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ユラ⑦
しおりを挟む心地いい疲労感に微睡んでいた。
食べて、寝て、貪り合うだけの日々。
気がかりは仕事についてだ。無断欠勤をしてしまった。恐らく何日も。
獣人には事情が多々あるため、優遇措置であとからでも休暇申請はできる、が。
一度顔を出して謝罪する必要がある。
離れがたいと思いながらとなりで眠る彼女を抱きしめ、頸に触れる。ザラつく噛み跡。
腰がうずく。押しつけるように動かすと徐々に反応してくるのが愛らしい。
我慢できずすでに硬くなっていた自身を泥濘にゆっくりと埋める。
起こさないよう限界まで緩慢に動き、そのまま最奥へと放つまで、信じられないくらいの快感だった。
確実に届くよう留まっていると、無意識に誘うようなそこへと、もう一度注ぎたくなる。
運命の番。
俺の、運命。
名残惜しく離れ、起こさないように静かにベッドから下り浴室に向かう。
あがって水を一杯飲み、書き置きを残す。
仕事に行くが夜には戻ると。
いつ洗濯してくれたのか、畳まれてるシャツと下着に着替え隊服に腕を通したときーー
何かがポケットに入っているのに気づいたが、あとでいいと家を出た。
そして外に出て。
…………どこだ…………?
立ち尽くす。
真向かいに彼女のお気に入りのパン屋がない。
道が狭い。子供の声がしない。
果物屋の看板も、カフェもない。
なんだ…?何が起きてる…?
恐怖を感じながら足を動かす。頭痛と吐き気がする。
ーーなんで、
あるべき場所に騎士団の詰め所がない。
ウロウロ歩き回っていると隊服の男たちが建物に入っていくのが見えた。
ーーそうだ。ここは、べつのーー
任務で、俺は、
まて、待て。ちがう。ーーうそだ。
思わず胸のあたりを掴む。
かちゃ、と小さな金属の音。
酒毒に侵されている者のように、手がぶるぶると震えている。
目が、よく見えなくなってる。
途方もない時間をかけて、それを取り出した
「ーー」
銀色、むらさき、
おれの、
ーーかのじょ、の、
いろ。
ーーーーーールーシー、の
ルーシー。ルーシー。ルーシー。ルーシー。
俺のーーーー
獣の咆哮が上がる。
膝をついて、額を擦りつける。
俺は、俺は、何をした、何をしてた、俺は、
帰って、家に帰って、つけてあげるんだ。
かみかざり、を、
俺と、ルーシー、の、ーー
髪飾りが、泥と血にまみれてゆく。
「ーーッ、あああああああ……ッッ!!」
駆けつけてきた騎士たちに数人がかりで取り押さえられ連行される途中でも俺は暴れ、叫んでいた。
休暇はとっくに申請されていた。
虎獣人の同僚が俺を見ていたそうだ。
すぐ理解った、らしい。
家で休めと言われて、どっちに?と口走った俺を上司が訝しげに見ていた。
どっちに。
最低だ。
話を、しないと。
俺の家はここじゃない。
お前なんか知らない。
愛していない。
どこかでたしかにそう思っているのに、気づけばまた女を組み敷いて突っ込んでいる自分がいる。
発情期が重なって、またくり返す。
治まって少し冷静になって帰ると言う俺に泣いて嫌がる女。
また来るとかなんとか言って逃げるように家へ戻った。
俺と、ルーシーの、家。
髪飾りを渡さないと。つけてあげよう。
笑顔で出迎えてくれたルーシーを見てそう思った。
ルーシー。
愛してる、ルーシー。
なのに口から出た言葉は。
「ーーいたんだ、…"運命"が、」
俺は何を言ってるんだろう。
でも正直に話す約束だ。
ルーシーなら、わかってくれる。
大丈夫だ。
俺が愛してるのはルーシーだけ。
ルーシーがドアのほうへ行った。
具合が悪そうだ。具合が悪いのに、
「…出かけるの…?」
大丈夫なのか?声をかけたがルーシーは行ってしまった。
聞こえなかったのかな。
髪飾りを渡すのを忘れてしまった。
あとでいいか。
帰って来たら、渡そう。
つけてあげよう。
髪飾りの汚れを落としながら俺は泣いていた。
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