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三章
第46話 禁制品を買いたいなら裏路地へGO!
しおりを挟む「そうだったんだねぇ。 助かったよユーリ」
ローレンスから助けられた僕は、自分の寮に戻ってきていた。
先ほどクリスティーナも合流して、これまでの経緯を聞いていたのだ。
「ほんとだよ!! 僕がいなかったら、今頃お兄ちゃんは粉々になっていたんだからね!」
「いや…… 俺だって頑張ったんだけど……」
ダンが何か言っているが、無視だ。
僕の首を締め上げた恨みは忘れていないのだ。
「ニ、ニアさん…… 改めて謝罪させてくださいまし!! 本当にご迷惑をおかけして申し訳ありませんわ……!」
殺されそうにはなったが、クリスティーナという金のなる木を無事に助けることができたのだ。
結果死ななかったのだから安いものだ。計算の内とも言う。
ここからはクリスティーナを僕の手の内に収めるために動くべきだ。
「ふふふ…… 君を助けるのは当然のことだよ、ティーナ……」
「てぃ、てぃーな……?」
「ふふ…… 君のことだよ、クリスティーナだと長いからね。 一方的にティーナと呼ばせてもらうよ。 その方が特別感があるだろう? 友達みたいでさ」
「お友だち……! ワタクシたちはお友だち!ですものね! ティーナ……素敵な響きですわぁ……!」
ティーナはなんだか嬉しそうに頬を染めている。
ふふふ……愛いやつめ……
ティーナは僕のセンサーには引っかからないが、妹の素質はあるようだ。
ユーリが感情を失ったような目で僕を見てくるのが怖い。
しかし、今は資金源を確保することが先決なのだ。
「だけどよぉ…… ローレンスとかいう貴族のことはどうするんだよ? あんな魔法を撃つぐらい怒ってたんだろ……? このまま収まりそうにねぇぞ……?」
「うーん…… 明日になったら忘れてたりしないかなぁ……?」
「お兄ちゃん…… それは流石に楽観的すぎだよ……」
「お、お友だちですわっ……! は、初めてのお友だち…… きゃっ……ウフフフフ…………」
確かに言われてみれば恐ろしい顔をしていたし、明日までは覚えているかもしれない。
「じゃあ面倒くさいけど、何か対策しておくしかないかも……」
ティーナという資金源と僕の身の安全のためにも。
「対策って簡単に言うけど、何をするつもり……? また何かとんでもないこと考えてるんじゃないよね……?」
「俺らが何かするより、学園に報告するのが一番良いんじゃねぇのか?」
「そうだよ……僕たちが何かできることなんて多くはないんだから!」
「まあ、僕に任せてよ! それに学園に言えば何かしら対応はしてくれるだろうけど、彼がその程度で引き下がるとは思えないしね……」
「確かにあんなとんでもない魔法を人に向けて放つぐらい怒ってたしな…… ニア、お前本当に何をしたんだ?」
それは僕に掛かっている人を怒らせるデバフのせいだ。
僕は悪くない。いや、ちょっとだけ考えなしだったかもしれないけど、それだけで人を殺そうとする方が悪いだろう。
対処すると言ってもはあの凶悪な魔法を持つローレンスに対して、どうするかということだが、そこは安心してほしい。
正面から衝突すればトマトのようにペチャっと潰されてしまうところではあるが、闇に紛れて動くのはそれなりに得意なのだ。
前世では妹の部屋に侵入しては、隠しカメラを設置したり、クローゼットに潜んだりしたものだ。
また、妹に近づく輩を付け回して、恥ずかしい写真をSNSでばら撒き、社会的に抹殺したという実績だってある。
……懐かしいなぁ…………
というわけで、ローレンスを少し懲らしめてやろうと思う。
命を奪おうとは思ってはいないが、僕とティーナに構っていられないようにしてあげる必要があるのだ。
「さあ、ティーナ! ハッピーミークラブの最初の仕事だ!」
「……はっぴ……何ですの……?」
ハッピーミークラブとは、たった今僕が考えた組織名のことだ。
クリスティーナの財源を湯水の如く使うためには、組織という形にした方が財布の紐も緩くなるのではないかと考えたのだ。
ちょっと独善的過ぎる組織名かもしれないが、幸せのお裾分けみたいに言ったりするだろう?
誰かがHappyになれば、そのおこぼれで自然と皆もHappyになる。世の中はそういう風に出来ているのだ。
だから、ここは僕が率先してHappyになろうというわけだ。
最終的には皆Happyになるのだから、最初の一人目かそうでないかの違いだけだ。
「ハッピーミークラブだよ! 皆が幸せになるための組織さ! ……会員ナンバー005番クリスティーナ・ハーストよ!」
「え!?……えっ!?」
「005番ってきっと僕たちもよくわからない組織に入れられているってことだよね……」
「ニア、ユーリ、シア、俺、クリスティーナって感じか……?」
「ダンは会員ではない!!」
ダンの奴は訳の分からない集団に勝手に加入されて、やれやれ顔をしていたので、メンバーから除外しておいた。あと一人はアネットにしよう。
「な、なんでだよ!!俺だけ仲間外れかよ!!」
「……仕方ないなぁ……じゃあダンはお茶汲みの人ね」
「なんで!俺も会員にしてくれよ!!」
なんだよ……注文が多い奴だな……もう無視しちゃお。
「改めてティーナよろしくね! 君はこの組織の中核を担っているといっても過言ではないんだ!!」
「え!? そ、そうだったんですの……!? ……ワタクシ、全力で頑張りますわ!!」
「えぇ……? クリスティーナさん、どうしてそんなにやる気なんだろう……?」
僕にもよくわからないが、とてもやる気になってくれた。
きっと僕の熱意が伝わったに違いない。嬉しいな……。
僕の意見はないがしろにされることが多いのだが、ティーナはとても好意的だ。
うーん、こんなに素直なら、なんだか妹にしても良い気がしてきたな……。
見た目だけで高飛車なお嬢様と決めつけていたが、よく見ると妹のような幼い顔をしているし、要検討ってところだ。
僕は幼い子が好きなロリコンではないということは付け加えておく。念のためだ。
「じゃあ会員番号005番クリスティーナ・ハーストよ!」
「ティーナですわ! お友だちなのでティーナと呼んでくださいましっ!!」
「ん、ティーナよ!」
「はい!ですわ!」
「君に最初の任務を与える!」
「なんでも言ってくださいまし!」
「僕と買い物に行こうか!」
「へ……?」
予想外の答えだったのか、ティーナはキョトンと首を傾げるのだった。
***
入学式の翌日、僕とティーナは王都の街に来ていた。
幸い今日は日曜日だったので、授業初日から休むことはしなくて済んだ。
この世界の暦は地球とほとんど同じらしく、一週間は七日で一年は365日という感じだ。
「お、お出かけですわ!! お、お友だちと一緒に…… 初めてですわ!!」
ティーナもお出かけということで、非常に喜んでいるようだった。
良かった良かった。
しかし、その無邪気な様子は本当に可愛いらしい……。じゅるり……。
本日はお出かけということで、僕たちはおめかしをしてきているのだ。
全身をすっぽりと覆う黒いローブに身を包んでいる。
日付が変わり、午前零時の深夜の街に溶け込めるコーデだ。
ちょっとだけ普通のお出かけとは違うが、ティーナはとても喜んでいるので、僕も嬉しく思う。
「さあ、行こうか。 お買い物!」
「はい!張り切って行きましょう! ニアさん!」
というわけで、僕たちは薄暗い裏路地に来ていた。
後ろ暗い品を売っているのは裏路地と決まっている。
か弱い僕たちがこんな場所に迷い込んでしまえば二度と出られないだろう。
しかし、僕は前世で様々な修羅場を潜り抜けてきたので、それなりに作法も分かっているつもりなのだ。
裏路地には深夜というのにそれなりに人が集まっていた。
彼らには絶対に舐められてはいけない。弱みを見せた瞬間に襲い掛かってくるのは確実だ。
「ニアさん……なんだか怖いですわ……」
「大丈夫だよ。 怖い雰囲気を醸し出すことが彼らの仕事なんだよ」
「そ、そうなんですの……?」
「そうだよ。 とりあえずここは僕に任せてよ。 ティーナは堂々としていればいいよ」
「わ、わかりましたわ! …………堂々……!」
そう言って胸を張るティーナ。
ローブ越しにも分かるほどの膨らみである。
けしからん……。妹でもないくせに、僕の紳士度を上昇させるとは中々やるではないか。
再三に渡り説明をしておくが、紳士度というのは僕の助平心を数値化したものである。
僕はその紳士度を高ぶらせる双丘を凝視する。
「…………なんですの……?」
「いや、なんでもないよ」
「そうですの……?」
なんでもないと言いつつも磁石でも付いているのではないかと疑うほどに目を離せないでいる僕を見て、ティーナは不思議そうに首を傾げる。
しかし、いつまでもそんなことをしていると、裏路地のごろつきに目を付けられかねないので、断腸の思いで視線を前に戻す。
裏路地を見回して、後ろ暗い品を扱っているであろう商人風の男に声をかける。
「いらっしゃい……」
陰気な顔をした男が、僕たちを舐めるように品定めしている。
「売っているものを見せてもらえない?」
「金は?」
「もちろんあるよ。 良い品にはそれに見合う対価が必要だからね。 まあ、金を払うかは君の商品次第だよ。 ふふふ……」
ローブで隠れて表情は見えていないはずだが、一応不敵に笑っておく。
「……ふん。何がほしい?」
「探してるのは鍵開けに使う道具かな。 後はカメラと……他にも欲しいものがあるから商品を見ながら決めたいんだけど……」
「鍵開けねぇ…… 見たところ子どものようだが、魔法のように誰でも鍵を開けれると想像しているのならそれは間違いだぞ……?」
「もちろんわかっているよ。 ちなみにおいくら?」
「二万シスタだ」
二万シスタとは日本円にして、何円ぐらいかは知らない。
相場の調査など当然のようにしていないし、そもそも僕はお金を扱ったことがないのだ。
「ティーナお金あるよね?」
「こんなものどうするつもりですの……?」
「まあまあ、後で説明するよ」
「他にもあるかな?」
他にも使えそうな品を物色する。
「じゃあこれと、これと……これも欲しいな 全部でおいくらかな?」
「二十万シスタだ」
「うーん、じゃあ三十万でどうかな?」
「…………どういうつもりだ……?」
「いやぁ、今後もお世話になるかもしれないからさ…… それに……ボディガードの人も大変だろうからね……」
これからも利用するつもりだからというのもあるが、一番の理由はこういった手合いには、自分に利益をもたらす存在であることを印象付けることが重要なのである。
奪い取って一回限りの小金を稼ぐより、長期的に絞り取った方が得だと思わせるのである。
相手も商売なのだ。取引を行うことが自分たちにとって有益であれば安易に危害を加えてくることはない。
また、後ろ暗い商売をする輩は、自分の用心棒を他の客に紛れさせていたりするため、そういったことも分かっているぞと牽制しとくことも忘れない。
「ふん。わかってんじゃねぇか…… おい、てめぇらこちらはお得意さんだ。手ぇ出すんじゃねぇぞ?」
すると、路地裏にいた他のごろつきが一斉に返事をする。
どうやら全員がグルだったみたいだ。
流石に予想していなかったよ。え?
今更ではあるが、僕たちはなんだか危機的状況にいたようだ。
「また来いよ、お客様……ひっひっひ……」
ニィっと黄ばんだ歯を見せつけるように凶悪な笑みを浮かべる。
あ、青のり付いてる……
その笑顔は僕の心胆を寒からしめるには十分であったが、ここで怯んでは舐められて襲い掛かられるかもしれないので、不敵に笑うことにする。
「ふふふふふ……」
少し危険な橋を渡ったような気がするが、これでローレンスを懲らしめる準備はできたと言って良いだろう。
しかし、ローレンスなどにそこまで時間をかけるつもりはない。
僕には復讐しなければならない人間が別にいるのだ。
そのついでにローレンスに嫌な思いをしてもらうだけなのである。
サクッと解決してしまおう。
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