そして目が覚めたら

雪乃

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アンナ⑩




「お嬢様、そろそろお戻りになりませんか?風も出てきましたよ」

「これを飲んだら戻るわ」

「……わかりました。ではブランケットこちらを」

「ありがとう」



何か言いたそうにして帰ってゆくロージーに手を振る。

治安もいいし、姿は見えないけどトリスさんも近くにいるから大丈夫だよって言っても毎回そんな表情で心配してくれる優しいロージー。


ごめんだけど、ほんとはここではひとりでいたい。







高層ビルなんてあるわけないぐるーっと360°パノラマで遠くまで見渡せる。遮るものもない。



ここは雪が降らない。それが残念だなって思った。




ーーアンのすきだった場所。






アンのお父さんがやっと許可を出してくれて念願の領地に来ることができたあたしは、着いた途端ちょっと泣きそうになってしまった。

じっさいその日の夜は、泣けてきてどうしようもなかった。


アンの思いか、おばあちゃんちみたいな風景と景色を見たからかーーたぶんどっちもだけど。






思い返せば。



『ねえさま、…うぅ…早く帰ってきてくださいね…』



宥めるみたいにあたしに撫でられるままのキリエはふつうに離れちゃう淋しさで泣いてたんだと思うけど、アンのお父さんとお母さんはちがった。



『気をつけて行っておいで。自分・・のしたいように過ごしなさい。いちばん大事なのはその気持ちだ』

『そうよ、あなた・・・のしたいようにしていいのよ。愛しているわ』



悲壮感。もう二度と会えないみたいな、覚悟してるみたいな表情で立ってた。
思い過ごしじゃなく思い当たることありすぎるから、深読みしなくたってわかっちゃったよ。



『……行ってきます』



それしか言えなかった。胃がキリキリしたし、
決定的なことを言ったら、終わっちゃう気がして。








「…」



って、……終わるってなんだろ。
終わるしかないのに。それ以外何が?
なぁーんかバレてる気がするし。終わりしかないのに。



『…………すまない』



クズ王子だって泣きそうだったな。



『そう思うなら下ろしていただけませんか。歩けます』

『…』

『殿下』



それでもあたしは性格が悪いから、クズ王子なんかに痛む心は持ってない。



『……何か・・、ききたいことはありますか』



抱える腕の力がぐっと強くなったけど目は合わなかった。



『…………すまない…………』



答えになってねぇよって、思っただけ。





あのブスは牢屋に入れられたらしく。そのうち自分の国へ戻るらしい。
毒々しいお花畑の頭でいつか、気づくかな。
むりかもしんないけど誰かわからせてやってほしいなー。
そしてその花が枯れるまで知らないところで、死ぬまで後悔して生きてけばいい。







ブランケットにくるまってごろんと横になる。
伸ばした手の先、空はまだ仄かに明るい。




ーーねえ、アン。

どうやったらあたしは戻れるの?前触れとかある?
ぱっと散っていなくなるのかな。ただ消える?


もうアンは戻れなくて、元に戻ることはできない。
何もかも、なかったことにはできない。



死んだひとは帰ってこない。




悲しむひとも傷つくひとも苦しむひとも多いと思うけど。




それなら今、あたしは消えたっていいんだけどな。



「…………アン、」



目を瞑ってるから、このまま連れてってよ。













 


ぱたりと、少女の腕が落ちる。



それを見てフェルは一気に駆け出した。










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