48 / 77
四章
第48話 正義を執行する方法
しおりを挟む学園に来てから一か月ほど経過した。
授業には出てはいるが、アーサーへの復讐方法を考えるのに必死で、碌に話を聞いていなかったりする。僕は勉強することがちょっと苦手なのだ。
それに僕が学園に来た目的は勉強することではなく、妹を探しに来ただけなのだから、くそ真面目に勉強をする必要はないのである。
しかし、ダンに知能で負けるのは癪なので、少しは勉強もしようかなとも思っている。
まあ僕にはユーリという優秀な弟がいるので、きっと大丈夫だろう。
授業がないときはアーサーに張り付いて、行動を監視していた。
裏路地で購入したカメラを片手に決定的瞬間を収め、彼の弱みを握ることに躍起になっていた。
地球のカメラとは仕組みは違うのだが、この世界にはカメラが存在していたのだ。
映像を記録するという鉱石に魔法でなんやかんやしているのだとか。
詳しくはよくわからないが、地球のデジカメと同じように映像と写真を撮影できるらしい。
あまり、特殊な物を使用すると、それで足が付いてしまうのではないかと不安に思ったのだが、ティーナ曰く一般的なものとのことだ。
それなりに高価なものではあるので、皆が持っているわけではないが、写真屋のような商売もあるらしく、庶民にも馴染みがあるものだそうだ。
ちなみに裏路地で購入したカメラは性能は並みだが、かなり高値を吹っ掛けられたと後から聞いた。
ちくしょう……あの歯黄ばみ狸オヤジめ……!
せっかく高い金を出して買ったのだから、存分に使い倒さないと損である。
アーサーの野郎は品行方正な正義漢という印象であり、後ろ暗い行為をすることなく、真面目に生活しているように見える。
しかし、そんな人間は存在しないのだ。
誰しも他人に言えぬ秘密を持っているということは確実なのだ。
この品行方正を絵に描いたような僕にだって秘密の一つや二つや三つぐらいは余裕であるのだ。アーサーなど多分百個ぐらいあるに違いない。
秘密というものは太古の昔から暴かれるものと決まっている。
しかし、アーサーの奴も必死なのだろう。中々その尻尾を掴むことができないでいた。
そんな状況もあり、フランちゃんの写真だけが増えていくばかりなのだ。
実にけしからんな……。
アーサーの秘密を暴く前にフランちゃんの秘め事をこのカメラに収めてしまうかもしれない……。
うん、それも良いね……。
僕の中でムクムクと紳士度が高まっていくが、しかしそうは言ってもアーサーの野郎が邪魔だ。
このままフランちゃんの撮影会をしていても良いのだが、常にその側にはアーサーの姿が映り込んでくるのである。実に邪魔くさい。
何かの間違いで奴のすかした顔面にデスローレンスブレイズが飛んでこないだろうか。
授業が終わったことにも気付かずに僕が物思いに耽っていると、隣に座っていたティーナから声がかかる。
「ニアさん…… ちょっとよろしいですの……?」
「どうしたのかな?ティーナよ。 僕は今正義を執行するための策を考えているのだけど……」
ティーナが遠慮がちにそんなことを言うので、尊大に対応する。
本当はただアーサーへの復讐方法を検討していただけなのだが、まあアーサーがこの世から姿を消せば、間違いなく僕の心の平穏は保たれるので間違ってはいないはずだ。
「申し訳ありませんわ! ワタクシもハッピーミークラブの一員として常に世の平和について考えるべきでしたわ……!」
「ハッピーミークラブの会員ナンバー005番ティーナ君、僕に何か用?」
「そうでしたわ……! そ、その……ニアさんはもうパーティを組んでいまして……?」
「パーティ……?」
「二か月後の試験のことですわ!」
「試験……?」
「お前、先生の話何も聞いてないのかよ……?」
隣のダンが呆れたように言ってくる顔が憎たらしくて、頭に血が上る。
「なんだとう……!?僕を馬鹿にするな!!」
ブンブンと拳を振るうが当たらないので、不貞腐れたように諦める……と見せかけて、奴の脳天に拳を振り下ろすが、易々と躱された……。ちくしょうが!!
こいつの身体能力は最近メキメキと上がってきており、僕の渾身の拳が当たらなくなってきたのだ。
手段を選ばなければ、こいつを葬ることなんか簡単だが、こういった場合に僕のフラストレーションを解消できないと、いずれストレスで五臓六腑に穴が開いてしまう。くそう……どうにかしないと……。
「お友だち同士で喧嘩はダメですわ! ……ニアさん、ワタクシの説明が不足していましたわ! 二か月後にダンジョンの魔物を討伐するという試験のためにパーティを組む必要がありますの!」
ティーナが焦ったように僕を諫める。
僕だって聞いていなかったわけじゃない。本当だ。
少し思い出すのに時間が掛かっただけなのに、ダンの奴……あんな風に言ってくるなんて、僕の粛清対象リストに追加しておこう。……あ、もう追加されてる……。
まあ、一応ティーナに詳しい話を聞いておこうと思う。
僕たちに与えられた試験は、二か月後に王都近郊のダンジョンにて、指定された魔物を討伐してくるというものだ。指定の魔物というのは危険度Dに分類される魔物だ。
危険度はEからSまであり、危険度Eの魔物は、小型の魔物の中でも更に所有魔力が低い、ネズミみたいなやつとか、ウサギみたいなやつとかの戦闘経験に乏しい者でも倒せる魔物のことだ。
意識の高い生徒は既にパーティを作り、精力的にダンジョンへ潜っているとのことだ。
確かに監視中のアーサーとフランちゃんも例に漏れず狂ったように毎日ダンジョンに赴いていたのは、そういう理由があったからみたいだ。
パーティは最低でも三人で組むことを学園側は推奨しているのだとか。
アーサーも同じクラスの女の子に声をかけてパーティとしていた。
奴の頭はきっと色欲に塗れているに違いない。
入試トップの成績で合格したことを笠に着て自分のハーレムを築いたのだ。
どれだけ面の皮が厚いのか。謙虚で慎ましい僕からしたら信じられない。
「……それで、そのワタクシたちは……お、お友だちですわよね……?」
「そうだねぇ」
「……っ! そ、そうですわよね! ニアさん……ワタクシとパーティを組みませんか!?」
「もちろん! 僕たちは同じ志を持つ仲間だからね!」
「俺ももちろんいいぜ!」
お前には聞いていない。口を挟むな息するな。くたばれ死ね。
まあでも、肉盾ぐらいにはなるかもしれないな。
……いやダメだ。こいつの身体能力を考慮すれば、盾であるはずのこいつは敵の攻撃に回避行動を取るだろう。
その瞬間、敵の攻撃により僕の体はゴム毬のように跳ね飛ぶことになる。
盾が回避行動とは何の冗談だ。
「ではユーリさんも誘って、今度ダンジョンに行ってみませんか!?」
ティーナは嬉しそうにニコニコとしている。
ちなみにパーティは同じクラスでなくても良いらしい。
ダンジョンの出入りは冒険者か、学園の生徒であればパーティを組めば入れるらしい。
以前アーサーの監視のためにダンジョンに踏み入れようとしたのだが、係の人に止められて、そんなことを言われた。
じゃあ、冒険者に登録をすると言ったのだが、15歳以上じゃないと登録できないと門前払いされたのだ。
ダンジョンというのは人を始末するのに最適な場所であると僕のバイブルであるライトノベルでも書いてあった。
というのもダンジョンに放置された死体は、一定時間でダンジョンの養分にされるので、手掛かりもなくなってしまい調査ができないという理由らしい。
いわゆる治外法権というやつだ。
なので、ダンジョンに入るのなら、そこで起きたことについては全て自己責任となっている。
そんな場所に学生を放り込むというカリキュラムを組んでいる学園はちょっと頭がおかしいのかもしれない。
まあ、なんか学園長もおかしそうな人だったし、それも仕方のないことなのかもしれない。
よく考えると、アーサーを葬るには丁度良い場所かもしれない。
下見を兼ねて一度行ってみるのも良いだろう。
0
あなたにおすすめの小説
没落ルートの悪役貴族に転生した俺が【鑑定】と【人心掌握】のWスキルで順風満帆な勝ち組ハーレムルートを歩むまで
六志麻あさ
ファンタジー
才能Sランクの逸材たちよ、俺のもとに集え――。
乙女ゲーム『花乙女の誓約』の悪役令息ディオンに転生した俺。
ゲーム内では必ず没落する運命のディオンだが、俺はゲーム知識に加え二つのスキル【鑑定】と【人心掌握】を駆使して領地改革に乗り出す。
有能な人材を発掘・登用し、ヒロインたちとの絆を深めてハーレムを築きつつ領主としても有能ムーブを連発して、領地をみるみる発展させていく。
前世ではロクな思い出がない俺だけど、これからは全てが報われる勝ち組人生が待っている――。
異世界転生おじさんは最強とハーレムを極める
自ら
ファンタジー
定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。
その「お詫び」として、健一は剣と魔法の異世界へと30代後半の肉体で転生することになる。チート能力の選択を迫られ、彼はあらゆる経験から無限に成長できる**【無限成長(アンリミテッド・グロース)】**を選び取る。
異世界で早速遭遇したゴブリンを一撃で倒し、チート能力を実感した健一は、くたびれた人生を捨て、最強のセカンドライフを謳歌することを決意する。
定年間際のおじさんが、女神の気まぐれチートで異世界最強への道を歩み始める、転生ファンタジーの開幕。
悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業
ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。
おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう
お餅ミトコンドリア
ファンタジー
パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。
だが、全くの無名。
彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。
若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。
弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。
独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。
が、ある日。
「お久しぶりです、師匠!」
絶世の美少女が家を訪れた。
彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。
「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」
精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。
「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」
これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。
(※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。
もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです!
何卒宜しくお願いいたします!)
転生先は上位貴族で土属性のスキルを手に入れ雑魚扱いだったものの職業は最強だった英雄異世界転生譚
熊虎屋
ファンタジー
現世で一度死んでしまったバスケットボール最強中学生の主人公「神崎 凪」は異世界転生をして上位貴族となったが魔法が土属性というハズレ属性に。
しかし職業は最強!?
自分なりの生活を楽しもうとするがいつの間にか世界の英雄に!?
ハズレ属性と最強の職業で英雄となった異世界転生譚。
最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。
無限に進化を続けて最強に至る
お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。
※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。
改稿したので、しばらくしたら消します
出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜
シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。
起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。
その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。
絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。
役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる