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アンナ②
そして目が覚めたら。
「…!お嬢様…っ!?」
あたしはお嬢様になってた。
「…」
覗き込んでる見たことない外国人。でも知ってる。名前も、誰なのかも。知らないはずの天井の模様も知ってる。アンの部屋。アンのベッド。
涙目で見つめてくる外国人はロージー。アンの侍女。心配だったよね。ごめんね。
でもあたしはあなたの大事な"お嬢様"じゃないんだよ。…ごめんね。
「…?…、」口を開こうと思ったけど痺れてるみたいに開けない。頭痛はなくなってるけどなんか、身体も動かない。
しょうがないから瞼をぱちぱちさせて意思表示してみれば、ロージーは溢れた涙をぬぐいながら「ご家族を…!」と言っていなくなった。
…………アン、ねえ、近くにいるの?わかんないけど、きこえてるって思って話すよ。
かわいい部屋だね。ぬいぐるみもこんなにある。てかありすぎ。ウケる。…褒めてるからね?
あたしんち丸ごと入るなってくらい広いし、本物の天蓋つきお姫さまベッドすごい。
さすが異世界って感じ。修旅で行ったどっかのお城の部屋みたいだもん。コレも褒め言葉ね。
……アン。アンの身体も、傷ついたまんまだね。
ゆっくり早く治そう。そしてさっさと領地に帰ろうね。
ーーあぁホラ、来たよ。足音やばい。きこえてる?貴族も走るんだね。偏見かな?ごめんて。
「アン……ッ!」
「アンルー!」
「姉上…!」
その勢いのまま飛び込んできた三人の外国人。
もちろんわかる。アンのお母さん、お父さん、弟。
みんな泣いてる。震えながら手を握って、頬を撫でて、腕で顔を隠して。
心配でしたよね、ごめんなさい。
でもあたしは、あなたたちの大事な娘でも姉でもないんです。…ごめんなさい。
あなたたちの大事な家族は、もういない。
……ごめん、ごめんなさい。
あー…痛いなぁ…喉引きつってる…。
だってこんなの見ちゃったらたまんないよ。
ねえ、アン。
あんたが言ってたのは、こういうことなんだね。
これはたしかに、ちょっと、キツいね。
自分の家族はどうしてるかなって考えちゃうし、心配かけてるかなって思うとつらいし。
アンの家族を騙してるって思うと罪悪感で居た堪れなくなるし、
「…あね、うえっ…ぼくは、…ぼくは王太子殿下に抗議します…!」
「…何を言うの、キリエ。そんなこと口にしてはいけないわ…」
「そうだよ。今話すことじゃないだろう?それは大人に任せて。…さぁ、何でそんなに離れてる?おいで、キリエ。アンが呼んでるよ」
「…!あねうえ…ッ…さま、…ねえさま…お願いどこにも、…行かないで…」
ーーまたこの家族を悲しませることになるのかって思ったら、たまんないよ。
それからはまさに至れり尽くせりって感じで貴族のお嬢様スゲーを実感する日々。
そして今さらながらアンの顔を見たとき。
鏡のなかにはミカちゃん人形。地雷メイクしてぇ。
ミルクティーの髪に瞳はヘーゼル。綺麗な肌。
少し薄めのくちびるがとても素敵だと思った。
冷たい印象与えるって思われがちだけど、試しに鏡に向かって笑ってみたらとてもかわいい。
女の子は笑顔がいちばん。
アンは笑顔が素敵なとてもかわいい女の子だった。
そんなかわいい笑顔をもう見ることができないクズ王子。
手紙とか花とか贈ってきてるの知ってるよ。
届かないけどキリエがぷりぷり怒りながら教えてくれるから。
受け取るひとがいないのも知らないで、いい気味。
「お嬢様、お茶ですが今日も天気が良いのでお庭で召し上がりませんか?」
「そうね、そうしましょう。ありがとう、ロージー」
「はい!」
自分の言葉づかいに吹きそうになるけどスラスラ出てくる。アンの記憶のおかげだ。
まだ歩くほどの体力はないから移動は車椅子。
段差があるところでは護衛のフェルがお姫さま抱っこしてくれる。イケメンフェル。あたしは内心ノリノリでお願いしてる。
アンの家はほんとに大富豪らしく、お邸もデカいし庭もデカい。使用人さんも護衛さんもうじゃうじゃいる。なのにみんな仲よさげなのがポイント高い。
「…?」花とか眺めながら優雅な貴族のお嬢様をたのしんでたら、入口にいた他の護衛さんたちが玄関のほうへ走ってくのが見えた。
気づいてるはずのフェルは動かない。ロージーも。
アンの両親は仕事で出かけててキリエは学校。
だから今コートナー家の人間はあたしひとりしかいないことになる。
「ーー」
何かあったらどうしよう。対応できんの?と不安に思いつつ、とりあえずはたぶんケンカも強そうなフェルに頼ろうと名前を呼ぼうとした。
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