そして目が覚めたら

雪乃

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アンナ④




目が合って、ぢく、っと、胸が痛んだのはアンの痛み。




ねえアン。
たしかに髪は綺麗だね。ちょっと乱れてるのが笑えるけど、わかるよ。
顔だってそうだね。クズじゃなければまじ王子サマって感じ、わかるよ。



でもそれだけかな。
コイツはクズで心がブスだからぜんぶ台無し。



ねえアン、近くにいる?
どのツラ下げて来たんだよって思ったけど、なんか窶れてるね。笑う。酔ってんのかな?


まさかの傷ついてますアピールとかだったら、殴っちゃう自信しかないよ。










「……アン身体は、平気なのか」

「そう見えますか?」



ばかなのかな。それ聞く?フェルがさっき言っただろ。立ってんのもキツいんだよこっちは。



「っ…すまない、座ってくれ」

「お席をご用意させていただきました。どうぞおかけください」

「いや俺は…」

「殿下は"少しでいいから話を"とおっしゃいました。この時間は無駄ではないでしょうか。問答を続けますか」

「、そう、だな。…失礼する」



ロージーがセッティングしてくれてたし、クズ王子が座ってからあたしも座る。フェルにお礼を言って。新しい紅茶がきた。もったいない。

あたしは猫舌だから、ぬるいくらいがちょうどいいのに。



「…」



クズ王子が紅茶をひとくち飲んだ。
手がキレイだな。

むかつく。


何かで読んだんだけど。…見たんだっけ。どっちでもいいか。
尋問相手に飲み物を渡すのはよくないらしい。
べつにコレは尋問じゃないし何ならあたしにとっての拷問だけど、とにかくなんでよくないかって、


言葉も一緒に飲み込んでしまうから。



「お話を伺う前にひとつお願いしたいのですがよろしいでしょうか」

「…あぁ」

「以後わたしの発言について一切不敬には問わないとお約束いただけますか」

「……わかった、約束する。……アン、」

「はい」

「……俺からも、……話をする前に謝罪をさせてほしい。……申し訳なかった。怪我をさせてしまったこと、今回の件だけではなく長いあいだきみを傷つけていたこと、……ほんとうにすまなかった……」

「…」



言質は取ったし。

踊って、クズ王子。


アンには永遠に届かないって知らないまま、
どんな言いわけ披露すんのか、踊り散らかしてよ。

















「…ふっ」



笑ってしまった。もう笑うしかない。

言質取ったから不敬じゃない。問題ない。
たぶん紅茶は冷めたから、飲みやすくなってる。


カップを取る。取ろうとして、目線を下げた。



「ッ、…アン…」





クズ王子は踊り狂ってた。
ばかみたいな言いわけばかりを聞かされた。


なんだよソレ。くだらない。あほらしい。
身内ブーストかかった相談女?ぜったいマウントも取ってたよね。
フェルが好き?婚約者がいるのに?クソだろ。
フェルはアンの護衛さんなんですけど。爆弾落とされたフェルの身にもなれよ。
今すぐそのブス引きずってきてくんない?湧いてる頭のお花畑、更地に戻してやるから。

















そう思ってブチギレながら、どっかで悲しいと感じたのは、あたしじゃなくアンだ。


ぽろりと落ちたのは、アンの涙だ。








ーーむかつく。



「殿下、ーー正気ですか?」



でもやっぱりコイツが、いちばんむかつく。

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