妹転生!~妹への愛が止まらないのに、何故か僕には妹がいない~

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一章

第11話 お兄ちゃんパワー全開

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 ユーリの叫び声を聞いた僕は、とにかくがむしゃらに叫んだ。
 およそ人から出てくる音とは思えないような声が出た。

 同時にアドレナリンが出たのか、体の痛みも感じなくなったので、僕は先ほどと同じスピードで走り出した。

 僕の叫び声を聞いた熊の魔物は一瞬怯んで、こちらの方に目を向けると、その目が大きく見開かれる。

 ……なんか速くない?

 熊の魔物は言葉が喋れるならそんなことを言ってそうな表情をしていた。
 そんな表情をしているのも束の間、僕という暴走機関車が既に目の前に迫ってきていた。

 僕はスピードを緩めることなく、熊の魔物に突進していき、鳩尾付近に頭からタックルをお見舞いした。

「ごへぇ!!!」「ガアァァァァ!!」

 僕にも当然ダメージが入るが、熊の野郎も相当ダメージを受けたみたいで、数メートル先まで吹っ飛んでいった。

「二人とも大丈夫!?」

「お、お兄ちゃーん!!!ぶえーん!!!」

「ニアくんっ!!グスッ……」

 二人に声を掛けると、ユーリが飛びついてきて感極まったように泣き出した。
 シアちゃんも安心したのか静かに涙を流している。

 今僕は、女の子のように可愛らしい弟と僕の新たな妹であるシアちゃんから、頼りにされているという事実にとても興奮していた。
 前世ではついぞ見ることができなかった光景だ。興奮しないわけがないのだ。

 よーし、お兄ちゃん頑張っちゃうぞ!

 永遠にこの瞬間を味わっていたい気持ちではあるが、そんなに悠長に感慨に耽っている暇はない。
 とにかく、まずはあの熊野郎をなんとかしないといけないのだ。

 熊野郎に目を向けると既に立ち上がっており、こちらを警戒して、威嚇していた。

「二人ともここはお兄ちゃんに任せてよ!」

「お、お兄ちゃん、いくら何でもその傷じゃ無理だよ!血が出てる!」

「そ、そうですよ!そんなボロボロの体では死んじゃいますよ!」

 見ると体にはおびただしい数の擦り傷があった。
 その上、服が破けてしまっており、辛うじて大事なところは隠れてはいるが、とてもセクシーな感じになっていた。

 どうやら走っている最中に木の枝などに引っ掛かり、ズタズタになったようだ。
 あと君たちが仕掛けたトラップのせいでもあると思うんだけど、そこは言うまい。  

 だが、ダメージはそこまでない。ちょっと足の筋がピキッているだけだ。
 まあ、心配させてしまっているようだから、少し大袈裟に大丈夫だということアピールをしておこう。
 お兄ちゃんとして、弟や妹を心配させるわけにはいかないのだ。

「大丈夫!なんか全然痛みを感じないんだよね!むしろちょっと気持ち良い感じがするんだ!」

「え、それって大丈夫じゃないやつだよ、お兄ちゃん!」

「ニアくんが壊れちゃった……」

 二人がどことなく引いているような気がするが、僕の勇敢な姿に感動しているだけだろう。そうに違いないのだ。

「いや、本当に問題ないよ? それよりあの熊を何とかしないと」

「何とかって……考えでもあるの?」

「ちょっとね。まあ僕に任せてよ!」

 そう、僕にはちゃんと考えがあるのだ。

 熊に遭遇した際の対処法は、大声を出さないとか、落ち着いて距離を取るとか、目をそらさない、走らないなど色々あるのだが、相手を刺激しないようにするという方法しかなく、既に刺激しまくっている状態なので、これらは使えないだろう。

 だが、僕にはまだ一つこの状況を覆す秘策があった。

 昔にムツゴ○ウさんが大型動物とふれあう映像を見たことがある。
 彼は基本的には愛情や親しみを込めて接するのだが、動物が悪いことをしたときには、怒り狂い、苛烈に叱りつけるのだ。

 狂ったように棒で殴りつけたり、渾身の力で何度も何度も素手で顔面を殴打したり、万が一逃げ出すようなら、追いかけ回して何度も殴りつけたりして、上下関係を分からせるのである。

 動物のことなら彼を参考にすれば間違いはないのである。
 魔物も動物みたいなものなのだ。きっと上手くいくだろう。

 熊野郎とにらみ合い、間合いを図る。

 まずは警戒している熊野郎を落ち着かせる必要がある。

「おーい、熊ちゃんや、僕は敵じゃないよぉ? ほら、武器だって持っていないよぉ」

「グオォ……」

「お兄ちゃん、あ、危ないよ……?」

「……ゴクリ」

 僕が丸腰で慎重に熊野郎に向かっていく姿を見て、ユーリが心配そうに声をかけ、シアちゃんは固唾を飲んで状況を見守っている。

 大丈夫だよ、さあ僕の雄姿を目に焼き付けるがいいさ。

 いくら力が強くても所詮は獣、僕の策には気付いていないはずだ。

 僕はフレンドリーな笑みを浮かべ、熊の野郎に近付いていく。

 奴の感情は伺えないが、きっと僕に心を許しているだろう。

 そうして、目の前まで歩いていき、声をかける。

「ほら、おいで」

 そう言いながら、熊の野郎に抱き着いた。

 ドゴォン!!!

 突然の衝撃が僕の体を襲った。

 笑顔で抱き着いた僕の頭を上から殴りつけて地面に叩きつけたのだ。

「ごはぁっ!!」

「お兄ちゃん!!」「ニアくん!!」

 妹と弟の悲鳴が聞こえてくる。
 でも心配無用だ。これは奴なりの親愛表現だ。

 先ほど抱き着いた時に確信した。奴の目は好奇心に染まっている。
 今僕が生きていることがなによりの証拠である。

 もしも奴が本気で僕を殴りつけていたのだとしたら、8歳児の体など、ペチャっと潰され、今頃ケチャップになっていたはずである。

 熊にとっては、じゃれついているつもりでも人間にとっては脅威になる。
 前世でも、熊がじゃれて飼い主の首に噛みつき、飼い主を葬った例もある。
 また、僕の師匠のムツゴ○ウさんも熊を育てていたことがあり、至る所に噛みつかれ、体を穴だらけにしていたと聞く。

 今目の前にいるこいつもそうなのだろう。
 魔物なので、ある程度人間の脆さを知っているのか、かなり手加減をしているようだが、地面に叩きつけられるほどの威力はあったというわけだ。

 体に付いた土を払って立ち上がり、二人に声を掛ける。

「大丈夫、大丈夫。ただじゃれてるだけだよ。僕らはもう友だちだからね。」

「そ、そうなのかな……?」

「い、いや絶対違うと思いますけど……」

 二人には僕が襲われているように見えているのだろう。
 だが、誰が何と言おうと僕と奴は友だちなのだ。
 僕は友だちのやることはある程度のことまでは許すのだ。

 すると、奴はキラキラと目を輝かせて腕を振り上げたかと思うと、僕の腹部を狙い、何度も殴りつけ始めた。

「ぐふぅ!!ごはぁ!!ぶへぇ!!」

 し、死ぬぅ!!

 こればかりは流石の僕も地面に倒れ伏してしまう。

「お兄ちゃん!!もう死んじゃうよ!!早く逃げて!!」

「そうです!!私のことは気にしないでください!!ユーリちゃんと一緒に逃げてさい。」

 二人を心配させるわけにはいかない。

「大丈夫!痛みは無いから!」

 正直、意識が飛びそうになるほど痛いが。

「いや、痛み無いってヤバい状態だよ、お兄ちゃん!」

「そうです!今も死んでいないのが不思議なくらいですよ!?」

「まあまあ、落ち着いて、まだ僕にもできることはあるんだ。」

 そう、大型動物と仲良くなる時は、愛情を込めて接し、時に苛烈に痛めつけて上下関係を分からせるのだ。

 ここからは僕のターンだ!

「熊ぢゃん!!ちょっどやりすぎなんじゃない゛!?!?こっぢ来なさい゛!!」

 僕は特定のポイントに誘導するように自分の立ち位置を調整して、ドスをきかせた声で奴を叱りつけた。

 僕の怒りの感情を感じ取ったのか、熊野郎が興奮しながら駆け寄ってきた。

 そして、草むらに隠れて見え辛くなったロープに、奴の足が引っかかると同時にギミックが動き出した。
 風を切る音と共に、振り子の原理で勢いがついた丸太が、奴の横っ腹に突き刺さった。

「グギャァ!!」

 腹をぶん殴られた熊野郎は悲鳴を上げて悶えている。

 まだだ!僕の師匠であるムツゴ○ウさんはこんなものでは終わらないのだ。

「ウォーターボール!ウォーターボール!ウォーターボール!ウォーターボール!ウォーターボール!ウォーターボール!ウォーターボール!ウォーターボール!ウォーターボール!ウォーターボール!ウォーターボール!ウォーターボール!ウォーターボール!ウォーターボール!ウォーターボール!ウォーターボール!ウォーターボール!」

 倒れ込んだ熊野郎の顔に向けて水球を連打する。水攻めだ。
 魔物といえど呼吸はしているはずなので、水球をとめどなく浴びせることで、窒息の苦しみを与えるのである。

 僕も師匠であるムツゴ○ウさんに倣って、殴打で躾をしたいが、子どもの僕の力などたかが知れているので、あまり効果が無いと思ったのだ。

「ごぼぼぼぼぼぼぼ……」

「人を殴るとこうだぞ!!こうだ!こうだ!こうだ!」

 何度も水球を投げつける。

 苦しくてジタバタ暴れている熊野郎が水の地獄から逃れようとするが、さらに落とし穴のトラップが発動して穴に落ちた。

 さらに追い打ちをかけるべく穴に大量に水球を投げ込んでいく。
 僕の師匠は逃げ出した動物を追いかけて痛めつけていたからだ。

 僕の躾は穴に水がなみなみに注がれるまで続けられた。

 そして、必死に穴から這い出てきた熊野郎はその場にへたり込んだ。

「今度僕を殴ったらまた同じ目に合うからな!わかったか!!」

「く、くぅーん……」

 僕がそういうと熊野郎はビクッと震え情けない声を出したのだった。

 ユーリ達はというと、まるで僕が狂気じみた行動をしているかような目で見ている気がするが、きっと尊敬しすぎて近寄りがたく思っているのだろう。

 こうして、僕は熊野郎と心を通わすことができたのだった。

 ふぅ、やはり師匠の教えは正しかったのだ。




***




 僕の躾が終わり、熊野郎をどうしようか考えていると、遠くから男性の声が聞こえてきた。

「おい!ニア、ユーリ!それにシアちゃん!大丈夫か!?」

 声がする方に顔を向けると父親が血相を変えて走ってきていた。

 そして、熊野郎の姿を見て、目を見開いた。

「な!?魔物じゃないか!お前ら下がっていろ!!」

「お父ちゃん!ち、違うんだ!その熊ちゃんは僕と友だちに……」

「おらぁぁぁぁ!」

 父親は僕の静止の声も聞かず、ズパンッ!という音と共に熊野郎の首を一刀両断にした。

「そんなぁ!!熊ちゃぁぁぁぁぁん!!!!」

 僕の悲鳴が木霊する――

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