『甘露歴程 …ハイチュウ、17世紀 アジアを平定す…』

与四季団地

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プロローグ

1・大時震

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 (作者中・・・大筋は決まっていますが、逐次 書いて発表していく段において、細部で多くの矛盾が発生していくのが予想され、それは、その都度 書き直していくので、先に読んで下さった方においては、前回と差異が感じられることもあると思われますが、あらかじめ理解を賜りたいです。完成度は高めていきますゆえ・・・^^ 
 それから、継ぎ足しの更新では、読者の方は、同じトコを読み直さなくてはならなくなるでしょうから、1話一区切りを目途に新規更新して行きますので、そこもよろしくご周知を^^
 なお、この作品には、「ハイチュウ」とか「ぷっちょ」とか、実在の商品名やメーカー名が出てきますが、それも都合が悪いようだったら、マイチュウとかぽっちょに変えていきます^^)

   ◇   ◇   ◇

「う~、胸がキュンキュンするぜぇ!」
 田中一彦は、運転席で身もだえした。
 この高速道路のジャンクションで、いつも、お目当ての女の子の姿を拝むことが出来るのだ。
 その子も、一彦と同じ配送トラックのドライバー。
 近くの工場から、同じ時間に荷の積み込みを終えるらしく、ほぼ同時刻にジャンクションに入ってくる。
 そろそろだ。
 一彦は、ダッシュボードの備え付けの時計を見ないで、腕時計を見る。
     08:44
 一彦がなんで腕時計をしているのか、それは、「腕時計をしている男は仕事ができる」という一文を雑誌で見たからだ、そんな言葉を素直に信じる年齢でもある。
 目的の子が、女だてらに大きな10tトラックを駆る姿は格好いい。
 名前は知っていた。
 荷台の後部には、運転手の名前表示があるからさ。
 …織尾りお
 オリオリオっ!
 可愛らしいサウンドの名前だ。
 最近、お互い、車輌越しに会釈を交わせる程度の関係にはなっている。
 …いいよ、いい流れだ!
 一彦は高揚を抑えるかのごとくドリンクホルダーの紙コップのカフェラテを口に寄せた。
 その時、ふと横を見ると、いつの間にやら、オリオリオのトラックが並走していて、カフェラテを飲んでいる一彦を見て、口もとだけでクスリと笑っていた。
 うは、カフェラテだからか、甘いカフェラテだからか、甘いの飲んでる俺を子供扱いなのかッ…!?
 一彦は焦る。
 一彦は21歳。
 まだまだ、そんな、それこそ子供染みた発想で、自分を、周囲を判断してしまう年頃でもある。
 世界を知りたい、先ずは日本を知りたい、ならば、日本全国を回る運送業だ! と、17歳の終盤から普通車両の免許取得に入り、高校生時、就職活動の時には、人材不足もあり、大手配送会社に歓迎されて入社。
 研修は、軽自動車の宅配の付き添いからはじまり、途中で少しだけ事務職も経て、数カ月前までの間に、次第に、大きな長距離トラックへと、一彦が思うところのステップアップをしてきた。
 だが、残念ながら、トラックのドライバーにはなったものの、配属は、製菓会社の工場と配送センターの往復、中距離ルート配送だった。
 やや変則ではあったが、毎日、茨城から埼玉を往復していた。
 最初はどこを走っていても風景は新鮮だった。
 だが、一ヶ月を過ぎると飽きた。
 飽きると、仕事に不満が湧いた。
 転職さえ考えたが、どこの会社でも状況は変わらないことぐらいは一彦も分かっていた、…いや、同期に言われて分かった…。
 自分が成長するしかないんだな、と一彦はプチ悟る。
 でも、今は、オリオリオの存在で、毎日が楽しかった。

 しかし、今、甘い甘いカフェラテを飲んでいるところを、オリオリオに笑われてしまった!
 は、恥ずかしい…。
 一彦は、引きつった笑いを彼女に返すのだった。
 と、オリオリオは、ハンドルから右手を離すと、おそらくドリンクホルダーからだろうか、紙コップを手に取り、こちらに見せてきた。
 私も飲んでるのよ、ってイメージ。
 しかも、カフェラテだった!
 会社のユニフォームだろうキャップから、線の細い長いサラサラの髪が隠しようもなく可憐。
 白い肌の小さな顔に切れ長の目が鋭い、でも口元がフニャッと優しい。
 カフェラテを示すと、オリオリオはスピードを上げ、一彦のトラックに先行した。
「可愛いな、おい!」
 一彦は一気にテンションを上げた!
 だが、お互いに配送業務の途中、しかも、並走する2台のトラック間の逢瀬に過ぎない、それ以上の進展はなく、間もなく、2台の分岐点に至る。
 一彦は、漠然と、オリオリオが神奈川に行くのだと思っていた。

 思えば、オリオリオが持っていた紙コップのカフェラテはセブンイレブンのものだった。
 そこが、2人の関係を暗喩するようだった。
 一彦のカフェラテはファミマのものだった。
 一彦のトレーラーの積み荷を行う製造工場の近くにはファミマかローソンしかない。
 だから、いつも飲むカップドリンクは、その2つのコンビニのどちらか。
 何が言いたいのかと言うと、2人の手に持つ、扱う商品はライバル関係にあると言うこと。
 そして、実は、2人が運転しているトラックの積み荷もライバル関係にある。
 一彦は森永製菓のチューイングソフトキャンディ<ハイチュウ>を配送している。
 対して、オリオリオは、同じくチューイングソフトキャンディのUHA味覚糖の<ぷっちょ>を運んでいる。
 オリオリオのトレーラーの側面には、その商品ロゴがデカデカと掲げられている。
 一彦のほうのトレーラーにもどでかく競合の商品ロゴが印刷されている。
 だが、若い二人は屈託なく、お互いの車内から、友好的な意思の疎通を図っているのだった。

 二台のトラックが行き先を分かつ分岐点が近づいていた時、ガクン! と一彦のトラックが足場をなくした。
 例えるならば、落とし穴に落ちた瞬間の如き浮遊感があった。
「な、なんだ! うおっ!」
 巨大な質量を持つ物体が、その重さがないかのように宙空を舞っている。
「い、いや、落ちてるッ!」
 道がなくなったのだ。
 ここは高速道路の高架上、道がなくなったということは、地面に落ちていってるのか・・・。
 そもそもなんでこんなことに・・・。

 何十周年周期でくると言われていた大地震の到来であった。
 地震の持つ破壊エネルギーは、到底 人工の兵器の比ではないという。
 東北から関東全土に影響を及ぼし、一彦がいた高速道路の高架を支える柱なんぞ割り箸のようにポキリと折れた。
 支えを失った高架上の道路は落ち、おって、そこを走る車両の数々も、重力の法則に従い、・・・落ちる。
 一彦の10tトラックも宙へ。
 だが、あまりにもの莫大な質量の落下は鈍重に思え、体感イメージではスローモーションであった。
 落ちる車内から、一彦は、まだ並走にあったオリオリオのトラック方向を見た。
 ゆっくりと着実にスローモーションで、彼女のトラックも落ちていった。
 運転席が見えた。
 オリオリオは、恐怖よりも前にびっくりした顔をしていたが、灰色の地面が近づくにつれて諦めの表情が浮かんでいた。
 一彦も、これから、自分の身に起きることが、オリオリオの表情から実感できた。
 トラックは、数10メートルある高架、前面から落ちている。
 ほぼ、確実に命を落とすだろうと・・・。
 刹那のうちに、一彦はいま一度、オリオリオを見た。
 オリオリオも一彦のほうを向いていた。
 二人の視線が重なった。
 一彦は、「助けたい、オリオリオをッ!!」と願った。
 オリオリオは、何を思っていたのか・・・。

 ・・・・・、・・・・・。

   ◇   ◇   ◇

 ・・・一彦は、なんとも言えない不快感で目が覚めた。
 体中が湿っている感じ。
 冬服のユニフォームは、やや水を含んでしまっていた。
「なんだ・・・」
 目を開ける。
 緑と、その合間から垣間見える太陽が眩しかった。
 森・・・?
 ジャ、ジャングル・・・!?
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