天上の喫茶店

東雲 千宝

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前置き

天上の喫茶店へようこそ

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皆様初めまして、私の名前は【ジャック】と申します。普段はここ「天上の喫茶店」で、マスターをしております。

まぁここに来るお客様は皆様日本人とは限りませんので、ほとんどのお客様にはジャックと名乗っているだけで本名は別にもうひとつございます。

私がこの名前を名乗っている理由ですが、単純にそこら辺にあった本の主人公がジャックだったというだけなので深い意味はないんですがね。

そして今回は私が今まで関わった人の中でも特に印象に残った数名のお客様の物語を皆様にお話しいたしましょう。


    


地上にお住いになられている皆様には理解できないような内容も多くあるのも事実でございます。
 
そこで今回は皆様に天界の基礎知識を身につけて頂き、これから読んでいただく物語をより面白く読めるようになっていただきます。

心配はご無用、脳みそを空っぽにしてどんなことでも受け入れる姿勢と、豊かな想像力があれば皆様にも理解出来るはずです。


        


それではまず、私の働いている天上の喫茶店の説明に入る前に、死後の世界についてお話をさせていただきます。

皆様は今、しっかりと生きておられると思いますが、どの生き物も死ぬと最初に、中間世ちゅうかんせと呼ばれる世界に辿り着きます。
 
まぁ異世界転生みたいなものですね。
 
最初は深い森の中に現れます。目の前には一本道、舗装などされていない土の道です。ここを私どもは「原始の森」げんしのもりと呼んでいます。

生き物の人生が終わり、新たな人生が始まるからこう呼ぶんだとか…安直ですね。

そしてその道をずっと進んでいくと道端に一軒の小屋があります。その小屋こそ「天上の喫茶店」です。

そして喫茶店の説明は後にするとして、この喫茶店で一通り時間を過ごしたあと、また先程の道を進み、審判の門しんぱんのもんと呼ばれる場所にに辿り着くのです。ここは人間界で言う閻魔様に天国行きか地獄行きかを判断してもらうようなとこですね。

またこの地獄行きや天国行きにも人間界とは違った考え方がこちらの天界でも存在します。

それは自分で進んで地獄に行くことが出来るという点。人間界では悪いことをすると地獄に落ちるだとか言われているそうですが、それだけではなく本人が望めば地獄に行くことができるのです。

そして転生にも二種類あって、選べる転生と選べない転生というものがございます。

選べる転生は文字通り何になるか選ぶことが出来ます。選ぶことができるからこそ、己が好きな人生を謳歌できるため、人は天国と呼ぶのだとか。

選べない転生はその人が死ぬ前の姿形で人生をやり直す転生です。地獄行きになる程の悪行はしていないものの、生き物として目立ったことはしてない人がこっちになります。

そんな世の中がここ天界です。

次に「天上の喫茶店」についてのご説明をさせていただきます。

天上の喫茶店には、実に様々な生き方をしてきた方々がやって来ます。

そしてそういった方々が、最後に現世での記憶を残したまま時を過ごすのが、ここ「天上の喫茶店」になるのです。

また天上の喫茶店には時間という概念が現世とかなりズレているということと、マスターであれば食材は思ったものを出すことが可能という2つの特徴がございます。

このことが意味することはこの先の物語でよくお分かりになられると思いますので、ここではあまり深くはお話ししないことにしましょうか。

それでは短いと思われるかもしれませんが、前置きはこの辺りにして、いよいよ私のお仕事を少しだけではございますがお見せいたしましょう。

それでは、どうぞ行ってらっしゃいませ。
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