上 下
130 / 299
第2章・この世界の片隅で

   第131夜・『社員昇格試験 ②』

しおりを挟む
     (前回からの続き)

 新入社の私とA君は、ペアで仕事を組まされることが多かった。

 ・・・とにかく、A君は、「上流」の仕事をやりたがった。

 だから、面倒な、基礎的な作業を私に押しつけることが多かった。

 私は、とにかく、A君の行き着く先が見えていたので、不満を言うのも面倒で、何も言わず、黙々と基礎的な仕事をくり返した。

 上司が見かねて、「一日交代」を提言した。

 が、そういった決まりごとは、すぐにA君によって破られた。

 私は、辛い基礎的な仕事を続けた。

 しかし、作業メンバーは、そんな状態をちゃんと見ている。

 しかも、A君は、基礎的な仕事の局面を前にすると、腕を組んで、バイトの仕事を眺めるだけになってしまうのだ。

 そもそも、基礎的な仕事をマスターしていないので、何をしていいか分からないのだ。

 全くの素人が、あたかも、管理者の如く、自分(バイト)らの仕事振りを眺めて突っ立っているのだ。

 ・・・A君は、次第に作業者の中で孤立していった。

 私や作業者が話していて、そこにA君が合流してくると、露骨にその場を去る奴もいた。

 私も、A君と話すのは嫌だった。

 世間話が出来ず、仕事で得た話を偉そうに話すことしか出来ないのだ。。

 ・・・コミュニケーションの不全、であった。

 しかし、面白いのが、本人は、その深刻な状況にあまり気づいていないようなのだ。

 年末の繁忙期を過ぎると、私は、いつの間にやら、自分に実力がついてきたことが実感できた。

 スピードも無理せずに早い^^

 基礎的な仕事をみっちりとこなし、それを土台としてステップアップしてきたので、次に行なう仕事が、他の人の指示を仰がなくても明確に行なえるようになったのだ。

 まだまだリーダーには及ばないが、自立的な動きを出来るようになってきた。

 そして、バイトが気軽に仕事を頼むようになってきた。

 バイトが作業しやすい態勢にするのが「上流」作業者である。

 そのうち面倒になるのだろうが、私の今の段階では、仕事を頼まれるのは嬉しいことだ^^V

 しかし、バイトのほとんどが、A君には頼まない。

 頼みたくないのだそうだ。

 ・・・A君の孤立は深まる。

   ◇

 そんな背景での、社員昇格試験であった。

 結論から言うと、各種試験を無難にこなし、<十一ヶ条>も、お経のようにスラスラと完璧にこなしたB君、合格!

 各種試験を無難にこなし、<十一ヶ条>は、一言一句間違えることはなかったがかなりゆっくりだった私も、かろうじて、合格!

 ・・・だが、A君は、不合格!

 A君は、社員昇格の見通しが立たなかった。

 <十一ヶ条>をちゃんと覚えなかったこともあるが、何と、小論文も不合格であった。

 小論文と言っても、実際は作文レベルであったのだが・・・。

 次回、その状況について記す・・・^^;

                     ・・・(すぐに続く 2009/01/27)
しおりを挟む

処理中です...