あざとかわいいとか自分で言うのどうかしてる【完】

雪乃

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ディスタンス

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……どうしましょう……真っ白に燃え尽きてしまったような悲壮な背中が見えるわ……。


『…』


気づいていないのね…ノックの返事もないはずだわ。安定のクルトのニヤニヤ顔を一瞥しながら進み、ソファーへ腰を下ろす。その軋みでロビンはぼんやりと顔を上げた。


艶のある琥珀色の髪は掻き乱れて、沈んだ瞳が胡乱げにわたしを映す。
名前を呼ぼうとしたのか開きかかったくちびるは、でも、そのままゆっくり閉じて、


『…父がごめんなさい…』


痛々しい微笑で弱々しく首を振ると、そのまま顔を俯かせた。




  


ーー…なんてこと、

気まずいわ。居た堪れないわ。
お父様が魔王の様相だったものだから、こちらが悪役な気がしてならない。


胸が、痛いわ。


 
『、…少し話せたらと思ったのだけどまたにするわねどうぞゆっくり休んで、『解消したくない。』


早口になってるわたしはすでに立ち上がっていた。

忙しない動作と落ちつかない心に。
少なからず自分が動揺していることを自覚していた。


『閣下が言ったことは正しい。俺がしたことはきみを傷つけたことだけ。それだけだ。……間違ってるってわかってる。その通りだ。言えるはずない、自信もない、たしかなことは何も、…っ、…でもきみが好きだ、』


パリス。



こうなってから、ほんとうに色々な表情を見せてくれる。
ほんとうに、そう思う。

できるならわたしが、ぜんぶ引き出してみたかった。

ーーなんて、傲慢よね。



『この客間どう?模様替えしたのよ。
ここはわたししか使わないから、お母様が好きにしなさいって言ってくれたの。大変だったけれど楽しかったわ。
あなたの好みを取り入れて、あなたが過ごしやすいようにと考える時間は楽しかった。
…早く、あなたにも見てほしくて……二ヶ月経って、それが叶った』


ソファーの背もたれを撫でる。
たくさん悩んだわ。
カーテン、壁紙、家具、敷物。茶器だって新調した。今、テーブルの上にあるそれよ。
あなたの好きな作家の作品なの、気づいているかしら。


『…やっと使うことができて嬉しい…ロビン、わたしね…二ヶ月、なのか二ヶ月、と思うべきなのか。
…正直わからないの。でもあなたと一緒よ、あなたがすき』

『…っ』

『……けれど自信がないのも一緒なの。あなたが不安なようにわたしも不安なの。
…どうしたらそれを拭えるのか、…わたしにはわからないの』


可愛げもないから、素直に信じることもできないの。


『……解消しましょう』


苦しそうに琥珀が歪んで、いやだ、とロビンはつぶやいた。


そんな顔をさせるしかできなくて、
おなじ想いを抱いているはずなのに、


遠くなってしまったわたしたちが、悲しかった。













「ーー…それに夫人が待ったをかけたのね」

「…そうよ。お父様だっておかしいのよ、あれだけ魔王だったのにお母様のひとことであっさり意見を変えたのよ?
わたしだって悩んで迷って決めたのよ?それなのに事業のことまで持ち出して"一月だけ待ちなさい"ってなんなのよわたしはもう散々待ったのよ…!」

「ふふふ。落ちついて、パリス。でも良かったのではなくて?そのあいだに色々片がつくじゃない」

「そ、れは、……たしかにあなたの話を聞いてそう思ったことは否めないわ……」

「でしょう?パティエール子息だってきっと死に物狂いで行動するはずよ。気持ちが追いつかないこともあると思うわ。でも離れて見えることもまたきっとあるわよ」


そうなのだろうか。
離れているあいだにわたしが見たのは、自信も何もかもなくしてしまった自分の姿だけなのに。
すきだと思う気持ちだけでは、
取り戻すことができないということに、気づいただけなのに。


「……不安は消えないわ」


ぽとりと一滴落とすように零すと、コーラルがそっとわたしの手を握った。


「人を好きになるって、無意識に相手に心を預けているのよね。信じてしまっているのよ、それに値するって。
だから根本が揺らいでしまうと重なる気持ちも崩れてしまう…とても辛いことだわ。
パリスの不安はなくなることがないかもしれない。でも小さくすることはできるかもしれないわ。…あなたたち次第よ」

「…」

「大丈夫よ。どうしてもいやで、だめで、逃げたくなったら、

ーーわたしが隣国に攫っていってあげるわ」


キラリと瞳の奥を光らせた友人が頼もしくもあり、やっぱり恐ろしくもあった。
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