涙袋 PART2 ~現代居酒屋千夜一夜物語~

与四季団地

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「哀・戦士」編

   第345夜・『甥っ子暮らし:ライダーorウルトラマン?』

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☆・・・先週の土曜日は、映画で『ウルトラマン』と『仮面ライダー』がそれぞれ公開する日だった。

 私は、「ライダー」はあまり好きではないが、「ウルトラマン」は好きなので、甥っ子と観に行こうと思った。

 しかし、甥っ子は、その週末を、遠くの祖父母の家に行くと言うので、私は、私の休日の翌火曜に見ようと約束しておいた。

「おい、ハルオ! おじいちゃん・おばあちゃんのトコに行って、映画を見るかも知れないけど、『ライダー』にしろよな! 俺は『ライダー』は嫌いだが、『ウルトラマン』は好きなので、『ウルトラマン』はハルオと観に行ったるから、『仮面ライダー』はおじいちゃんに連れて行ってもらえ」

 私はしつこく言った。

   ◇

 さて、月曜の夜、私は翌日の映画『ウルトラマン』を楽しみにしていた。

 『仮面ライダー』は、本当に幼い頃、『V3』まではテレビで熱心に見ていた。

 しかし、物心ついた少年期に、マイ・ヒーローとして生活に密着しているのは『ウルトラマン』シリーズであった。

 その映画を、6歳の甥っ子と観ることになるのは感無量だった。

 ・・・しかし、母親が言うのだ。

「ハルオは、この間の日曜日に、『ウルトラマン』、見たそうだよ」

「そんなバカな! 誰と?」

「向こうのおじいちゃんと」

 私は、ムカムカしてきた。

   ◇

 姪っ子(9歳)が来たので問うた。

「ハルオは、『ウルトラマン』見たんだって!?」

「うん」

「だって、俺は、約束していたんだぞ。おじいちゃんと映画を観に行ったとしても『ライダー』にしとけよ、とまで言ってたんだぞ」

「だって、ハルオ、バカだもん」

 弟をバカと言うのは、この姉の口癖だ。

「いや、分からんなぁ。おじいちゃんと『ライダー』を観に行ってれば、俺と『ウルトラマン』を観て、二つのヒーローが見られたんだぞ」

「だって、ハルオ、バカだもん」

 姪もまだ幼いので、言葉を知らないだけで、甥はバカでなく、幼児だから無知なのである、しかし・・・。

「俺は、ちゃんと知恵を授けていたのに・・・」

「ハルオ、それで、昨日の夜、泣いていたよ」

 うーん、詳しくは聞かなかったが、私には、その泣く意味が分からなかった。

 父親(私の弟)に、「何で、お前は要領が悪いんだ!」と怒られて泣いたのならばわかるが、

 自分が『ライダー』を見れないことで泣いていたのならば、甥の自業自得ゆえに「ざまあみろ!」と思うのだ。

   ◇

 で、本当ならば、私と映画に行く日であった火曜に、私は甥を保育園に迎えに行く。

 甥を車に乗せて、ロックしてから、甥に「追い込み」をかけた^^;

 これまでの流れを話し、まあ、約束を破った理由は、目先の「ウルトラマン」に飛びついた幼い甥の無知のせいなのだが、私は、こう言って「追い込み」をかけた。

「俺を裏切ったな!」

 すると、甥は、お父さん(私の弟)に、散々、そう言って怒られたせいもあり、

「そうじゃないんだよ!!」

「そうじゃないんだよ!!」

 と繰り返した。

 私はなおも、「では、裏切り者は神社においていく」とか「秋川に流す」と言った。

 甥は、「そうじゃないんだよ!!」と言い続けた。

 私は、

「じゃあ、俺が嫌いなんだろ?」

 と言った。

「ウン。神社に置いて行くとか、川に流すとか言うから、嫌い・・・」

「うがー!! だから、裏切って、『ウルトラマン』観に行ったんだな!!」

「そうじゃないんだよ!!」

 しばらく、そうして、約束破りに対しての「儀式」を繰り返した後、私は問うた。

「じゃあ、何で『仮面ライダー』を見なかったんだよ。もしかして、『ライダー』より、『ウルトラマン』が好きなのか?」

 すると、ハルオは頷いた。

「うん」

 それで、私は、機嫌が良くなった^^

 やっぱ、「仮面ライダー」より、「ウルトラマン」だよな!!

                                (2009/12/17)
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