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四章
第62話 殺害して復活を繰り返す永久ループ
しおりを挟むミザリーが遺跡の瓦礫をひっくり返すのを見ながら僕は考えていた。
王都を囲む壁を壊したり、夜中に人気のない遺跡に連れてきたり、だんだんと彼女が怪しい人物に見えてきた。
ダンジョンでリッチさんを虐待していたので、最初から怪しさは薄々と感じていたのだが、ちょっと仲良くなれるかもしれないという淡い期待を抱き、安易に関わりを持ってしまったのは間違いだったかもしれない。
そうは言っても急に態度を変えるのもミザリーが可愛そうなので、今のところは様子見をしておこう。
「ここで何するつもり……?」
「それは例の計画を進めるに決まっているっす!」
彼女はまだ復讐を諦めていないということなのだろう。
「……魔物とかいないんだよね?」
「今は自分が使わせてもらってるから安心して良いっす!」
こんな場所に住まなければならないほど貧しいのだろうか。とても不憫だなと思った。
しかし、残念ながら僕はお金を持っていないので、助けてあげることはできない。
まあ先ほどの鍛冶屋で拝借した金目の物はあるが、それは渡すつもりはない。
これは鍛冶屋の親父の物であり、僕の物ではないからだ。
他人の所有物を勝手に譲渡してしまうことは人道に悖るのだ。
というかミザリーは学園の生徒だと思っていたのだが、違ったのだろうか。
生徒なら寮が割り当てられているはずなので、こんな場所で隠れるように住む必要はないはずである。
まあ、きっと何か深い事情があるのだろう。あまり他人の詮索をするのは良くないな。
「ミザリーって貧乏なの……?」
詮索をするのは良くないが、気になるものは仕方ないだろう。
かくいう僕も常に素寒貧なので、それを伝えれば彼女もきっと話しやすくなるはずだ。ここにも仲間がいるよと、優しく寄り添ってあげるのだ。
「失礼っすね! お金はそこそこ持ってるっす!」
そこそこ持っているらしい。
だとしたら、僕がお金を持っていないことは言わないでおこう。
僕はお金がないと見下されるのは許せないのだ。
しかし、こんな場所に住んでいる少女がお金を持っていて、学園の寮で優雅な暮らしをしている僕がお金を持っていないというのは、ちょっとおかしくないだろうか。
「さ、入るっす!」
「なんだか入りたくないんだけど……」
捕らえられたときのことを思い出して身震いする。
あの時は上手く脱出ができたが、運が悪ければ死んでしまってもおかしくはなかったのだ。
「いいから早く行くっす!」
できればトラウマを刺激されるので入りたくないのだが、そんなことお構いなしに僕の背中をグイグイと押してくる。
必死の抵抗をするが、思ったよりもミザリーが力強くて全く抵抗できなかった。
僕の力はこんな小柄な少女にも負けてしまうのか……?
その事実にショックを受けてしまう。
僕たちは遺跡の中に入り、そこらに転がっていた椅子を拾って腰を落ち着ける。
「ふぅ……一先ず安心っすね……」
「ねぇ……もう帰りたいんだけど……」
「……あんなことがあったのに、堂々とその辺をうろついて騎士団に捕まったらどうするっすか!」
リッチさんを殺害したのは僕じゃないと言っているのに、ミザリーはまだ僕に疑いを持っているようだ。
「僕は捕まらないから大丈夫だよ」
やっていないことは断固としてやってないと言うべきである。
それでも僕はやってないのだ。
「そうだとしても自分が不安なんす!」
「でも僕もそろそろ戻らないと……」
早く戻らないとユーリに叱られるのだ。
「とにかく話を聞くっす! …………目的は達成したんすよ!」
彼女は僕と同じように学園の生徒に恨みがあるらしいので、それが達成できたということなのだろう。
しかし、先ほどは計画を進めると言っていたが、これ以上どうしようというのだろうか。
「……見るっす……これが心臓っす……」
僕が黙って聞いているとどす黒い瘴気を纏った魔法石を見せてきた。
目の錯覚だろうか、確かに心臓のようにドクンドクンと一定のリズムで脈動しているように感じる。
とても強い魔力が内包しているのがわかる。
心臓って本物は見たことはないけど、普通こんな感じなの?
本とかで見たものより、大分禍々しいけど……。
でも一般的なことかもしれないので、訳知り顔をしておこう。
僕は常識があると思われたいのだ。
というかミザリーは復讐対象の心臓をわざわざ抉り取ってきたというのだろうか。
とても猟奇的な行動に思えるが、この世界では普通のことなのかもしれない。
魔物とかを討伐したときの討伐証明と同じようなものなのかな。
「ふーん……それでこれをどうするの……?」
「復活の儀式をするっす!」
一度命を奪ったのに、また復活させるというのはどういうことなのだろうか。
まさか、何度も殺害するためということではないと思いたい。
徐々に僕の動悸が激しくなる。
ここまで猟奇的な人だとは思わなかった。
これ以上ミザリーと関わるのは危ない気がするが、もし彼女の機嫌を損ねたとあれば、復活からの殺害という永久ループ地獄を味わうのは僕になるかもしれない。
幸い彼女は僕のことを割と信用しているようだし、今のところは僕がその対象になることはないだろう。
ここは大げさに肯定しておこう。
「ふふふ……面白い……! やって見せてよ……!」
「ニアさん……無茶なこと言わないでほしいっす……! 準備が必要だってわかるっすよね……!?」
そんなこと知らない!
今からやるような雰囲気を出していたくせに!
あんまり僕のことを試さないでほしい。
「……というかミザリーは何でそんなこと知ってるのさ?」
「……それは自分の出生に関係があるっすが、ニアさんも知っているんじゃないっすか?」
当然知っているわけがないが、知っているふりをしておく。
「もちろん知っているよ……!」
「じゃあ手伝ってくれるっすよね……?」
ミザリーが遠慮した様子で上目遣いをしてくる。
それを僕は自分の中で紳士度が上昇していく音が聞こえていた。
若干猟奇的な所はあるが、甘えるように縋り付かれると、だんだんミザリーのことが気になってくる。
危険な存在であるというのに、関わりを断てないでいるのは、心の中では彼女を妹として迎え入れたいと思っているからなのだろうか。
今のところは仮の妹としておくことにしよう。
彼女が僕の妹になりたいと願うなら、快く迎え入れる準備はできている。
余裕を見せるために僕は鷹揚に頷く。
「ありがとうっす! じゃあ復活魔法陣の発動をお手伝いしてほしいっす!」
「任せてよ!」
「自分、魔法の制御があまり得意じゃないから一人だと不安だったっすよ!」
ミザリーはそう言って嬉しそうに魔法陣の構築を始めたのだった。
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