妹転生!~妹への愛が止まらないのに、何故か僕には妹がいない~

百円玉

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四章

第48話 正義を執行する方法

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 学園に来てから一か月ほど経過した。

 授業には出てはいるが、アーサーへの復讐方法を考えるのに必死で、碌に話を聞いていなかったりする。僕は勉強することがちょっと苦手なのだ。
 それに僕が学園に来た目的は勉強することではなく、妹を探しに来ただけなのだから、くそ真面目に勉強をする必要はないのである。
 しかし、ダンに知能で負けるのは癪なので、少しは勉強もしようかなとも思っている。
 まあ僕にはユーリという優秀な弟がいるので、きっと大丈夫だろう。

 授業がないときはアーサーに張り付いて、行動を監視していた。
 裏路地で購入したカメラを片手に決定的瞬間を収め、彼の弱みを握ることに躍起になっていた。

 地球のカメラとは仕組みは違うのだが、この世界にはカメラが存在していたのだ。
 映像を記録するという鉱石に魔法でなんやかんやしているのだとか。
 詳しくはよくわからないが、地球のデジカメと同じように映像と写真を撮影できるらしい。

 あまり、特殊な物を使用すると、それで足が付いてしまうのではないかと不安に思ったのだが、ティーナ曰く一般的なものとのことだ。
 それなりに高価なものではあるので、皆が持っているわけではないが、写真屋のような商売もあるらしく、庶民にも馴染みがあるものだそうだ。
 ちなみに裏路地で購入したカメラは性能は並みだが、かなり高値を吹っ掛けられたと後から聞いた。
 ちくしょう……あの歯黄ばみ狸オヤジめ……!

 せっかく高い金を出して買ったのだから、存分に使い倒さないと損である。

 アーサーの野郎は品行方正な正義漢という印象であり、後ろ暗い行為をすることなく、真面目に生活しているように見える。
 しかし、そんな人間は存在しないのだ。
 誰しも他人に言えぬ秘密を持っているということは確実なのだ。
 この品行方正を絵に描いたような僕にだって秘密の一つや二つや三つぐらいは余裕であるのだ。アーサーなど多分百個ぐらいあるに違いない。
 秘密というものは太古の昔から暴かれるものと決まっている。
 しかし、アーサーの奴も必死なのだろう。中々その尻尾を掴むことができないでいた。

 そんな状況もあり、フランちゃんの写真だけが増えていくばかりなのだ。

 実にけしからんな……。
 アーサーの秘密を暴く前にフランちゃんの秘め事をこのカメラに収めてしまうかもしれない……。
 うん、それも良いね……。

 僕の中でムクムクと紳士度が高まっていくが、しかしそうは言ってもアーサーの野郎が邪魔だ。
 このままフランちゃんの撮影会をしていても良いのだが、常にその側にはアーサーの姿が映り込んでくるのである。実に邪魔くさい。
 何かの間違いで奴のすかした顔面にデスローレンスブレイズが飛んでこないだろうか。

 授業が終わったことにも気付かずに僕が物思いに耽っていると、隣に座っていたティーナから声がかかる。

「ニアさん…… ちょっとよろしいですの……?」

「どうしたのかな?ティーナよ。 僕は今正義を執行するための策を考えているのだけど……」

 ティーナが遠慮がちにそんなことを言うので、尊大に対応する。
 本当はただアーサーへの復讐方法を検討していただけなのだが、まあアーサーがこの世から姿を消せば、間違いなく僕の心の平穏は保たれるので間違ってはいないはずだ。

「申し訳ありませんわ! ワタクシもハッピーミークラブ幸せに溢れる世界を目指す団体の一員として常に世の平和について考えるべきでしたわ……!」

ハッピーミークラブ僕だけの幸せを追求する者たちの会員ナンバー005番ティーナ君、僕に何か用?」

「そうでしたわ……! そ、その……ニアさんはもうパーティを組んでいまして……?」

「パーティ……?」

「二か月後の試験のことですわ!」

「試験……?」

「お前、先生の話何も聞いてないのかよ……?」

 隣のダンが呆れたように言ってくる顔が憎たらしくて、頭に血が上る。

「なんだとう……!?僕を馬鹿にするな!!」

 ブンブンと拳を振るうが当たらないので、不貞腐れたように諦める……と見せかけて、奴の脳天に拳を振り下ろすが、易々と躱された……。ちくしょうが!!

 こいつの身体能力は最近メキメキと上がってきており、僕の渾身の拳が当たらなくなってきたのだ。
 手段を選ばなければ、こいつを葬ることなんか簡単だが、こういった場合に僕のフラストレーションを解消できないと、いずれストレスで五臓六腑に穴が開いてしまう。くそう……どうにかしないと……。

「お友だち同士で喧嘩はダメですわ! ……ニアさん、ワタクシの説明が不足していましたわ! 二か月後にダンジョンの魔物を討伐するという試験のためにパーティを組む必要がありますの!」

 ティーナが焦ったように僕を諫める。

 僕だって聞いていなかったわけじゃない。本当だ。
 少し思い出すのに時間が掛かっただけなのに、ダンの奴……あんな風に言ってくるなんて、僕の粛清対象リストに追加しておこう。……あ、もう追加されてる……。

 まあ、一応ティーナに詳しい話を聞いておこうと思う。

 僕たちに与えられた試験は、二か月後に王都近郊のダンジョンにて、指定された魔物を討伐してくるというものだ。指定の魔物というのは危険度Dに分類される魔物だ。

 危険度はEからSまであり、危険度Eの魔物は、小型の魔物の中でも更に所有魔力が低い、ネズミみたいなやつとか、ウサギみたいなやつとかの戦闘経験に乏しい者でも倒せる魔物のことだ。

 意識の高い生徒は既にパーティを作り、精力的にダンジョンへ潜っているとのことだ。

 確かに監視中のアーサーとフランちゃんも例に漏れず狂ったように毎日ダンジョンに赴いていたのは、そういう理由があったからみたいだ。

 パーティは最低でも三人で組むことを学園側は推奨しているのだとか。
 アーサーも同じクラスの女の子に声をかけてパーティとしていた。
 奴の頭はきっと色欲に塗れているに違いない。
 入試トップの成績で合格したことを笠に着て自分のハーレムを築いたのだ。
 どれだけ面の皮が厚いのか。謙虚で慎ましい僕からしたら信じられない。

「……それで、そのワタクシたちは……お、お友だちですわよね……?」

「そうだねぇ」

「……っ! そ、そうですわよね! ニアさん……ワタクシとパーティを組みませんか!?」

「もちろん! 僕たちは同じ志を持つ仲間だからね!」

「俺ももちろんいいぜ!」

 お前には聞いていない。口を挟むな息するな。くたばれ死ね。

 まあでも、肉盾ぐらいにはなるかもしれないな。
 ……いやダメだ。こいつの身体能力を考慮すれば、盾であるはずのこいつは敵の攻撃に回避行動を取るだろう。
 その瞬間、敵の攻撃により僕の体はゴム毬のように跳ね飛ぶことになる。
 盾が回避行動とは何の冗談だ。

「ではユーリさんも誘って、今度ダンジョンに行ってみませんか!?」

 ティーナは嬉しそうにニコニコとしている。
 ちなみにパーティは同じクラスでなくても良いらしい。

 ダンジョンの出入りは冒険者か、学園の生徒であればパーティを組めば入れるらしい。
 以前アーサーの監視のためにダンジョンに踏み入れようとしたのだが、係の人に止められて、そんなことを言われた。
 じゃあ、冒険者に登録をすると言ったのだが、15歳以上じゃないと登録できないと門前払いされたのだ。

 ダンジョンというのは人を始末するのに最適な場所であると僕のバイブルであるライトノベルでも書いてあった。
 というのもダンジョンに放置された死体は、一定時間でダンジョンの養分にされるので、手掛かりもなくなってしまい調査ができないという理由らしい。
 いわゆる治外法権というやつだ。
 なので、ダンジョンに入るのなら、そこで起きたことについては全て自己責任となっている。
 そんな場所に学生を放り込むというカリキュラムを組んでいる学園はちょっと頭がおかしいのかもしれない。
 まあ、なんか学園長もおかしそうな人だったし、それも仕方のないことなのかもしれない。

 よく考えると、アーサーを葬るには丁度良い場所かもしれない。
 下見を兼ねて一度行ってみるのも良いだろう。

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