愛を乞う獣【完】

雪乃

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ルーシー⑨

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「おいリツっ!それ以上ルーシーに近づくな!」


先日のリツさんの挙動を受けて、叔父さんはすっかり過保護な保護者になってしまった。
わたしもすっごく怒られた。助けを呼びなさい!と。呼べなかったんだけどな…何もなかったし。
でも反省する。
叔父さんの部下だから、と何となく無条件に信用してしまっていたような気もして。
リツさんはやっぱりちょっと変わっていると思うし、わたしも迂闊だった。反省。
とにかくそれから叔父さんの過保護がひどい。
リツさんも絡まれるのはめんどうだと思っているようで、あまり、というかほとんど会話らしいものもなく、わたしたちには距離があった。


その距離が、今はぴたりと埋まっている。


「ワード様が用足しのあいだお守りしていただけです。ルーシーお嬢様はまだ声が出ないんですよ?離れた場所で万が一があったらどうするんです」


ただ、となりにいるだけだけど。

叔父さんはリツさんの反論にぐっと顔をしかめる。


「……そうだな、お前の言う通りだ、助かったよ。でな、あと数時間だしお前馬で先行けよ乗れるだろ?乗れなかったら走れ。それか違う馬車な。ルーシーは俺と一緒、じゃあな」

「…」


わたしの手を引き、去ろうとする。
叔父さん…。


「かまいませんけど、もしそれで俺に何かあったら気に病むのはルーシーお嬢様だと思いますが。走って怪我をしたり、馬車が事故に遭ったり。」

「それはお前の不注意だし、事故はいつでもって不吉なことを言うな!」

「そうですけど俺がいれば必ず守るのでルーシーお嬢様の心配は無用です」


…何の話、…もう…叔父さん…。くい、と袖を引っぱると叔父さんがぐぬぬ、と変な声を出し「…わかったよ」諦めたように言う。「お前ルーシーにちょっかい出すなよ!」過保護も発揮して。
リツさんを振り返れば、「それいいですね」とまた疑問符だ。


「それ。くいってやるやつ。俺にもお願いします」


細く長い腕をわたしに伸ばす。
無表情だけど、目が笑っている気がする。
叔父さんが騒いでいるけど。


リツさんてほんとう、変わってる。














ーーこの丘を登れば、見えてくる。

わたしの町が。家が。

前回はだんだん見えなくなっていった。


今のほうが、さみしく感じる。

それはしょうがないこと。

簡単には癒えない。

消えない。



でもこのふたりのおかげで、楽しかった。

今はふつうに話をしているふたり。
内容はさっぱりわからないから仕事の話だと思うけど。
さっきのやり取りはなんだったんだろう、と思わず言いたくなるほど、ふつうに。
男のひとだなぁと、少しおかしくなる。


おなじタイミングで、わたしが笑ってるのを不思議そうに見る。


ありがとう。


いつかきちんと自分の言葉で、お礼を言うね。














「…………お帰り。」


お母さん。


「お帰り、ルーシー。ルシアンはちょっとだけ仕事でいないけど、あとですぐ会えるよ」


お父さん。


「顔をよく見せて。……三年ぶりよ」


ごめんなさい。


「こんなに痩せて……」


ごめんなさい。
一度も帰らなくて。
心配かけて、


「…っ、」


すきなひとがいたの。だいすきなひとが。
家族をほうっておくくらい、夢中だったの。

一緒に、帰ってきたかったの。

でもだめだった。
だめになっちゃった。

ごめんなさい。ごめんなさい…


わたしは両親にしがみ付いて、子どもみたいに泣いた。






















※読んでくださりありHOT2位だあああああああ!!!!!(うるさい)
皆さまのおかげすぎて全私が泣いてます…
ほんっとにありがとうございます…(T_T)!
みんなやさしい…うれしい…だいすき…泣♡



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