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三章
第40話 爆発的な目覚め
しおりを挟む僕はダンと同じ部屋に割り当てられた。
まあ、知らない糞野郎と一緒の部屋になるよりかは、知っている糞野郎が一緒の方がましである。
扱い方が分かっていれば、対処など容易なのだ。
ユーリは何故か女子寮にぶち込まれていた。
彼は男であるため、僕と同じ部屋にしろと職員を脅しつけていたのだが、職員は困った表情を浮かべるばかりで取り合ってくれなかった。
最終的には涙を浮かべながら僕に助けを求めてきたのだが、12歳の子どもの言うことなど聞いてくれるはずもないため、サッと目を逸らした。
僕に裏切られたユーリは、裏切り者だの、人でなしだの、人聞きの悪いことを叫びながら職員に引きずられていったのだった。失礼な弟である。
僕としてもユーリは可愛い弟であるため、ダンと一緒にいるよりよっぽど良いのだが、ユーリという内通者が女子寮にいることにより、僕が侵入しやすくなるということもあるため、悪いことばかりではないのだ。
ちなみに寮へ向かう最中に、試験前、僕の妹であるフランちゃんに絡んでいた貴族少年を見た。
名前は確かウィストン様だったはずだ。
なんだか良からぬことを考えていそうな顔をしながらブツブツと何かを呟いていたので、耳の穴を膨らませて何を言っているのか、盗み聞くことにした。
僕は結構地獄耳なのだ。
彼は試験前に自分に恥をかかせたアーサーを心底憎んでいた。
しかも1位で受験を突破したことでかなり目立っていたこともあり、さらに貴族としてのプライドを傷つけられたようだ。
僕もアーサーの奴に恥をかかされた者の一人であるため、彼の感じている屈辱は手に取るように分かる。
彼は僕と同じ目的を持つ同志なのだ。
だが、一緒になってアーサーに嫌がらせ行為をするとフランちゃんに悪印象を抱かれかねないため、正体を知られずにアーサーの奴に、この世からご退場してもらわなければならない。
彼がどういった作戦を考えているのかは現時点ではわからないが、僕は僕で動くことになるだろう。
お互いに頑張ろうじゃないか!
入学前の二週間はそんな感じで過ぎていった。
そして、どうやら明日は入学式らしいのだが、僕は夜遅くまでアーサーの野郎を始末するためのプランを考えるのだった。
――――
――――――
入学式に赴いた生徒たちは、学園の大広間に集められていた。
これから校長の話などがあるのだろう。
しかし、僕には別の目的があり、入学式など既にどうでも良くなっていた。
抗いがたい強烈な使命感に突き動かされ、歩みを進めていく。
憎きアーサーの姿を見つけて、背に隠し持ったナイフを握りしめ、慎重に近づいていく。
気配を消して一歩ずつ奴に忍び寄る。
周りの喧騒など、耳に入ってこないほどに緊張していた。
奴の姿しか目に映らず、汗が流れ落ちる煩わしい感覚も気にならない。
今から奴を手にかけるというプレッシャーを全身に感じながら、少しずつ距離を詰めていき、ついに奴の背後を取る。
そして、奴の体に渾身の勢いでナイフを突き立てた。
「アーサー覚悟ぉ!!」
「なにを……!」
その瞬間――――
ナイフを突き立てたアーサーの体が大爆発を起こしたのだ。
リアクティブアーマー。
爆発反応装甲とも呼ばれる戦車などの外装に装着されているものであり、砲弾が着弾すると爆発し、貫通を防ぐものであるのだが、アーサーはそれを体中に装着していたのである。
とんでもない爆発に大広間に集まった人たちを巻き込んでいく。
その爆風と衝撃は僕たちの体を無残な肉片へと変えて、その第二の人生に幕を下ろしたのであった。
――――――
――――
「はぁっ!!」
全身が汗にまみれており、パジャマが体に貼り付いて気持ちが悪い。
僕はどうやら復讐方法を考えながら寝てしまい、悪夢を見てしまったようだ。
先ほどのリアルな夢は何かの暗示だろうか。
やはり、アーサーへの復讐は一筋縄ではいかないということなのか。
安易に手を出すのは良くないかもしれない。
復讐を成し遂げるためには、入念な準備と確実な策が必要になるだろう。
僕は結構夢占いとかを信じる方なのだ。
最悪の目覚めであったが、悪いことばかりではなかった。
その恐ろしい夢は天啓でもあったのである。
僕は奴を確実に葬る策を閃いてしまったのだ。
フフフ……待っていろよ……発情期の泥棒猫め……
僕の妹に手を出したことを後悔させてやろう……
フフ……フフフ……フフフフフ……
入学式当日、朝日が差し込む寮の一室で、僕は改めてアーサーへの復讐を決意するのであった。
……今の僕、ちょっとかっこいいんじゃないだろうか。
窓から差し込む朝日に照らされて、不敵な笑みを浮かべる汗に濡れたウエッティな僕。
フフフ…… ちょっと髪をかき上げてみた方がかっこいいだろうか……
「お兄ちゃん……何やってるの……?」
「え!? い、一体いつからそこに……!?」
ユーリに見られていたなんて……は、恥ずかしい……!
「いつからって…………昨日の夜から……?」
僕と同じベッドの中で上半身を起こしながら、可愛らしいパジャマに身を包んだユーリがばつの悪そうな顔をしている。
隣のベッドではダンの野郎が大いびきをかいて寝ていた。
「い、いやぁぁあああああ!!」
恰好をつけて髪をかき上げているところを見られた恥ずかしさから、女の子のような悲鳴を上げてしまった。
熱い……極度の羞恥により顔が燃えるように熱い!
「寝ていたと思ったら急に叫びだしてびっくりしたよ…… かと思ったら髪をかき上げながら変な顔で笑ってるし…… ついに壊れちゃったんだ……って……」
「な、なんだとう……!? 変な顔とは失礼な……!」
「でもちゃんと正気に戻ったみたいだね? 良かった!」
屈託のない笑みでそんな風に言われると、僕も許してしまいそうになる。
しかし、またしても僕のベッドに侵入してきたことに関してちゃんと言っておかなければいけない。
「というかまた僕のベッドに潜り込んで……」
「今日は入学式だよ! 早く準備しなきゃ!」
そう言うと部屋を飛び出して女子寮に戻っていくユーリ。
ユーリは女子寮に連れていかれたその日の夜から、僕のベッドに侵入してくるようになった。
どうやら寮にはまだ同室の生徒が来ていないとのことで、一人で寝るのは寂しいとのことだった。
僕としてはそんなことをされると仮に弟といえども一線を越えてしまいかねないため、やめるように強く言ったのだが、こうしてこっそり侵入してくるのだ。
そして、毎回ばつが悪そうな表情を浮かべ、誤魔化すように話を逸らそうとするのだ。
もしかして、ユーリが潜り込んできたことで布団の中の温度が上がり、こんな悪夢を見たのではないだろうな。
そういえば、今日は春先にしては気温が高そうである。
新たな門出にはぴったりの日かもしれない!
これから始まる僕の輝かしい復讐劇を応援しているかのようではないか。
よし、とりあえずシャワーでも浴びようかな!
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