妹転生!~妹への愛が止まらないのに、何故か僕には妹がいない~

百円玉

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二章

第26話 ハレンチ行為は盗賊の代名詞

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 トーマスを置き去りにして、牢屋のある地下室を脱出した僕とアネット。

 これから僕たちは武器か何か子どもたちが脱出できるような策を見つけてあの場所に戻らなければならない。
 僕としてはせっかく自由になったのだから、さっさとお暇したいところではあるが、アネットの母親も探さないといけない。

 それに今日の僕は運が悪い。
 というより、今までの人生で運が良かったことなんてあっただろうか。
 いつも酷い目に遭っている気がする。
 だから、すぐに脱出しようとしたってどうせ盗賊に邪魔されるに決まっている。
 ならば、アジトを脱出する算段を立てるついでに子どもたちも拾って戦力の増強を図るというのも悪くはないのではないのかと考えている。
 言い方は悪いが、いざという時のデコイだ。

 しかし、僕の忌憚のない意見としてはトーマスを助けることは難しいと思っている。
 何故なら彼は今まさに白刃取り状態なのだから。
 できるだけ急ぐつもりではあるが、そんな状態で何分も持つとは到底思えない。
 だが、顔を腫らしながら必死に頑張っていたトーマスを見る限りでは、根性だけはありそうだったので、生き延びる可能性はあるかもしれない。

 まあ、一旦トーマスのことは記憶から消しておこう。
 知らない人の死体を見てもそこまで心が痛まないからだ。

 とにかく、僕は何か武器となるものを探さないといけない。
 鈍器だと力が足りなくて、一撃で昏倒させるのは難しいので、できれば刃物が良い。
 刃物であれば、そこまで力がなくとも急所を付くことができれば何とかなるはずだ。
 問題は僕が人を殺せるかどうかだ。
 想像するだけで、恐ろしくなるが、僕たちが助かるためにはその覚悟も持っておくべきである。

 武器がありそうなところはどこだろう。
 とりあえず盗賊に見つからないように手近な部屋に入ってみよう。

「人、あんまりいないね……」

「多分、騎士団が討伐に動いているらしいから色々準備しているんじゃないかな」

 アジトの内部はあまり人影がなく、数人の盗賊を見かけただけだった。
 騎士団から逃げるための準備なのか迎え撃つための準備なのか、僕にはわからないが、忙しく動いているからなのではないだろうか。
 僕とアネットは物陰に隠れながら、進んでいった。

 入れそうな部屋を探していたのだが、どこも施錠されており入れなさそうだった。
 ほどなくして、他の部屋とは作りが違う扉が見えてきた。
 なんだか他の部屋と比べて頑丈そうな扉なので、武器庫とかかもしれない。
 本当に武器庫だとしたら、施錠されているだろうけど、試すだけはタダだ。

 駄目元で開けてみると、すんなりと扉が開いた。

「あれ?開いた……」

「お母さんいるかな……」

「アネット焦ってはいけないよ。 まずは武器を見つけるのが先だ。 順番に一つずつこなしていこう。 焦りは失敗に繋がるからね」

「そ、そうだよね……ごめんね……」

「謝ることはないよ、お母さんを心配するのは当然のことだからね」

「ありがとう、ニア」

 よしよし、アネットは僕のことを頼りにしているようだ。
 このまま僕がいないと生きていけないように意識を誘導してあげないといけないな。

 アネットの心配もわかるが、それ以前に僕たちが見つかってしまっては全ての計画が台無しになるので、慎重に行動する必要がある。

 部屋の中は結構広くて、正面に大きめのソファとテーブルがあって、テーブルの上には酒の瓶が転がっていた。

 なんだか、偉い人の部屋のような感じだ。
 しかし、そんな偉い人の部屋の鍵が開いているという不用心なことはないだろう。
 おそらく、ここは下っ端の部屋なのだろう。

 そんなことを考えていると、入り口の扉が開く音がした。

「……っ!誰か来た……! アネットこっち……!」

「う、うん……!」

 僕はアネットの手を引き、ソファの裏側に身を隠した。
 この手は離さないぞ!ムフフ……!

 扉が開き、盗賊らしき人物が部屋の中に入ってきた。
 足音が近づいてきて、ソファにドカッと座り込んだ音が聞こえてきた。

「ちっ!クソがぁ!!」

 苛立っているのか、テーブルを蹴りつける音と、瓶が割れる音が聞こえてきた。

 なんて野蛮な奴らなんだ。
 なんだか僕はこいつらが怒っている姿しか見たことがないのだが、それしか感情を持っていないのだろうか。

「いつもと違って騎士団の動きがあまりにも早すぎる。 たかが盗賊の討伐にここまで対応が早いなんて…… 一体何が起きてやがる…… せっかく新たなビジネスが軌道に乗ってきたとこだってのに腰を折られちまうなんて…… くそ!むしゃくしゃする!」

 なんだかよくわからないが、想定外のことが起きているみたいだ。
 盗賊が独り言を呟いており、情報収集の絶好のチャンスだが、今の僕はそれどころではない。
 アネットが僕にしがみつき、恐怖で震えているのだ。
 僕はこれ幸いとばかりにアネットを安心させるよう体をさすさすしている。
 それにより、僕の紳士度メーターが順調に上昇していっているのだ。

 すると、部屋の扉がノックされる。

「入れ!」

 先ほどまで独り言をぶつぶつ呟いていた盗賊が偉そうに声を上げる。

「失礼します」

「なんだ? てめぇの役目は、新たなアジトの用意とアジトを移した後にすぐにビジネスを始められるよう調整することだろうが……」

「報告します。先ほど取り逃がした子どもを捕まえたそうです」

 これはもしかして、ユーリとダンの話をしているのだろうか。
 だとしたら二人も捕まってしまったということになる。

 どうしよう、そうだとしたらこのまま牢屋に連れていかれるとまずいかもしれない。
 今牢屋ではトーマスといやらし顔盗賊の壮絶な攻防戦が行われているはずなのだ。
 現状僕にできることはないが、ユーリが捕まったとなれば、必ず牢屋に戻る必要がある。

「よくやった。大事な商品だ、丁重に扱え。 だが、騎士団が迫っている今悠長なことはしていられねぇ。 てめぇはとにかく命令したことを進めて明日の早朝には動けるようにしておけ」

「はい、準備は順調に進んでおります」

「報告はそれだけか?」

「もう一つ、商品に処理を施すのはいつにいたしますか?」

 商品というのは僕たちのことだと思うけど、処理ってのはなんだろう。
 人身売買なんてやるような連中だ、何か人道に反するようなことをやっている可能性は十分に考えられる。

 僕も処理済みだったりするのだろうか。
 いつするか聞いてるってことはまだ処理されてないのかな?
 ちょっと怖くなってきた。

「新たなアジトへ移動する前にはやっておかないといけないが、今は無性にむしゃくしゃする。 まずは一回スッキリしてからだ」

「ではあの者を呼んで参ります」

「俺はベッドで待っているから連れてこい」

 なんだかハレンチな行為の予感がするが、今は考えないようにしよう。
 ハレンチ行為は盗賊の代名詞と言えるので、別に驚くようなこともない。

「わかりました。今しばらくお待ちください」

 程なくして扉が閉まったであろう音が聞こえた。

 恐る恐るソファの陰から顔を出し、部屋の様子を確認する。

「ふぅ……誰もいないみたいだ。 アネット、もう大丈夫だよ」

「う、うん……」

 アネットは獣人の特徴である耳と尻尾を丸めて、酷く怯えているようだった。

「アネット、怖かったら僕の手を握っていると良いよ」

 アネットが怯えていることを良いことに僕はそのぷにぷにの手の感触を堪能する。
 表情が緩みそうになるが必死に堪えて、かっこいい顔を保つ。

「とにかく、会話の内容を聞く限り、また盗賊が戻ってくるみたいだから早くここから出よう」

「うん。…………あれ?これなんだろう……?」

 アネットが見つめる先を見ると、先ほどまで隠れていたソファに立て掛けるようにして杖が置いてあった。

 杖には蛇が巻き付くような意匠が施されており、杖の先には黒い魔法石がはめ込まれている。

「これは、魔道具……かな?」

「まどうぐ?」

 その杖には確かに魔力の流れが感じ取れる。

「うん、僕も初めて見たけど、魔力を流すことで、中に込められた魔法を発動できるんだ」

「魔法を? でもどうして杖に魔法を込めるの? 普通に使えばいいでしょ?」

「確かにそうなんだけど、自分では行使できない魔法だったり、魔法の心得がない人でも魔力を流すだけで簡単に魔法を発動できるんだ」

「そうなんだ……でもどんな魔法が込められているんだろう?」

「それは使ってみないとわからないけど、こんな雑に置いてあるんだ、きっと大したことない魔法なんだと思う」

「そっかぁ……これでお母さんやトーマスを助けられたら良かったんだけど……」

「まあでも、一応持って行こう。 状況によっては使えるかもしれない」

「でも、なんだか見た目が不気味だよ」

「確かに禍々しいオーラを放っている気がするけど、どんな物が役に立つかわからないし、念の為だよ」

 ここは施錠もされていない部屋だったのだ。
 そんな強力な魔道具が置いてあるはずがないのだ。

「うん、わかった」

「とりあえず、ここにいたら盗賊に鉢合わせる可能性があるから早く移動しよう」

 そう言って僕たちはそそくさと部屋を後にした。

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