妹転生!~妹への愛が止まらないのに、何故か僕には妹がいない~

百円玉

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三章

第47話 悪鬼の行く先

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「お兄ちゃん…… 早く起きないと授業に遅れるよ?」

 目を覚ますとユーリが隣で横になり、ジッとこちらを見つめている。
 例のごとく僕のベッドに潜り込んでいたのだ。
 今まではベッドに潜り込むことについて、同居人がいなくて寂しいという大義名分を掲げていたのだが、現在は入学式も終わり、流石に同居人も寮の部屋に来ているはずなのだ。

「ユーリ……おはよう。 今日から寮で寝ることにしたんじゃないの?」

「入学式の日にあんなことがあったんだからお兄ちゃんから目を離さないようにしないとって思って…… 同室の子にはちゃんと言ってきたから心配しなくても大丈夫だよ?」

 弟に対して紳士的行為を遂行してしまう前にベッドから出ることにする。
 流石に女の子にしか見えない弟と同衾している状況というのは体に悪い。
 しかし、上昇した紳士度を解消するために紳士的行為を行なってしまってはもう後戻りはできない。
 懐いてくれているのは嬉しいところではあるが、できれば弟として可愛がらせてほしい。

「明日からは来なくて良いからね」

「……え!?駄目だよそんなの!」

「だめじゃない! 僕が安心して寝られなくなるからね」

 取り付く島もないと思ったのか、ユーリは口をとんがらせている。
 そんな顔をしても無駄だ。僕の心の平穏のためなのだ。

 大いびきをかいているダンを叩き起こし、準備を済ませた僕たちは寮を出ようとした。

 その瞬間――


 ドカーン!という空気を震わせる爆発音が鳴り響く。

「な、なんだってんだ!」

「何が起きたの!?」

 僕たちは寮の部屋を飛び出し、爆発音が聞こえた方へ走る。

 すると、食堂の建物付近に生徒たちが群がっているのを見つける。
 食堂は見るも無残な瓦礫へと姿を変えていた。
 どうやら爆心地は食堂だったようだ。

 見ると、食堂だった瓦礫の前には呆然と立ち尽くすローレンスの姿があった。
 何やら青い顔をして汗をダラダラと流している。

 そんなローレンスから少し距離を取るようにして、生徒たちがその様子を見てヒソヒソと話をしている。

「あ、あれって三年のゲルシュタッド様じゃないか……?」

「ま、まさか……ゲルシュタッド様が――」

「ば、ばか! 滅多なこと言うな……! 相手はお貴族様だぞ……!」

「で、でもよ…… 俺が来たときにはあの貴族様が一人で立っていたぞ……?」

「そ、それに……あの人って炎の魔法が得意だったような……」

 食堂が爆発し、生徒が集まってきたときにはローレンスは既にこの場所にいたらしい。
 そんな生徒たちの声が耳に入ったのかローレンスは慌てたように声を上げる。

「ち、ちが……! わ、私ではない! 私は……何も……」

「なんの騒ぎだ! …………なっ!? しょ、食堂が……!どうなっている!誰か説明を……!」

 男性の教員が慌てて駆け付け、状況の説明を求める。
 すると、野次馬の中から誰の発言かは定かではないが、声が聞こえてきた。

「そこにいるゲルシュタッド様が爆発させました!」

「……なっ!?だ、誰だ!? わ、私ではない!! 今発言した者はどいつだ!無礼だぞ!!」

「あの貴族の人が食堂の前に一人で立っていたのを見ました!」

「お、俺も見たぜ!」

「いつも威張り腐って気に入らなかったんだよ! あいつが犯人に決まってる!」

「わ、私、あの人にお尻触られました!あの人が犯人です!」

「私もあの犯人に胸の辺りをジーッと見られて不快でした!」

 皆相当ローレンスに恨みがあったのかここぞとばかりに犯人に仕立て上げられている。
 中にはどさくさに紛れて別件と思われる告発も行われている。
 うーん。こんな光景を見ると普段の行いは注意するべきだと思い知らされるね。
 貴族だからといって好き勝手していると、いつか足元を掬われてしまうのだ。

「君たち少し落ち着きなさい!! ……ゲルシュタッドというのは君か?」

「わ、私はやっていない! こいつらが適当なこと言っているだけだ! 第一、私がこんなことをする理由もない!!」

「言い訳するな!」

「潔く罪を認めろ!」

 ローレンスの発言を聞いた生徒たちがやんややんやと野次を飛ばす。
 あ、ローレンスの取り巻きも一緒になって野次飛ばしてる……
 あいつらもあいつらで取り巻きでいることにストレスが溜まっていたのだろう。
 そうだ、僕もどうせなら文句を言っておこう。
 殺されかけたのだから、そのぐらいの権利はあるはずだ。

 反省しろー!くたばれぇー!地に還れぇー!

 僕たちが野次を飛ばす中、収拾がつかないと判断した教師が声を張り上げる。

「落ち着けと言っている!! とにかく話を聞かせてもらうぞ!ゲルシュタッド!」

「ち、違う!冤罪だ! 私は嵌められたんだ!! ここに来るように手紙をもらって……」

 ポケットに手を突っ込んだゲルシュタッドがくしゃくしゃに丸められた紙を取り出す。

「こ、これを見てくれ…… あ、あれ?何も書いて……ない……」

「――いいから来い!」

「いや、確かに書いてあったのだ!本当だ!信じてくれ!」

 そうしてローレンスは教師に引きずられていったのだった。

「これって…… 一体どうなってるの……?」

 ユーリが呆然とローレンスが連行されていく様子を眺めてポツリと呟く。

「飯、どうすんだよ……」

 ダンは自分の補給源が無くなってしまったことに絶望的な表情を浮かべている。

「ふふふ…… これでこの学園は正しい形を取り戻したのだ……ふふふふふ……」

 僕はとても清々しい気持ちだった。
 何故なら、この爆破は僕が引き起こしたものなのだから。

 先日裏路地で買ってきた時限式の爆発の魔法石を、前日の夜中に食堂へ侵入し、しこたま仕掛けてきたのだ。

 爆発の魔法石とはいうが、魔法を込めるのに失敗した粗悪品のことだ。
 本来、失敗した魔法石は魔法が不発になるだけなので、破棄してしまうことが普通なのだが、込められた魔力そのものは残っており、それを爆発のエネルギーに再利用した代物なのだ。

 そして、授業が始まる前に爆発するように時限爆弾をセットしておき、ローレンスに手紙を送った。
 誰にも邪魔をされずに話をしたいから、授業が始まる前に食堂の裏手に来てくれ、みたいな感じだ。
 あの時の激昂した様子から僕を始末するために意気揚々と現れると踏んだのだ。

 ちなみに手紙の内容が消えていたのは、これも裏路地で購入した時間経過で文字が消えるペンというイタズラグッズを使ったためだ。できるだけ証拠は残したくなかったのだ。

 しかし、不安要素もあった。
 時限式というが正確な時間に起動できるものではないので、使いどころが難しいのだが今回は上手くいったようだ。
 ローレンスを誘導できなかったときのために、念のため彼の部屋に侵入し、私物をたくさん拝借して、一部を現場付近に置いていたのだが無駄になってしまった。
 まあ、まだいっぱいあるし、置いたものはそのままにしておこう。
 回収しているところを見られて怪しまれても困るしね。





 そして爆破事件の後、ローレンスは如何なる手を使ったのか、風の噂で厳重注意で済んだということを聞いた。
 学園中が食堂で爆破が起きたという話題で持ち切りだったので、情報を得るのは難しくはなかった。学園を練り歩いているだけで、自然と耳に入ってくるのだ。

 学園中がローレンスの動向を注視している中、僕に危険が及ぶ可能性は少ないだろうが、念には念を入れて、その後、二、三度ほど校内を爆破させ、その現場全てにローレンスの私物を配置しておくという細工をしておいた。
 立て続けに起きた爆破事件に必ずローレンスの私物が現場付近に落ちていることから、教師連中による監視の目が厳しくなり、すっかりおとなしくなってしまった。
 再びいつ爆破が起き、自分に疑いが掛かるかわからない日々をビクビクと過ごしている彼の様子を見て、僕はほくそ笑むのだった。

 そんな状態で僕に構っている余裕などあるはずもなく、僕の学園生活に平穏が訪れたのであった。

 入学初日からとんでもない事件に巻き込まれたものだが、僕の活動に必要な資金源も手に入れることができたので良しとしようと思う。
 最近目的を忘れがちだが、僕の活動とはもちろん妹ハーレムを築くことである。
 アーサーのやつに復讐するのはその過程で必要なことだからやるだけだ。
 復讐のために確保した資金源でないことは言っておこう。
 以前言ってたことと違う?そんなのは知らない。僕は過去を顧みないタチなのだ。
 目が前向きに付いているのは前へ進むためなのだと、偉い人も言っていたではないか。

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