妹転生!~妹への愛が止まらないのに、何故か僕には妹がいない~

百円玉

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三章

第37話 輩に絡まれている所を助けて好感度を上げるやつ

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 僕たちは王都シスタリア魔法学園に来ていた。

 出発する際には、アネットが自分を連れていけと泣き喚いていたが、僕はアネットのどす黒い一面を見てしまったために少し距離を置こうと決めていた。
 如何に妹であろうと僕の命が奪われる危険があるアネットを近くに置いておくのは恐ろしかったのだ。
 脱出の際に首を絞められたことを忘れてはいない。
 僕は結構根に持つタイプなのだ。

 そのため、学園で待ってるよとか適当なことを言って逃げるように出発をしたのだった。
 本気かどうかはわからないが、来年学園を受験するとか言っていたので、それを理由に納得させたのだ。
 ユーリのように早期受験をするつもりなのだろう。

 アネットの母親であるコレットが言っていたことだが、ゼーロテュピア一族の女性は嫉妬深いから気を付けてねとのことだった。
 嫉妬する妹は可愛いと思うし、嫉妬されたいという願望もあるのだが、それが行き過ぎるのは流石の僕と言えども受容はできない。
 その結果、死んでしまうのは僕の本意ではないのだ。
 何事もほどほどが良いのである。

 王都へ辿り着いた後は宿を取り、試験当日までユーリに勉強を強制されたのだった。

 そんなわけで試験の手続きを済ませた僕たちは、試験時間まで少し時間があるということで、学園の庭にあるベンチに腰掛けていた。
 ダンも一緒に来ていたのだが、緊張で腹が痛いとか言ってトイレに駆け込んでいった。
 しかし、ダンは受験をどう合格するつもりなのだろう。
 僕が宿でユーリに勉強を強制されている間にダンはぐーすか寝ていたのだ。
 頭の出来が良くないくせに余裕があるなとは思ったが、一丁前に試験直前に緊張とは生意気である。
 緊張とは、試験まで必死に頑張ってきた人に与えられる権利なのだ。

「ダンくん、大丈夫かな……?」

「ほっとけばいいよ。 むしろ試験に間に合わない方が恥をかかないで済むでしょ?」

「そんなことないよ。 勉強頑張ってたってシアちゃん言ってたよ?」

「でも魔法だって、ろくすっぽ使えないじゃないか」

「それはそうだけど、周りの受験生たちもまだ魔法を使えない人の方が多いと思うよ?」

「そうなの?じゃあ他の皆はどうやって合格しようと思っているのさ」

「お兄ちゃん…… そもそも皆、魔法を勉強するために学園に来るんだから、入学前に魔法が使えるかどうかはそこまで重要じゃないんだよ」

 それは確かにそうだ。
 これから勉強して習得していくのだから、魔法が使えないのは当たり前か。
 ではなんだ、僕が必死に魔法の練習をしていたことは試験では全く意味がなかったということではないか。

「え、じゃあ魔法の試験はないってこと……?」

「まあ、適正を判断するだけじゃないかな?」

「え!じゃあ筆記試験を頑張らないといけないってこと!?」

「だから頑張って勉強しようって普段から言ってたでしょ?」

「え………… ん?でもよく考えたら僕は勉強なんかしたくないし、落ちたって別に問題ないか」

「ダンくんが合格してお兄ちゃんは不合格かぁ……」

「…………っ! なにおう!!」

 なんという屈辱的なことを言うのだこの弟は!
 僕がダンよりも劣っていると言いたいのだろうか!!

「それにシアちゃんもあと一年もすれば学園に来るんだよ? そしたらお兄ちゃんは村でひとりぼっちだね……」

「……っ!! …………なんだか僕、合格しないといけない気になってきたよ……」

「うん! 頑張ってね、お兄ちゃん!」

 ユーリは僕がやる気になったのを見て、満足げに笑みを浮かべている。
 どうも僕の行動はユーリにコントロールされているような気がする。
 僕の思い過ごしだと思うけど、なんとなくそんな気配をひしひしと感じるのだ。

 ダンを待つ間、ボーっとそんな話をしていると、周りが騒がしくなったことに気付いた。

「なんだろう?」

「さ、さあ……何かトラブルかな? ……お兄ちゃん、首突っ込まないでよ?」

 ユーリは、僕が自らトラブルに巻き込まれに行っているとでも思っているのなら、その考えを改めるべきだ。
 今までのトラブルに関しては不幸にも巻き込まれただけなのだから。
 そもそも熊の魔物の件を忘れてしまっているのだろうか。
 トラブルを引き起こした張本人のくせに、僕が首を突っ込むなど、どの口が言っているのだ。

「ご、ごめんなさい!」

「平民、どこを見て歩いている!!」

 遠目から見ると、オールバックの貴族然とした少年が、彼にぶつかったであろう少女に怒鳴り散らしている。
 少年の周りには彼の取り巻きであろう者たちがニヤニヤとした笑い声をあげる。

「わ、わざとじゃないんです……!」

 少女はその様子に震え、男に弁明する。

 その少女の声を聞いた僕の胸はキュンと高鳴った。
 その声に僕のとあるセンサーにどこか引っ掛かりを覚えた。
 距離があって見えずらかったので、ベンチから立ち上がりふらふらと歩み寄っていく。

「貴族の子弟にぶつかってごめんなさいで済むとでも思っているのか!」

「ひっ……!」

 貴族っぽい少年が少女に近寄る。

「……ん?……ふむ……貴様は……」

 何かに気付いたのか、ニヤリと顔を歪める。

「大貴族である僕に無礼を働いたのだ。 本来であればその命で償ってもらうべきところだ。 だが、まあ……僕は優しいからな」

 その貴族少年の言葉にホッと胸をなでおろす少女。

 しかし、僕の妹センサーは敏感だ。
 まだ、これで終わりではないと僕に告げているのだ。

 ちなみに妹センサーとは第六感みたいなものだ。
 僕は妹に関する予感にだけはとても鋭くなるのかもしれない。
 まだ、この子が僕の求めている妹であるかどうかは分からないのだが、僕のセンサーが反応している気がするのだ。

 すると、僕が予感したとおり、貴族少年が動き出した。

「だが……罰は必要だと思わないか? なあ?」

 貴族少年が取り巻きの小僧共に賛同の声を求める。

「その通りです! 大貴族であるウィストン様にぶつかってお咎めなしというのは他の者に示しがつかないというもの!」

「これを許せばウィストン様が見くびられることになります!」

「ふむ……僕は許してやろうと思ったのだが、確かにお前たちの言う通りだな……」

 自分は寛容だが、周りが言うから仕方なく的な雰囲気を醸し出す貴族少年。
 罰云々は自分から言い出していた気がするのだが、周りの小僧共のせいにしているようだ。

「よし…… 貴様、僕の召使いとなるが良い」

「え? 召使い……ですか……?」

 何を考えているのか、いやらしい表情をする貴族少年。
 大方、その少女が気に入ったとかそんなところだろう。
 そして、その子を召使いとしてあんなことやこんなことをするつもりなのだ。

 いや、ちょっと待ってほしい。
 その少女は、僕のセンサーに反応しているかもしれないんだ。
 せめて、お顔を確認させておくれよ……
 
 そう考えながら足早に現場に急ぐ。

 僕はなるべく目立たないように少女の顔を覗き込んだ。



 ――――――


 ――――――――――


 その少女の顔を見た瞬間に僕の時間は止まってしまった――――


 どのくらいの時間そうしていたのだろう――――


 とてもとても長い間そうしているように感じる――――


 彼女は輝くような銀髪を靡かせ、その幼い妹顔に儚げな表情を浮かべる――――


 トクン――――


 僕の心臓が跳ねる――――


 その音が聞こえてしまったかもしれないと、顔を赤らめてしまう――――


 そんな表情を見られたくなくて顔を伏せようと思うのだが、その意志と反して彼女から視線を外すことができない――――


 野次馬の奴らはいつの間にか皆ジャガイモになり、僕と彼女の二人だけしかこの世界には存在していないかのように錯覚する――――


 いつの間にかそれが僕のするべきことであるという使命感さえ覚え、彼女の顔をうっとりと眺める――――


 ――――――――――


 ――――――



 ――はっ……!!

 なんということだ……
 何日経った!?

 僕は突然起きた不思議な現象に慌てふためく。

 冷静に周りを見渡すと、僕が記憶していた光景のままであったことから、僕の意識が混濁していたか、数日の間皆固まっていたかのどちらかになるだろう。

 僕が一人であたふたしていると、状況が動いていた。

「……や、やめてください!!」

 貴族少年が少女の腕を掴み、強引に連れて行こうとして少女に振り払われた。

「き、貴様っ……!!」

 それに貴族少年はプライドを傷つけられたのか、顔を真っ赤にして激昂する。

 まずい!僕が守るしかない!
 僕の妹に手を出すな!!

「ちょっと待ってもらお……」

 僕がかっこよく登場しようとすると、ユーリにグイっと襟を引っ張られる

「ゆ、ゆーり……ぐ、ぐるぢぃ……」

「お兄ちゃん、また首突っ込もうとしてたでしょ」

 首を突っ込むどころか締まってるんだけど!

 僕が止まったことを見ると、パッと襟から手を離すユーリ。

「ゴホッゴホッ! な、何するんだよ、ユーリ……」

 首をさすりながら、ユーリを恨みがましい目で見る。

「お兄ちゃんが正気を失って飛び出そうとしたから止めたんだよ」

「今僕の妹がピンチなんだよ……! 状況わかってないの……?」

 僕を止めたユーリを責めるが、もしかしたら状況が分かっていなかったのかもしれないので、一応確認してみる。

「僕のこと馬鹿にしてる……? 僕だって見てたんだから状況は分かっているつもりだよ」

 馬鹿にしているつもりは全然ないんだけど、僕は相手を怒らせるデバフがかかっているようなのだ。

「じゃあ今僕を止めることの愚かさは分かるよね?」

「いや、首突っ込んだら厄介なことになるって……!」

「それでも助けないと……! 僕の妹が助けを求めているんだから!」

 そういって飛び出そうとする僕に襟をガシッと掴むユーリ。

「ぐぇっ……!」

 ユーリとの攻防戦を繰り広げていると、手を振り払われた貴族少年がプルプルと震えて声を荒げる。

「僕を……コケにしてただで済むと思っているのかぁ!!!!」

 貴族少年が腕を振り上げる――

 僕は飛び出そうと身を乗り出した瞬間――

「――それ以上はやめた方がいいんじゃないかな……?」

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