そして目が覚めたら

雪乃

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アンナ⑧




「まじかー…」



フェルが辞めちゃった。確実にあたしのせい。
行き先も知ってるしお金に困ることもないってアンのお父さんは言ってたけど。

ずっと一緒にいて、ずっとアンのために頑張ってきたひとなのに、居場所まで奪っちゃった。


フェル、ごめんね。
また会うことあったらちゃんと謝るから。
ちょっと疑心暗鬼になっちゃって、あたしは紛い物だから、自分がーー…ま、言いわけだけど、さ。



ーーアン、ごめん。

あたしのせいでフェル、いなくなっちゃった。




あー痛。












今日はね、学園に行ってきたよ。
授業なんてさっぱりなのにわかっちゃう不思議。
クズ王子は寄ってこなかった。めっちゃ見てる感じしたけどね。わんちゃん不調訴えたらクラス替えとかしてくんないかな、特例で。
あとあのブス。アイツもそうだけど話しかけてこなかったよ。ケンカ売ってきたら買ってやるから安心してほしい。

手紙くれたアンの友だちはね、泣いてたよ。
よかったって、泣いてた。
あたしは申し訳ないなーってまた少し胃が痛かった。



……ほんとそう思ってんだよ。

みんな何も言わないけど、やらかしちゃった日からなんかまじ気まずくて。
早く帰りたいって思う。でもそうなったらアンの家族はどうなんのって、キリエ泣いちゃうだろうなって、……あたしの家族や友だちは、どうしてるかなって。

ずーっとぐるぐるぐるぐる、考えてる。



わかんないけど異世界転移って、もっと意外とハッピーなんだと思ってた。
だって元カレの用事は何だったのかなまで考えちゃってるし。重症。



あたしがあたしとして、生きてられたら違ったかな。



ね、早く帰りたいね。
領地に行きたいって、言ってみようか。



ここは息が詰まるよ。





あーあ。寝心地のいいお姫さまベッドでも今日はぜんぜん眠れる気がしない。

















それから一週間、一カ月と過ぎる。




接近禁止はクズ王子とあのブスにも有効なおかげで学園は恐ろしく平和。
気づく範囲で噂は少しも耳に入ってこない。
弁えてるというより大学の講義室みたいにわりと広いから、クズ王子はべつとしてブスも寄ってこないし。というか、近くにこようとするけどブスの護衛さんが阻止している。

…朝一度、門のところで見かけたとき。

フェルがいないことに驚いた顔をしてた。ざまあ。



アンの家族も友だちもみんなやさしい。
何もない、平和な日々。


何もないから考える時間が増えて病み期が加速。



これはやばい。












ーー辛抱たまらんあたしはついに領地に行きたいとアンのお父さんに直談判した。



「…………それは難しい」

「ーー」



びっくりしすぎて返事ができなかった。


え、意外。すんなりオッケー出してくれると思ってた。
しかも気のせいじゃなければ、何なら顔だってちょっと怒ってるような。

なんで?



「……来週から学園は休暇に入ります。それに合わせてと考えていたのですが、」

「……過保護と思われてしまうだろうけどね、アン。できれば私たちの目の届くところにいてほしいんだよ。……離れてしまってまた何かあったらとやっぱりまだ心配だからね」

「…」



なーる。一理ある。
心配だよね。またケガしたりとか、

もしそのあいだにあたしが帰っちゃったら、とかね。




わかるけど、でも。



「最近、あまりよく眠れないのです。体調は悪くないのですが、少し疲れてしまって……気分転換をしたいと思ったのです……お父様、どうしてもだめですか……?」



アンのお父さんは今度は困った顔をして、少し考えさせてくれと言った。


















アンの友だちは手紙をくれたマーガレットとアリッサ。アリッサとアンの家は爵位がおなじだけど、マーガレットはひとつ下の子爵家。
ふたりは従姉妹同士で、かわいい女の子たちだ。
異世界にはミカちゃん人形が溢れてる。



「……遅くないかしら」

「えぇ、わたしも思ってたわ」



今は昼休みの時間。お手洗いに行ったマーガレットが戻ってこない。
具合が悪い様子なかったけど、何かあったかな。心配だし、



「探しに行きましょう」
















「ーー…から連れて来るだけでいいって言ってるでしょ…ッ!」



ヒーローは遅れてやってくるってあるけど。
あたしはヒーローじゃないしヒーローは遅れてきたのにドヤんなよって思うけど。



「……メグ、大丈夫?」



明後日から休暇なのにアンのお父さんはまだ何も言ってこない。


なのであたしはイライラしている。



「何をなさっているのですか、キャメリア様」



八つ当たろう、このブスに。



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