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二章
第29話 潜入ミッション開始!
しおりを挟む盗賊に扮し上手く盗賊団のアジトへの潜入に成功したユーリたちは、奥に続く道へ歩みを進めていた。
内部では盗賊が慌ただしく動いており、どうやら隠れ家を移動する準備をしているようだった。
物資などが所狭しに置いてあり、盗賊たちがせっせと竜車の荷台に乗せていっている。
ユーリの目的を果たすためには、人質が捕らえている場所がどこか把握する必要がある。
しかし、遺跡をアジトとして活用しているため、内部がかなり広く、特定の場所を探そうとすると少人数では時間がかかりすぎてしまう。
「そこの者、少し良いだろうか」
ギルバートが近くの盗賊に問いかける。
「ああ、なんだこの野郎? 今忙しいんだよ!見てわかんねぇのかタコ!」
「すまない、最近この盗賊団に入団したギリーという、牢屋の場所がわからないのだが、教えてもらえないだろうか」
ギリーというのは盗賊に変装した際のギルバートの偽名だ。
作業を邪魔されたことで、苛立ちを隠そうともせず、罵声を飛ばす盗賊。
王都最強のギルバートに対して、よくそんな言動が取れるものだとユーリは感心するが、ギルバートはといえば、盗賊のそんなぞんざいな態度に怒ることもなく、根気良く話しかける。
「ちっ!てめぇ!俺が忙しいって言ってんのが聞こえねぇのか!?ぶっ殺されてぇのか!」
「てめぇ!兄貴が牢屋の場所を聞いてんだろうがぁ!!さっさと答えろや!! 逆にぶっ殺されてぇみてぇだな!! おらっ!おらっ!」
そんな盗賊の小馬鹿にした態度に業を煮やしたのか、王国騎士団副団長のエリックが盗賊の頭をボコンボコンと殴り付ける。
およそ人から出てはいけないような音が鳴っていることに不安を隠しきれない様子のユーリとダン。
エリックは普段の高貴な振る舞いからは考えられないほど、盗賊の演技が上手かった。
最初は盗賊に変装することを嫌悪していたはずなのだが、ユーリには、エリックがどこか嬉しそうに盗賊を演じているように見えた。
「や、やめろ!やめてくだせぇ!! 牢屋の場所教えますから……!」
「最初から素直に教えやがれ!」
涙を流しながら懇願する盗賊の頭を最後にボコンと殴り付けるエリック。
(ちっ!いってえな……)
頭を殴られた盗賊は双眸に涙を浮かべながら、恨めしそうにエリックを見る。
「なんだ!?その反抗的な目は!! 盗賊は実力主義だ! 相手が新人だろうが強い者の前では這いつくばれ!! このチンカス野郎が!!!」
剣を抜き放ち、恫喝するエリック。
「す、すんません!!! どうか命だけは……!」
地べたに額を擦り付け、慈悲を乞う盗賊を見て、エリックは剣を鞘に戻したかと思うと、盗賊の髪の毛をむしり取るかのように鷲掴み、顔を上げさせる。
そして鼻先がくっ付くほど近くに顔を寄せ、口を開く。
「兄貴は一言でもそんな言葉が聞きたいっつったか?あん? 牢屋がどこかって聞いとるんじゃ!! 道案内せんかい!!!!」
「ヒ、ヒィ!!!」
「やり過ぎじゃないか……?」
「うん……怖すぎるよエリックさん……」
そんな苛烈とも言えるエリックの行動に、ユーリとダンは周りには聞こえない音量でささやき合う。
そんなことがあり、道案内を得たユーリたちは牢屋に向かって歩き出す。
このアジトは地下三階で構成されており、地上階には物資などが置かれ、地下1階は下っ端団員の部屋、地下二階が頭領と幹部、各部隊長クラスの盗賊の部屋があり、その下の地下3階に人質を収容する牢屋が設けられているとのことだった。
大事な商品である人質は簡単には逃げられないようになっているのだ。
ブルータル盗賊団が手を出している商売はある程度騎士団の方で調べが付いており、洗脳の魔道具で子どもたちの意思を奪い、奴隷を売買しているのではないかということは分かっていた。
それについて事前の会議でユーリとダンは聞かされていたので、精神魔法に対抗する魔道具を身に付けている。
その魔道具は国の宝物庫に眠っていたものであった。
それが、何者かによって盗み出されたのだ。
洗脳の魔道具という恐ろしい代物が宝物庫で管理されていたということは一部の人間にしか知らされていなかった。
破棄するべきではあったのだろうが、国の宝は歴代の王族が代々管理してきた物であり、国王だけの判断で破棄をすることができなかったのだ。
破棄をするためには様々な手続きを行う必要があり、そんなことをすれば、洗脳という恐ろしい魔道具の存在を明かすことになるため、秘密裏に管理するのが最善であった。
だが、それが盗まれてしまった。
宝物庫の警備は万全であり、容易に盗み出せることはない上に、魔道具が宝物庫で管理されていることを知っていたという事実から、騎士団は内部の人間の犯行であると睨んでいる。
それも宝物庫にアクセスでき、その魔道具の存在を知るほどの身分を持つ者に限定される。
しかし、それほどの身分となると、如何に騎士団であろうと簡単には調査に踏み入ることができない。
もし調査を行うのであれば、確実な根拠と覚悟を持って臨まなければならない上に、調査の結果、万が一にも確固たる証拠品が見つからなければ、騎士団長の首が飛び、団員たちも何かしらの罰則を受けることになるだろう。
宝物庫にアクセスできる身分とは、平たく言うと王族なのである。
調査を行うということは、騎士団が王族に濡れ衣を着せるということに他ならない。
疑う時点で罪なのだ。その上調査で何も出てこないとあれば、騎士団の末路など推して知るべし。
そういった状況もあり、魔道具盗難事件は長い間アンタッチャブルとされてきたのだ。
その魔道具が関与しているかもしれないということが、この度、王国最強の騎士であるギルバートが派遣された最大の理由である。
そうした事情はユーリたち部外者には話されてはいなかったが、いくら悪名高いブルータル盗賊団の討伐のためだけに、これほどまでに早く、しかも騎士団長が動くという状況に疑問を感じてはいた。
しかし、何となく聞いてはいけないことであると、ユーリは子どもながらに察していたために、その疑問を口にすることはなかった。
ちなみにダンに関しては、特に何も考えてはいなかった。
***
現在地下1階に向かって歩いているが、何か盗賊たちが慌てたような様子で、動き回っている。
地上階での物資の運び出しとはまた雰囲気が違ったような慌てぶりで、どこか殺気立っている。
「何か問題が起きているのかな……?」
「わかんね?でもなんか嫌な感じだよな」
ユーリとダンがコソコソと話す。
ギルバートもその異変には気が付いており、道案内の盗賊に声をかける。
「何かあったのか?」
「さ、さあ? 特に報告は無かったはずですが……」
その盗賊にも心当たりが内容で首をかしげている。
すると、ちょうど地下一階から上がってきた盗賊に声をかけられる。
「おい、お前たちジンの兄貴を見なかったか? それかカルストの旦那でも良い。幹部を見てないか!?」
「いや、見ていないが、何があった?」
その盗賊にギルバートが代表して答える。
「見てねぇのかよ! くそっ!こんな時に……! とにかく人集めてきてくれ!かしらがやべぇんだ!」
そう言うと走り去ってしまった。
「何か問題が起きているようだな」
「ど、どうしやす……? 人集めて来いって言ってやしたけど……」
「ふむ……問題ない。 行くぞ」
「も、問題ないって……何を根拠に……! 何が起こってるかもわかんねぇんですぜ? しかも他の奴らの様子を見る限り結構やべぇことに……」
「てんめぇ……!兄貴が問題ねぇっつってんだよ!! てめぇの役割はなんだ!? 兄貴に意見することか!?あん!? てめぇは黙って道案内すんのが役目だろうが!!」
「ぶへぇっ!!グボォ!!」
言い募る盗賊の頭をボコンボコンとエリックが殴る。
「あの、なんか頭の形がおかしくなっているような……」
ユーリの目には、殴られすぎた盗賊の頭が変形しているように見えており、それを止めようと声をかけるのだが、エリックは頭に血が上っているようで聞く耳を持っていなかった。
「とにかく行くぞ」
ギルバートが声をかけ、一行は地下1階への階段を下りて行ったのだった。
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