナは父フィリップに懇願こんがんするようにしがみついたが父は黙ってしがみつく母マリーナを突き飛ばした。

 どうやら父フィリップはもはや聞く耳を持っていないらしくかなりの暴走状態でこれはもはや前世で言う『DV』に近い状態だ…。

 「ほらマリーナ! 妻に手を上げるような男なんだよ? 息子の事を考えてとっとと別れちまいな!」

 「嫌よ!片親がどれほど大変なのか母さんも知ってるはずよ! それに片親が世間にどう見られるか分かるでしょう?『元貴族』になるのなら猶更なおさらよ! それに両親の存在が有ってこ子供たちが親を見て成長するのよ!」

 母マリーナは泣きながらエルザ叔母さんの言葉を拒否した。

 それを見ているエドガー兄もどうしていいか分からずオロオロしているし使用人達も立場上逆らえない為、只々心配そうに見守ってるだけだった。

 もう家庭内崩壊はまぬがれないだろうと感じた俺はある行動に移した。

 「分かりました、今後は一切表舞台に出ないようにつとめ、ぼくが転生者かつ『予言の勇者よげんのゆうしゃ』で有る事も一切公言しない事を約束します。 また父やジャック兄の今後の政治的活動についても一切関与せず迷惑をかけない様にします。 またぼく自身も『勇者』として生きようと思っていないのでぼくに対して英才教育は一切必要ありません。 この条件を守りますので7歳の『祝福の儀しゅくふくのぎ』までの間は『予言の子』について一切触れる事無く、普通の家族として接してください。その後に関してはその時考えます。」

 正直前世の経験を生かせば幾らでも独立出来ると思う。問題は魔物の存在で前世の治安ちあんの良さとは比べ物にならない事であるが、その点も7歳までに母マリーナから魔法を全て叩き込んでもらい自衛出来るようになれば問題ないと思う。そして父達の企みにも干渉されなくなるだろうしこれでいい。

 「アラン、そんな事考えなくていいのよ? だって私たちの家族なのだから差別なんかしちゃいけないわ! ジャックもそんな顔してないで今後も仲良くね?」

 「母様、すいませんが父様の…『当主とうしゅ』命令は絶対なので今後アランと関わる事は出来ません。 なので普通に接することは難しいかもですが決して悪意を持って接する事は無い事をお約束します。」

 ジャック兄は既に父の味方についており考えは変わらない様だ。

 「何言っても変わらないようだし私は帰るよ。 お前さんと同じように今後私の娘のマリーナや孫達に手を上げた事を私の耳に入ってきたら承知しないからね!」

 そう言うとエルザ叔母さんも帰って行った。

 そしてそのまま祝賀会は実質崩壊という形で終わったのであった。


 その数時間後の夜、家族全員父フィリップに呼ばれ書斎しょさいに来た。

 「みんな集まったか。」 父フィリップはみんなを確認すると発言を続ける。
 「祝賀会の時は悪かった。冷静に考えたがあの時は明らかに貴族ならぬ振る舞いと共に来賓の方や大公様の前で恥をさらしてしまい、デュフォール家の信用を下げてしまい祝賀会も失敗に終わってしまった事は全て私の責任だ…。エルザ叔母様に対しての言動もマリーナの事を思えば有り得ない発言であった、マリーナ本当にすまない…。 それで今後の事をちゃんと話そうと思い集まってもらった訳だが、1人ずつ今後どうしたいか、将来どうなりたいかを私に教えて欲しい。その意見を真摯しんしに受けとめ助言をしたいと思う。 まずはジャック、お前からどうだ?」

 「僕は父の跡を継ぐために今すべき事をするだけです。その為にまずは帝国学校ていこくがっこうで主席で卒業し父が成し遂げられなかった『Aランク』冒険者に必ずなります!!知名度を手に入れた後はスタンベルクの治世ちせいに尽力し民がより良い生活を送れるような領主になるのが夢です。」
 どうやらジャック兄の意思は以前と変わらないようだ。

 「そうか、もうすぐ帝国学校の寮に入ることになる。生活環境が変わり大変かもしれないが頑張るんだぞ! ジャックのその気概さえあれば夢を叶える事が可能であろう! だが慢心は禁物だぞ!」

 「次はエドガーだ! 今度どうしたいんだ?」

 「う~ん…。 俺は頭悪いしジャック兄のような使命や力量も無いけど剣術には自信が有る! 体動かすのも好きだし得意だから自分の成長も含めて帝国学校を卒業して『帝国騎士団』に入って自分自身を強くしたいかな…。 それと『帝国騎士団ていこくきしだん』は安定収入も見込めるし少しはエルザ叔母さんの所や実家に仕送り出来るくらいの『大きな男』になりたい。」
 エドガー兄なりに色々考えているようだった。しかも家やエルザ叔母さんの所に仕送りとは、なんて家族想いの兄なんだ!と初めて俺は感心してしまった。

 「そうか、エドガーもその歳で夢がはっきりしていているのは良い事だ! 元々私の考えでもエドガーの性格を考えれば『帝国騎士団』に入るのがベストだと感じていたからそれで良いと思う。 帝国学校の剣術使いには上には上がいるからより高みを目指すいいキッカケになるだろう。まずは祝福の儀までに剣術の稽古を今まで以上に厳しくするから付いてこい! そしてまずは帝国学校に入学して『帝国騎士団』になれるように頑張れ」

 「次にアラン…、お前はどうだ?…」

 「その前にとうさま、後で話してくれると言っていたエルザ叔母さんの件ちゃんと話してもらえますでしょうか?」

 そう言うと母マリーナは目を閉じ俯いてしまったがここで全て聞いて解決しておかないと今後の俺の立ち回りも決められないと踏んだので思い切って聞いた。

 「すまんなアラン…その話は……。」 やはり歯切れが悪い、見殺しにしたのは本当なのだろう。
 凄く言いたくなさそうな顔をしていた父フィリップだったが、折れない俺を見て観念したように話し始めた。

 「当時私やマリーナが冒険者であり婚約こんやくしていた頃の話だが、ランズヘイズ王国とルテイト魔導まどう王国の間にある山脈に『ランズヘイズ迷宮めいきゅう』が存在し定期的に魔物の大行進スタンピードが発生していた。それはランズヘイズ王国側の山脈の洞窟な為、ルテイト魔導王国側に被害はなかったのだが、当時の私とマリーナ含む冒険者パーティーが『ランズヘイズ迷宮』のスタンピード対応中にルテイト魔導王国側に突如とつじょとして迷宮が発現し、ルテイト魔導王国に対してのスタンピードが発生してしまった。 当時マリーナの故郷こきょうであるルテイト魔導王国が襲われているという報告を聞いてけつけるかについてパーティー内で揉めてしまったのだ。 元々エブゾフェア公国が他国から応援要請を受けての『ランズヘイズ迷宮』のスタンピード対応中だった為、現在の任務を優先するかマリーナの家族を優先するかの選択で私は依頼達成時の『貴族昇格』に目が眩んでしまいルテイト魔導王国側のスタンピードに参加しなかった。猛反対したマリーナだけ単騎たんきで駆けつけ、駆けつけた頃には村の前線は壊滅状態だったらしい。マリーナの力でなんとかスタンピードに対抗出来たものの、村の中央に侵入してしまった数体の魔物によってマリーナの祖父と母の姉が殺されてしまったが、私は『ランズヘイズ迷宮』のスタンピード対応の功績こうせきでスタンベルクを任せてもらえる貴族になる事が出来たのだ。当時の私が報酬に目をくらませず、共に駆けつけていればもっと楽にスタンピード対応出来たハズなので、もしかしたらマリーナの家族が死ぬ事は無かったのかもしれない。私は今でも自分の行いに非が有るとは思っていないが婚約者の家族を見殺しにしたのは事実であるから言われても仕方ないと思っている。だが私も今後の家族を思っての行動だった、それに1度謝罪もした。それでもマリーナの家族が揃って私の存在を否定してきた為、妻を愛すことは変わらないが私の存在を否定したマリーナの家族だけは許せなくなってしまったのだ…。」

 他にも色々な話が出たが俺は当時の話を理解することが出来た。

 「とうさまの言い分は分かりました。 仮にパーティー全員で駆けつけていたとしてもかあさまの家族が殺されないという保障ほしょうは有りませんからね。エブゾフェア公国の依頼を蹴る事も信用を失うので苦渋くじゅうの決断だったのでしょう。 それでもとうさまは1度だけではなく、何度も謝ろうとしなかったのですか?駆けつけることが出来たのに見殺しにした事は事実なのです。人の死は大抵受け止められるものではありませんから許してもらえるまで謝るべきですし、かあさまの家族に対して誠意を見せ続ける必要があったと思います。今までそれをせずにいたからエルザ叔母さんが今でも怒っているのは分かりますよね? とうさま、とうさまの誠意として今後定期的にエルザ叔母さんに謝罪と家庭内近況報告の手紙と贈り物を送るのは如何いかがでしょうか?」

 父フィリップはアランの発言を聞くと驚いたように目を見開きながらも納得したようで、「アランの前世がどうだったかは知らないが、凄い思考能力だな…。分かった、検討しておく。」と少し前向きな回答だった。

 「私の話はちゃんと話した、今度はアランだ! 今後どうしたいんだ?」

 「ぼくは前世の知識も含め、この世界についての知識をもっと知りたいです。前世の世界には魔法や魔物というモノは空想上くうそうじょうのモノで存在しません。なのでこの世界の事を知る為にも知識と力を身に着けこの世界でより良い生活をしたいです。その為の努力は惜しまないつもりです。『予言の勇者』とか言われていますが正直興味は無いし、もし本当にそれが運命なのであれば全うするしかないのでその為にも力を付けます!ぼくの出生固有スキルは『大魔導剣士だいまどうけんし』なので前世の知識で考えれば賢者兼剣聖けんじゃけんけんせいということになります。なのでそれに見合った稽古を7歳までにして欲しいです。その後の事はその時自分で考えます。」

 「アラン!? 『大魔導剣士』が『賢者けんじゃ』と『剣聖けんせい』の両方をあわせ持つというのは本当なのか!? であればアランは本当に選ばれし『勇者』なのだろう。 だが残念ながらアランに剣術を教えられる程までに成長する頃には頃にエドガーの帝国学園が控えているだろうからすまないが剣術の稽古はエドガーが優先になってしまうのは許して欲しい。」
 どうやら父は俺に剣術教えてくれるらしいがエドガー兄が優先らしい。受験を考えれば仕方ないがジャック兄とエドガー兄二人とも稽古受けていたのにこの差は何なんだ?

 「大丈夫よアラン! 体が出来上がるまでは私が魔法の全てを叩き込んであげる♪ 後、フィリップが忙しかったら私の知り合いに剣術の稽古を頼むから平気よ!」
 さっきまで泣いていた母マリーナはいつの間にか元気を取り戻していた。ていうか俺の事になると元気になってる気が…。

 「マリーナもしかしてあいつを呼ぶのか? アランが死んだら困るんだが…。」

 ええ?なんか爆弾発言が出たんですけどぉ? そんな事も気にせず母マリーナは続けて言う。

 「アランは勇者になるんだから大丈夫よ♪ きっとあの人より強くなれるわ! うふふ♪」

 「確かに強くなれるだろうが親としては心配だなぁ…。マリーナ、くれぐれも殺さないように手加減してもらうように釘を刺しておいてくれ。」

 ええ?簡単に殺されちゃうほど凄いの? その人で俺ちゃんと成長出来るの? マジで不安しか無い…。

 俺がかなり不安そうな顔をしている中、母マリーナは「あらあら♪ うふふ♪」といつも通りに戻っていた。
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