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三章
第39話 強過ぎて魔力測定水晶が壊れるやつ
しおりを挟む実技試験の最中に耳の穴を膨らませ、二つ前に並んでいるアーサーの野郎と僕の妹であるフランちゃんの会話を盗み聞く。
聞けば聞くほど、怒りで目の前が赤く染まっていく。
「あ、次フランの番だよ」
「はい、行ってきます!」
ガリガリガリ……ギリギリギリ……
フランちゃんがアーサーに笑顔を見せるたびに頭を掻きむしり、歯ぎしりが止まらない。
トテトテと水晶の前まで小走りで向かい、手をかざす。
フランちゃんの周りにまとわりつくように魔力の風が吹く。
その風はかなり大きくなり、物凄い圧力を感じる。
「こ、これは……!!」
試験官のオヤジが目を見開いている。
かなり、すごいのだろう。
確かにそれまでの受験者でこれほどの魔力圧を感じることはなかった。
徐々に魔力の波が落ち着いていき、水晶が緑色に輝き始める。
その輝きは直視できないほどであった。
「きゃっ!」
その強い光に驚いたフランちゃんが小さく悲鳴を上げ、手を離すと、光が収まっていった。
「これはすごい……! 君は風属性の魔法が得意なようだね。 何か魔法の訓練などはしていたのかね?」
「い、いえ、魔法は簡単なものしか使ったことがなくて……」
「そうか、そうか、ではこの学園で存分に学びなさい!」
試験官のオヤジが上機嫌にそんなことを言う。
まだ結果は出ていないというのに、もう合格したかのような口ぶりだった。
まあ、これから僕と学園生活を送るのだからフランちゃんが落ちることなど考えられないのだが。
流石は僕の妹である。
だけど少し不安なのが、守るべき妹が僕より強いのかもしれないということだ。
今はまだ練習を重ねてきた僕の方が魔法は上手だろうけど、すぐに追い抜かれてしまいそうだ……。
次は、アーサーの野郎の順番だ。
「頑張ってください! アーサー君!」
少し離れたところで試験が終了したフランちゃんが応援している。
何故そんな奴のことを……!
僕はこんなに君のこと想っているというのに……!
なんで僕の気持ちをわかってくれないんだ!!
そして、アーサーの野郎が手を翳した瞬間――
突如、周りの空気が震え始めた――――
魔力の圧が強すぎるのだ。
その強すぎる圧に近くにいた生徒たちは身震いをする。
刹那、水晶玉が太陽の如く輝きを放った。
ピキ――――
ガラスにヒビが入る小さな音が聞こえたかと思うと同時に、なんと水晶玉が粉々に砕け散ったのだ――――
「なっ!? こ、これほどの力を……! しかも見間違いでないなら属性は光…… 先代の勇者が扱っていた属性……!」
こ、こいつ……やりやがった……!僕がやる予定だった水晶割りのやつ!
全部だ!こいつがやること全て僕がやろうとしていたことだったのに……!
しかもあろうことか光属性の適性だと……!?
ちくしょう……
アーサーのやったことは、魔力が強すぎて水晶がぶっ壊れるというライトノベルでは有名なイベントなのだ……!!
その上、主人公が手に入れるとされるあの光属性を持っているとは……!
学園に来てからというもの全然僕の思い通りにいかない……。
自分の情けなさに涙が出てくる。
これも全てあのいけ好かないアーサーとかいう野郎のせいだ!!
――――絶対に復讐してやる……!!
そして、僕は怒りに任せて新たに用意された水晶玉を鷲掴むのだった。
水晶は割れることはなく、適性は水属性と土属性だった。
複数の属性に適性があるのはそこそこ珍しいことではあるが、二属性程度ならそこら辺を探せばすぐに見つかる。
地味だ……。地味すぎる……。
水と土って……僕は砂遊びをするつもりはないのだ……!
ちなみにユーリは風と水に適性があり、魔力量も普段から練習している成果もあり、それなりの輝きがあった。
微妙な差ではあるが、僕の方が僅かに上だったはずだ。
間違いない。僕は光に敏感な方なので、結構正確に判定できているはずだ。
ダンの奴も蝋燭のように小さな光ではあったが、一応火属性の魔法に適性があったようだ。
僕好みのかっこいい属性である。何故ダン如きが……。
この世界には火、水、風、土の基本四属性と闇、光、無の三属性がある。
基本四属性の適性がある者は比較的多いのだが、闇、光、無属性に適性がある者は少ない。
そのため、光属性を持っていたアーサーはかなり珍しいのだ。
***
試験から二週間ほど経過した。
試験結果については、一応合格はしていたのだが、アーサーとかいう大仰な名前のイケメン野郎にイライラしていたのか順位は下から数えた方が早かった。
本当の僕の知力はこんなものではないはずなのに、絶対に許さない……。
一番得意だった数学に関してもユーリに負けていた。ちくしょう!
やっぱりイライラしすぎていたみたいだ。僕が四則演算で負けるはずがないのだから。
ちなみにダンの奴も一応合格していた。
どんな汚い手を使ったのか問いただしたのだが、自分の力だけで乗り切ったなどと嘘ばかり吐いて、ついぞ口を割ることはなかった。
順位も僕の一つ下であったため、絶対に何かしらの不正をしていることは間違いはない。
僕がいくらアーサーの野郎への復讐方法を考えていたからといって、あんなジャガイモ野郎と同レベルなんてあり得ないのだ。
アーサーの野郎は1位で合格していやがった。
落ちていてくれれば、いやむしろ死んでいてくれれば僕の心配事はなくなったのだが……。
どうにかしてあの野郎を無残に屠れないだろうか。
そう考え、僕は学園に通うまでの暇な期間に、野郎の弱みを握るために行動しようとしたのだが、ユーリに引きずられて入学に必要な備品などの買い出しに付き合わされた。
ちなみに言うまでもないことだが、ユーリも合格していた。
しかも、3位という驚異的な成績を叩き出していたのだ。
何故、同じ両親から生まれたはずなのにこんなに差があるのか。
いや、僕はあの時はコンディションがすこぶる悪かったのだ。
僕が本気を出せばこんなものではないはずだ。きっとそうなのだ。
兄より優秀な弟など存在しないのである。
合格発表後は割り当てられた寮に住むことを許可された。
入学前に荷物を運び込んだりしておけということらしい。
路銀が少なくなっていた僕たちにとっては渡りに船であった。
ダンに関しても自分の両親から分け与えられていた路銀の全てを食費に使い果たしていた。
ダンは見た目の太さを体現するかのように異常に食い物を食うのだ。
しかし路銀を使い果たしてからというもの、定期的に腹を鳴らしては飯を要求する様を見て、流石に憐れに思ったユーリがダンの分の食費を賄っていた。
ちなみに僕の分のお金もユーリが管理している。というか、僕が無駄な買い物に浪費するからと母親から二人分持たされていたのだ。
どれだけ信用がないのだ僕は……。
前世では、両親の口座から勝手に云百万単位でお金を引き出して、瞬く間に溶かしたこともあるので、あながち間違いでもないのだが、転生してからというもの一度もお金を持ったことがないのに、そう思われているというのは些か腑に落ちない。
印象だけで浪費しそうとでも思っているのだろうか。不憫な僕……。
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