妹転生!~妹への愛が止まらないのに、何故か僕には妹がいない~

百円玉

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三章

第41話 実力を隠してる系主人公的立ち位置

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 早朝、入学式に赴く僕たち。

 ユーリは何故か女性用の制服を与えられていた。
 それを特に疑いもなく着ているのは幼少期からの母親の教育による影響だろう。
 確かに見てくれは美少女にしか見えず、女性用の制服もとても似合っているので、僕には本当に弟なのか判断ができていない。
 僕の葛藤を知ってか知らずか、本人は頑なに弟であると言っていることもあるため、妹として接することもできない。
 もし弟が妹であったならば、僕も吹っ切れて最大級の愛情を注ぐことはやぶさかではないのだが、そうはできない理由があった。

 僕はユーリのブツを未だに確認したことがないのだ。
 このことから僕は弟である可能性を完全に切り捨てることができなかった。
 確認すればいいと思うかもしれないが、そう簡単にはいかない。
 確認して弟だったときの絶望を前にしては、いくら精神的に優れている僕といえども二度と立ち直れなくなってしまうだろう。
 そう考えると恐ろしくなってしまい、確認する勇気が出ないのである。
 妹の可能性がある以上、安易に踏み込んではいけないことであると判断している。

 ほどなくして大広間へたどり着く。
 夢で見た内装とは違うことに少しホッとする。
 大広間は前世の体育館程度の広さがあり、生徒や教員が一堂に会していた。
 試験の際にはこれだけの人数がいたことは気付かなかったが、おそらく在校生も含まれているのだろう。
 

 大広間の入り口で職員のお姉さんに空いている席に座るよう言われたので、適当な席に座る。

 すると、アーサーの野郎と、フランちゃんを見つけた。
 また一緒にいる……
 もう僕の妹はアーサーの野郎と結婚してしまったのだろうか……。
 あれから二週間ぐらい姿を見ていないのだ。
 そんなに長い期間があったら既に入籍していてもおかしくはないだろう。僕ならそうする。
 だとしたら、とても辛くて苦しいことだ。
 想像しただけでもとめどなく涙が溢れてくる。

「ぐ、ぐぞぉ……!」

 ズズっと鼻水をすする。
 僕が泣くときは涙4割、鼻水6割なのだ。

「お兄ちゃん、入学できたのがそんなに嬉しいの? はい、チーンって……」

 ズビビビビビビビ

 隣に座るユーリがブレザーのポケットから取り出したハンカチを鼻にあてがわれたので、思い切り鼻水を放出する。

 しかし、だとしても僕はあきらめない。
 僕はちょっとだけあきらめが悪いのだ。
 アーサーの野郎を葬り去ることさえできれば、失意のどん底にいるフランちゃんに優しく接することで、その心の隙間に僕が入り込めるかもしれない。
 僕の学園生活は、アーサーの凄惨な死をもってして開始の合図となるのだ。

 アーサーの死に様を妄想してニヤニヤしていると、風魔法による増幅された職員の声が聞こえてきた。
 どうやら、入学式が始まるようだ。

「トードン学園長にお話をいただきたいと思います。」

 すると、恰幅の良い貫禄のある男性が壇上に上がってくる。
 なんだか、見覚えのあるカエル顔をしていた。
 白のタンクトップに丈の足りていないズボンを履き、靴は親指の部分に穴が開いている。
 あまりのみすぼらしさに大広間に集まった新入生たちがざわつく。

「あれ? 引きこもりカエルオヤジ……」

「お兄ちゃん、学園長をそんな風に言ったらだめだよ? …………でも確かに学園長と言うにはちょっと……」

「あいつのせいで、試験官からの僕の評価が落ちたんだよ」

「……あいつだなんて失礼だよ、お兄ちゃん? それに何でも他人のせいにしちゃダメだよ?」

「い、いや…… ほんとなんだって……!」

「お兄ちゃん、今学園長先生がお話するから、静かに……!」

「………………」

 最近になってから気付いたのだが、なんだか皆の僕の扱いが悪い気がする。
 僕だって傷つくこともあるのだ。
 大きな悲しみに胸を締め付けられるが大丈夫。まだ僕は正気を保っている。
 もし僕が正気を失っていたら今頃アーサーの奴は屍になっているのだから、まだ正気は保っているはずである。グスン……。

「新入生諸君、入学おめでとう。 貴殿らの入学を教職員一同心より歓迎する」

 トードンとかいう引きこもりガエルが偉そうに話し始める。
 偉そうすぎるみすぼらしいオヤジにそのざわつきが大きくなっていく。

「なんだよ……あのみすぼらしい男は……?」

「お、おい、やめとけ……!学園長先生に失礼だろ……!」

「だけどよ……あれが学園長なんて信じられるか……?」

「そ、それは……」

 周りの生徒もこの由緒あるシスタリア魔法学園の学園長がこんなくたびれたオヤジだとは信じられないようだ。
 かくいう僕もあの引きこもりガエルが学園長だなんて、天地がひっくり返ってもあり得ないと思っている。
 何故ならあいつは学園に迷い込んだ引きこもりカエルオヤジなのだから。
 僕が試験官と勘違いして肩もみをさせられているときに本人が言っていたので間違いはないはずである。

「――貴殿らが、この学園で多くのことを学び、多くの経験を積み、そしてかけがえのない仲間を見つけられることを望んでいる」

 引きこもりガエルが偉そうにスピーチを続けているが、それを聞いている生徒はほとんどいないのではないだろうか。
 もはや、大騒ぎと言っても良いほどに大広間内は混乱していた。

 その混乱を一切気に留めることなく、しゃべり続けていた引きガエルがそこで言葉を切った。
 その様子を見た生徒たちが少しずつ静まっていく。

 そして、静まったのを見計らった引きガエルが再び口を開く。

「――――さて、魔法使いたるもの、物事の本質を見極める目を持っている必要がある」

 急に話の流れが変わったことに疑問を抱く。

 すると、引きこもりガエルの周りに魔力が渦巻き始め、みるみるうちに渦が大きくなっていく。
 あまりにも強大すぎる魔力の圧に僕たちは委縮してしまう。

 そして、一際大きな魔力が解き放たれ、引きこもりガエルの体が強く発光した。
 その強すぎる光に目を開けていられない。

 ほどなくして、その光が収まると、今までみすぼらしいカエルオヤジが立っていた場所に妙齢のお姉さんがいた。
 パープルを基調としたローブを肩にかけ、胸元が大きく開いたドレスを纏っていた。
 頭には魔法使い特有の帽子を被っており、ウェーブがかかったブラウンの長い髪が空気中に漂う魔力によって靡いている。

 目の前で起こった出来事に混乱していると、お姉さんが口を開く。

「――貴様らが立っているその場所は、深淵の入り口であることを理解しろ。 でなければ、あっという間に魔に飲まれることになるぞ?」

 いたずらが成功した子どもような笑みを浮かべるお姉さん。
 あれ?どういうこと?皆理解しているのだろうか。
 僕だけが分かっていないのは恥ずかしいので、訳知り顔をしておこう。

「ククク……。 どうやら状況が分かっていないようだな!」

 楽しそうに笑うお姉さん。
 すると、今まで司会をしていた教員が口を開く。

「学園長お戯れもその辺で……」

「ん?そうだな! クク! 余興はこれで終いだ!」

「はぁ……何が楽しいのやら……」

 司会の男がため息交じりにぼやく。

「魔法使いを目指すのであれば、何事にも動じず、その真贋を見極めることができなければならない! みすぼらしい男だと油断していると痛い目にあうってことだな! クックック……!」

 どうやら、さっきまでのカエル男は偽りの姿で、あのお姉さんが本物の学園長であるらしい。

「だが、中には気付いている奴もいたようだがな? そいつは試験会場で、くたびれたオヤジの姿をした私を見つけるや肩を揉みにきたぞ? しかもおべっかまで使いやがった! 面白い奴よ!ククク!」

 僕のことだろうか。
 確かにこの学園はすごいですねぇみたいなことを言った気がする。
 本当は全然気付いていなかったのだが、ここは不敵な笑みを浮かべておくか。
 ふふふ……僕の秘められた力に気付いたようだね……ふふふふふ……。

「私は王都シスタリア魔法学園、学園長アリア・トードン! 改めて、入学おめでとう!魔法使いの卵たちよ! クックック!」


 その後、新入生代表スピーチでアーサーがなんか言っていたが、あまりの憎しみにより内容を聞くことができなかった。
 というより聞く気がなかったとも言える。

 こうして、入学式が終了したのだった。




***




 入学式が終わった後はクラスごとに分かれ、オリエンテーションとなった。

 教室は大学の講義室のように階段状になっており、座席数は40ほどあるだろうか、クラスの人数が25人ほどのため、余裕を持って座れる。
 僕は後方の席に座ることにした。高い所から愚民どもを見下すことが、上に立つ者の責務といえよう。
 一番高い所に席を陣取り、ダンが当たり前のように僕の隣に座る。
 ダンは僕の従者としては頭も顔も悪いが、贅沢は言えない。
 いずれは取り替える必要はあるが、今はこいつで我慢しよう。

 偉そうに腕を組み席に座る。

 ちなみにユーリはここにはいない。

 ユーリが所属するのはAクラスであり、僕が所属するのはDクラスだった。
 AからEまでのクラスがあり、入学試験の順位に応じて分けられている。
 簡単に言うと、Aが優秀な生徒、Eがゴミクズ集団ということだ。

 学園のポリシーとしては、生徒の出身や家庭環境による差別を禁止しており、学園内において生徒は平等に扱われる。また、差別的な行為に対しては、厳正な処罰があるとのことであった。
 それを聞くと、クラスで差をつける仕組みは、学園側で差別意識を助長させているのではないかと思ってしまう。
 しかし、学園としても学力が無い人に対して、高度な教育を施しても意味がないので、クラス分けは、生徒の学力に応じた教育をしていくことが目的なんだそうだ。

 また、学力のみで評価されるわけではなく、生徒の普段の努力や進歩、他生徒との協調性に関しても評価に含まれるため、自身を磨くこともせず、他人を見下すようなことをしていると当然評価は下がってくる。
 他の生徒と比較するのではなく、自身の成長に目を向けてもらうことが、学園が目指すところだそうだ。

 とは言っても教員の目の届かないところでは、身分や学力による差別的行為が横行しているのだろう。実際のところは僕には分からないが、現実は世知辛いものなのだ。

 入学試験の際に僕の調子が悪かったせいで、こんなゴミ一歩手前の掃き溜めにぶち込まれることになった。
 しかし、魔法の練度に関しては、新入生の中では上位であると思うので、すぐにこんなところなど、すぐに抜け出すことになるだろうさ。
 実力を隠している系の主人公みたいでかっこいいだろう?
 でもいつまでもこんなクラスで燻っているわけにはいかない。
 僕はやっぱり一番が好きなのだ。
 今後、僕の実力を知る者が徐々に増えていき、いずれ多くの人間が僕の前に跪くことになるのだ。

 僕の圧倒的な力をもってして、妹たちを釣りまくってやるのだ。
 フフフ……楽しみ……

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