あざとかわいいとか自分で言うのどうかしてる【完】

雪乃

文字の大きさ
12 / 23

自責

しおりを挟む



侍女に先導され部屋を出る背中が覆われる。
俺から隠すように彼女の騎士が視線を遮り、感情のこもらない目を向けた。

彼女だけじゃなく、その周囲からの信用も失くしてしまっているのがわかる。


ーーまた、あの表情をさせてしまった。








『…ねぇロビン、どうしてもあなたじゃないとだめなの?大切な友人だってことはわかるわ。でも先週も中止になったのよ?…こんなこと言ってごめんなさい、でも、…いやなのよ…』

『今日もなの?どうして、…そう、熱が…』

『……またなのね』

『いやだって言ったのに…ねぇもっとを見てよ…』

『…そう。わかったわ』

『わたしが我儘なのかしら…ほんとうにだったら、…狭量だと笑われるのはわたしよね』



『いやだって言ってるのに…どうして聞いてくれないの…?』



俺は、ほんとにどうしようもない、大馬鹿だ。








馬鹿みたいに呆けていて動けなかった。


『…パティエール伯爵子息、』


動くのが遅かったから、


『……平気よ』


あんな目に遭わせて。

自分だって震えていたのに、そんなことを言わせて。




『……あなたはこんな風に、…ロビンに想いを伝える方法が正しいと思ったの?』


言い淀んでいただけで、驚いてはいなかった。

知ってたんだ。気づいてた。


ーーなら、それなら、俺のしていたことは、

  





「…ろ、にー、…」


重い頭を抱えたまま振り返る。



友人で、幼なじみで、弟で、兄弟みたいだと。


勝手な思いこみはキャシディも俺も一緒だった。


責められるか?同じ穴の狢なのに。
知らなかったからゆるされるのか?

それがパリスを、蔑ろにしてきた理由言い訳になるのか?


知ってしまった今では事実だけが残る。


婚約者をほったらかしにして、
邪な思いを抱き己に懸想する者を優先し、率先してそばにいたというどうしようもない事実だけが。


「……迷惑だ」


過ちが何かも気づかず、婚約者に捨てられそうになってから情けなく縋る三文小説以下のクズだという事実が。




「ーーロニー、…?」

「きみの行為も俺のしてきたこともゆるされることじゃない。両親に話して、正式に侯爵家に謝罪しなければならない。きみのご両親にも手紙を書く。悪いけどもう面倒は見られない」

「…そんな…っ「ーーきみとは、

もう友人でも幼なじみでもない。赤の他人だ」

「ッ、ロニー、…ロニー、お願いそんなこと言わないで…ぼくはただ好きで、…っいじわるしちゃったかもしれないけど悔やしくてっ、だってずっと好、「キャシディ。」


一度引き受けると決めたことを、都合が悪くなれば厄介ごとだと切り捨てる自分勝手な人間だという事実。


「俺の態度が誤解を招いたことは悪いと思ってるし、傷つけたなら申し訳ないと思ってる。…でも気持ちには応えられない。そんな思いを向けられてるのに友人としてつき合っていくことはできない。」


真実を話していたのは、彼女だけだったという事実。


「や、やだ…、ッッ、…コホッ」

「……も嘘だったのか?」


いくつもの事実が、醜い俺を責める。


「…ッ」

「……水差しは後ろにある。救護医を呼んでおくよ。」

「…っまって、まってよ…っ「それと明日から態度や言動にはくれぐれも注意して過ごしてほしい。自分のために」


どの口が言うんだと、心が。


乾いた笑みすら、出ない。





しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

勘違いって恐ろしい

りりん
恋愛
都合のいい勘違いって怖いですねー

今夜で忘れる。

豆狸
恋愛
「……今夜で忘れます」 そう言って、私はジョアキン殿下を見つめました。 黄金の髪に緑色の瞳、鼻筋の通った端正な顔を持つ、我がソアレス王国の第二王子。大陸最大の図書館がそびえる学術都市として名高いソアレスの王都にある大学を卒業するまでは、侯爵令嬢の私の婚約者だった方です。 今はお互いに別の方と婚約しています。 「忘れると誓います。ですから、幼いころからの想いに決着をつけるため、どうか私にジョアキン殿下との一夜をくださいませ」 なろう様でも公開中です。

この世で彼女ひとり

豆狸
恋愛
──殿下。これを最後のお手紙にしたいと思っています。 なろう様でも公開中ですが、少し構成が違います。内容は同じです。

俺の妻になれと言われたので秒でお断りしてみた

ましろ
恋愛
「俺の妻になれ」 「嫌ですけど」 何かしら、今の台詞は。 思わず脊髄反射的にお断りしてしまいました。 ちなみに『俺』とは皇太子殿下で私は伯爵令嬢。立派に不敬罪なのかもしれません。 ✻ゆるふわ設定です。 気を付けていますが、誤字脱字などがある為、あとからこっそり修正することがあります。 ✻R-15は保険です。

この罰は永遠に

豆狸
恋愛
「オードリー、そなたはいつも私達を見ているが、一体なにが楽しいんだ?」 「クロード様の黄金色の髪が光を浴びて、キラキラ輝いているのを見るのが好きなのです」 「……ふうん」 その灰色の瞳には、いつもクロードが映っていた。 なろう様でも公開中です。

行き場を失った恋の終わらせ方

当麻月菜
恋愛
「君との婚約を白紙に戻してほしい」  自分の全てだったアイザックから別れを切り出されたエステルは、どうしてもこの恋を終わらすことができなかった。  避け続ける彼を求めて、復縁を願って、あの日聞けなかった答えを得るために、エステルは王城の夜会に出席する。    しかしやっと再会できた、そこには見たくない現実が待っていて……  恋の終わりを見届ける貴族青年と、行き場を失った恋の中をさ迷う令嬢の終わりと始まりの物語。 ※他のサイトにも重複投稿しています。

この愛は変わらない

豆狸
恋愛
私はエウジェニオ王太子殿下を愛しています。 この気持ちは永遠に変わりません。 十六歳で入学した学園の十八歳の卒業パーティで婚約を破棄されて、二年経って再構築を望まれた今も変わりません。変わらないはずです。 なろう様でも公開中です。

きっと明日も良い天気

豆狸
恋愛
「今日は良い天気ですね」 「そうですね。きっと……明日も良いお天気でしょうねえ」 なろう様でも公開中です。

処理中です...