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自責
しおりを挟む侍女に先導され部屋を出る背中が覆われる。
俺から隠すように彼女の騎士が視線を遮り、感情のこもらない目を向けた。
彼女だけじゃなく、その周囲からの信用も失くしてしまっているのがわかる。
ーーまた、あの表情をさせてしまった。
『…ねぇロビン、どうしてもあなたじゃないとだめなの?大切な友人だってことはわかるわ。でも先週も中止になったのよ?…こんなこと言ってごめんなさい、でも、…いやなのよ…』
『今日もなの?どうして、…そう、熱が…』
『……またなのね』
『いやだって言ったのに…ねぇもっと周りを見てよ…』
『…そう。わかったわ』
『わたしが我儘なのかしら…ほんとうに友人だったら、…狭量だと笑われるのはわたしよね』
『いやだって言ってるのに…どうして聞いてくれないの…?』
俺は、ほんとにどうしようもない、大馬鹿だ。
馬鹿みたいに呆けていて動けなかった。
『…パティエール伯爵子息、』
動くのが遅かったから、
『……平気よ』
あんな目に遭わせて。
自分だって震えていたのに、そんなことを言わせて。
『……あなたはこんな風に、…ロビンに想いを伝える方法が正しいと思ったの?』
言い淀んでいただけで、驚いてはいなかった。
知ってたんだ。気づいてた。
ーーなら、それなら、俺のしていたことは、
「…ろ、にー、…」
重い頭を抱えたまま振り返る。
友人で、幼なじみで、弟で、兄弟みたいだと。
勝手な思いこみはキャシディも俺も一緒だった。
責められるか?同じ穴の狢なのに。
知らなかったからゆるされるのか?
それがパリスを、蔑ろにしてきた理由になるのか?
知ってしまった今では事実だけが残る。
婚約者をほったらかしにして、
邪な思いを抱き己に懸想する者を優先し、率先してそばにいたというどうしようもない事実だけが。
「……迷惑だ」
過ちが何かも気づかず、婚約者に捨てられそうになってから情けなく縋る三文小説以下のクズだという事実が。
「ーーロニー、…?」
「きみの行為も俺のしてきたこともゆるされることじゃない。両親に話して、正式に侯爵家に謝罪しなければならない。きみのご両親にも手紙を書く。悪いけどもう面倒は見られない」
「…そんな…っ「ーーきみとは、
もう友人でも幼なじみでもない。赤の他人だ」
「ッ、ロニー、…ロニー、お願いそんなこと言わないで…ぼくはただ好きで、…っいじわるしちゃったかもしれないけど悔やしくてっ、だってずっと好、「キャシディ。」
一度引き受けると決めたことを、都合が悪くなれば厄介ごとだと切り捨てる自分勝手な人間だという事実。
「俺の態度が誤解を招いたことは悪いと思ってるし、傷つけたなら申し訳ないと思ってる。…でも気持ちには応えられない。そんな思いを向けられてるのに友人としてつき合っていくことはできない。」
真実を話していたのは、彼女だけだったという事実。
「や、やだ…、ッッ、…コホッ」
「……それも嘘だったのか?」
いくつもの事実が、醜い俺を責める。
「…ッ」
「……水差しは後ろにある。救護医を呼んでおくよ。」
「…っまって、まってよ…っ「それと明日から態度や言動にはくれぐれも注意して過ごしてほしい。自分のために」
どの口が言うんだと、心が。
乾いた笑みすら、出ない。
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