妹転生!~妹への愛が止まらないのに、何故か僕には妹がいない~

百円玉

文字の大きさ
39 / 77
三章

第39話 強過ぎて魔力測定水晶が壊れるやつ

しおりを挟む

 実技試験の最中に耳の穴を膨らませ、二つ前に並んでいるアーサーの野郎と僕の妹であるフランちゃんの会話を盗み聞く。
 聞けば聞くほど、怒りで目の前が赤く染まっていく。

「あ、次フランの番だよ」

「はい、行ってきます!」

 ガリガリガリ……ギリギリギリ……
 フランちゃんがアーサーに笑顔を見せるたびに頭を掻きむしり、歯ぎしりが止まらない。

 トテトテと水晶の前まで小走りで向かい、手をかざす。

 フランちゃんの周りにまとわりつくように魔力の風が吹く。
 その風はかなり大きくなり、物凄い圧力を感じる。

「こ、これは……!!」

 試験官のオヤジが目を見開いている。
 かなり、すごいのだろう。
 確かにそれまでの受験者でこれほどの魔力圧を感じることはなかった。

 徐々に魔力の波が落ち着いていき、水晶が緑色に輝き始める。
 その輝きは直視できないほどであった。

「きゃっ!」

 その強い光に驚いたフランちゃんが小さく悲鳴を上げ、手を離すと、光が収まっていった。

「これはすごい……! 君は風属性の魔法が得意なようだね。 何か魔法の訓練などはしていたのかね?」

「い、いえ、魔法は簡単なものしか使ったことがなくて……」

「そうか、そうか、ではこの学園で存分に学びなさい!」

 試験官のオヤジが上機嫌にそんなことを言う。
 まだ結果は出ていないというのに、もう合格したかのような口ぶりだった。

 まあ、これから僕と学園生活を送るのだからフランちゃんが落ちることなど考えられないのだが。
 流石は僕の妹である。

 だけど少し不安なのが、守るべき妹が僕より強いのかもしれないということだ。
 今はまだ練習を重ねてきた僕の方が魔法は上手だろうけど、すぐに追い抜かれてしまいそうだ……。

 次は、アーサーの野郎の順番だ。

「頑張ってください! アーサー君!」

 少し離れたところで試験が終了したフランちゃんが応援している。

 何故そんな奴のことを……!
 僕はこんなに君のこと想っているというのに……!
 なんで僕の気持ちをわかってくれないんだ!!


 そして、アーサーの野郎が手を翳した瞬間――



 突如、周りの空気が震え始めた――――



 魔力の圧が強すぎるのだ。
 その強すぎる圧に近くにいた生徒たちは身震いをする。

 刹那、水晶玉が太陽の如く輝きを放った。


 ピキ――――


 ガラスにヒビが入る小さな音が聞こえたかと思うと同時に、なんと水晶玉が粉々に砕け散ったのだ――――


「なっ!? こ、これほどの力を……! しかも見間違いでないなら属性は光…… 先代の勇者が扱っていた属性……!」

 こ、こいつ……やりやがった……!僕がやる予定だった水晶割りのやつ!
 全部だ!こいつがやること全て僕がやろうとしていたことだったのに……!
 しかもあろうことか光属性の適性だと……!?
 ちくしょう……

 アーサーのやったことは、魔力が強すぎて水晶がぶっ壊れるというライトノベルでは有名なイベントなのだ……!!
 その上、主人公が手に入れるとされるあの光属性を持っているとは……!

 学園に来てからというもの全然僕の思い通りにいかない……。
 自分の情けなさに涙が出てくる。

 これも全てあのいけ好かないアーサーとかいう野郎のせいだ!!


 ――――絶対に復讐してやる……!!


 そして、僕は怒りに任せて新たに用意された水晶玉を鷲掴むのだった。

 水晶は割れることはなく、適性は水属性と土属性だった。
 複数の属性に適性があるのはそこそこ珍しいことではあるが、二属性程度ならそこら辺を探せばすぐに見つかる。
 地味だ……。地味すぎる……。
 水と土って……僕は砂遊びをするつもりはないのだ……!

 ちなみにユーリは風と水に適性があり、魔力量も普段から練習している成果もあり、それなりの輝きがあった。
 微妙な差ではあるが、僕の方が僅かに上だったはずだ。
 間違いない。僕は光に敏感な方なので、結構正確に判定できているはずだ。

 ダンの奴も蝋燭のように小さな光ではあったが、一応火属性の魔法に適性があったようだ。
 僕好みのかっこいい属性である。何故ダン如きが……。

 この世界には火、水、風、土の基本四属性と闇、光、無の三属性がある。
 基本四属性の適性がある者は比較的多いのだが、闇、光、無属性に適性がある者は少ない。
 そのため、光属性を持っていたアーサーはかなり珍しいのだ。




***




 試験から二週間ほど経過した。

 試験結果については、一応合格はしていたのだが、アーサーとかいう大仰な名前のイケメン野郎にイライラしていたのか順位は下から数えた方が早かった。
 本当の僕の知力はこんなものではないはずなのに、絶対に許さない……。
 一番得意だった数学に関してもユーリに負けていた。ちくしょう!
 やっぱりイライラしすぎていたみたいだ。僕が四則演算で負けるはずがないのだから。

 ちなみにダンの奴も一応合格していた。
 どんな汚い手を使ったのか問いただしたのだが、自分の力だけで乗り切ったなどと嘘ばかり吐いて、ついぞ口を割ることはなかった。
 順位も僕の一つ下であったため、絶対に何かしらの不正をしていることは間違いはない。
 僕がいくらアーサーの野郎への復讐方法を考えていたからといって、あんなジャガイモ野郎と同レベルなんてあり得ないのだ。

 アーサーの野郎は1位で合格していやがった。
 落ちていてくれれば、いやむしろ死んでいてくれれば僕の心配事はなくなったのだが……。
 どうにかしてあの野郎を無残に屠れないだろうか。
 そう考え、僕は学園に通うまでの暇な期間に、野郎の弱みを握るために行動しようとしたのだが、ユーリに引きずられて入学に必要な備品などの買い出しに付き合わされた。

 ちなみに言うまでもないことだが、ユーリも合格していた。
 しかも、3位という驚異的な成績を叩き出していたのだ。
 何故、同じ両親から生まれたはずなのにこんなに差があるのか。
 いや、僕はあの時はコンディションがすこぶる悪かったのだ。
 僕が本気を出せばこんなものではないはずだ。きっとそうなのだ。
 兄より優秀な弟など存在しないのである。

 合格発表後は割り当てられた寮に住むことを許可された。
 入学前に荷物を運び込んだりしておけということらしい。

 路銀が少なくなっていた僕たちにとっては渡りに船であった。
 ダンに関しても自分の両親から分け与えられていた路銀の全てを食費に使い果たしていた。
 ダンは見た目の太さを体現するかのように異常に食い物を食うのだ。
 しかし路銀を使い果たしてからというもの、定期的に腹を鳴らしては飯を要求する様を見て、流石に憐れに思ったユーリがダンの分の食費を賄っていた。
 ちなみに僕の分のお金もユーリが管理している。というか、僕が無駄な買い物に浪費するからと母親から二人分持たされていたのだ。
 どれだけ信用がないのだ僕は……。

 前世では、両親の口座から勝手に云百万単位でお金を引き出して、瞬く間に溶かしたこともあるので、あながち間違いでもないのだが、転生してからというもの一度もお金を持ったことがないのに、そう思われているというのは些か腑に落ちない。
 印象だけで浪費しそうとでも思っているのだろうか。不憫な僕……。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

没落ルートの悪役貴族に転生した俺が【鑑定】と【人心掌握】のWスキルで順風満帆な勝ち組ハーレムルートを歩むまで

六志麻あさ
ファンタジー
才能Sランクの逸材たちよ、俺のもとに集え――。 乙女ゲーム『花乙女の誓約』の悪役令息ディオンに転生した俺。 ゲーム内では必ず没落する運命のディオンだが、俺はゲーム知識に加え二つのスキル【鑑定】と【人心掌握】を駆使して領地改革に乗り出す。 有能な人材を発掘・登用し、ヒロインたちとの絆を深めてハーレムを築きつつ領主としても有能ムーブを連発して、領地をみるみる発展させていく。 前世ではロクな思い出がない俺だけど、これからは全てが報われる勝ち組人生が待っている――。

異世界転生おじさんは最強とハーレムを極める

自ら
ファンタジー
定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。 その「お詫び」として、健一は剣と魔法の異世界へと30代後半の肉体で転生することになる。チート能力の選択を迫られ、彼はあらゆる経験から無限に成長できる**【無限成長(アンリミテッド・グロース)】**を選び取る。 異世界で早速遭遇したゴブリンを一撃で倒し、チート能力を実感した健一は、くたびれた人生を捨て、最強のセカンドライフを謳歌することを決意する。 定年間際のおじさんが、女神の気まぐれチートで異世界最強への道を歩み始める、転生ファンタジーの開幕。

悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業

ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

転生先は上位貴族で土属性のスキルを手に入れ雑魚扱いだったものの職業は最強だった英雄異世界転生譚

熊虎屋
ファンタジー
現世で一度死んでしまったバスケットボール最強中学生の主人公「神崎 凪」は異世界転生をして上位貴族となったが魔法が土属性というハズレ属性に。 しかし職業は最強!? 自分なりの生活を楽しもうとするがいつの間にか世界の英雄に!? ハズレ属性と最強の職業で英雄となった異世界転生譚。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

無限に進化を続けて最強に至る

お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。 ※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。 改稿したので、しばらくしたら消します

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

処理中です...